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セリカシュン  作者: 青紙 ノエ
最終章 最終的な物語

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21/26

 ダリア(感謝)


 今週は第二月曜日。0時限目がある週。

 A組は進学コースのため一時限目の前に0時限目がある。


 この0時限目が終わると同時に、ほとんどの生徒が朝食を食べる。俺と芹香もその類だ。


「ねえエミくん」

「何?」

「この炊き込みご飯の()()()()美味しいでしょ?」

「うん美味しい。姉さんも絶賛していたよな」

「流石にお弁当にはできないけどね」

「そうなの?」

「こういうご飯は足が早いんだって」

「何それ?」

「ああ、悪くなっちゃうのが早いみたい。お母さんが言っていた」

「やば。足が早いんだ」


 俺たちが朝食を食べ終わると同時に和久井さんが登場した。

 和久井さんは理系のため、別の教室での授業だ。


「おはよう!」

「おはよう!」


 和久井さんは元気に芹香と挨拶をした。


「和久井さん、ちょっと良いかな?」

「ごめん、今は無理・・・」

 俺が和久井さんに話しかけると、すぐさま俺から目を逸らしながら言った。

「それじゃ後で和久井さんの都合のいい時に・・・」

「・・・」

 和久井さんは黙ったままだ。


「サクちゃん・・・」

 芹香が和久井さんの手を引いて教室を出て行ってしまった。


「なあ瞬」

 後ろから聖也が声をかけてきた。

「えっと、言いづらいけどさ」

「何?」

「朝からじゃキツイから、せめて放課後の方がいいと思う」

「え? 何で? 俺が言おうとしている事がわかるのかよ?」

「いや、わかるでしょ? 断るんでしょ?」


 スゲーな聖也! エスパーか!?


「そうか・・・。それじゃ放課後もう一回、話しかけてみるよ」

「その方がいいね。和久井さん、多分、瞬のことを避けると思うけど、今日中に伝えないとダメだぜ」

「ああ、わかった」


 聖也と仲良くなっておいてよかった・・・。


 その日の俺は休み時間ごとに和久井さんに近づこうとするが、悉く逃げられていた。

 昼休みも逃げるように姿を消す。

 忍者かーい?


 そして放課後。

 ホームルームのうちに帰り支度をまとめる。

 担任の号令と同時に俺は昇降口に向かう。

 和久井さんを待つこと五分・・・。

 

 ・・・十分・・・。


 ・・・十五分・・・。


「来ないじゃないかーい!」

 大声を張り上げた俺。


「青井くん? 何しているの?」

 話しかけていたのは香山さんの後ろの席の・・・。

「えっと・・・」

「酷いぃ・・・。私の名前を忘れているんでしょぉ・・・」


 ああ、そうそう。この人は語尾を伸ばすんだよな・・・。


「菊池だよぉ・・・」

「いや、わかっているって」

「絶対にわかってないよねぇ。てか、和久井さんなら教室で芹りんと香山ッチに慰められているよ?」

「そうなの? 俺、まだ何も言っていないんだけど?」

「いやいや、青井くんは芹りんのことが好きなことぐらい、学園中が知っているよ?」

「何その広範囲!?」

「あはは! モテる男は辛いですな。いよ! 色男!」


 そう言って菊池さんは帰って行く。

 語尾を伸ばさずに話せるんじゃん・・・。


 そして、最終下校時刻がやって来た。

 只今の時刻、十七時二分。

 俺は一時間以上も昇降口にいた訳だ。トホホ・・・。


 やばい、さすがに疲れてきたな。下校しろの放送が流れたから、いい加減、そろそろ来る頃だろう。

 てか、来てください。って、来たー!!

 やっと来てくれた!


「青井くん、何でそんなに笑顔なの?」

 香山さんが棘のある口調で言う。

「ホント、ガチで最低・・・」

 あれ? 芹香さんまで怒っているんですかい?

「え? だって俺、一時間以上ここで待っていたんだけど?」

「はぁー」

 ため息を吐く女子たち。


「普通さ。あんな一目散に走って教室を出て行ったら逃げたと思うでしょ?」


 ウンウンと、うなづく香山さん。


「ごめん。和久井さん、俺を避けているように思えたから、ここで待っていたんだ」

「アンタ、バカァ? そんなの当たり前でしょ? だいたい朝っぱらに言うことじゃないでしょ?」

「すみません・・・」


「もういい!」

 芹香がそう言うと、三人は校門に向かう。


「待って、和久井さん!」

「あ、青井くん。色々とごめんね。私は友情をとる事にした」

 

 笑顔で俺に言う和久井さん。

 そんな和久井さんの笑顔は夕陽に照らされ、素敵な笑顔でした。




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