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ドラゴン討伐隊④

 そんなやり取りを笑顔でするピコル。

 よく見ると首筋から汗がにじみ出ている。

 ぎゅっとピコルの手を握り、自信過剰に口説き続けているヨーダは、勿論そんなことは気付かない。


 ピコルはピコルで色々と大変なんだな・・・今度ベットで優しくしてあげよう。

 ミールは心の中でピコルを応援しつつギルドを出て行くのであった。



 ⇨ドラゴン討伐隊④




 翌朝、まだ夜明け前だがガタリヤの東門には冒険者達が集まっていた。

 吐く息は白く辺りの空気はひんやりと冷たいのだが、冒険者達が放つやる気や緊張感で肌が汗ばむほど熱気に満ちている。



 多数の冒険者達のリーダー役を務めるヨーダと目が合ったが、ミールに舌打ちしただけで特になにも言われなかった。



「ふああぁ~眠っみいい~!昨日は遅くまで遊びすぎたぜぇ」

「コイル。お前も今回は分隊長なんだ。ちょっとは真面目にしろ」


「かぁ~めんどくせ~。ちゃっちゃと倒して早く帰ってこよーぜっ、ガタリヤは良い女が沢山いるからな!そういえばあの受付の娘、やれたのか?」


「ぐっ・・うるさい。俺はお前と違って高貴なオーラが邪魔して、普通の女は落ちるまで時間がかかるんだ。帰ったら必ず落とす」


「へへへっじゃあ俺っちが味見しといてやろうか?」


「馬鹿が。あのような美しい女性がお前みたいな野蛮な男を相手にするはずなかろうが」


「かー。ヨーダは相変わらずわかってねーなー。女はな、ちょっと悪そうな奴に惹かれるもんよ。帰ったらお手本を見せてやるって」


「あー!もういい!はやく自分の隊の指揮に入れ!」

「へーい。隊長さまー」



 今回の編成は300人前後の冒険者達を6つのチームに分けて、それぞれ分隊長を置いている。

 第一部隊、第二部隊、第三部隊・・・ってな感じだ。



 ミールは第6部隊に所属している。



 一つの部隊は複数のチームが合流して大体50名前後の規模となっていた。

 全体の指揮権を持っている銀髪の男ヨーダのチームは40名なので、第一部隊はほとんどがヨーダのPTで占められている。



 ちょっとだけPT=チームについて説明を・・・



 PTチームは3タイプに分かれる。

 すなわち、少数、通常、大規模だ。



 通常タイプのPT人数は10〜20名前後。この規模のチームが一番多い。

 世界に名前が知られるような一流PTも通常タイプが主流となっている。



 そして次に大規模チーム。

 こちらは30〜50名前後のチームが多い。



 人数が多いので、強敵に出会っても数の力で倒せる可能性が高いし、群れていると単純に安心するって人が多いってのが特徴だ。



 しかし人が多いと問題や、いざこざも多くなるので規律がどうしても厳しくなり、そういった影響は戦闘でも出てしまうようで、あまり自由度は無い。



 PT内は世話焼きの人(マウントを取りたい人)が多い反面、あまり自分の意見を持たない人も多く、大規模チームが一流PTになるのは極稀なことだ。

 結構リーダーのカリスマ性、器が大きくチームの特色を反映している事が多い。

 中には1000名を越えるチームなのに超一流と称されるPTもあるらしいが・・



 その一方で5名前後の少数チームも一定数いる。



 群れることが苦手な人や、気の合う仲間と戦いたいって人が多いので、1人1人が意見をしっかり持っている事が多く、和気あいあいとなったり、絆が非常に強いチームになる事が多い。

 縛りもなく戦闘においても臨機応変に対応でき、自由度も高い傾向だ。



 しかしその反面、人数が少ない分、多数のモンスターや強敵によって無残に蹂躙され、全滅するPTも多いのが特徴だ。



「ひゃひゃひゃ、こりゃまた随分と若い連中が揃ったもんだな、第六部隊は」

「ひひひ、完全に残りのその他大勢を集めましたって感じだねぇ」

「まあええでないかい。期待されてない分、活躍したら目立つでぇぇ」

「あらやだ。お化粧しとこうかしら・・・」

「その荒野になにを塗るって言うんだい?いくら厚く塗ってもシワは隠れはせんぞ」

「きいい~!自分だってなんだい?香水なんて付けたって寄ってくるのはモンスターだけだわさ!」

「なにを~!」

「なにさー!」



 なんか随分と賑やかな人達と一緒になったもんだ。

 確かにこのおじ様おば様連中の言うとおり、第六部隊はどう見てもその他大勢の感が否めない。

 こりゃ下手したら捨て駒として扱われるんじゃないか?と不安になるようなメンツだった。



「おや、黄色ちゃん。うるさくてごめんなさいねっ。よろしくねえ」

「あ、はい!宜しくお願いします!」

「ふむふむ。黄色ランクなのに偉いもんじゃな。ドラゴン討伐に参加するとは」

「なんかあったらおばさん達が守って上げっからねっ安心してねえ」


「かああ~若い男を見るとすぐこれだ!ルチアーニ!いい加減自分の歳を考えろ!」


「何言ってんだい!恋愛に年齢は関係ないさね!あたしゃいつまでも心は18なの!」

「ぎゃはははっ!そんなしわくちゃな18がいるかー!」

「うっさい!このハゲ!」



 おじ様おば様連中は全員赤ランクの冒険者だ。



 なんでも最近までサーリアという東方の国にいたらしいが、今回のドラゴン騒ぎで『ある人』に呼び出されたらしい。

 昔ガタリヤギルドに所属していた事があるらしく、その時の縁とか言っていたが・・・



 アーニャの提案に真っ先に手を上げた寡黙な戦士のミケル、さっきから漫才をしているバーサーカーのランドルップとシーフのロイヤー、紅一点(?)の賢者ルチアーニ。



 話を聞く限り以前は黒ランクだったようだ。



 紫ランク以上には昇格条件と一緒にパラメータの条件もある。

 まあ、以前も説明させて頂いたが、この世界には力や魔力などを数値化する概念はない。

 なのでパラメーターといっても基礎体力のようなもので、冒険者登録をして一年毎にギルドのトレーニングルームで測定される。

 そのパラメータが越えられないと例え対象モンスターを倒しても昇格出来ないのだ。

 逆にパラメータが下がってしまうとランクも下がってしまう。



 しかし、60~70歳くらいもあろうかというお年でまだ現役とは・・

 延々と続く漫才を聞きながら口元がニヤける。

 重苦しい空気が流れているよりは全然良い。

 ミールはふ~っと深呼吸すると大量の荷物を積み込んだ荷車を引き始めた。



 ドラゴンが飛来した山の麓に小さな村が有り、そこまでは街道が引いてあるため荷車を使って運ぶ事が出来る。

 各部隊に1つ荷車が用意されミール以外の荷車は馬が引いていた。



「いや~わりいわりい。馬が足んなかったわ~。でもお前は戦わないんだがらそれくらい大丈夫だよなぁ?ひひひ」



 赤毛の銀ランク、コイルは楽しそうに謝ってきた。

 嘘つけ、馬なら何頭もお前らが乗ってるじゃねーか!

 と言いたかったが勿論そんなことは口に出さない。



「はい!大丈夫ですっ!頑張ります!」



 こういう輩は弱者が苦しんでる姿を見るのが好きなのだ。

 ニコニコ答えるミールに対してコイルは、チッと舌打ちをしてどこかにいってしまった。



 各部隊に隊長、副官クラス、ランクが高い人などは馬が支給されていた。



「ほらっ!喋ってないで足動かせ!お前らのせいで第六部隊が目を付けられるだろ!」

 隊長さんはご立腹のようだ。

 さっきからずーっと喋っているおじ様おば様連中に・・・ 



 日も暮れ始めた夕方に討伐隊は街道沿いにある宿泊ポイントに到着した。



 街道には多数の冒険者や商人が行き来しているので、休憩や宿泊に使った場所をまた違う冒険者や商人が使っているうちに、自然と宿泊スペースが出来ている箇所が多い。



 最初はカマドだけだったのが、お皿やコップなどが置かれるようになり、今では毛布やテント、暇つぶしの雑誌なども置かれていたりするのでかなり便利なのだ。

 位置的にはザザの村の丁度中間地点くらいにある宿泊ポイントだった。



 各部隊、速やかにテントを設営していく。



「おい!第六部隊っ。テントが一つ足んねーわ。よこせ」

コイルがまたイチャモンをつけにくる。



「え?1,2,3,4,5・・・ちゃんとあるじゃないですか?」

 隊長が反論すると



「ああ?この俺様が他の奴と一緒に寝ろって言ってんのかあ!」



「ひっ。し、失礼しました!どうぞこちらです!」

 隊長はあっさりと引き下がりテントを差し出す。



 背後から第6部隊の冷たい視線を感じたのか

「ん、んんっ。えー、そのーあれだ。お前達はどうせ見張りだしなっテントは使わんだろう。しっかりと役割に励め」

 隊長はそれだけ言うと、そそくさとその場を去って行った。



「ふ~やれやれ。最近の若い連中は年寄りに厳しいのぉ」

「まあ、いいじゃろ。今日は雨どころか風も吹いとらんし、良い陽気じゃ」

「若い頃はよく星を見ながら語り合ったもんじゃなぁ」

「そうじゃそうじゃ。あの頃を思い出して一晩中喋くり倒そうかの」

 と盛り上がるおじ様おば様連中に対して


「あ、私語厳禁な」

 戻ってきたと思ったら冷たい言葉を残してまた去って行く隊長さんであった。



 今日のメニューはカレーライスだ。

 もっともこの世界ではマラーニャという名前だが・・・

 まさに冒険者達のド定番メニューとしてこの世界にも君臨している。おいしいしね。



「あれ?なんか僕がいつも食べてるマラーニャじゃないですね?色が白い。けどめっちゃ美味しいです」


「ふっふっふー。よくぞ気付いた!黄色ちゃん!これぞルチアーニちゃんが試行錯誤の末生み出したホワイトマラーニャでぇーす!」


「へええぇ。それってオリジナルってことですか?凄くコクがあってクリーミーなのにしっかりからさもあってとってもおいしいです!すごいなー」


「何言ってんだ?こりゃサーリア国の家庭料理じゃないかい。嘘つくんじゃないよ」


「なんじゃあ!くそジジイ!あたいの家独自の隠し味、ルルサットの実を入れてるんだよ?!立派なオリジナルじゃないか!そんな事言うなら食べるな!」


「おっとっと。危ない危ない。暴れるならよそでやっとくれや」


「全く・・・ルチアーニ、いつも美味しいご飯をありがとな。愛してるよ」

「あらやだ。ミケルったら・・もう・・・」


「おいおいおい!なに抜け駆けしとるんじゃ!わしだって愛してるぞ!」

「ふざけんな!ワシの方が愛してる!」

「はいはいはい。わかったから早く食べちゃいなさい。黄色ちゃんもおかわりあるからね~」



 一体この人達の関係ってどうなってるんだろう・・・男3人に女1人、結構揉めるタイプの構成だ。

 めっちゃ気になったので恐る恐る質問する。



「あの・・・皆さんの関係って・・・」

「おや?!黄色ちゃん。気になるのー?うふふ。どうしよっかなー」



 満面に笑みを浮かべて悪戯っぽく笑うルチアーニ。



「全員穴兄弟なんじゃよ。わしら全員」

「ロイヤー!下品な言い方はお止し!」


「ぎゃははは!3人全員がルチアーニを愛しちまってな。そりゃあ揉めたもんさ、最初はな」

「揉めたな~誰が一番か競い合ってたもんなぁ」

「もう喧嘩ばっかりでな。こうなったらルチアーニに決めてもらって、外れた者は潔くPTから抜けようって話になったんじゃ」

「うんうん。もうPT壊滅寸前だったねぇ」


「そしたらこのルチアーニはな、全員好きって言ったんじゃ!わしら全員口ぽか~んとしてしまったわい」

「そうじゃそうじゃ。呆気にとられてるワシらを置いて、サッサと服を脱ぎ始めてな。全員と初夜を迎えたんじゃ!」


「ありゃ笑ったなぁ。なんか喧嘩ばかりしとったのが馬鹿らしくなってな。ワシら全員で仲良くルチアーニを愛したんじゃ。ルチアーニも等しくワシらを愛してくれての。ルチアーニの子供は全員の子供。子供のパパはワシら3人。崩れかけていたPTをつなぎ止めてくれて今では本当に感謝してるわい。すっかりババアになっちまったが凄い女なんじゃぞぉ」


「何言ってんだい。わたしゃまだ18だよ」

「ひゃひゃひゃ。ワシかてまだまだ若いもんには負けんわい」



「ですね・・本当に皆さん凄いです」

 ミールは心の底から感嘆の声を上げる。



 なるほど、全員を愛した結果ということか。

 人間にはどうしても独占欲って物があり、様々な場面で邪魔をしてくるが、きっとルチアーニさんがこまめにガス抜きというか、気遣いをみせて上手く調整をしてきたんだろう。



 恐るべしルチアーニばあさん。



 ミールは心の中で尊敬の念を込めながらマラーニャを口に運んでいく。

 夕飯を各々平らげ、皆テントに入っていった。

 おじ様おば様連中も焚き火を囲んで横になっている。



「ほらっ黄色ちゃんもサッサと寝てしまいなっ。明日もずっと荷車押すんだから」

「え?でも見張りは・・・」

「いいのいいの。他の連中に任せとけば。なにせ300人もいるんだ。誰かがなんとかしてくれるさね」

「んだんだ。なにせ高ランクが集まるドラゴン討伐隊じゃ。流石の盗賊達も手を出してこんじゃろうて」



 当然だが、各部隊は結界石を発動している。

 なので注意するべきは、人間達のみなのだが・・・



 確かにロイヤーの言う通り、そこら辺の盗賊など全く相手にならないだろう。

 それもそうだとミールも毛布に包まって横になる。

 心地良い風に吹かれ眠りにつくのに10分もかからなかった。





 翌日、まだ朝もやがかかる大地に小鳥が朝の挨拶を交わしている。

 草木は朝露を身に纏い、歩くと水の中に入っているように一瞬にして足を塗らしてきた。

 辺りはシーンと静まりかえっており、時折スヤスヤと寝息が聞こえてくる。



 しかし、耳を澄ますとどこからか


「ぁ、ぁっ・・・・んっ・・ぁぁ・・」

 と喘ぎ声が微かに風に乗って聞こえてくる。



 場所は・・・第二部隊、ミール達からテントを奪っていったコイルが指揮する部隊だ。

 よくみると一つだけテントが揺れている。



 こう何度も他人の情事を聞かされていると段々と耐性が出来てきたようだ。

 マーキュリー達の時は少しばかり反応してしまった息子も今回はピクリともしない。

 逆に朝からよくやるよと、そのパワフルさを褒めてあげたいくらいだ。

 そういえば、どこかの学者も朝のセックスは健康に良いと言ってたっけ。



 一応本人達は声を抑えているつもりのようだが、早朝の静けさが圧倒的に支配する時間帯だ。どうしても声は響き、他の冒険者達も多数起きてきていた。



 皆、『おいおい、マジかよ』的な反応をしながら揺れているテントを遠巻きに囲んでいる。

 そんなこんなをしていると喘ぎ声も最高潮を迎え、テントは静まりかえっていった。無事に発散できたようだ。



 しばらくすると上半身裸のコイルがテントから出てきた。

 腕を伸ばしたり腰を伸ばしたり、その佇まいからは満足感が溢れている。

 さぞ気持ちよかったのだろう。



 遅れて女も出てきた。黒髪を伸ばした清楚な感じの子だ。

 女の子はコイルの腕に巻き付くと耳元でなにかをささやく。それを聞いたコイルは大声で笑っている。



 同じチームに彼女でもいたのだろう。

 40人って言ってたもんな、そりゃ銀ランクだし1人や2人寄ってくる女もいることでしょう。

 うらやましい・・・

 ミールはふて腐れながら朝食の準備をする。



「てめえ!よくも俺のマリーちゃんを!」

 唐突に大声がしたのでよく見てみると、若い男が剣を構えてコイル達の前に立ちふさがっている。



「はあ?お前何言ってんの??」

 コイルは不機嫌そうに言い返す。



「黙れ!朝起きたらマリーちゃんの寝袋や荷物が荒らされてて、散々探し回ってたらお前のテントから出てきたじゃないか!お前が嫌がるマリーちゃんを誘拐したんだろう!」



「おいおいおい。お前正気か?よく見てみろよ。嫌がってるのか?この女」

「ちっ違う!どうせお前が弱みにつけ込んで脅してるんだろ!騙されないぞ!」

「はっはっは!こいつは面白いなっ。おい。お前からも言ってやれよ」



「あのね・・ポリ。ごめん・・・わ、私コイル様と・・お付き合いする・・ことにしたわ」



「!!!!」

 ポリと呼ばれた若い男は声にならない大声を出す。まさしく絶句というやつである。



 流石にここまで来ると、周りの連中も殆ど起きてきて、なんだなんだ?と事の様子をうかがっている。



「う、嘘だああ!だって・・だってえ!!ずっと一緒だって言ったじゃないか!!?あれは嘘だったのかよ!!」



 しばらくして感情を爆発させる。涙を流しながら。



「おいおいおい。男の嫉妬は醜いぜ。朝からうるせえっての」

「くっ・・・」

 まさに絶望の淵にいる感じか、下を向いて必死に涙を堪えている。



「大体な、荷物が荒らされてたって言ってたけど、それ間違いな。まずそこで1回戦はじめてるから」

「!!!!」

 ポリは絶句している。コイルの言っている事が理解出来ないようだ。



「もう・・・あんなに強引に・・されるの始めてだったから・・・」

「でも嫌じゃなかったろう?」

「うん・・・結構・・好きかも・・・」

「がははははっ」



 そして目の焦点が合っていないポリを見ながら

「全くよお!お前と来たら、彼女が隣で寝取られてるのにグースカと幸せそうにいびきかいて寝てるんだもんなぁ!他の奴らは何人か気付いているやつがいたみたいだけど何も言ってこないしよ!まったくアホで間抜けで腰抜けばかりだな!お前らのPTはっ!がははははっ」



 ここで限界を迎えたのだろう。ポリは叫びながらコイルに斬りかかった。



 遠くてよく見えないがニヤリと笑ったように見えたコイルは蹴りを一発、ポリの腹部に叩き込む。



「ぐふっ」

 ポリは呼吸が止まるほどの一撃を食らってよろめく。



 その瞬間を逃さずにコイルはポリの剣を奪い取り・・・



 グサッ



 ポリの心臓を一突きする。



「きゃああああ!」

 悲鳴を上げるマリーちゃん。



 そんな事はお構いなしに今度は大きく腕を振りかぶって



  ゴスッ



 鈍い音を立てながら一刀両断、ポリの頭が地面に転がる。

 残されたポリの身体から噴水のように血が噴き出す。



「うわあああああ!!」

「うげえええぇえ!」

「ひああああぁぁ!」



 辺りの冒険者一同、悲鳴を上げる。



「ったく。うるせーな。たかが1人死んだくらいでよぉ」



 コイルはポリから奪った剣を投げ捨てながらマリーちゃんの手を掴み

「おし、気を取り直してもう一発すっか?」

 とテントに引っ張っていく。



「い、いやっ!」

 マリーちゃんは反射的に手を払いのけた。



「ひ、人1人を殺したのよ?!な、なんでそんな・・平気な顔をしてるの?!」



「あーん?だからなんだってんだ?言っとくけどあいつが仕掛けてきたんだからな?俺は降りかかる火の粉を振り払っただけだっつーの」



「そ、それでも・・殺すことないじゃないぃ!ひ、酷すぎるわ!」 



 それまではめんどくせーなって感じのどこか抜けた声を出してたコイルだったが、明らかに声質が変わった。



 マリーちゃんの額をガシッと掴みながら

「ああ!?てめえふざけたこと言ってんじゃねーぞ!おい!あいつは剣で斬りかかって来たんだぞ!下手したら俺が死んでるっつーの!そんな相手に手加減なんか出来っか!」



 そしてマリーちゃんを地面に叩きつけて

「もうお前はいい。めんどくせー。失せろ」

 そう言い残すと葉巻きに火を付ける。



 マリーちゃんは土をぎゅっと手で握りながら、唇を噛みしめてどこかに走って行った。

 そのマリーちゃんと入れ違いに、軍団長のヨーダがコイルのもとにやってくる。



「おいおい、お前またなにをやらか・・・し・・・」

 お説教スタートかと思いきや、辺りに充満する血の匂い、血しぶき、首のない死体などを見て固まるヨーダ。



「お、お、お!おまっ、おまっ、お前!!?」

 ヨーダは口をパクパクしながらやっと声を出す。



「ちげーよ。襲われたからやり返しただけ。全員見てたぜ、俺が襲われるところをよ。なー!そうだよなあ!?」

 コイルは大声で周りの同意を促す。しかし全員下を向き視線を逸らした。



 その雰囲気を感じて大体の事を察したヨーダは

「ふう、まあいい。30分後には出発する。お前も準備しておけ・・・」

 ヨーダは副隊長に指示を出すと各部隊に伝令が出る。



「30分後に出発!各自準備をするように!」

 首の無い死体にはシーツが掛けられ、全員荷物をまとめ始めた。



「なんともまあ、酷いもんじゃなぁ」

 シーフのロイヤーがぼそっと呟く。



「ですね・・・」

 ミールもそう呟くと荷物を荷馬車に積み込んだ。



 それにしても・・・



 てっきりヨーダのチームの女かと思っていたが、全く関係ないPTの女だったとは。

 性格にはかなり問題がありそうだが、女の心の隙間と言うのか、そういったのを感じる力は飛び抜けているのかもしれない。



 さっきの話しぶりからしてコイルはレイプまがいの事をして手を出してるらしかったが、それで女を落としてしまうんだから。

 男と女の関係は本当に一言では言い表せないな・・・と、しみじみ思うミールであった。



 30分程経ち全員荷物を積み込み武器を装備する。

 さあ出発という頃になって先頭のヨーダ達のグループに10人程の冒険者達が集まっていた。



「ヨーダ。あんたのPTのコイルが俺たちの仲間を殺したことは間違いないよな?!どう責任を取ってくれるんだ!」 



 どうやらさっきの殺されたPTの仲間のようだ。

 この問いにヨーダの隣にいたコイルは激しく言い返す。



「ああ?あれはあいつから襲ってきたんだぞ?!お前らこそどういうつもりだ!ええおい?!」



「ポリを挑発したのはお前だ!わざとポリをけしかけるような事を言ったんだろ?!それでも銀ランクかよ!」



「しらねーよ!大体そこの女が悪いんだろ?恋人だったんだろ?あいつと。それを裏切って真横で他の男を受け入れるなんて、この女の方が頭オカシイっつーの!」



「お前がなにか洗脳の魔法を使ったんだろ!」



「はあ??そんなもんあるか!ボケ!大体お前らも俺とその女がやってるときに止めに入らなかったじゃねーか!俺を責めるならテメーらも同罪じゃ!アホが!」



 お互いにヒートアップして最早悪口の応酬となってきた感がある。

 そこを手を伸ばして制止するヨーダ。



「ここで言い争っても解決しないでしょう。貴方方の言い分はわかりました。要はコイルの謝罪をお求めですか?」


「はあ!?俺は謝らねーぞっ!」


「コイル。貴方は黙っていなさい。で?どうなんです?」


「謝罪だけじゃ済まない。大切な仲間が殺されたんだからな。この事をギルドや政府に報告する。処罰されてほしい」



「ああ!テメエ!ふざけ・・」

「コイル!!黙りなさい!!」



 ヨーダは強めにコイルを制す。

 ふて腐れながら黙って後ろに下がるコイル。



「なるほど。貴方方の言い分は最もです。ドラゴン討伐はどうしますか?」


「このままあんた方と一緒に行動は出来ない。悪いがこのまま抜けさせて貰うよ。ポリも埋葬したいしな・・・」

「わかりました。では我々はこれで」



 ヨーダは軽く一礼すると

「よしっ全員出発!!」

 ヨーダは大声で呼びかける。



 その声を合図に各部隊長は指示を出す。

「しゅっぱーつ!」

「出発だー!」



 意気揚々と進む討伐隊とは正反対の方向に進むマリーちゃんのPTはポリの亡骸を背中に担いで歩いて行く。

 討伐隊とは対照的にその姿はまるで行く当ても無く彷徨っている難民のようだった。




 1時間ほど進んだだろうか?

 進軍にも飽きてきたのか、コイルは部隊の指揮を副官に任せて、ヨーダ達のいる第一部隊に馬を走らせる。



「ようよう。ヨーダさんよぉ。あいつらをそのまま行かせて良かったのかよ?」

「しょうがないでしょう。あの場でごねても揉めるだけですから」


「でもよお。報告されたらめんどーじゃねーか?」


「ふっ。大丈夫ですよ。政府に報告されても追い返されるだけです。タウンチームの我らを本気で裁けるとでも思ってるのでしょうかね」



 タウンチームとは各街ごとに登録された筆頭となるPTの事だ。

 街に問題が生じた場合は率先して解決に動く事が義務付けされるが、その代わりクエストや税金、支援などでかなり優遇される。

 大きな街ほどその影響力は強く、政府にも意見できる程だ。

 ヨーダ達はガウディの治療で滞在したマルリの街より、更に西に行った先にあるコートピアという街のタウンチームで結構有名なPTらしい(ミールは知らなかったが・・)



「まあ確かにそうだろうけどよぉ。あのアーニャって領主代理のギルドに報告されたらまずくないか?あいつらがあること無いこと噂を広めたら、折角ドラゴン討伐してもその栄光が霞むんじゃねーの?」



「ふむ・・・」

 しばらく考え込むヨーダ。



「確かにお前の言う通りかもしれんな。コートピア政府やギルドからなにか言われる事は無いだろうが、民衆が我らの悪評に騙されるのはよろしくない。噂というものは中々消えるものでも無いし、そんなくだらない噂に振り回されるのも時間の無駄というものか・・・」



 またしばらく黙り込むヨーダ。



 そして・・・



「ルック、ピアーズ!」



 ヨーダは名前を呼ぶ。その名前を聞いただけでコイルは全てを察したかのようにニヤリと笑う。



「へいっお呼びですか!?兄貴」

 正に凸凹コンビといった感じの2人がヨーダの前に現れた。



 1人は小柄な男で身長と同じくらいの長く赤い髪を上に立てている。

 どういうヘアスプレーを使っているんだろう?と思ってしまうような感じだ。



 もう1人は大柄な男で丸坊主に無精髭を生やしている。

 プロレスラーのような感じだ。



 ヨーダはこの2人になにやらボソボソと指示を伝える。

「わかりやした!」

 小柄な男は一声そういうと2人は馬を逆方向に走らせ部隊から離れていく。



 第一部隊の連中は殆どがヨーダのチームで形成されているので、この2人が呼ばれた時点で、どういう指示が出るのか想像できており皆下を向いている。

 他の部隊の連中もヨーダの部隊から離れて行く2人を見て、どういう事をしにいくのか察する冒険者も多数いた。



 ミールやおじ様おば様連中も離れていく2人を見て

「やれやれ。可哀想になぁ・・・」

「すまんのぉ。我らに力が無くて・・・」

 と涙がこぼれ落ちるのを上を向いて耐えている。



 あの2人の行き先は?

 そう、始末しに行ったのだ。


 あの冒険者達を・・



 そしてミールはこの光景を見て、同時に討伐隊の変化を感じ取っていた。

 いつの間にかパワーバランスがヨーダに集まりすぎている。



 ギルドで集まっていた頃はまだヨーダ達に意見を言うPTも多かったが、次第に関わると自分達も危ない、なるべく目立たないようになどの思考が占めるようになっている。

 それが今回の一件で浮き彫りになったように思えた。



 誰も反発しない、イエスマンのみのPT。

 こういう独裁的なパワーバランスになると、通常ではあり得ないような事を平気で起こすようになっていくものだ。



 そしてミールの予感は的中して、後に事件が起ることになる・・・




「みんな本当にごめん・・」

 マリーは同じ言葉を数分置きに言っている。



「マリーさん。何度目ですか?もう言わない約束ですよ」

「でも・・・」



「何度謝られてもポリは帰って来ませんし、我々としてもどうすることもできません。確かに不本意ですがあのコイルの言う通り、我々も貴方達の行為を止めることが出来なかった。止めていればこのようなことにはならなかったのかもしれません・・・なので我々にも責任があります」



「俺はそうは思わないぜ!やっぱり普通じゃねーよ!マリーは!始めて会ったやつに襲われてんのに受け入れるなんてよ!しかも彼氏がいるのにだぜ??」



「うう・・・」



 責められてうなだれるマリー。

 ずっと泣いているのであろう、目を腫らして頬には涙の後がくっきりと刻まれており顔全体は高揚している。



「確かに僕もちょっと不思議なんですけど、マリーさんってポリさんの事が不満だったとかあるんですか?結構仲良さそうに見えてたので・・・」



「ああ、俺もそう思ったな。実は結構冷めてたとか?」



「う、ううん。・・全然、・・・そんなこと・・無かった・・好きだ・・た・・」

 マリーはしゃがれた声で答える。



「じゃあなんで?」

 当然みんなこう尋ねる。



「よく・・わかんない・・なんか頭がぼーっとして・・気付くと・・他のこと考えられなくなって・・ただただ・・欲望だけが・・どんどん沸いてきて・・・」



 ポツリポツリとマリーは唇を噛みしめながら答える。



「これってあれじゃないですか?よく分からないですけど魔法とか?」



「ああ。俺もそう思った。あいつは否定してたがやっぱりあるんだよ、洗脳の魔法が。もしくはそれに準ずる力をもったなにかが」



「くそっ!俺たちのPTをオモチャにしやがって。許せねえ!」



「まずはアーニャ様にお伝えしましょう。相手はタウンチームです。下手したら、もみ消されてしまいます。然るのちに自白魔法をかけてもらえるようにお願いしましょう」



「なるほどな。いかにタウンチームとはいえ自白魔法で全てを明らかにしたら逃れられないしな。おしっそれで行こうぜ」



 マリーを含め9人の冒険者は一同に頷く。



 風に乗って甘い香りが鼻先をかすめる。

 その匂いに混じって唐突にその声はした。



「それは困るなぁ~いっひっひっひ」



 びっくりして振り向くと、そこには覆面をした男が2人、馬に乗って冒険者達を見下ろしている。

 一斉に距離を取る冒険者達、しかし動揺は隠せない。



「ば、ばかな!いつの間に近づいたのだ?!」

「ステータス見てみろ!暗殺者だ!暗殺者の特技だ!」

「銀ランクだぞ!注意しろ!」



 口々に警戒の声を出す。



 通常フィールドで会った冒険者同士は警戒はするが挨拶を交わしたり、もしくは軽く会釈をしながらそのまま無言で通り過ぎたりと、表だって敵対行為はしない。



 しかしこの場面では誰も穏便に・・などとは考えてない。



 直感で感じるのだ。自分達を殺しに来たのだと・・・



 全員武器を構え臨戦態勢に入る。



「プリッツ!ロイ!援護魔法を!ダインはデカいのを足止めしてくれ!他の全員で小さい方を集中攻撃!!」



 リーダーが全員に指示を出す。瞬時に理解をして行動に移す冒険者達。



「ひゃひゃっひゃっ!寄って集って酷いじゃねーか!ほいっほいっと」

 小柄な男ルックは笑いながら足取り軽く、剣や斧の攻撃をかわしていく。



「くっ」

 あきらかに実力に違いがあるように見える。



 マリーちゃん達冒険者は黒ランク。そしてこの暗殺者達は銀ランクだ。

 通説として冒険者ランクには黒ランクから大きな壁があると言われている。

 大抵は紫までなら楽に上がれるのだが、黒、そして銀ランクは一気に難易度が上がるのだ。

 なので、この2組は1つしかランクに違いはないが、見た目以上に実力には差があるようだ。



「諦めるな!囲め!囲め!」

「うりゃおー!」

「てやあー!」



 次々と攻撃を繰り出すが全く当たらない。

 しかし、これだけ実力が違うのに暗殺者2人が冒険者達を攻撃する兆しは無い。



「ひひひっひっ。そろそろかぁ?」

 小柄な男ルックがそういうと明らかに冒険者達の動きが鈍く変わっていった。



「う、うごけん・・・」

「うそ、マヒ・・?」

「い、いつの間に・・」



 バタバタと地面に倒れていく冒険者達。



「ぎゃはははっ!俺たちが現れた時、甘い匂いがしなかったかぁ?それが俺様特製しびれガスよ!マヒするのは身体機能のみっ、喋れるけど動けない。この絶望を知りな!ひゃひゃひゃ」



「なんだと・・?なぜお前達は平気なんだ!」



「がはは。お馬鹿さん。」

 そういうと2人は覆面を取る。



「この覆面が防いでくれてるんだよーん」



「ぐ・・無念」

「さっさと殺せぇ!辱めは受けん!」

「うう、そんな・・お母さん・・ごめんなさい」

「嫌だああ。死にたくねぇぇ!」

 口々に最後の言葉を口にする。



「ばああかああ。ドラゴン討伐で登録してるヤツをここで殺したらバレるだろうが!」

「だなだな。俺らは楽しむために来たんだからよ」



「楽しむだと・・?」

 にまぁっと笑顔を浮かべ2人はマリーに顔を向けた。



「ひっ。い、嫌っ!」



 マリーの顔に絶望が浮かぶ。

 2人はマリーの足をガバッと開かせ、手を容赦なく突っ込んだ。



「あひゃんっ」

 思わず声を上げてしまうマリー。



「ひゃひゃっひゃっ。なんだよこれ?びしょびしょじゃねーかよっ!」

「ぐわっははは。予想通りコイルのやつ魔媚薬を使ってやがる。しかもこの反応。かなりの上物の魔媚薬じゃねーか。」

「ええ?どうだい?身体全身が性感帯のようだろう?ひっひっひ。ずっと我慢してたのかい?偉いねぇ」



 そうなのだ。マリーの顔が高揚してたのも、言葉が途切れ途切れだったのも、燃えるように熱く火照った身体を我慢しての事だったのだ。



「な、何だと??ま、魔媚薬とはなんだっ!それは何だ!」

「ひゃっひゃっひゃ。お前達が知った所でどーにもならん。そこで見てなっ!ひっひっひ」

「いや、離して!」

「ひゃひゃっ、こんなにびしょびしょにしててよく言うぜ。ほら、欲しがってるのはコレだろ?!」

「あぎゃあん!」

「おおお。こりゃ気持ちいいぞ!名器じゃねえか!さすがコイルさんだぜ!」

「はやく変われよ!」


「お前はあっちの女でとりあえず我慢しとけって。すぐ交代するから」

「うん?そうかそうか。もう1人いたか。おしおし」

 そういうと魔法使いの女の方に向かって歩いて行く。



「ぎゃああ!やめて!来ないで!」

 女魔法使いの手から無数の火の玉が出現するが、身体が痺れている影響か全く見当違いの場所に向かって発射されていく。



「てめええ!ふざけんなあ!やめろおお!」

「くそっ!くそっ!」

 冒険者の1人が必死に手を耳に当てようと試みる・・・が、全く動かせないようだ。



 何故耳に手を当てようとしてるかですって?

 失礼。説明不足でしたね。



 この世界では魔力で様々なことが行える。以前はステータス。そしてちょっと前に通話を紹介させてもらった。



 この通話が少し特殊なのだ。

 どう特殊かというと、大抵は魔力とイメージ力で魔法は発動する。

 しかし、中には特定の動作も必要になってくる魔法があるのだ。



 代表的なのがこの通話。これには魔力と相手のイメージ、そして『耳に手を当てる』という動作が必要になってくる。



 他にもマーカーと呼ばれている者達が使う、相手の情報を追跡できる魔法は、腕を交差して、まるでピストルを撃つかのような動作が必要だったり。



 奇術師が使う幻惑を見せる魔法は、両手を上に掲げる動作が必要だったり。



 相手の状態だったり、心だったりに直接作用するには特定の動作が必要なんだと学者達は言っているが、何故必要なのか詳しい事はわかっていない。



 なのでこの冒険者は通話をかけて助けを求める、もしくはこの黒ランクを通報しようと試みたのであったが、結局できなかったという訳だ。



「ぐふふ。無駄無駄。一週間は動けないマヒガスだ。まあおとなしくそこで見とけって」

 大柄な男ピアーズは泣き叫ぶ女魔法使いの腕をガシッと掴んで欲望をぶち込んでいく。



「・・・・・!」

 女魔法使いは無言で耐えている。



「おおお。こいつもなかなかだぞ。ルック」

「そうかそうか。良かったじゃねえか。やべえ、腰止まんねー」

「うおおお!出る!」



 欲望を全て女に流し込むと

「ふ~気持ちよかったぁ。よし、交代交代」

「げへへ。たまんねーな。おい」



 しばらくこの2人の陵辱は続き、マリーは完全に精神が崩壊したようで、奇声を上げて、いきまくっている。

 女魔法使いは無言で、ただただこの悪夢が早く終わることを祈っている。 

 他の冒険者達は目を閉じ心を閉ざし、どうすることも出来ない自分達を責めている。



「ふうう。満足満足。だいぶ囲まれてきたし、そろそろ撤収するか」

「ぐふふ。りょーかい」



 2人は馬に乗るとその場を離れていった。



「た、助かったのか・・?」

「違う!よくみろ!バウンドウルフだ。囲まれている」

「な・・んだと・・どうするってんだ?」

「くそっ!神様あ!聖女様ぁ!どうかお助けをおおぉぉ!」

「動け!うごけ!俺の身体!」

「いやだあああぁ!死にたくない!死にたくない!誰かぁ!誰か助けてぇ!!」



 段々と距離を近づけるバウンドウルフ達。

 低い姿勢で足音を立てずに忍び寄ってくる。



 こうしてまたこの世界から一つのPTが姿を消したのであった・・・



     続く

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