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セリカシュン  作者: 青紙 ノエ
第3章 がんばってみる物語

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 マルバストラム(秘めた想い)


 球技大会、当日。


 雨天のため順延し、今年は土曜日の開催なった。

 毎年、平日の開催だったため、今年は土曜日のおかげか、父兄も見に来ている。

 ちなみにだが、うちの高校はグラウンドが小さいため、球技大会は近郊にある、大きな都立スポーツセンターで行われている。


 そして、各種目は始まったのであった。

 俺の出場するハンドボールはB棟の第二コート。

 俺と聖也は補欠さ。

 なんて言ったって、ボールのコントロールがヤバいからね。


 試合が始まり、A組は面白いくらいに得点を入れている。流れはA組だ。

 そして俺はひな壇状の観客席を見た。すると女子たちが、何やら一点に群がっている。

 よく見ると、その中心にいるのはデジレ姉さんじゃないか!?

 しかも芹香が姉さんの横で、何かを仕切っている。


「何やってんだアイツ・・・?」

「どうしたの?」

 誠也が不思議そうに俺に聞いてきた。

「いや、あれ」

 俺は群がる女子たちの方へ、アゴで指摘した。

「あ! デジレさんだ!!」

 聖也のテンションが上がった。

 俺はベンチ脇にいる香山さんに目をやる。香山さんは聖也を見て、眉間にシワを寄せている。そのシワはまるでMITSUBISHIのマークのようだ。怖い・・・。


「なあ聖也。A組って圧勝じゃね? これだけ点差があれば俺たちも出れるんじゃね?」

「うん。デジレさんって綺麗な人だよな・・・」


 あっ・・・。

 今のは香山さんに聞こえたな・・・。

 

 ピピー! ホイッスルが鳴る。 

 選手交代だ。

「4番に変わって9番。 5番に変わって11番」


 やった! 俺たちだ!


「行くぜ聖也!」

「おう、頑張れよ!」

「いや、お前もだよ!!」

 

 俺と香山さんの声がユニゾンした。

 香山さん怖いんだけど・・・。


 俺たちは交代選手とハイタッチし、コートに入る。

 コートに入ると同時に俺の元にボールが来る。


 これはアレですかぁ!?

 行っちゃえってことですかぁ!?

 俺はドリブルをし、ゴールに近づく。


「思い知るがいい! これが俺のノーコンシュートだぁ!!」


 俺の投げたボールは相手チームのキーパーの右手をすり抜け、見事にゴールを決めた。

 俺は呆然とし直立不動。


『ヘーイ! エミール! ナイスシュート!』

 お? 俺ってスゲーんじゃね?

『ありがとう! 俺ってすごくない?』

『C'est cool!』


 いつの間にかベンチの後ろに来ていた姉さん。

 嬉しそうに俺に手を振ってくれている。

 しかもスッゲー高そうなカメラを首から下げているぞ?


「青井くん、あの人って誰? スッゲー綺麗な人だね」

「母さんの妹。でも叔母と言わないで姉さんと呼んであげてね」


「青井くん上達したね! ナイッシュー!」

「ウェーイ!」

 やべ、楽しいんじゃね?


 その後、試合は終了し、ベンチに戻る。



 ベンチに戻ると、北村先生が拍手で迎えてくれた。

 これは予想だけど、先生たちって優勝クラスを賭けている気がするな?

 と思う俺であった・・・。


 次は女子のハンドボール。

 俺は聖也に女子の試合を応援しようぜっと提案。もちろん香山さんのためだ。とりあえず、姉さんには退場を願うとするか・・・。

 色々と周りに聞かれるとヤバいかもしれないから、フランセで話しておこう。


『姉さん、来てくれてありがとう』

『当たり前じゃない! カッコよかったわよエミル』


 姉さんは俺の頬に自分の頬を当てる。

 フランスでは家族同士の挨拶のようなものだ。


『姉さんこの後は?』

『少しだけ打ち合わせがあるのよ。だからこれで帰るわね。残りの試合も頑張るのよ』

『任せてくださいよ』

『それじゃ行くわね。アビヤント』

『アビヤント』

 よかった。これで聖也の視線を香山さんに作戦ができるな。


 覚悟しろ聖也!










 

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