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セリカシュン  作者: 青紙 ノエ
第3章 がんばってみる物語

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 アマドコロ(心の痛みがわかる人)



 俺の背後で涙を流す和久井さん。香山さんと芹香が和久井さんの元へ走り寄るのがわかった。


「どうしたの桜?」

「・・・なんでもない・・・」


 和久井さんは芹香の問いかけに、消え入りそうな声で答えている。


「・・・用事を思い出しちゃった・・・。帰るね・・・」

「待って、桜、私たちも帰るから、一緒に帰ろう!」


 香山さんが急いで帰る準備を始める。


 クラスメイトたちが、ざわつき始めた。


「青井くん、どうしたの?」

 俺に聞いてきたのは学年主席の相京くん。

「なんだろ? 俺もわかんね」

「和久井さん、泣いていたけど?」

「待って、俺も振り向いたら泣いていたから、わからないって」

「そうなの?」

 相京くんは聖也に聞いている。

 俺の発言、信用なしかーい!?


「とりあえず、芹香も帰るんじゃ俺も帰るよ。お疲れさん」

 席を立とうとした俺に、聖也は俺の腕を掴んだ。


「瞬、今は待ってくれ」

「なんで?」

「ちょっと、離れたところに行こう」

「やだよ。俺も帰るよ」

「ダメなんだ。頼むから俺の話を聞いてくれ」

「わかったよ。話を聞いたら帰るぜ」

「ああ」


「加藤くん、助かるよ。青井くんをよろしく」

 相京くんは何かを察したように、聖也に言った。



 俺と聖也は非常口から出て、階段の踊り場に出た。


「瞬、ぶっちゃけで言うよ」

「何? 告白?」

「ふざけないで聞いてくれ」

「ああ、ごめん」


 なんだよ・・・。


「和久井さんの事だけど」

「和久井さん?」

「瞬、以外のクラスメイトはみんな気がついているんだけどさ」

「は? 何が? 俺、ハブ?」

「違うよ。和久井さんは瞬に好意を持っているんだよ」

「何それ?」

「恋愛感情かどうかはわからないけど、それに近いと思う」


 和久井さん・・・。ガチか? なんで俺なんだ?


「さっき瞬が片山さんの事を言っていたろ? それを聞いちゃったから、気持ちの整理とか、何たらかんたら? 的な?」

「待ってくれ、俺の気持ちも、何たらかんたらだ・・・」


 俺たちは階段の踊り場で黙ってしまった。


「どうしよう・・・。俺は芹香が好きだ」

「そんなのわかっているよ」

「どうしよう・・・。俺は芹香が好きだ」

「いや、二回も言わないでいいって・・・」


 これはあれか?

 和久井さんにハッキリ言うべきか?

 バイト、クビになっちゃうかな・・・。

 それは関係ないか?

 あれ?

 大丈夫かな・・・。


「なあ。今、和久井さんと関係ないことを考えていただろ?」

「関係なくはないけど・・・」


 とりあえず、俺も帰るか。


「聖也の言いたい事はわかった。俺も帰る」

「本当にわかったのか? ガチで心配なんだけど」

「とりあえず、今日は和久井さんとの接触は避ける。そして芹香と話す」

「片山さんと? 何を話すんだ?」

「わかんね・・・。何か話す」

「うん、わかった」


 俺たちは元いた場所に戻った。

 ちょうどお開きの時間のようで、みんな帰り支度を始めている。


「青井くんたちも二次会に来る? カラオケだけど」

 相京くんがニコニコと眩しい笑顔で話しかけてきた。

「俺は帰るよ。姉さんが大事な話があるって言うから」

「そうか。残念だけどまた誘うから、その時は行こう。お疲れさん。」

「ああ、お疲れさん。」


 俺は急いで外に出る。

 芹香たちはどこに行った?

 とりあえず芹香に連絡を・・・と思う間もなく携帯が鳴る。


 香山さんから?


「青井くん? 駅の横の公園にいるんだけどわかる?」

「ああ、変なラクダがある公園?」

「そう! すぐに来れる? 桜と芹りんが喧嘩しているの!」

「はあ? わかった、すぐに行く!」


 なんでだ?

 いつも仲良しなのに・・・。






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