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スライムには負けるけど魔王には勝ちます  作者: すふぃ~だ


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聖女巡礼㉑

「みんな!離れるよ!」

 リリフの呼びかけで全員必死に、立ち上がることもままならないので、手をつき、這って距離をとる。


 そしてミールの周りにはゆっくりと・・・ゆっくりと・・・黄金の光が炎のように揺らめき伸びていくのであった。



⇨聖女巡礼㉑




「やったああああああああああぁぁああぁああ!」

「いやっほおおおおぉぉぉおおぉおおいいいい!」

「すげえええええぇぇ!!」

「黒焦げだああぁぁあ!!」

「勝ったああぁああぁあぁあああ!!」



 歓喜の声を上げる人々。

 フェリスの魔法により黒焦げになった邪神をみて、魔法画面機の前で応援していた住民達も喜びあう。



「だめ・・・」

 フェリスが小さい声で呟く。



「フェリス様??」


「ダメよ・・・私の滅焔は失敗した・・・最終段階の滅びの炎・・・全てを収束して無に還す炎が出現してない・・・まだ終わってないわ・・・気を・・・つけ・・・て・・」



 フェリスは魔力を使いすぎ、気絶してしまう。



「フェリス様!」

 ゼノはフェリスを抱きかかえると直ぐに周りに注意を呼びかける。




「まだですうううぅぅ!!まだ倒せてないですううううう!!注意してくださあぁいいい!!!」




 ゼノの絶叫に人々は泣きそうな声を上げる。




「そ、そんな・・・」

「まだダメなの?・・・」



 アーニャもまた、必死に自分を鼓舞する。

「皆さん!あと少しです!希望を胸に!勇気を糧に!」



「あ、あれをみてっ!」

 住民が指差す方向をアーニャも見る。



 そこには邪神の足元で光に包まれている青年がいた。



 その黄金の光はゆっくりと揺らめいていて、まるで焚き火のようだ。

 その光は段々と大きくなり、今や大きな翼のように羽ばたきをしているかのようだった。



 全員がその光に魅入られ、自然と希望を託す。




「グワオオオオオオン!!・・・・」




 黒焦げの邪神が咆哮を上げ、パラパラと炭になった皮膚が下に落ちる。

 確かにかなりのダメージは受けているようで、自動治癒機能のスキルも追いついていないようだ。

 湯気のような蒸気は出ているものの、ボコボコと再生はされていない。



 そして邪神はフラフラと身体を揺らしており、今だ焦点がハッキリしていない感がある。

 頭を振り、なんとか正気を取り戻そうとしているようだ。



 やがて身体のみぞおち辺りの皮膚がパリッと剥がれる。

 そこからあの『脈打つ瞳』が出現した。



 その瞳はギョロっとミールを見る。




 光を纏っているミールを・・・





「全員突撃ぃーーーーぃーーー!!」




 アーニャの絶叫が響き渡る。





「うおおおお!!」

「あの兄ちゃんを守れえええぇぇえ!!!」

「させるかあああああぁぁ!」


 東門にいた全員がその瞬間飛び出した。



 絶対に届かない。

 今更走っても手遅れだ。

 距離は800メートルくらいある。

 邪神は腕を振り下ろすだけ。

 絶対に無理だ。



 そんな考えをしている者は1人もいない。



 アーニャもトール隊長も、ルイーダも専属記者も、一切出演していないがずっと側にいたクリルプリス隊もクラリネットも、そして聖都の住民も。


 全員が一斉に草原を走り出す。



「ヌオ・・・」

 あまりの鬼気迫る突撃に、邪神は状況がよく飲み込めずに後ずさる。



 ミールの光の翼が4枚に増える。 

 それは神々しい不死鳥のように羽ばたいている。



「オチツケ・・・マズハこの男ダ・・・コノ男さえ始末スレバオワリダ・・・」



 雑魚を先に始末して、デザートを後に食べる派の邪神であっても、根っこは慎重タイプの完璧主義者。 目の前の脅威の排除を優先する。



 邪神は大きく腕を振り上げミールめがけて振り下ろす。



 グムオオオンンン・・



 唐突に大地に魔法陣が出現し、暗黒騎士が現出した。

 ミールは呼び出していない。主の危機を察知し、自ら出てきたようだ。



 暗黒騎士は邪神に雄叫びを上げながら体当たりをする。



「ヌオ?・・・」

 予期せぬ体当たりにグラッと体勢を崩す邪神。



 すかさず斧を振り上げる暗黒騎士だったが、邪神の尻尾が伸びる。

 グシャッと押しつぶされて現世から消滅した暗黒騎士。流石に邪神相手にはこれが限界のようだ。

 ニヤッとしたような邪神。




「くらええええぇぇぇええぇぇ!」




 不意に意図しない場所から叫び声がして、邪神は振り向く。




 どうやら先程回復魔法士を守っていた盾役の1人が生き残っていたようだ。身体中傷だらけで何かを邪神の顔に投げつけた。



「ムオッ・・・」

 邪神は反射的に身をかがめる。




  ピカッ




 辺りが真っ白に光輝く。が、それだけだった・・・



「へっ。ざまみろ」

 投げた冒険者はしたり顔で笑ってみせる。投げたのはタダの光玉だったようだ。




「オノレエエ!」




 ただの光玉に怯まされた事、騙された事への怒りからか邪神は冷静さを失い、その冒険者のもとまで突撃し思いっきり踏みつける。



 その間もミールは一切動かない。

 目を閉じて、ずっと属性ブーストに力を注いでいる。



 早く!早く溜まってくれ!

 前回の頭の中に占めていたこのような焦りは何故か消えていた。



 先程は1秒1秒が長く感じられたが、今はそんな感覚も一切無い。

 全くの無だ。

 まるで赤ちゃんが親に全てを任せるように・・・



 時間稼いでくれ

 盾になってくれ

 身代わりに死んでくれ



 そんな願いも一切無く、純粋にただ力を溜め続けた。



 踏み潰されたらそれまでの事。

 運命と思って諦めるだけ。



 そんな開き直りにも似た感情、ミールには珍しい他人に全てを委ねる感情。



 しかし、何故かきっと上手く行く。

 そんな気がしていた・・・




 再びミールの元まで足取り怪しく歩いて来た邪神。

 未完成だったとはいえ、やはり滅熖のダメージは相当だったようだ。



 ぼんやりと薄く光輝くミールを見下ろしプシューっと白い息を吐き出す。



「ああっ!ダメええぇ!」

「くそーぉ!間に合わねえぇ!」

 ミールのもとに走り出していた住民達が悲痛な叫びを上げる。





「グッフッフ・・・ヨウヤクダ・・・ヨウヤク始末デキル・・・クラエエエエエ!!」





 邪神がミールに拳を振り下ろす。




 絶対絶命と思われた、その瞬間





ピイイイイイイイイイイイイインンンン!!!





 なんと邪神の目の前に結界が・・・・

 聖都を守る巨大結界が出現したのだった。







「聖女様!お早くっ!緊急結界を早く!」


 何回目だろうか?・・・

 大貴族ブレーダル卿が聖女を急かす。

 聖女はずっと巨大魔石の前で目を閉じて立ち尽くしていた。



 ここは魔石室。

 正に聖都の中心的場所だ。



 聖女の目の前にある魔石はサブの魔石。

 本来使われていた巨大魔石は、その横で粉々に砕け散っている。



 通常、結界が破壊されると魔石も同時に粉々になる。

 2つしかない巨大魔石なので、もし今回も破壊されたら、緊急結界すら発動出来なくなる。つまり、もう後がないのである。



「聖女様ぁ!」



 若干苛立ちが混じった声を上げるブレーダル卿。

 しかし、聖女はしっかりと目を開け、そして宣言する。




「通常の都市結界を発動します」




「はあああ?!」

 あまりの意外な言葉に『何言ってんだコイツ』感が丸出しの声を上げてしまうブレーダル卿。



「ば、馬鹿な!何を言っておられるのだ?!都市結界など・・・直ぐに破壊されますぞ?!破壊されたらどう責任を取るおつもりか??全ての住民が死に絶えるのですぞ!」



「今度は破壊させません。私が守ります!それに9割以上も殺されるのであれば、緊急結界とて同じ事。私は民のために行動し、民と共に死にたい」



「ふざけるなああああぁぁああ!どうして破壊されないと言える?!お前が死ぬのは勝手だ!だがワシらを巻き込むなぁ!低俗な住民などと一緒にするなあ!ワシらは高貴な存在!一億の民とてワシ1人と釣り合わんわぁ!」



 完全にキレたブレーダル卿は激情に駆られる。

 ミールと同じく聖女をお前呼ばわりである。



「とにかく早く緊急結界をしろ!その後、勝手に民と一緒に死んでこい!聖女の責任を果たせ!」



「私は民と共に死ぬのが望みではありません。民と共に最後まで戦う事です。民を守る為に行動し、ダメだった場合は民と共に死ぬ。貴方も貴族なら民の為に行動しなさい」



「くそっ!コイツはもうダメだ!おいっ!傀儡士くぐつしを呼んでこい!こうなったら力ずくで緊急結界を張らせてやる!その後はもうお前はお払い箱だ!スーフェリアから聖女を派遣してもらいワシが王位に就いてやる!残念だったな、バカ聖女め!」



 ブレーダル卿の私兵は急いで傀儡士を呼びに行こうとする。

 傀儡士とは一般的に幻覚を見せたり、一時的に操ったりする事が得意な魔法士だ。



 しかし、出入り口をピッケンバーグが立ち塞がる。



「なんのつもりだっ?!出しゃばるなっ!平民!」



「私は聖女様の騎士。聖女様が望まれるなら、例え地獄にも喜んで進みましょう。聖女様が都市結界を発動すると仰ったのです。私は全力でそれをサポートするのみっ!」



「ほざけ平民無勢が!!行けっ!」

 ブレーダル卿は私兵を差し向ける・・・が当然ピッケンバーグに勝てるハズもなく、あっさり倒される。



「ちっ!相手は1人だ!全員でかかれ!」

 ブレーダル卿は魔石の守護兵にも命令を出す。



 この場にいるブレーダル卿の私兵は3人だけで既に倒されているのだが、守護兵は20人近くいる。

 確かに1度にかかられては、いくらピッケンバーグとて苦戦しそうだった。



 しかし、一切動かず命令に従わない守護兵達。



「な、何をしている!早くかからんか!」

「い、嫌だ!緊急結界が発動したら俺の家族は入れない!そんなの嫌だ!」

「そうだそうだっ!」



「くそっ!バカが!よ、よーし!分かった!緊急結界を発動してもお前らの家族だけは特別に入れるようにしてやろう!これでいいだろ?!早くかかれ!」



「嫌だ!貴族の言うことなんて信用出来るか!いつもいつも俺たちを騙しやがって!」

「そうだそうだっ!俺の家族を帰せ!」



「くそおおおお!アホどもがああ!」

 ブレーダル卿は隠し持っていた短剣を抜き、聖女に襲いかかる。



 ピッケンバーグはまるで予知していたかのようにスッと聖女の前に立ち塞がると、あっさりと短剣を弾き、ブレーダル卿の身体に剣を深く突き刺した。



「ぐはぁ・・・・おのれ・・・隊長ぶぜいが・・・このワシを・・・」

 ゆっくりと崩れ落ち、事切れるブレーダル卿。



「さあ、聖女様!我々は貴方様の味方です。思う存分行動してください」

「聖女様!頼みます!俺たち家族をっ」

「聖女様!頑張って!」


 聖女は深くうなずくと、巨大魔石に魔力を込める。



 キラキラと美しく様々な色に光り、徐々に輝きを増していく。



 そして・・・



 結界が発動した。






「ナンダト??・・・」

 邪神は一瞬なにが起ったのか分からない感じだったが、ビリビリビリと音を立てて自分を弾こうとしている結界をみて、ようやく事態が飲み込めたようだ。



「何度ヤッテモ同じダ!また破壊シテヤル!・・・」



 邪神は結界に対して力を込めた。

 ビリビリビリっと閃光がはじけ飛んでいる。



「くっ・・・」

 聖女は引き続き魔力を込める。ぐぐぐっと何かに押される力を感じた。



「負けない・・・」

 聖女の額には大量の汗が噴き出る。



「聖女様!頑張れぇ!」

「負けるなあああ!」



   ピシッ

 巨大魔石に1つヒビが入る。



 そんな・・・ダメなの?私じゃ結局力不足なの?

 聖女が涙を浮かべながら目を閉じた。



 やっぱり私なんかじゃダメなのね・・・

 散々好き勝手してきたのに、ここだけ真面目になっても上手くいくわけないわよね・・・

 やっぱり私は暗愚の聖女なんだわ・・・



 聖女が自分自身の行いを悔いていると



——自分を信じろ!絶対に出来る!——

 フッとミールの言葉が頭に浮かぶ。



 同時に手に温かさを感じて目を開けると、そこにはピッケンバーグの手があった。

 その手は優しく聖女の手を握る。




「聖女様、私も戦わせて頂きます」

 ピッケンバーグは優しい笑顔で、聖女を後ろから包み込むように支える。




 聖女の瞳に炎が宿る。




 それはもしかしたら・・・





 ギュウウウウイイイイイインンンン!





 今までと全く比べようがない程の輝きが放たれる。

 先程のヒビもあっという間に塞がり、魔石が自ら輝きを放っていく。





 ピイイイイイイイイイイイイインンンン!!!





 複雑な色をした、しかし透明度が高い、そして何より眩しいほど輝いた結界は邪神を弾き飛ばす。



「ナ、ナンダト?!・・・」

 空中に飛ばされる邪神。



 ちょうど1回転する形になったのだが、その瞬間、大地にいる人間が目に入る。



 その人間は大きな大きな黄金の翼を羽ばたかせ、光り輝いていた・・・






 光が頂点まで達した。

 一粒一粒が輝いているかのようなきめ細かい光。

 そんな光が辺り一帯を包み込んでいる。



 そして光はまるで龍の如くうねりながら天まで昇り、ミールの剣まで一気に急降下する。



 ドオオンっと光が四散し、辺り一面黄金の草原の様に輝いた。

 東門からでも目を細めないと眩しくて見れないほどだ。



 ミールが目を開く。

 ミールの瞳も金色に輝いている。



 それと同時に広範囲に広がっていた光の粒が一気にミールの元に収束、黄金の・・・金色の光と言うには足りない程の輝きを放ち、ミールの剣に収まった。



「いけ・・・」

「イケ!」

「ヤレえエエ!」



 リリフ達、ルチアーニ達、そして住民達の心が1つになる。



「オノレ!・・・」



 邪神は空中で体制を立て直し、拳に暗黒の渦が出現する。



「全てヲ闇にカエス!」



 邪神はその拳を叩き込む。



 ミールも光の剣を突き出す。





 ピイイイイイイイイイイイイインンンン!!!

   ズガアアアアガッガッガガアアアアアアオオオンンンン!!





 一瞬ガラスを引っ掻いたような不快な音が響き、直ぐに両者が激突する凄まじい衝撃音が響き渡る。



 大気が震え、振動が大地に呼応して下から突き上げてきた。



 激しいストロボのように目を開けていられない程の閃光が、遠くガタリヤの街まで飛んでいく。



 人々は必死に祈る。



 このまま終わってくれ・・・

 どうか頼む・・・




 グガガガッガガガガアアガガガッ・・・




 しかし暗黒の渦はミールの金色の光を浸食していく。

 そして邪神の腕そのものまで飲み込んでいった。



 邪神の奥の手なのかもしれない。

 正に身を滅ぼす程の攻撃だ。




「うおおおおおおぉぉぉおお!」

 正に互角。



 お互いに力を振り絞り、これが最後だと思って攻撃しているようだ。




 人々は気付いていない。




 魔法画面機の映像を食い入る様に見つめているので気付いていない。



 誰にも気付かれないようにヒッソリと、街を取り囲んでいた塔のような突起物が消えていった。



 この突起物は邪神の力で生成、維持されていた。それを引っ込めたのだ。



 つまり今なら逃げ放題の状態。

 完璧主義者の邪神にとってはアイデンティティの否定にすらなりうる行動だったが、それに見合う価値はあった。

 邪神の力がその分グッと戻ったのだ。




「くっ・・・」

 ミールは邪神の力が増した事に気付く。



「ハハハハ・・・残念ダッタナ・・・ワレノ勝ちダ・・・ニンゲンヨ・・・」

 暗黒の渦がミールの手まで到達した。




「ぐわああああああああぁああぁあああぁあああ!!!」




 ミールの叫び声が平原一帯に聞こえる。



 絶対に負けないという抗う声と、手が暗黒の渦に浸食される痛みの悲鳴が混じったような声だった。



「ハッハッハ・・・ガッハッハ・・・」

 自らの手も飲み込まれている邪神だったが、全く手を緩めずにミールを闇に飲ませようと力を更に高める。



「ぬああああああぁぁああああぁぁあああぁぁ!」



 必死に抗うミール。



「ミールっ!頑張ってぇ!」

「ミール様ぁ!」

「ミール様!」

「黄色ちゃんっ!」

「ほれっ行け!」

「イケイケ!」

「・・・キメロ・・・」



 住民達もミールの苦痛の叫び声が聞こえている。

 必死に魔法画面機の前で声援を送っている。



「がんばれえええぇぇ!」

「ぬおおおぉぉぉ!負けるなああ!」

「頼むぅ!」

「俺、助かったら告白するんだっ!」

「フラグを立てるなしっ!」

「まけるなぁ!お兄ちゃーん!」

「まだまだ行けるぞぉ!」

「諦めるなぁ!」

「ぎゃー痛そうっ!」

「助かったら沢山サービスするわよ?」

「結婚しようっ!」

「ええ??嬉しいっ!」

「我輩も応援するであります!」

「ふんがー!」

「ぎゃー!おじいちゃんっ入れ歯入れ歯!」

「もう少しだっ!もう少し!」

「なによ?まだ苦戦しているの?」

「兄貴、これ勝ったら俺足洗うっす!」

「俺も全うに生きるぜ!」

「ぬうううぅ負けて悔い無し!」

「縁起でも無い事言うんじゃないよっ!勝つんだよ!」

「まあ、勝ってくれたら・・・これからは頑張ろうかな・・・的な?」

「超やべー!」

「とりま、応援するっしょっ」

「きゃー素敵ぃ!」

「みんなのパワーを送るんだぁ!」

「俺たちは絶対に絶望なんてしないっ!」

「未来の為に!みんなの為に!」

「絶対に勝ーぁーつっ!!」



 アーニャは願う。

 肩にかかる純白のマントを両手で握りしめ、固く目を閉じ、心の底から強く強く。




「私は信じています。貴方なら必ず勝てると」




 アーニャのミールから貰った雑草で作った腕輪。

 それが今、輝きを放ちながら消えていく。





     ピーン





「ナ?・・・」

 邪神は驚きの声を上げる。




 暗黒の渦が消えていく・・・




「馬鹿ナ!負のエネルギーが全くナイと言うノカ?・・・バカな!・・・アリエナイ!」




 ミールは身体から湧き上がる何かを感じた。

 説明が付かない何か。

 グングンと湧いてくる力を。



 今だっ!



 ミールはカッと目を見開き、渾身の力をこの一瞬にかける。






「だあああぁああああああああああぁああああああああぁああああぁあぁぁぁぁー!」






 ボオウウウンっとミールの左腕に魔法陣が発生した!

 光がうねりながら再び大きくなる!

 まるで濁流の如く、全てを飲み干すように!



 剣は邪神の腕を切り裂き、胴体を飲み込み、そして・・・




 『脈打つ瞳』を真っ二つに切り裂いた。





「グギャアアアアアアアアアアアァァァアアアァァ!・・・」





 邪神の断末魔が響く。

 空中で真っ二つに切り裂かれた邪神にミールは追撃を重ねる。



 右に一閃。左に一閃。斜めに一閃。上に下に一閃。

 何度も何度も・・・




 シュウウウウ・・・・




 やがて粉々になった邪神の身体は直ぐに液体化し、黒い水たまりが辺りに出来る。




「見事ナリ・・・よくぞワレを倒したナ・・・」

 何処からともなく声が風に乗って聞こえてきた。



「そりゃどーも」

 ミールは素っ気なく剣をさやに収める。



「確かにお前の言うトオリ・・・ワレは操られてイタラシイ・・・」



「正気に戻ってくれて良かったよ。完璧主義も良いけど、今度からデザートは先に食べる事をオススメするよ」


「フハハハ・・・コレハ我の性分ダ・・・直らンヨ・・・」

「でしょうね」



「クックック・・・残念ダ・・・アト少しデ極上のデザートを堪能デキタというノニ・・・」



「ちっちっち。そんなの極上でも何でもねーぜ。次現出した時は俺がモンブランをご馳走してやるよ」



「モンブラン・・・ダト?」

「ああ、俺が1番好きなデザートだ。お前腰抜かずぜ。旨すぎて」



「フハハハハ。我ヲ食事ニ誘うカ・・・・面白いニンゲンだ・・・クックック・・・最後に・・・お主の名前ヲ・・・聞かせてクレヌカ?・・・」



「ヤダよ、気持ち悪い。呪われたらどーすんだよ?」



「ガッハッハッハ・・・違いナイ・・・フフフ・・・実に愉快ダ・・・ガッッハッハハハ・・・」



 黒い水たまりが消え、邪神は笑い声を上げながら現世から消えた。



 ミールはフーッとため息をつき、地面に座り込む。

 そんなミールに駆け寄るリリフ達。



「ミィールーゥー!やったあぁ!」

 リリフがミールに抱きつく。



「ミール様ぁ!」

「ミール様っ!ミール様っ!凄いですっ!ミール様!」

 ブルニも、興奮したリューイもミールに抱きつく。



「うひょー!ホントに勝ったぞい!ホントに勝ったぞい!」

「信じられんっ!信じられんぞぉ!」

「・・・ふん、楽勝だ・・・」

「黄色ちゃーんっ!今夜こそおばちゃんと寝ようねっ!」



 ルチアーニ達もはしゃぎながら抱きつく。

 しかし、満身創痍のミールはグデっと力無く崩れ落ち、気を失ってしまった。



「きゃあっ!ミール!」

「落ち着け、リリフちゃん。気を失っただけじゃ」

「ほっ・・そっか・・・あ、でもどうしよ?このままじゃミールの事バレちゃう・・・」

「うむ・・・ワシが身代わりになったらバレるかのぉ?」

「100%バレますぅ!」

「ぐっ、ブルニちゃん、ツレナイ・・・」



 そうこうしている間に、冒険者達や住民達がミールのもとに押し寄せてくるのであった・・・





「やったあぁ!」

「うおおおっ!」

「聖都万歳!聖女様万歳!」



 観衆も大騒ぎだ。

 アーニャも涙を流しながら、遠くでリリフ達に囲まれているミールを見ている。



「これは凄いスクープになりますよぉ!早速インタビューしなければっ!」



 専属記者が魔動映像機を構え走り出した。

 とっさにアーニャはその記者を止める。



「あっ!お待ち下さいっ!スレル様っ」

 記者はビクッとして立ち止まる。



「え?ええ??ど、どうしてアーニャ様が私なんかの名前を?・・・」

「ふふふ、ステータスを見れば一目瞭然ではないですか」

「そ、そんな・・・光栄です」



 下の身分のステータスは上の身分の者は見ないのが通例なので驚いている記者。



「そ、それで・・・どのような??」



「ええ、それなのですが・・・実はガタリヤの英雄様は訳あって身分を明かせないのです。今回は特別に皆様の前で戦ってくださいましたが、本来は秘密なのです。なのでどうか・・・正体を明かすことは止めていただく事は出来ないでしょうか?・・・」



「そ・・そうだったのですか・・・わ、わっかりましたっ!この聖都の命の恩人に対して仇で返す事は出来ませんねっ!」


「すみません・・・ご配慮感謝致します」


「い、いえっ!こちらこそですっ!あー!そうだっ!今度アーニャ様の独占取材をさせてくださいね!」

「ふふふ。良いですよぉ。楽しみにしてますねっ」

「はいっ!」






「うおおおぉぉぉぉおうういいっ!」

「ひゃっほおおおいいいぃぃ!」

「すげーすげー!マジで勝った!マジで勝ったぞおお!」



 アーニャが一応記者は止めたが、冒険者達や集まっていた住民達はそうはいかない。

 ひと目英雄を見ようと一斉に駆け出す。



 しかし・・・



「えええいい!止まれええええぇぇ!!止まらんかああぁぁ!!!」



 怒号のような声が草原に響く。



 そこには腰に手を当てたルゾッホ将軍が、身体中傷だらけ、泥だらけ、雑草まみれで仁王立ちしていた。



「ひええっ!」

「なんだなんだぁっ!?」




「ここは立ち入り禁止だあぁ!この先に進みし者は極刑に処す!分かったかぁ?!」




「ふ、ふざけんなー!なんでそんなこと勝手に決めるんだ!」

「お前は大体誰だ!ヒゲジジイが!」




「ワシはルゾッホだ!この国のナンバー2である!貴族共よりも階級は上だ!ステータスを見ろ!」




「げ・・・マジだ・・・」

「うえ・・・」



 冒険者達や住民達をルゾッホ将軍が止めている間に、ミレーユがタンカを持った輸送兵を引き連れてミールのもとに駆け寄る。



「失礼。とにかくこちらに入って頂こう。姿がバレる前に輸送します。話を通しておくので、お連れの方も後からお越し下さい。場所は聖都騎士隊の本部です」



 そう言うとミレーユはタンカをミールの横に置いた。

 タンカには全身を包み込める寝袋の様なものが置かれている。多分よくある死体などを入れる袋だ。



 輸送兵達は手際よく、気絶しているミールを袋に入れ、押し寄せている住民達を避けるように大回りに南門に向かって行った。



「あ、ありがとうございます」

 リリフがお礼を言うと、ミレーユは首を振りながら答える。



「いえ・・・こちらこそ、今までの・・・数々のご無礼、申し訳ございませんでした。自分の目が節穴だったようです。本当に・・・聖都の為、命を賭けて戦って頂きありがとうございます。本当にありがとうございます」


 ミレーユは深々と頭を下げる。



「ぬほっほっほ。いやいや、とんでもないですじゃ」

「僕ロイヤーって言います。ミレーユさん、なんてお美しいお名前なのでしょう」

「何言ってんだいっ!全く。ミレーユさん、黄色ちゃんの事よろしく頼むわね」



「はい、騎士本部で治療させていただきます。是非ロイヤーさんもお越しになってください」



 ミレーユは冷酷な表情は微塵みじんも無く、ニッコリと優しい笑顔をみせる。



「・・・なんと・・・出会いはあったのか・・・」

 ひっそりと呟くミケルであった。


  続く

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