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ドラゴン討伐隊③

 ピコルはニコッと笑顔を返すが、すぐに次の冒険者の相手をする。

 よしよし。約束は守っているな。

 頭をポリポリかきながらギルドを出て行くミールであった。



 ⇨ドラゴン討伐隊③




 それからカルカ村に配達に行き、そのまま一泊。ガタリヤに帰ってきたのは街灯に火が灯ってきた夜になった頃だ。



 そのまま報酬を貰いにギルドに入ると、明らかにいつもと様子が違った。



 今はドラゴン討伐目当てで来ていた冒険者が手持ち無沙汰となり、ギルドで暇を持て余しているので、人数はいつもより圧倒的に多いのであるが勿論そういう事では無い。



 職員達の様子が違う。



 カウンターの奥でギルド長のザクトーニは盛んに誰かと通話しているし、その近くでピコルや他の職員が集まり深刻そうな顔をして、なにかを話し込んでいる。



「よおよお!なにかあったのかぁ!」

 誰かが職員達に声をかける。



 しかし・・・



「しょ、少々お待ち下さい・・・」

 と引きつった笑顔でそれだけを言い、ギルド長の通話が終わるのを待っている。



 流石に他の皆さんも様子が変なことに気付いてきたのか、全員がギルド職員達の案内を待っていた。



 しばらくして・・・



 通話を終えたギルド長が皆の前に立ち、しっかりとした口調で話し始める




「ドラゴン討伐にむかっていたキーンの討伐隊が先程全滅しました」 




 ざわめき出すギルド内。



「確かなのか?!」

「全員か?!」

「信じられん・・・」



 飛び交う言葉を手で制止させ

「間違いございません。全員登録しておりましたので。先程1時間くらい前に反応が消失いたしました」



「・・・・・・」

 全員が沈黙する。



「き、キーンの兵士達は・・どれくらいの強さなんだ?!」

「そ、そうだ!基準がわからねーよ!」

「雑魚兵士だったかもしれねーしなっ!」


「いやいや!準聖都キーンの討伐隊だぞ!?雑魚兵士なわけないだろ!かなりの実力者だったはずだ!」


「でも所詮は兵士だろ?俺らとは実力が違いすぎなんじゃねーの?!」

「いやいや!兵士でも強いやつは多いぜ?!」

「でもよー!」



 このドラゴンは手に負えないほど強いのか、それともそこそこ戦えるほどの強さなのか。

 唐突に突きつけられた全滅という言葉に、右往左往してしまう冒険者達。



「これってさー。特別クエストだからモニタリングとかしてるよな?どんくらいダメージ与えたとか、全滅するまでどんくらい時間かかったとか、そーゆー情報はないの?」



「おおっ!そうだそうだ!」

「なんか情報あるだろ?!」

「ダメージはどれくらい与えたんだ?!」



 ギルド長は深く頷き

「確かにおっしゃる通り本日は常時モニタリングしておりました。ですが、残念ながらキーンの討伐隊がドラゴンに与えたダメージは確認されておりません」



「は?・・・どゆこと?」

「なんもできなかったって事??」



「分かりません。ギルドから言えることは、登録した30名の中でダメージを与えた者はいなかったという事のみでございます」



「・・・」

 再び沈黙する冒険者達。



「ち、ちなみにさ・・・アイツらって・・・どれくらいで反応が消失したんだ?結構粘ってた感じ?・・・」



 ギルド長は深く頷き、芯の通った声で答える。



「一瞬です」



「はあ??!!嘘だろ!」



 騒ぎ出す冒険者達を遮り、ハッキリと大きな声で

「本日は確実にずっとモニタリングしておりました。断言できます。一瞬です。一瞬で30名の討伐隊の反応が全て消失しました」



 ・・・・・・・・



 三度、静寂がギルドを支配する。



 その沈黙を破ってギルド長が

「冒険者の皆様。当初予定していた通り、ガタリヤギルドは皆様に特別クエストを発注致します。報酬は300万グルド!さあ!列にお並びになり順番にご登録をお願いします」



 しかし前回と違って誰もよっしゃー!とは叫ばないし、並ばない。



「いあいや!これ無理でしょ?!」

「300万じゃ割に合わねーよ!」

「ぜってー死ぬじゃん!俺降りるわ!」



 口々に叫ぶ冒険者達。

 完全に収拾がつかなくなったギルドは怒号と悲鳴に溢れていた。

 そんな中、唐突にその人は現れた。



  バタン!



 ドアが勢いよく開き、全員が注目する。



 入り口からは白銀の鎧に身を包んだ衛兵が左右に分かれひざまずく。

 そしてその中央からコツコツっとしっかりとした足取りで進んでくる女性。



 全身を白を基調とした礼服で身を包んでおり、所々であしらわれた赤い刺繍が凛とした雰囲気を醸し出していた。

 肌は透き通るような白さで神々しささえ感じる。

 髪はピンク色、綺麗なストレートヘアを後ろで束ねており、瞳は透き通ったグリーンアイ、見る者全てを引き込んでいた。



「冒険者の皆様。わたくしは領主代理のアーニャ・イウ・スローベンと申します。唐突に皆様の場所に押しかけてしまいました事、まずはお詫び致します」 



 さほど大きな音量は出していないのだが、ギルドの一番奥までハッキリと聞こえるような透き通った、芯の強い声で話し始める。 



「3日前ですが特別クエストの為にわざわざ冒険者の皆様が集まって頂いたにも関わらず、わたくしの力が及ばずにクエストを横取りされた形となってしまった事、重ねてお詫び致します。皆様もご存知の通り、先程キーンの討伐隊の方々が消息を絶ちました。恐らく今回飛来したドラゴンは巨龍、もしくは古代龍である可能性が限りなく高いと思われます。太古の昔より巨龍、古代龍の飛来した土地は甚大な被害が出た記録が数多く確認されてきました。このままではガタリヤは壊滅的な被害が出てしまうでしょう。しかしガタリヤは大規模な軍をもちません。それは私の叔父、デトリアス・イウ・スローベンがなにより冒険者の皆様中心の街づくりを信念にしていたからです。この世界は冒険者を中心に考えねばならん、決して己の欲で政治中心にするなかれ。叔父がよく言っていた言葉です。皆さんご存知の通りこの町の序列は最下位です。しかし住民や冒険者の皆様の誇りや信念、絆や心意気はどこの町にも負けていないと私は信じています。私はこの町が大好きです。守りたいです。しかし皆さんに討伐に参加して下さいと無責任な事も言えません。今回飛来したドラゴンは非常に危険です。挑めば沢山の人が命を落とすことでしょう。ではこのままドラゴンが過ぎ去るのを息を潜めて待つことがいいでしょうか?背中を向けてこの街を捨てて逃げた方がいいでしょうか?皆さんのご家族を、友達を、仲間を、失ったときに運が悪かったと諦めることができるでしょうか?私は諦める事は出来ません。序列は最下位でも誇りまでは卑屈になりたくない。私は信じています、時としてその誇りは誰にも断ち切れない絆となることを。私は信じています、冒険者様達の無限の可能性を。どうか皆様。私たちの街を救って頂けないでしょうか。何卒宜しくお願い致します」



 領主代理のアーニャは深々と頭を下げる。

 シーンとギルド内はまるで誰もいないのではないかと思ってしまうほどの沈黙が訪れた。



  ガタッ



 どこかのPTの年配の戦士風の男が無言で椅子から立ち上がり、受付まで歩いて行く。


 アーニャの方をチラっと見て

「この老骨の命で良ければ喜んで捧げよう」

 そう言うと登録を済ませる。



「ありがとう・・・ごさいます・・」

 アーニャは涙をみせながら声を絞り出す。



「まったく。まーた勝手に動きよるからに。少しはわしらに相談してからにせいとあれほど言っとるやろが」

「やれやれ。遂にわしらの最後の冒険になりそうじゃの。ひっひっひ」

「なにを言うとるか!ワシはまだまだ死なんぞ。ドラゴンなんかにやられたりはせんわ!」

「この前オークの集団に苦戦しとったくせによく言うわい。ひゃっひゃっひゃ」



 同じPTなんだろう。

 頭も白くなっているご年配の皆様が、後に続き登録を済ませる。



 ガタッガタッ



 それを見て何組かの冒険者達も椅子から立ち上がり登録していく。



 しかし・・全員で15名前後、これから特別クエストとしてドラゴン討伐に向かうにしては余りにも少ない。



 領主代理のアーニャは唇を噛みしめて拳をぎゅっと握る。

 その表情からは悔しさがにじみ出ていた。



「ちょっといいですかぁ?」



 奥に座っていた銀色の長髪の男が手を上げた。

 男はツカツカと領主代理アーニャの前まで歩いて行く。



「おお、あいつがいたのか・・・」

「あれが噂の・・・」

 ヒソヒソと周りから声が聞こえる。



 ミールは知らないが、どうやらちょっと有名な人らしい。



「あの~僕たち外部から来た冒険者は誇りとか信念とか言われてもピンと来ないんですよ。街を救うために命を投げ出せとか言われてもねぇ。やっぱり冒険者は報酬を貰ってナンボでしょ?その報酬がオイシイと思ったら参加するし、見合わないと思ったら参加しない。これが僕らのやり方です。僕らは報酬300万ではやる価値が無いと判断してます。そこら辺は領主代理様はどうお考えでしょうか?」



 言い方はあれだが正論だ。



 周りからは

「そうだ!そうだ!」

「上乗せしろ!」

 といった声が多数上がっている。



 ミールもどちらかというと他人が死のうがどうでも良いと考えてる方なので、心の中で『いいぞぉ!頑張れ~』と応援した。



 アーニャはうなずき

「わかりました。では報酬を上乗せさせて頂きます。まずドラゴンを見事に討伐された場合、全員に1人300万グルドお支払いします」



「おおおおお?!」

 冒険者達の歓声が上がる。



 ほとんどの討伐クエストは、1人いくら?ではなくPT単位で支払われる。

 しかし、大抵の討伐クエストは自分達が受注したら、他のPTは受けれないようにするので問題は起こらない。



 だが、ドラゴン討伐などの特別クエストは大規模PTで討伐に向かうのが一般的。

 そして、報酬は一番討伐に貢献したPTに支払われるので、参加して無報酬ってのもよくある事だからだ。



 大抵は一番のPTが、貰った報酬の一部を山分けで全員に配ったりするので、完全な無報酬になるケースは殆ど無いのだが・・・



 山分けの金額は報酬を貰ったPTによって決められるので、下手をするとお使いクエストの方が儲かるんじゃないかって程、少ないときもある。 



 まあ、ドラゴン討伐の場合は素材も高値で売買される。



 例えば、ウロコ一枚でもウン十万グルド程で売ることができるので、収支は大幅なプラスで終えることが出来るが、やはりギルドからの報酬も貰えるなら貰っておきたいってのが本音だ。  



 なので最初から固定で全員に高報酬が決まっているのは、冒険者にとっては、めちゃくちゃ有り難いのだ。



 

「アーニャ様!流石にそれはやり過ぎなのでは?!」

 アーニャの隣にいた側近と思われるお爺さんがいさめようとするが



「冒険者の皆様は命を賭けて戦って下さるのです。これくらいは当然です」



「しかし財源がありませんぞ!どうなさるおつもりですか?!」

「スローベン家の私財を使います。お爺様もきっと分かって下さいます」

「ぐむむ~」



「冒険者の皆様。大変失礼致しました。引き続き報酬のお話をさせて頂きます。先程の全員に300万グルドとは別で、討伐に一番多く貢献したPTに500万グルド」



「おおおおおお!!」



「個人火力一位、最後のトドメを刺した方にもそれぞれ100万グルドご用意致します。また、このクエストにおいて外部受注の税金は免除と致します」




「おおおおおおおおおおおお!!」




「討伐したドラゴンの素材はどうなりますか?」

 銀髪の男が再度質問する。



「それは勿論皆様の物でございます。巨龍、古代龍でしたら素材もかなりの高額になることでしょう。当然皆様で分配して下さい。ギルドに一切納品する必要はございません」





「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」





「ただし・・」



 ここでアーニャは言葉を句切り、皆を見渡しながら

「報酬の支払いは冒険者規律に沿ってお支払いとさせて頂きます」



「ふむ。なるほどね」

 銀髪の男はうなずく。



 冒険者規律とは色々なルールを定めた指南書のような物だ。

 この場合、『討伐報酬は生き残った者にのみ支払われる』という条項が適用されることを意味している。

 要は10人PTだった場合、5人死亡しても討伐に参加したのは10人だがら10人分の報酬を生き残った5人に支払って下さいって事は駄目ですよって条項だ。

 あくまで5人生き残ったのであれば5人分のみ支払われる。



「良いでしょう。十分に私は参加する価値があると判断します。我々のチーム40名、特別クエストに参加しましょう」

「おし!俺たちも参加するぜ!」

「私たちもやるわ!」

「よっしゃあ!気合い入ってきたぜええ!!」



 次々と参加の意向を示し登録していく。

 総勢300名前後、アーニャの周りを取り囲んだ。

 アーニャは頬を少し高揚させながら1人1人の顔を見る。



「では皆さん、記録では巨龍や古代龍は卵を産んでから20日程で孵化すると言われています。そして食料・・つまり私たちを襲い始めると。余り時間がありません。明日の日の出と共に出発願います。皆様、ご武運を!」



「おおう!」

 冒険者達の頼もしい言葉を聞き、領主代理様は深々とお辞儀をしたのち、ギルドを後にした。




「では皆さん、ちょっといいでしょうか?これだけ大人数になると指揮する人間が必要じゃないかと思うんですが?」

「確かにな」

「異議なし」


「そうですか、では各チームリーダーはこちらに来て人数とランクを教えて頂けますか?そのままリーダー同士で指揮系統を設立しましょう。申し遅れましたが私はコートピアから来ましたヨーダといいます。宜しくお願いします」



 銀髪の男が中心となって隊を作っていく。

 40名のチームのリーダーをしているらしく名前もそこそこ有名なようだ。

 周りの・・・特にガタリヤ所属のチーム達は萎縮しているようで存在感はまるで無い。



 現にこのヨーダと同じPTに赤毛の男がいるのだが・・・さっきから全く会話に入ってこないで、ずっと椅子と椅子を6つ程並べて横になって寝ている。



 このギルドは立った状態の人間だったら1000人くらいは収容出来るスペースがあるので、合計300人ほどいる討伐希望者も余裕で収容できている。



 とはいえ全員入り口のカウンター付近に集まっているので、この状況では流石にちょと狭い。

 なのにこの男は図々しくも椅子を6つも並べて偉そうに寝ている。

 周りは迷惑そうにしているが、なにも言えないらしい。



 今回参加する冒険者達はほとんどが紫や黒ランク。

 そして銀髪の男のチームは、赤毛の男を含めて半数近くが銀ランクらしい。

 一般的なドラゴン討伐としては頭数は揃っていると言って良いようだ。



 ミールはこれだけ参加人数が多いと流石にスキル持ちの事がバレるので、全く参加する気はない。

 成り行きで事の顛末(てんまつ)を見届けていたが、それも終わったので帰り支度をしている。

 そこにピコルからの通話がきた。



「ミールさああんっ!もしかして参加しないんですかあっ?」

「当たり前だろ。バレるって普通に」


「でもっでもっ!ミールさんが行かないと倒せるか不安じゃないですか!ギルド長もミールさんには是非参加して欲しいって言ってますっ!」


「いやいや、普通に黄色ランクが混じってたらおかしいって」

「そこはその・・荷物持ちとかっ??」

「ヤダ、疲れる」

「そこは・・・ファイトですっ♪!」


「おまえな~・・荷物持ちだけなら未だしも、今回は参加した者全員に報酬が出るんだ。絶対に何にも戦いに貢献出来ないのに報酬目当てで参加しやがってってイチャモン付けてくる奴や虐げてくる奴とかいるぞ?そういう奴らの機嫌を損ねたら下手したら俺に殺意を向けてくるかもしれないんだぜ?それを回避する為にずっとキャラ作ったまま演じないといけない俺の身にもなってくれ。めっちゃシンドイって」



「私、ミールさんのキャラ作り好きですっ!」

「・・・・」



 ピコル曰く、普段素っ気ないミールがハキハキと答えている姿は萌えポイントなんだそうだ。

 一方的に通話を切ったミール、そそくさとギルドから出て行こうとする。




「ミールさああんっ!登録はこっちですよおっ!」




 ピコルが馬鹿でかい声で叫ぶ。



 おいおい、嘘だろ、強引に登録させるつもりか?



 流石のミールもたじろいでいると


「ぎゃはははっ!配達将軍が何しに行くんだ?!」

「ドラゴンに自分自身を配達ですかああ??」

「ピコルちゃん。黄色が参加するのは流石に可哀想だって!」


 予想通りめちゃくちゃ笑われるミール。



「ミールさんっ。前にドラゴン見てみたいって言ってたじゃないですか??荷物持ちで参加して遠くから見てれば良いんですっ。皆さん、いいですよね?」



「まあ、ピコルちゃんがそう言うなら・・」

「確かに荷物持ちはいた方がいいしな・・」

「ピコルちゃんの優しさに感謝しろよな!黄色!」



 ここまで言われて、やっぱ止めときますとは言えず。

 罵声の中をトボトボとピコルの方に歩いて行くミール。



 おのれ・・ピコルめええ!その瞳には憎悪がメラメラと燃えていた。



「はいっ登録完了ですっ!頑張って下さいっ」

 めっちゃ笑顔のピコルに見送られ、ため息をつきながらギルドを出て行こうとするミール。



「なに?黄色ランク??」

 銀髪の男ヨーダはそんなミールに向かって歩いて行く。

 その目は汚い者でも見るような不快感に溢れていた。



「はあ。やれやれ。これだからお調子者がいると困るのだよ。報酬目当てで参加できるほど甘くはない。黄色ランクが出てくる場所じゃないんですよ?」



「あ、すみません!もちろん報酬はいりませんっ!皆さんの戦いを見て勉強させて頂きたいです!荷物持ち頑張ります!よろしくお願いします!」



「ひょわへぇぇ~!」



 遠くの受付からピコルの感嘆の声が聞こえる。

 目を向けると頬を赤らめ鼻を膨らませている。

 ミールの猫かぶりに興奮しているようだ・・・



 ミールはピコルをジト目で睨み付けていると、その間もくどくどと説教していたヨーダだったが、ミールに釣られて思わずピコルの方を見る。

 すると、ミールのお説教をピタッと止めて、ツカツカとピコルに向かって歩いて行った。



 さっきとはうって変わってキラキラした目でピコルに話しかけるヨーダ。



「いけない。君みたいな美しい女性がこんなクズを視界に入れるとは。君はこれからは僕だけを見るんだ。いいね?」

「えっっと・・そんな私なんて釣り合いがとれませんわっ」


「確かに高貴な僕とでは君の存在が霞んでしまうだろう。でも美しい者を常に愛でていれば君も僕のようになれるよっ。いいね?」

「あ・・・の・・ありがとうございますっ・・・」


「では、今日はどこに泊まっているのかな?僕の部屋においでよ。必ず満足させてあげよう」

「えっ?そんな・・私なんて駄目ですよぉ。あははっ」



 そんなやり取りを笑顔でするピコル。

 よく見ると首筋から汗がにじみ出ている。

 ぎゅっとピコルの手を握り、自信過剰に口説き続けているヨーダは、勿論そんなことは気付かない。



 ピコルはピコルで色々と大変なんだな・・・今度ベットで優しくしてあげよう。

 ミールは心の中でピコルを応援しつつギルドを出て行くのであった。



        続く

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