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セリカシュン  作者: 青紙 ノエ
最終章 最終的な物語

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22/26

 アルストロメリア(未来への憧れ)


「ただいま」

「おかえり。って、なになに? 今日は早いわね?」

「うん。ちょっとね・・・」


 わかりやすい子ね、この子は・・・


「芹香、買い物に付き合ってくれない?」

「うん? 買い物?」

「エミくんの家の食材を買いに行くの。食べるだけじゃダメでしょ?」

「それはそうだけど・・・」

「ついでに言いすぎたことを謝っちゃいなさい」

「何それ!? 言いすぎてないもん! エミくんが悪いんだも・・・」

 途中でハッ、と気づいたように話すのを止める芹香。

「やっぱりね。どうせ、ちょっとしたすれ違いでしょ? 早く仲直りしちゃいなさい」


 多分、桜ちゃんの件ね・・・。

 どうせエミくんがストレートに断ったりしたんだろうな。

 青春を謳歌する若者は面倒ね・・・。



 食材を買うマーケットに到着。


「芹香、お菓子は二百円までよ?」

「お菓子ぐらい自分で買う!」 

「あら、失礼」


 喜怒哀楽のハゲしい子ね・・・。


「今週は何を作るの?」

「決めてない」

「エミくんに聞いてみたら? 今」

「何でニヤニヤしているのよ」

「仕方がないじゃない? 私の名前は二矢(にや)だもん」

「もう、そう言うのはいい!」

「そんなに怒らないでよ。代わりに私がエミくんに電話してみるわね」

「え? ダメ!」


 困った顔をする芹香は幼児の時のままね。

 身長もそのままだけど。


「もしもしエミくん?」

「こんにちは。何かありました? 芹香が帰らないとか?」

「もう、エミくんは芹香のことしか考えてないのかな?」

「いや、違います。帰り際に怒らせちゃったから・・・」

「そうなの? それより、食材の買い出しに来ているんだけど、食べたい物ある?」

「芹香が作ってくれる物なら何でも。全部、美味しいから大丈夫です」

「何それ? エミくんは芹香のことが大好きね?」

「大好きですよ」

「はいはい。それじゃ適当に買って行くわね」

「いつもすみません。ありがとうございます」


 エミくんとの電話が終わり、私に心配そうな視線を送る芹香。


「さあ、買い物を済ませましょう」


 車を降りて、エレベーターへと向かう私たち。


「お母さん、エミくんなんて?」

「何だったかな? 忘れちゃった」

「何でよ!」

「あはは!」


 心配だったら自分で聞けばいいのに。

 その後も芹香は「なんて? ねえ、なんて言っていた?」と何度も私に聞いてきた。その度に私ははぐらかしていた。

 本当に可愛い娘だわ・・・。


 買い物が終了し、エミくんの家に向かう車中。


「どうしたの?」

「別に」

「昔さ、芹香がそこの公園で知らない()()()()に手を掴まれた時があったでしょ?」

「うん、覚えている。怖かった」

「その時のエミくん、どうだった?」

「カッコ良かった」

「私と朔太さんもね、ビックリしたんだよ」

「お父さんも呆気に取られていたもんね」

「何やってんだよクシジジィ! 芹香から離れろ! って言って、飛び蹴りだもんね。小学生が」

「うん。今思うとすごい少年だね」

「それからでしょ? エミくんのことが大好きになっちゃたんでしょ?」

「別に・・・」

「隠さないでいいのよ。エミくんも芹香のこと大事にしていたし、姉弟(きょうだい)というよりも恋愛感情に近かったでしょ?」

「そんなことないもん」

「隠さないでいいの。私と朔太さんはあなた達がとても大事なの。私と朔太さんが離婚して、あなた達が離れてもお互いに大事に思っていたら、その時にまた考えようって」

「え?」

「違うのよ。離婚の理由は他にもあるの。朔太さんの仕事関係って女性が多いでしょ? 帰りも遅いし、色々と不安だったのもあるの。だってそうでしょ? 自分が好きになった人だもん。きっと他の人もこの人を好きになっちゃう。って思ったりしちゃう訳よ」

「お母さん、乙女だね」

「芹香だってそうでしょ? エミくんのバイト先にはたくさんの女の子がいるし。不安になって、エミくん他の女と二人きりにならないでぇー! とか思うでしょ?」


 まさに先週の土曜日だ・・・。


「芹香? 何その顔? すでにエミくんに言っちゃったって顔をしているわよ?」

「いいい、言ってない!」


 あ、言っちゃったなこの娘は・・・。


「とにかく、私と朔太さんはあなた達のことが大好きなの。だから、エミくんと結婚をしてもいいのよ? すでに恋人同士みたいな関係でしょ? デジレちゃんも同じ気持ちよ?」


 そして青井家に到着。

 芹香は下を向いている。車の音に気が付いたのか、エミくんが玄関から出てきてガレージのシャッターを開ける。


「お母さんいらっしゃい。たまには上がってね。良かったら夕飯も食べて行ってよ」

「そうね。そうしようかしら。ねえ芹香?」

「うん」


 車から荷物を運ぶエミくん。最初の荷物を玄関に置いて、再び車にある荷物を持つ。

 そして芹香と目が合い、ニコッと微笑む。


「エミくん、さっきは言いすぎた。ごめんね。嫌いにならないで」

 芹香はそう言ってエミくんのお腹に抱きつく。

 これは反則行為である。こんな事をされて、許さない男子はいない。でもエミくんは普通の男子じゃないんだよな・・・。

「えー。許す訳ないじゃん。俺、いまだに意味がわからないんだけど。あとで詳しく説明しろよな。てか、泣いていないで芹香も荷物を運べよ」

「えへへ。それじゃ少しだけ運ぶよ」

「お前、それお菓子じゃねえか、お母さんのを持てよ!」

「いやーだよー!」


 まったく、さっきまでの暗い表情はどこにいったんでしょうね・・・。





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