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スライムには負けるけど魔王には勝ちます  作者: すふぃ~だ


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聖女巡礼⑭

「まあいいわ。貴方の初恋の相手を殺す訳にもいかないものね。でもっ!さっきのは負けたけど、トータルでは私が勝ってるからっ!調子に乗らないでっ!」


「ああん。そんなのワザと負けてやってんだ。またギャーギャー騒がれてもめんどくせーしなっ!」


「ほほん?嘘ばっかり!」

「ちっ、もう1回勝負だっ!」

「いいわっ!受けて立とうじゃないっ!」



 そうして結局、3日目で遂に聖女が総合1位を獲得したのであった。



⇨聖女巡礼⑭




 時刻は20時過ぎ、予定よりも遅く巡礼隊は港町クリルプリスに到着した。

 リリフ達は街に到着するという事で、自陣に戻っている。



「わあぁぁあぁっ!これが潮の匂いってやつなのねっ!良い香りぃぃ!」

「ホントですぅ。ブルニも初めてですっ」

「この波の音・・・癒やされますわぁ」


「随分と他国の方々が居られるようですね。流石は港町です」


「なんじゃ?リリフちゃん達は海は初めてかの?」

「うんっ。初めてっ」


「リリフ姉様っ、セリー姉様っ。ブルニ、明日お日様が昇ったら海を見てみたいですっ。一体どれだけ大っきいのでしょうかっ」


「うんうんっ、私も見てみたいわっ。楽しみね、ブルニっ」

「はいっ!リリフ姉様っ」



 流石にルーン国唯一の貿易港。

 いわば他国との玄関口なので、序列が低いとはいえ色々と優遇措置が施されいるようだ。



 ガタリヤのように所々ひび割れている道や壁などは無く、街並みは綺麗に整えられ、白い壁面で統一された家々は清潔感と爽快感が醸し出されている。


 リューイが言うように多数の異国の人々、商人なども多く滞在しているようで、商店街には聞いた事のない音楽や、見たことのない品物が並んでいて、とにかく活気があった。



「なんかあんまり巡礼隊の人達の事を気にしてないみたいね」

「ほんとですわ。全く普通の感じの方が多い印象です」



「ここクリルプリスは貿易港という確固たる基盤がありますから。異国の人々も多く、貿易、漁業など、他の街には無い強みがあるので序列が高かろうが低かろうがあまり関係ないというのが本音のようですね。聖都からの優遇措置も多くありますので」



「そっかぁ。だからこそアーニャ様のお爺様と同じように聖女様に対抗出来たのね」


「確かにそれもあるかと思いますが・・・なによりお祖父様とクラリネット様は子供の頃からの友人ということが大きいようです」


「そっかぁ。私とセリー、ルクリアのような感じってことねっ。それなら分かるわっ。私も2人の為ならどんなことだってするものっ」


「ふえぇぇん。リリフ姉様っブルニも仲間に入れてくださぁぃ・・」


「ああんっ!もちろんよっブルニっ!今はブルニとリューイも含めて、私の大事な大事なPTよっ!大切なんだからっ!」



 リリフはブルニを思いっきり抱きしめた。

 ブルニはリリフに頬ずりされながら、尻尾を思いっきりフリフリしている。

 その光景をアーニャや兵士達が優しい笑顔で見守っている。



「ふえぇぇえんん。リリフちゃんや、ワシも仲間に入れてちょーだいな」



 唐突にランドルップのモノマネが炸裂し、時が止まったかのように凍りつくガタリヤ隊であった。




 晩餐会の会場はガタリヤと似たような感じになっていた。

 大広間には多数のテーブルが置かれているが、順位通りに座るような感じでは無い。

 しかも料理はバイキング形式のようで、自分で取りに行くスタイルだった。



「なんじゃっ!ワシらが料理を取りに行けと言うのか?!」

「全くです。こんな大衆向けの料理など食べられませんな」



 予想通りブーブー言っている領主達。

 しかし聖女はスタスタと歩いて行き、料理を選び始める。



「せ、聖女様っ!わ、わたくし共がお取り致しますっ!」

 慌てて大勢のメイド達が聖女を追っかける。



「えっとねぇ・・・これと、これと、これとぉ・・・あとこれっ。あっ、こっちも美味しそうっ。あらっ?これってここで焼いてくれるの??じゃあ5枚焼いてっ!」


「は、はいっ!か、かしこまりました!只今!」

「せ、聖女様っ!こんなに沢山食べられますか?!」


「なに言ってんのよ。よゆーよ、よゆー。はああん。ガタリヤといいクリルプリスといい、美味しい物だらけで太っちゃうわぁ・・・」



 聖女はテーブルに着くと、大量にお皿に盛られた料理を次々と制覇していく。



「うんうんっ予想通りっ!やっぱり新鮮な海産物は美味しいわねっ!」



 聖女の食べっぷりに領主達も文句を言うのを止め、渋々と料理を食べ始める(もちろん料理はメイドに持ってこさせていたが)



「では、私達も頂きましょう」

「はいっ!アーニャ様っ」

「ぐふふっ。どれも美味しそうですわっ。とりあえず端から端まで制覇すると致しましょうっ!」

「ブルニも頑張りますっ」

「ブルニ、兄ちゃんがお皿持ってやるよ」

「わーい、ありがとぉお兄ちゃんっ」



 ワイワイと賑やかな雰囲気に包まれる大広間。

 しばらくして、お腹も膨らみ一段落した感のある聖女と領主達。

 クラリネットからの街の発展の報告を半分聞き流している。



「・・・でございます。以上です」



 そうしてクラリネットは奥に下がろうとする。

 それを大声で呼び止めるルゾッホ将軍。



「おいっ、クラリネット!聖女様への『信頼の証の贈呈』はどうした?!もう夜も遅い。さっさと用意せんか!」



 クラリネットは半分だけルゾッホ将軍の方を向き

「ございません」



「な、なにがじゃ??」


「クリルプリスの晩餐会は以上です。皆様、どうぞお部屋に戻り明日の鋭気を養ってくだされ」


「な、なんだと?!なにも無いと申すか?!」

「ええ、全くなにもありません」



 涼しい顔で去って行くクラリネット。

 慌ててアーニャが駆け寄る。



「ク、クラリネット様っ!なりません!ガタリヤの為にご自分の立場を危うくする事はなさらないでくださいっ!」



「ははは、アーニャ殿。申し訳ない。年寄りの冷や水とお笑いになってくだされ。しかし、これは単に恩を返しているだけでございます。私が領主になって初めての巡礼の日、既に何回か巡礼を経験していたデトリアスの忠告を無視して大失敗した事があるのですよ。それを救ってくれたのがデトリアス。あやつは私の代わりに最下位になる振る舞いをし、私を救ってくれた。あの時救ってくれなければ少なくとも今、私が領主の座にいることはなかった。その恩を私は孫娘の貴方に返そう。こんな事しか出来ない不器用な私を笑ってくだされ」



 アーニャは涙を流しながら、全力で首を横に振る。

「そんなことはありませんっ!クラリネット様がお側にいてくださるだけで、どれだけ心強かった事か・・・私の方が救われているのに・・・ううぅ・・」



「はっはっは。いや~。実は今のは建前でしてな。本音はようやく恩を返せて、心に刺さったトゲを取ることが出来た感じでございます。何せ、奴は私からのお礼をことごとく受け取らなかったですからなっ!あれではまるで恩の押し売りだ。がっはっは。ようやく返せたわいっ」

 クラリネットは上機嫌で大広間を出て行く。



「さってと、それじゃあ私もサッサと寝よーかな。今日は1位をとれて気分が良いしっ!」



 聖女はクラリネットからの贈り物が無い事は気にしていないようだ。

 ウーンと背伸びをして、部屋に戻っていく。

 それを見て、領主達も次々と部屋に戻っていった。



「えーっと・・・アーニャ様、どういう事ですか??」

 リリフは急展開についていけてないようだ。



「クラリネット様が貢ぎ物を何一つ出さなかったという事ですわ、リリフ」

「え??てことは・・・」



「そうです。クリルプリスが最下位になる可能性が限りなく高くなったという事です・・・」






 翌日、全ての日程が終了し、聖都に戻る日がやってきた。


 その前に、恒例の暫定順位の発表である。

 この最後の暫定順位発表があってから、聖都に戻るまでの数日間が、各領主達が、もっとも慌ただしく動く時だったりする。



 つまり、聖都に到着した時点で、順位融通を行った数字が反映され、正式な順位確定の発表がある。

 なので、その聖都までの帰り道の間に、順位が下の方の領主は上の領主に順位融通の交渉を持ちかけ、少しでも上に上がれるように策謀を巡らせるのだ。



 かなりの大金、またはそれに見合った権利などが入り乱れ、上位の領主の宿営地には、数多くの下位の領主達の列が出来る程、交渉は深夜まで続くこともザラとなっている。



 その点を踏まえ、順位融通の注意点は


1つ、多数の領主が一斉に交渉している点。

2つ、1人の領主から交渉で得れる順位は1つだけ。

3つ、ポイント順位が同率の場合は、暫定順位が上位の街が上にくる。

4つ、聖女特権が発動すれば、どんなにポイントを稼いでも、無意味。


 といった点。



 例えば、こんな場合。


 自分が5位で8位の領主に順位融通を持ちかけられた場合。

 


 5位→マイナス1ポイント

 8位→プラス1ポイント



 こんな感じになる。

 まだ下には5人領主がいる。(ガタリヤとクリルプリスは順位融通に参加しないので実質3人だが)

 1つくらい順位を落としても問題無いかと、大金を得る条件に交渉成立したとしよう。

 その領主は6位に落ちたと思っている。


 しかし、実際は・・・



5位→マイナス1ポイント→6位 最終順位8位

6位→プラス1ポイント→5位   最終順位5位

7位→プラス2ポイント→5位   最終順位6位

8位→プラス3ポイント→5位   最終順位7位



 このように、7位の領主も、8位の領主も複数の領主と交渉しており、1〜3ほどポイントを獲得していたら、一気にその領主は8位とかに落ちてしまい、こんなハズじゃなかったのにぃ・・・と嘆く事になるのだ。



 もしくは、暫定順位が4位だからと、何も考えずホイホイと順位融通の契約をして、マイナス6ポイントになると・・・



4位 →マイナス6ポイント→10位  最終順位9位

9位 →順位融通不参加→9位     最終順位8位

10位→順位融通不参加→10位    最終順位10位



 このように、一気にクリルプリスの下の9位まで下がってしまったって話が、実際に起った事もある。



 更に、マイナス1ポイントとプラス2ポイント。合計プラス1ポイント。



 このように、売り手側の領主だと思っていたヤツが、他の領主相手には買い手に回っていて、実質プラス順位になっていたりと、かなり複雑にポイントの争奪が行われるのだ。



 順位融通は下位の領主だけが必死になるかというと、実はそういう訳でもない。

 上位の領主も、のんびりしてたら、あっという間にゴボウ抜きされる可能性があるからだ。

 なので下位の領主が『ポイントをくれ』と訪れてきたら、逆に『お前のポイントをよこせ』と逆交渉するくらい、上位の領主も順位固めに必死なのである。



 実質、ガタリヤとクリルプリスは不参加なので、どんなに頑張っても、最高7ポイントまでしか獲得できない。

 なので他の領主に、自分のライバルには順位融通しないでくれと大金を使って裏取引したりするなど、順位融通以外の所でも熾烈しれつな争いが行われているのだった。



 そして、1番恐ろしいのは聖女特権というものが存在しており、これが発動すると、その領主は、どんな手を使っても聖女が言った順位で確定してしまうということ。



 例えば6位の領主が7ポイント獲得していたとする。

 ポイント順位は1位。そして更に1ポイント余っている状態。

 そして他の領主は、これより低いポイントだったら、普通は完全に1位独走だ。



 だがしかし、聖女が『あんたムカつくから10位ね』と一言言えば、10位確定なのである。

 しかも、順位融通で支払う契約は生きたまま。

 そして、発動してるかは、聖都に到着してから発覚する。

 つまり、完全に領主の努力を無に帰す、恐ろしい特権なのだ。


 

 だが実際は、ここ30年ほど、発動したことはない。

 いや、実際は60年間、ずっとガタリヤに発動してたかもしれないが、そもそもガタリヤは順位融通に参加してないので未確認。



 30年前に発動したのは、コートピア。

 あの、ほとんどの領主と寝て、一気に1位まで上り詰めた領主がいる街だ。



 その魅惑の女領主の前の領主。彼が聖女の逆鱗に触れた事がある。

 そして聖女特権が発動し、暫定3位だった順位は9位確定となり、結局彼は領主を降ろされ、魅惑の女領主へと交代になってしまったのだが・・・(それでも10位を譲らなかったガタリヤは流石と言うべきか)



 もしかしたら皆さんの中にはマルリの街を出発し、二股の街道をカルカ村の方面に向かい、ガタリヤ、クリルプリスの順に巡礼を行い、最後にキーンで終わる方が効率的で距離的にも近いのでは?と思ったかもしれない。



 それは正解で、実際にそのルートの方が距離は短く済む。

 では何故わざわざ遠回りをするルートを選んでいるのかというと・・・それは順位融通の時間を、少しでも長く取るため。



 聖女は、この最後の最後まで欲望と陰謀が入り乱れ、大金が乱れ飛び、脂汗を浮かべながら必死になって策謀を巡らせている領主達を、遠くから眺めているのが、とてもとても大好きだったからだ。



 ニコニコ握手を交わしていながら、実は裏切っていたとか・・・

 結託してアイツを潰そうって手を組んだのに、実は自分が潰されそうになったり・・・



 そういったドロドロの展開がたまらなく興奮するらしい。



 領主達にとっては大迷惑な事だが、捉えようによっては一気に上まで上り詰めるチャンスにもなる。

 どの領主も虎視眈々と、他の領主の動向を探りながら、最後の暫定順位の発表を待つのであった。




 大広間に聖女が入ってきた。全員に緊張の空気が流れる。

 しかし、いつもと違う。

 暫定順位が書かれた大きな紙とそれを広げる従者が一緒に入ってこなかったのだ。



 ザワザワとする領主達。


「なにがあったんじゃ??」

「もしかして聖女様自身が発表なさるのか??」

 そんな声がヒソヒソと聞こえる。



 聖女はコホンと1つ咳払いをして話し始めた。



「えーっと。暫定順位の発表は今回はしないことにするわ。だから、今年は順位融通もナシ。聖都に到着してから正式な順位を発表するから、それまで楽しみに待っていなさい」



「なんとっ?!」

「せ、聖女様っ!それでは我々はどうすればっ??」

 一斉に騒ぎ出す領主達。



 聖女はそれをビシッと手を広げて制す。

「その代わり、今日はちょっと別の事をするわ。ミラージュ、そしてペイン。前にいらっしゃい」



 突然名前を呼ばれ、ビックリする2人だったが、何故か安心した表情を見せるペイン。



「父上、上手く行きました。もしかしたら婚礼の発表をするのかもしれません」

「なんとっ?!で、でかしたぞっ、ペイン!」



 ヒソヒソと小声で会話をする2人は、期待に胸を膨らませながら駆け足で聖女のもとに行く。



「ははっ、お呼びでしょうか。聖女様」

「聖女様、ペインの心はいつも聖女様のもとに。寂しい思いをさせてしまい申し訳ございません」



 ペインはキラッと歯を輝かせながら、渾身の笑顔を浮かべる。

 しかし、肝心の聖女は全く見ていない。



「あと、スランデル。貴方もよ。前にいらっしゃい」

「は?は、はぁ・・・ただいま・・・」



 スランデルは何故呼ばれたのか全く分からないようだ。

 スランデルが聖女の前にひざまずく。



 ひざまずく3人の男を前に、聖女は腕を組んで、全く喋らない。

 まるで、何故呼ばれたのかを考える時間を与えているかのように・・・




 沈黙が続く。




 先程のルンルン気分は何処かに消え失せ、ペインの表情は硬く小刻みに痙攣している。



 時間にして2~3分ほどだったが、この頃になると流石にミラージュも、ペインも、スランデルも。聖女が良い話をしようとはしてない事が雰囲気で分かった。



 ということは、なんだ?どれがバレた?もしかしてあれか?もしかしてこれか?などなど。

 頭の中を駆け巡る多種多様な悪巧みの数々。



「ペイン」

 聖女が一言、言葉を発する。



「ひゃいっ」

 顔面蒼白のペインは必死に返事をするが、声が裏返っている。



「貴方・・・童貞じゃなかったみたいね?嘘をついたのかしら?」



 聖女から予想通りの言葉が飛んできて、言葉を失うペイン。

 ザワザワとする大広間。



「ミラージュ、貴方・・・ワザとあのチビデブを私に仕向けたのかしら?」

「はっ・・・ぐっ・・・」



 ミラージュも一瞬反論しようとしたが、直ぐに口を(つぐ)む。

 自白魔法士がいるこの場所で、下手に言い訳をしたら身を滅ぼすからだ。



「そして・・・スランデル」

 スランデルはタラタラと額に汗を大量にかきながら、聖女を見る。



「貴方・・・ミラージュに買収されて、嘘の報告を私にしたのね?」

「め、滅相もございません・・・せ、聖女さ・・ま・・」

 段々と小さな声になっていくスランデル。 



「あら?違うの?だったら今日はクラリネットに自白魔法士を用意してもらったから、それで無実を証明するといたしましょうか?但し・・・自白魔法をかけて貴方の言葉が嘘だった場合は・・・分かるわよね?」



 スランデルはブルブルと身体を震わせる。ポタポタと汗が床に滴り落ちた。




「も、申し訳ございませんっ!聖女様っ!つい出来心で自白魔法士としてあってはならない事をしてしまいましたっ!申し訳ございませんんんんっ!」




 スランデルは額を地面に付けて、大声で謝罪する。



「そう・・・罪を認めるのね?」

「はっ!認めます!申し訳ございませんっ!どのような処分も謹んでお受け致しますっ!」



「分かったわ・・・まあ、散々好き勝手してきた私が言える立場ではないし・・・貴方の立場だったら沢山のオイシイ話が舞い込んでくるでしょう。私に嘘をついたのは許せないけど、今まで私に尽くしてくれた実績に免じて、今回は不問にするわ」



 スランデルはパアッと表情を明るくして聖女を見る。



「但し、これにりて私に嘘をつくのは止めなさい。あと、癒着ゆちゃくや不正行為もしないこと。貴方はれっきとしたこの国のナンバー3なんだから。自覚をもって行動すること。いいわね?」



「は、はいっ!このスランデルっ!聖女様の多大なるご厚意に感謝し、今後はより一層仕事に励む所存でございます!2度とこのようなマネは致しませんっ!」



「いいわ、スランデル。下がりなさい」

「ははっ!」



 スランデルは許された安堵感でいっぱいの表情を浮かべながら、後ろに下がる。

 より一層ブルブルと震えている2人。



「さてと・・・貴方達はどうするの?認める?自白魔法を受ける?」



「み、認めます!完全に認めます!申し訳ございませんっ!」

「自分がうぬぼれておりましたっ!申し訳ございませんっ!申し訳ございませんっ!」


 必死に許しを懇願こんがんする2人。



「そう・・・2人の処分は聖都に戻ってからするわ。いいわね?」

「ぐむ・・・」

 スランデルの時とは違い、冷たい表情で沙汰を下す聖女。



「では、出発します。全員準備をして頂戴」

 ツカツカと大広間を出て行こうとする。



「あちゃ~・・・ブルニ、海を見れる時間無いみたいね」

「ふえぇん。残念ですぅ・・・本当にしょっぱいのか舐めてみたかったですぅ・・・」



 聖女はピタッと歩みを止め、小声で会話するリリフ達のもとにクルッと身をひるがえして歩いて行く。



「やっぱり出発は午後からにします。各自、それまで待機」

 そう言うと、リリフとブルニの手を掴んで引っ張っていく。



「ちょ、ええ??せ、聖女様っ??」

「ひょえぇっ。聖女様と手を・・・きゅぅ・・・」

「海に行くわよっ!アーニャ!貴方も来なさいっ」

「は、はいっ聖女様っ!」


 慌てて聖女を追っかける聖女のメイド達と護衛達、そしてアーニャ隊の皆さん。



 聖女が大広間から出て行ったのを確認すると、領主達は大声で話し出す。



「なんじゃっなんじゃっ!いったいどうなっているんじゃ??」


「こ、これは大事件だっ!ミラージュが1位から陥落するぞ!」

「いやいやっ!これはもしかしたら領主剥奪かもしれん!?」


「それにしても・・・最近特に、聖女様・・・アーニャにべったりじゃないかい。これはもしかしたら・・・もしかするんじゃないかい?」

「確かに!あの入れ込みようはオカシイのっ!」


「どーするんじゃ!?ガタリヤが最下位から抜け出したら・・・誰が最下位になるんじゃ?!」


「いや、最下位はミラージュじゃろ?問題は9位じゃ!」

「アーニャとクラリネットはかなり親密じゃ。もしかしたらセットで上位にくるかもしれんぞ!」


「なんと?!全く貢ぎ物を出さなかったクラリネットがか?!流石にそれはないじゃろ!」


「いや、可能性はあるぞ!現に今、1番親密なのはアーニャじゃっ!何が起きても不思議ではないっ!」


「ぬおおおぉぉ!それはマズイ!マズイぞよ!」


「しかし1番マズイのは今の順位が誰も分からんって事じゃ!異常事態じゃ!」

「まさか順位融通が出来んとは!」

「何をどうすれば良いのか、さっぱり分からんっ!」

「くううぅぅ・・・一体どーすればいいんじゃー!」



 悲痛な叫びを上げる領主の皆さん。



 もちろんリビの領主ミラージュ達も苦悶の表情を浮かべている。


「困ったことになった・・・あの聖女の顔・・・あれはかなりマズイな・・・」



「父上、しかし自白魔法をかけられなかっただけ、まだ希望はあります。一時でも私に惚れていたのは事実。心の奥底では、まだ恋心がくすぶっているかもしれません。紳士に謝り続け、反省の色を見せれば、態度を変えるかもしれません」



「うむ・・・確かにな。とにかくこのまま街に帰る事になったら、息子殺しで風当たりが厳しくなるだろう。なんとしても聖都に着くまでに聖女の心を変えさせなければならん」



「お任せください、父上。とにかくまずは反省している、落ち込んでいる姿を見せましょう。わざとらしいくらいでちょうど良いです。悲壮感漂う程に。そうすればあの世間知らずの聖女の事です、きっと声をかけてくるでしょう。父上、頑張って演技しましょう」



「うむっうむっ。そうだな!よし、それでいこう!」

 それぞれ思惑を抱き、不安な感情を背負いながら部屋を出て行く領主達。




 もし・・・




 もし、先程のやりとりで、聖女がスランデルに自白魔法をかけていたら・・・




 そして『ある事』を質問する事が出来ていれば、世界を混乱の渦に陥れようとする人々の計画を、前もって知ることが出来たかも知れない。




 しかしそれを責めるのはコクというものだ。



 みなさんはページを遡れば良いだけだが、あの時あの場所でこの質問を投げかける事が出来るのは、未来を見る事が出来る者のみ。


 あの時、その場にいた誰一人、その質問をしようと思った者はいなかったのだから。


 いや、その言葉、その行為自体・・・巡礼中に頭をよぎった者はいないだろう。





 その『ある事』の質問。





 それはすなわち・・・






 聖女を殺そうと画策した事はあるか?・・・と。






   続く

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