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セリカシュン  作者: 青紙 ノエ
第4章 そして僕は途方にくれる物語

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 ラナンキュラス(華やかな魅力)



 帰宅した俺と芹香。

 時間は夕方、五時を少しすぎた。


「エミくん、シャワーに行ってきたら?」

「夕飯の準備を手伝うよ」

「キッシュだから、あとはオーブンに入れるだけ。だから大丈夫だよ」


 芹香はそう言って、俺をシャワーに行かせた。

 何だ? 何か隠しているのか?


 とりあえず、俺はシャワーに向かった。

 いつも携帯で音楽を流しながらのバスタイムだが。携帯をバッグに忘れたため、リビングに戻る。

 すると、芹香が俺のバッグを漁っていた・・・。


「どした?」

 俺が芹香に問いかけると、全身でビクッとし、振り返る。

「あはは。ビックリした。足音も立てないでやめてよ。泥棒かと思ったじゃん。はい、携帯。いつも音楽を聴きながらじゃん?」

「ああ。ありがと」


 あんなにビックリすることないじゃん・・・。

 

 再び浴室に向かう俺。しかし、今度は着替えとバイトの制服を忘れ、再びリビングへ。

 リビングに行くと、芹香はまたもや俺のバッグを漁っている。


「なあ、何してるの?」

「ひゃあ!」


 俺を見る芹香。


「違うの!」

「何が違うかわからないけど? 俺はバイトの制服を取りにきたんだけど?」

「うん! 洗濯機に持っていこうと思って!」

「ああ、そっか。ありがと」

「うん!」


 芹香、どうしたんだろ?


 俺は部屋に行き、着替えを持って浴室へ向かう。

 リビングの前を通ると、芹香が背中を丸め、ペタンと座っている。


「芹香? どした?」

 芹香は返事もしないで、下を向いている。

「芹香?」

 

 再び名前を呼ぶと、芹香は俺に抱きついてきた。

 飛びつかれた勢いで、俺は尻もちをつく。


「どうしたんだよ」

「わからないけど不安なの・・・」

「何が? 中間試験か? お前だってAクラスじゃん」

「違う!」

「違くないだろ。同じクラスじゃん」

「違うって言っているでしょ! バカ!」


 ひょえー。バカって言われた・・・。


「桜だよ・・・」

「サクちゃん? 納豆の?」

「ブフォ!」

「ブフォって・・・」

「真面目な話をしているんだから、笑わせないで・・・。」


 そう言って深呼吸をする芹香。


「前に桜がエミくんにコクったじゃん。それに今日はバイト先の先輩と一緒だったし・・・」

「俺は・・・」

 うーん。芹香には何て言えばいいんだろ・・・。


「俺は何?」

「俺は芹香が好きだ。姉弟(きょうだい)になった時からだと思う」

「だから?」


 だから?

 え?

 どうするの?

 我、何か間違ったのか?


「今の距離感が好き」

「距離感て何? 私がエミくんに抱きついていること?」

「それもそうだけど」

「何?」


「芹香のまつ毛が、俺の頬をスッと掠める時とか?」


 俺がそう言うと、芹香は俺の頬に目を当てる。


 

「ワオ! 私がいない時はアナタたちってエロいわね!」


 突然、姉さんが帰宅した!

 俺と芹香はシュタッと離れ、正座をする。


「姉さん、仕事で遅くなるんじゃなかったの?」

「芹香が泣きそうな声だったから、会食は辞退させてもらったのよ? それとも姉さんはお邪魔だったかしら?」


「いえいえ、そんな事ないです」

「そお? 私は着替えてくるから、続きをどうぞ。 ふふっ」


 どうぞって・・・。



「あー! 俺はホカってくるかな!」

「そうだね! 私もオーブンを予熱しないとだった!」

「あはは!」

「あはは!」


 変な笑い方をしながらキッチンに向かう芹香。

 

「芹香・・・」

 俺は芹香を呼び、振り向く芹香の頬にキスをした。

 

「もう、バカ・・・」

 恥ずかしそうに下を向く芹香。

 今のバカは心地よい気分がした・・・。

 




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