グラジオラス(たゆまぬ努力)
瞬はハンドボールの練習のため、聖也を自宅に呼んだ。 果たして瞬と聖也はデジレの練習について来れるのだろうか。
ちなみに、その場にいた和久井さんと香山さんも来ることになった。彼女たちは女子会が目当てのようだ。果たしてそれだけだろうか・・・?
土曜日 十二時三十分。青井家のチャイムが鳴る。
「はーい」
ガチャ。
「片山さん!?」
「加藤くんいらっしゃい。どうぞあがって」
「はい。おじゃまします」
リビングではすでに女子会が始まろうとしている。
「いらっしゃい聖也。紹介するぜ、俺の母さんの妹で、デジレ デュ カミーラ。学生時代はバスケのレギュラーだったんだぜ!」
聖也は驚いた顔をしてデジレ姉さんを見ている。
「聖也、どした?」
「あっ、初めまして。加藤聖也です。A型です」
「血液型はいらなくない?」
香山さんがツッコミを入れた。
「初めまして、聖也さん。エミルが迷惑をかけていないかしら?」
「そんな! 俺のほうがお世話様です!」
「加藤くん、緊張しすぎでワロォー」
和久井さんは聖也をひやかしているようだ。
とりあえず自己紹介も終わったので、お茶をしてから特訓を始めるとする。
俺と聖也は先に庭に行き、姉さんに言われたとおり、二メートルくらい離れて、下手投げでキャッチボールを始める。少し恥ずかしいが、仕方がない。俺たちは下手だからね・・・。
そしてデジレ姉さんは着替えてくるといって、自室に行ってしまった。
「なんか普通にできてない?」
「下投げだけどね」
「なんだか小さい子みたいだね、デカいのに」
「あー。加藤くんもデカいよね」
「普通の健康的な体系だね。てか、青井くんは瘦せすぎじゃない? 52キロでしょ?」
「加藤くんって体重何キロかな? 60キロくらい?」
女子トークがけっこう気になる・・・。
「あの、あまり見られると恥ずかしいんだけど・・・」
聖也が恥ずかしそうに言う。
「気にしない気にしない」
和久井さんってオラオラだな・・・。
すると、姉さんが庭に回ってきた。
ユニフォームを着ている。
芹香たちは黄色い声を上げ、姉さんに近寄って行った。
「やばい! デジレさん写真良いですか?」
「私も!」
えーっと。撮影会になっているのだが? 特訓はどうなった?
俺は聖也にボールを投げる。って、「聖也!」ボコッ!
ボールが聖也の顔面を直撃した。
「大丈夫か聖也?」
「だ、大丈夫だってさ」
「だってさ、ってお前のことだよ!」
「お、おれは大丈夫だよぉ」
どうした聖也?
「加藤くん、デジレさんを意識しすぎだって! あはは!」
和久井さん? そういうことを大きな声で言うのはNGだぜ?
「ハイハイ! それじゃエミル、セイヤ。始めるわよ!」
「はい!」
俺たちは声を合わせた・・・。
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二時間後。
「やばい・・・。きつい・・・」
「ああ、きついな・・・」
俺と聖也は庭の芝の上で寝転んでいる。
端的に言うと、姉さんの特訓はガチだった。
おかげさまで、ジャンプをしながらシュートを投げられるようになったのだ。
どうだい、ワイルドだろ~?
そんなことを考えていると、女子たちがコソコソと何やら話している。
「ねね、芹りん。私、聖也くんの事、好きかも・・・」
香山さんの声がかすかに聞こえた。
これは!?
俺は聞こえなかったことにした・・・。




