表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
セリカシュン  作者: 青紙 ノエ
最終章 最終的な物語

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/26

 ダン ド リオン(別離)


 ある土曜日のバイト中。


 約一ヶ月ぶりの昼勤務だ。前回は赤髪ロン毛の赤ロンの登場があったが、今回は何事もなく時は流れる。でも客の入りは前回よりも多いみたいだ。

 

 実は今日は社長から話があるらしい。三時から食事会を含めた会合との事だ。この会合には学生のバイトやパートの主婦も参加のようで、『ただ飯ラッキー!』のような、軽い話ではない気がする。


 そしてランチタイムが終わり、お店は一時休店となった。


「皆さんお疲れ様」

 社長の桜ママが皆さんに声をかけ、話が始まる。


「今日はいつにも増して忙しくなりましたが、お疲れ様でした」

 一同が頭を下げる。

「実は北海道の 札幌公園通り店が人気となり、函館にも出店が決まりました。それに伴い、何人か函館に私と一緒に来てもらうこととなり、この場を開いたしだいです」


 一同に動揺が走る。


「一応、本人同意で移動が決まっている方を紹介します。まずは料理長・・・」


 本人同意とうい言葉の後に名前が呼ばれ、ホッとした表情ををする人がチラホラいる。


 ん? あれ? 最初に私と一緒にって言った?

 話が一通り終わったようなので、俺は意を決して挙手をした。


「あら? 瞬くんは学生だから行けないわよ?」

「いや、違います。そうではなくて、私事ですがよろしいでしょうか?」

「何かな?」

「社長も行くようですが、桜さんも行くのですか?」

「あー。瞬くんは聞いていなかったのね? 桜も一緒よ」


 なんだよそれ・・・。

 それで、勢い任せで、コクってきたりしたのか?


「芹香や香山さんも知っているんですか?」

「瞬くんが芹香ちゃんから聞いていないんだったら、瞬くんからは言わないでね」

「わかりました・・・」


 先日、芹香と香山さんが怒っていたのはこの事もあったのか?

 先週、お母さんと一緒に来た時にはそんなこと言っていなかったよな・・・。


「ねえねえ瞬くん」

「は、はい?」

「芹香ちゃんって誰? もしかして彼女とか?」

「沙里ちゃん、芹香は姉さんだよ」

「お姉さん? てかなんで、社長と知り合いなの?」

 

 沙里ちゃんからの質問にみんなが聞き耳を立てている。


「あー。ごめんごめん。みんなに言っていなかったわね。一ノ瀬さんの声が聞こえちゃったから、私から言うわね。実は瞬くんは前会長の青井 朔太の甥っ子なの。この居酒屋にバイトを申し込んだ時、CEOの名前しか載っていなくて、私が代表って知らなかったのよ。叔父の名前を出さなかったら大丈夫と思ったみたいだけど、料理長には即バレしていたけどね」


 なぜかみんなに笑われている俺・・・。


「芹香が来ても俺はわかるぞ? でも桜は変わり過ぎてわからなかったな」

 料理長の言ったサクちゃんネタで一同が大爆笑をする。

「つーか、芹香は瞬が昼勤の時は毎回、迎えに来るよな? 瞬は信用がないんだろ?」

「えへへ・・・」


 返す言葉がねえっす・・・。


「え? どう言うこと? お姉さんでしょ?」

 沙里ちゃんが不思議そうに俺に聞く。


「えっと、姉弟(きょうだい)だったのは六年間くらい。それに俺は叔父の子じゃないし。芹香も叔父が再婚した相手の連れ子だったから。顔も似ていないし、今は他人から見たら恋人同士みたいなものです」

「何それ! 恋愛小説じゃん! リアル恋愛小説きたー!」


 沙里ちゃんの一言で、主婦の皆さんの目が輝き出した。


「一ノ瀬さん、芹香って子の凄いところは瞬のことが大好きすぎて、瞬から一秒も離れないんだよ」

「やばいやばい! ちょっと、その辺をもっと詳しく!」


 沙里ちゃん、なんでメモっているの?

 

 そして、料理長と沙里ちゃんが盛り上がる中、宴は終わりを告げた。



 俺はバイト先を出て、バス停に向かう。サクちゃんのことが気になり、彼女にラインをしようとした。が、タイミング悪く前方から本人登場である。しかも隣には芹香もいる。その少し後方には聖也と香山さんもいた。


「お疲れー!」

 芹香とサクちゃんが声を合わせて俺に言う。

 仲良しさんだな・・・。


「うん、ありがとう」


「瞬、お疲れさん」

「青井くん、お疲れ様」

 聖也と香山さんはお手々を繋ぎながら俺に言う。

「ありがとう。てか、君たちはお手々のシワとシワを合わせてナムーだな」

「う、うるさい!」


 聖也くん、顔がマッカチンですよ。


「ねえ瞬くん、お母さんから何か聞いた?」

 不安そうな顔で、俺に聞くサクちゃん。

 今の質問で、あらかた見当はついた。

「なんか函館にも進出するみたい。社長、これから忙しくなるね」

「うん、そうだね・・・」


 今の俺の返しは百点満点なんじゃね? じゃねじゃね?


「エミくん、何か隠しているでしょ?」

 ガーン・・・。 芹香、怖い・・・。


「何を隠すんだよ」

「じゃあ、後ろの綺麗なお姉さんは誰?」


 振り向くと、俺のすぐ後ろに沙里ちゃんと料理長がいる。


「はぁ!? いつからそこにいるの!?」

「いやぁ、一ノ瀬さんが芹香に会いたいって言うからさ。どうせ瞬を迎えに来るよって。言ったら、私一人だと色々と問題が生じるかもしれないからって。俺も来た」


 料理長の話の途中から、沙里ちゃんは芹香の周りをウロウロとし、微笑ましい顔で芹香を見る。


「あの、なんですか?」

「うん、大丈夫」

「いや、私は大丈夫じゃないんですけど・・・」


 芹香は沙里ちゃんに危険を感じている。

 そして芹香は俺の腕にしがみついてきた。


「きゃー! くっついた! 本当だ! くっついた!」


「怖い。エミくん、この人なに?」

「いや、俺も状況がわからない・・・」


「えっと、一ノ瀬さん。本人が嫌がっているからその辺にして」

 料理長ナイスです。

「アーン、了解・・・。ごめんね芹香ちゃん。私ね、恋愛小説を書いているから、取材的な感じだったの」

「はぁ。そうですか。取材ですか・・・」

「うん。またね芹香ちゃん」


 沙里ちゃんはそう言って駅に向かった。


「芹香も瞬もごめんな。あの子、あんなイケイケだったんだな・・・」

「はぁ。そうですね・・・」

「そう言えば桜、久しぶりだな」

「湊さん、お久しぶりです」

「桜も函館に行くんだろ? 準備は終わっているのか?」


 あっ。

 言っちゃったよ、この人・・・。


 芹香と香山さんは呆然とサクちゃんを見つめた。




 





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ