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セリカシュン  作者: 青紙 ノエ
第3章 がんばってみる物語

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12/26

 ホワイトダリア(豊かな愛情)


 女子ハンドボールの試合を俺と聖也はベンチの後ろで見ていた。

 奇声を発しながらシュートをする和久井さん。

 ゴールを決めると「ヒャッハー!」という香山さん。

 ドリブルをしながら、小動物のように動き回る芹香。

 芹香が一番、女の子らしく見える・・・。


 そして女子の試合が終わり、ハンドボールチームは昼食となった。






 各チームごとの昼食のため、俺たちハンドボールチームは広場でお弁当を食べていた。


「ねえエミくん。デジレ姉さんは?」

「ちょっとした打ち合わせがあるって言って、会社に行った」

「土曜日なのに?」

「税関で問題があったみたいだよ」

「そうなんだ・・・」


 実はデジレ姉さんの就職先。先日、ショッピングモールで出会った黒川氏の会社に就職をした。

 黒川氏の会社はモーリタニアから海産物の輸入をしている商社。公用語はアラビア語だが、フランス語圏内らしく、英語よりもフランス語での取引が多いらしい。英語と違いハッキリとした発音をしないフランス語は日本人には難しいらしく、たまたま出会った姉さんに対し、黒川さんは商業の女神と思ったらしい。

 余談だが、黒川氏の奥さんはモーリタニアの人だそうだ。黒川氏、曰く。

「あの国の成人女性は肥満の人が多いんだよね。だから彼女の食生活は特に気をつけているんだよ」

 と言っていた。 


「お疲れ、青井くん」

「ああ、お疲れ様、和久井さん」

「ゴールを決められてよかったね」

「うん、練習をした甲斐があったよ」

「話は変わるけどさ。今夜、打ち上げをやろうと思うけど、青井くんは来れそう?」

「多分、大丈夫だと思うよ。芹香に聞いてみる」


「芹りんは関係ないじゃん・・・」

「ん? 何?」

「ああ、なんでもない。それじゃ、青井くんは男子たちに聞いておいてもらってもいい?」

「了解!」



 その後、ハンドボールチームは男女ともに、準決勝で負けてしまい、四位となってしまった。

 まあ、バレボール女子と、男子バスケが優勝したので、北村先生は腰に手を当て、仁王立ちで高笑いをしていた。

 こりゃ確実に先生たちで賭けをしているな・・・。




   * * *



 放課後、打ち上げ会場。


 ジュースを片手に持ち、皆で乾杯をして打ち上げが始まった。

 学生は一人、980円でドリンクバー付きの120分食べ放題。

 みんなは安いと言うが、時給1,100円でアルバイトをしている俺からすれば、高額だ・・・。


「青井くん、お疲れ」

「ああ、香山さん、お疲れ」

「青井くんに質問」

「何?」

「・・・」

 香山さんは考え込んでいる様子だ。

「どうしたの?」

「青井くんは芹りんのこと好き? えーっと・・・。好きだと思うけど、どう言う好きかなっと、思って」

「好きだよ。家族としてもそうだけど、色々と大好きだよ。なんで?」

「別に・・・。 あと、別件でね。聖也くんって恋人というか、好きな人とかいるかな?」


 来たー!!

「どうだろ? そういう話はした事がないからわからないな・・・」

「ふーん・・・。うん、ありがとう!」


 キタコレってやつだな!?


「瞬、お疲れ。香山さん、どうしたの?」

「ああ、誠也もお疲れ。なんだかよくわかんね。芹香の事を好きかって聞かれた。それより、クラスメイトと話ができるようになって良かったな!」

「うん、瞬のおかげだよ。ありがとう」

「俺は関係ないだろ?」

「関係あるって! 瞬が仲良くしてくれたから、自分に自信ができたんだって。マジでありがとう」

「そんなものかね・・・」

「そんなものだよ。で、香山さん、本当は?」

「何が?」

「いや、俺の方を見ながら話していたから」

「たまたまじゃないかな? ああ、聖也もゴールを決めた話をしたから、その時かな?」

「ふーん・・・」

「なんだよぉ。俺だってわかんねぇよぉ。聖也の方を見ていたことも気が付かなかったよぉ」

「わかったって! 脇をくすぐるなよ!」

「てか、なんで気にするんだよ」

「別に・・・」

「なんだよぉ! 言えよぉ!」

「くすぐるなよ! 言うよ! 言うから!」


 聖也は周りを気にしだした。


 聖也はモジモジとし始めた。


 聖也は眉毛辺りを指でコリコリとカキ始めた。


 ハッキリ言うが、男のこの仕草は気持ち悪い・・・。


「香山さんてさ・・・」

「うん?」

「か、可愛いと思うんだよね・・・」

 マジでキタコレー!


「お、おう。ゴールを決めて、ヒャッハー! って言うところとか?」

「ああ、あれはドン引きマックスな・・・。って違くて!」

「あー。全部を言わないでいいって。聞き耳を立てている人がいるかも知れないから」

「俺は香山さんはいい人だと思うぜ。芹香と仲良くできるからな」

「片山さんって、そういうポジションなの?」

「どう考えてもそうだろ?」

「瞬は?」

「何が?」

「片山さんの事」

「好きだよ。家族としてもだし、恋人としても愛せるぜ」


 聖也が呆気にとられている。

 その目線が俺の背後にいっている事に気が付いた。


「青井くん・・・」


 名前を呼ばれ、俺は振り向く。


「なんだ・・・。私じゃダメじゃん・・・」


 そこにはポロポロと涙を流す和久井さんが立っていた。














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