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スライムには負けるけど魔王には勝ちます  作者: すふぃ~だ


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聖女巡礼⑬

「あ、あの・・・すみません、聖女様・・・僕って・・・いったいどうなったのでしょうか??」


 どうやら気絶して記憶が無いようだ。

 そんな兄にブルニが一言。


「お兄ちゃんのエッチっ」



⇨聖女巡礼⑬




 翌日・・・というかもう日にちが過ぎているので今日って事になるが・・・ 

 朝、眠い目をこすりながら、リリフ達はなんとか大広間に集合する。



 なんといっても今日はガタリヤの暫定ではあるが正式な順位発表がある日だ。寝過ごす訳にはいかないのである。



 しかし、集まった領主達へ、聖女からの通達をメイドのロココが読み上げる。



『発表はお昼過ぎ』



「ぬおぉぉおぉ・・・もう少し寝てれば良かったぁあぁ・・・」

「わたくし、今から二度寝してきますわ」

「ブルニもぉ・・・そぉしましゅ・・・」

「・・・おっぱい枕、リターンズ・・・」



 半開きの目をこすりながら部屋に戻っていくリリフ達。

 しかし、アーニャは緊張した表情のまま、その場を動こうとしない。



「アーニャ様、少しお休みになられてはいかがでしょうか?」



 ルイーダが声をかけるが、アーニャは首を横に振り

「ルイーダ。ガタリヤは・・・最下位を抜け出せるでしょうか?・・・」



「あの・・・私個人の意見ですが・・・可能性は高いと思います。昨日の聖女様の反応も良かったですし・・・なにより聖女様がアーニャ様の未来のお話をしている事がままあります。最下位の相手にはそのような事を仰らないと思いますので・・・」



 アーニャはルイーダの言葉には応えず、黙って前方の、聖女が座る予定の椅子を見つめる。



「欲をかいてはいけない、領主の座に固執してはいけない・・・とは分かっていても、つい欲をかいてしまいますわね・・・」



 アーニャは少しはにかんだ笑顔を見せて、また前方を見つめる。

 ガタリヤの、アーニャの未来が決まる時が刻々と近づいていた・・・





 お昼過ぎ、再び大広間に集まる領主達。


 結構ソワソワしている者は下の順位の領主だ。

 今まではガタリヤが最下位確定な感じで巡礼が行われていたので、少しだけノンビリというか甘えというか、最下位だけは無いという安心感があった。



 しかし今回は違う。


 デトリアスからアーニャに交代したという点もそうだが、晩餐会の聖女の反応が思ったよりも高評価だったからだ。

 男を差し出す事は無かったが、結局人獣の子で対応した形になったのも事実。



 これはもしかしたら60年ぶりに、他の街が最下位になるかもしれない。

 もし自分の所が最下位になったら・・・

 重臣や貴族の反感、住民達の怒号、家族の冷たい反応・・・考えるだけでゾッとする。



 そんなソワソワしている領主とは対照的に、あくびをしているのが上位の領主達。

 ガタリヤが最下位を抜け出すのか多少興味はあるが、まさか上位にはなるまい。

 そんなお気楽な雰囲気が見て取れる。



『ガチャッ』

 聖女がピッケンバーグのエスコートを受けて大広間に入ってくる。



「皆さん、ごめんなさいね。突然時間を遅らせてしまって。さあ、早速順位を発表するわね。その後、直ぐに出発しましょう」

 聖女は従者に目配せする。従者は順位が書かれた紙を皆に見えるように広げた。



1位 リビの街 ミラージュ

2位 キーンの街 ブラトニック

3位 フローゲンの街 ミミレバ

10位 ガタリヤの街 アーニャ



 ふうーっと安堵の表情を浮かべる下位の領主達。


『なんじゃ、いつも通りか。つまらん』と興味なさげの上位の領主達。



 そして・・・目を閉じて結果を受け止めるアーニャと落胆の表情のリリフ達。



「ああん・・・そんなぁ・・・」

「あんなに頑張ったのにのぉ・・・」

「凄い高評価だったと思ったのにぃ・・・」

 口々に残念がる。



「いえ、みなさん。私はやれる事はやりました。結果はどうあれ、みなさんがいなければ中途半端な気持ちで晩餐会を迎えていたはずです。本当にありがとうございます」

「そんなぁ・・・こちらこそだよぉ・・・アーニャ様ぁ・・・」



「残念な結果に終わりましたが、私の気持ちは晴れやかです。この気持ちを胸に、領主とは違う形で自分の信じる道を進みたいと思います」



「そっか・・・アーニャ様・・・領主じゃ無くなるんだ・・・」

「・・・」



 シーンと静けさが大広間を支配した。

 他の領主や聖女はとっくに部屋から出て行っている。



「で、でもっ。まだ決まった訳ではないですわよねっ?!ガタリヤの住民があれほど支持しているのです。貴族連中も、おいそれとは手を出せないのではないでしょうか?」



「そうよっ!その通りだわっ!アーニャ様っ、まだ諦めるのは早いですよ!こうなったらトコトン粘りましょう。往生際が悪いって言われるくらい!かっこ悪くても良いんですっ!私達は最後までアーニャ様の味方ですからっ!」



 アーニャは頬を高揚させ、目を潤ませる。



「ありがとう、リリフさん。ありがとう、みなさん。そうですね、ここまでかっこ悪い姿を見せてきたんです。今更聞き分けの良い人になる必要はありませんね。最後の最後まであがいてあがいてあがきまくってやります。みんなが困るくらいにっ」



「ふふふ。また大泣きして貴族連中がドン引きしたりしてっ」

「ああっ!もうっ!リリフさんの意地悪っ!」

「あははははっ」

 大広間に笑い声がこだまする。



 そんな中、慌てた様子のルイーダが駆け込んできた。

「ア、アーニャ様っ!せ、聖女様が・・・デトリアス様のっ・・・」



 アーニャは最後まで聞くこと無く、猛烈に走り出す。

 廊下では大慌てのメイドや従者達と何度もすれ違う。



 そんな中を1直線に突き進むアーニャ。



 やがて現領主デトリアス・イウ・スローベンの部屋がある離れの建物に到着した。

 部屋の扉は開かれており、大勢の聖女の護衛や側近達が廊下で待機している。



「おお、アーニャ様。今ちょうど聖女様がお入りになった所です。お早く・・・」

 いつも側にいる爺やが出迎える。



 廊下で待機している護衛隊長ピッケンバーグはアーニャの姿を確認すると、優しく微笑み中に招き入れた。



「ふふん、デトリアス。随分と年を取ったじゃない。今年は貴方をいじめられなくて、ちょっと残念だったわ」



「がーっはっはっはっ。聖女よ、相変わらず美しいな。全くもって不公平だ。ワシよりもババアのくせにピチピチしやがって。まだ懲りずに男漁りをしとるのか?!」



「あら?美しいだなんてビックリ。貴方の口からもそんな言葉が出るなんて・・・いよいよお迎えも近いんじゃないの?」



「がっはっは。ワシはあと50年は生きてやるぞっ。残念だったな、聖女よ」



 そこにアーニャが入ってくる。



「あら?アーニャ。貴方も来たの?なによ?そんなに息を切らして・・・私がデトリアスになにかするかと思ったのかしら?」


「い、いえ・・・そのような事は決して・・・ただ・・・聖女様がわざわざお越しになるのが・・・正直意外でして・・・」


「ふふふ。何時もケンカばかりして、いがみ合って、60年も最下位にさせたものね。相当嫌っていると思うわよね、普通は」



「がっははっは。ワシは超嫌いじゃっ!大っ嫌いじゃっ!」

「お、お祖父様・・・」



「じゃが・・・感謝する、聖女よ。アーニャの顔を見れば分かる。巡礼に行く前とは大違いじゃ。おぬしが導いてくれたのであろう?アーニャはワシに似て頑固な面もあるが、とても芯の強い子じゃ。これからも宜しく頼む」

 デトリアスはベットの上で頭を下げる。



「あら、私はなにもしてなくてよ?勝手に凹んで勝手に元気になったの。まあ、確かに貴方に似て面倒くさい所はあるわね。直ぐ泣くし」



「なんじゃとっ!?アーニャっ!お前、泣いたのか??何故ワシの前で泣かんっ?ずるいぞっ聖女っ!ワシも見たことないアーニャの泣き顔を見おってからにっ!」



「お、お祖父様っ、落ち着いて下さい。お身体に障りますわっ」



「相変わらず子供ねぇー。デトリアス、貴方の孫娘はあんたと同じくらい面倒くさいけど、あんたの数倍優秀よ。サッサと領主の座を受け渡してゆっくりと身体を労りなさい。せいぜい長生きする事ね。ではごきげんよう」



 そして後ろ姿のまま

「楽しかったわ・・・ありがとう」



 聞こえるか聞こえないか、ギリギリの大きさで呟き、去っていく聖女。



 デトリアスはベットの上で少しだけ笑みを浮かべる。

 それは長年行動を共にした戦友との別れの挨拶に似ていた。



「ワシがいた頃より随分お(しと)やかになったものだ。まさか聖女から感謝の言葉を貰うとは・・・長生きはするものだな」


「お祖父様・・・あの・・・ごめんなさい。今年もガタリヤは最下位のようです」


「んん??ははは、そうかそうか・・・ん?・・・なんじゃ?落ち込んでおるのか??がっはっはっ!謝ることはあるまいっ!それをいえばワシは60年も最下位だったのじゃぞ?!どんなに頭を下げても足りんわいっ!」


「・・・」



「アーニャよ。随分といい表情になったのぉ。ワシは嬉しいぞ」

 デトリアスは感慨深い表情を浮かべて、2人の名を呼ぶ。



「爺や、そしてダストン将軍」

「はっ」

「ははー」



 何時からいたのか、ダストン将軍も領主の部屋の入り口で待機していたようで、呼ばれて部屋に入ってくる。




「今、この時点でワシは領主を引退し、アーニャにその座を譲る。お前達が証人じゃ。引き続きワシの可愛い孫娘を支えてやってほしい。頼む」




「お祖父様っ?!」

「ははっ!かしこまりましたっ!」

「承りました、デトリアス様」



「がーっはっはっはっ。これでガタリヤの未来は安心じゃっ。ふ~・・・もう思い残す事はないのぉっ!」



 アーニャは豪快に笑うデトリアスを見ながら唇を噛みしめている。

 私にこんなにも偉大なお祖父様の代わりを務める事など出来るのだろうか・・・

 そんな不安な表情が見て取れる。



「アーニャよ。お前はお前の道を進め。ワシのようになる必要はない。そして自分を信じるのだ。幼い頃に両親を事故で亡くし・・・いや、貴族共に殺され、寂しい思いをしたはずじゃ。しかし、アーニャはそんな事は微塵みじんも見せずに、逆に周りに明るさを放ちながら育ってくれた。なんと素晴らしい事か・・・ワシにも聞こえておったぞ。お前を迎え入れる住民達の大歓声が。あれほどの大歓声はワシも受けたことがない。少し嫉妬してしまったではないか・・・いかに大金を払おうが、いかに良い政治をしようが、あれほどの大歓声は得られない。あれこそがアーニャの人柄に惚れ込んだ住民達の想いだとワシは思う。不器用でも一生懸命頑張っているお前の姿に感銘を受け、支えよう、共に頑張ろうと思った結果なのじゃ。これほどまでに住民に愛され、支持を得た領主をワシは他にしらん。正に領主たる器じゃ。なにも恥じる事は無い。思う存分自分の道を突き進むが良いぞ、アーニャよ」



 アーニャは大粒の涙を流し、嗚咽を堪えながらデトリアスの話を聞いている。



「おおっ!おお・・・おおおっ。じ、爺やっ!直ぐに撮影機を持ってくるのじゃっ!アーニャの泣き顔を保存しなくてはっ!ドデカい魔法絵(写真)にしてこの部屋に飾ろうぞっ!」

「は、はいっ・・・只今」



「がっはっはっ!どうじゃっ?!ダストン将軍、ワシの孫娘は世界一可愛いじゃろっ!がーっはっはっは」



「もうっ・・・お祖父様ったら・・・」

 アーニャは少しはにかんだ笑顔を浮かべ、涙を拭く。



 まるで、初めて歩き出した赤子を撮影しているかのように、デトリアスは本当に嬉しそうにアーニャを撮る。



「は~い。撮りますよぉ・・・」

 撮影機を構えたルイーダが声をかける。折角だし全員で記念撮影をしておこうって話になったようだ。



「せーの、はい聖女(はい、チーズの意)」



   カシャッ



 デトリアス、アーニャ、ダストン将軍と爺や。

 皆、笑顔で。


 特にデトリアスの表情は満ち足りた、すがすがしい表情を浮かべていた。



 そして・・・



 これがデトリアスとアーニャが映る、最後の魔法絵となったのだった。






 ガタリヤを出発する巡礼隊。


 本当に頭が下がるのだが、出発する時も住民達は大歓声で送り出した。

 いや、もしかしたら昨日より凄いかもしれない。

 正に自分達の声援のパワーを届けようとしている、そんな感じだ。



 昨日同様にアーニャは歩きながら、聖女は魔動車の天井から姿を見せて声援に応えながら、ガタリヤを後にしたのだった。



 500メートルほど進み、直ぐにアーニャ隊は後ろに下がる。

 今度はクリルプリスの兵士達が先頭を務めるからだ。



 そしてこのタイミングでいつもリビの領主ミラージュの息子ペインが聖女に呼ばれ、街に着くまでずーっと魔動車の中で逢瀬を重ねるのが、リビの街を出てからの聖女のルーティンとなっている。 



 当然今回もそうなるだろうと、ペインは中央付近で既に待機していた。



 リリフはすれ違いざまに『ベー』と舌をだすが、当然ペインは見向きもしない。

 案の定、そのタイミングで護衛隊長ピッケンバーグがペインのもとに馬を走らせてきた。



「これはこれは、ピッケンバーグ殿。いつもご苦労さ・・・」



 当然、自分を呼びに来たと思っているペインはピッケンバーグに声をかける。

 しかし、予想とは裏腹にピッケンバーグはペインを通り過ぎ、アーニャのもとで立ち止まる。



「アーニャ様、そしてみなさん。聖女様がお呼びです。ご同行お願い出来ますでしょうか?」

「えっ??わ、私達がですかっ?!ピッケンバーグ様っ??」


「ええ、そうです、リリフさん。聖女様は昨日の続きがしたいそうです。ミール様も是非お越しになってください」


「げー、俺はヤダよ。面倒くせー」

「あー、ミールったら。聖女様に負けるのが嫌なんだぁ?」

「はあ??んな訳ねーだろ!」

「ミール様っ、ムキになってますぅ」


「ふふふ。ピッケンバーグ様。かしこまりました。わたくし達全員でお伺い致しますわ」

「ありがとうございます、アーニャ様。では」



 やり取りを見ていたペインは口を開けて呆然としている。

 そんなペインの姿をみて嬉しそうにリリフがみんなを促した。



「さあさあっ。『聖女様』に呼ばれちゃったらしょうがないよねっ!早く行きましょっ!なにせ『聖女様』に呼ばれちゃったんだからっ!おーっほっほっほっ!」



 聖女様の部分を強調して話すリリフ。優越感に浸っているらしい。

 魔動車に近づくと、聖女が窓を開けて身を乗り出して大声で叫ぶ。



「さあっ、早くなさい!コテンパンにしてやるんだからっ!黄色冒険者!見てなさいっ!」

 聖女は早く続きがしたいのだろう。ウズウズとして車に乗り込むのを催促する。



「わあぁ・・・ひっろ~い・・・」

「フカフカですぅ」



 魔動車の中は20畳はあろうかというほど広かった。

 床は毛足の長い赤い絨毯じゅうたんで敷き詰められ、キッチンやトイレ、バスルームまで完備している。

 当然、いつも逢瀬おうせで使っているキングサイズのベットも見るからにフカフカだ。



 部屋の隅には天井に続く金ピカのらせん階段があり、そこから聖女はガタリヤの声援に答えていたようだ。

 先頭の操縦席は別の場所から入るようで繋がっていないらしい。



 メイドのロココのみ、聖女のお世話をする為、入室を許可されているようだ。

 ベットの脇に足の短い大きな丸テーブルが置かれており、みんなフカフカの絨毯の上に直接座る。



「さあっ始めるわよっ!覚悟しなさいっ」

 聖女は自分でトランプを配っていく。



「せ、聖女様っ・・・私達がしますわっ」

「なによっ?!良いのよ、これくらいっ。さあ、まずはアーニャ。貴方から始めなさいっ」

「は、はいいっ。聖女様っ」



 聖女とリリフ達、ルチアーニ達、アーニャとミールで、結局その日はずっとトランプで1日が終わった。

 そして、当然この事実は全領主達にあっという間に広まる。



 リビの領主、ミラージュは顔面蒼白でペインに問い詰めていた。



「お、おいっ。ペイン。こ、これはどういう事じゃっ??まさか聖女が心変わりをしたのではないだろうな?!」



「父上、落ち着いてください。どうやら話を聞く限り、聖女はゲームに夢中のようです。ガタリヤで興じた魔道切り札が面白かったようですね。ですが別に焦ることはありません。わたくしを差し置いて、他の男と寝るような事になれば話は別ですが。呼ばれているのは大勢のガタリヤの連中だそうで。ま、直ぐに飽きるでしょう」



「そ、そうか・・・う、うむっ。ならばよろしい。頼むぞペイン」


「お任せください、父上。少しばかり距離を置くのも良いかもしれません。直ぐに聖女も寂しがって自分を頼ってきますよ。策はあります、これをチャンスに更に聖女の心を掴んでみせます」



 他の領主達もざわめきは収まらない。


「ミラージュの息子が呼ばれなかったようだぞっ!」

「これはもしかしたら心変わりをされたのでは??」

「落ち着けっ、まだ分からんぞ。なにせ代わりに呼んでおるのがガタリヤの連中だ」

「うむ、しかし風向きが変わってきたのも事実。ここは静観するしかあるまい」

「左様。あまり深くミラージュに関わるのは危険かもしれませんな」



 そういった感じで領主はもちろんの事、兵士達ですらヒソヒソ話が多い道中となったのであった。





 クリルプリスまではガタリヤから3日はかかる。

 ペインの予想に反して、2日目も、そして3日目も聖女はアーニャ達を呼び続けた。



「な、何故だ・・・」

 ペインは聖女のあまりの変わりように現実を受け止めきれないでいる。

 単身馬を走らせ、魔動車のもとまで駆け寄った。



「ペイン殿。これ以上進む事はあいなりません」

 護衛隊長ピッケンバーグがペインを止める。



「聖女様にご面会を申請するっ!取り次げピッケンバーグ!」

「申し訳ございませんが聖女様からはアーニャ様とそれに準ずる者達以外、一切通すなとご命令が出ております。その申請はお受け出来ません」



「何故だっ!何故だぁああぁ!聖女様っ!聖女様ー!ペインでございますっ!お側に参りとうございます!聖女様ぁ!」



 叫ぶペインにピッケンバーグは冷静に剣を抜く。



「ペイン様、これ以上この場に留まるおつもりなら問題にさせて頂きます。直ぐに立ち去られよ」



「く・・・」

 ペインは苦々しい表情で馬に乗り、自陣に戻っていく。



 当然、魔動車の中は防音になっているので、このやり取りは聞こえていない。

 リリフを除いて・・・



「あの~・・・聖女様。外で・・・あのペインって男が叫んでるんですが・・・良いんですか??」

「ん?そなの?構わないわ。ピッケンには通すなと命令してるし」

「そ、そうですかぁ・・・ほっ・・・」



「貴方達こそ・・・特にアーニャ。貴方は聞かないのね、どうしてガタリヤが最下位のままなのかを」



 アーニャは瞳を閉じ、穏やかな笑みを浮かべながら

「ええ、私にとってガタリヤの順位は最早どうでもいいのです。例え何位だろうとやることは変わらないと分かりましたので」


「でも、最下位だったら貴方・・・領主の座から降ろされるでしょ?」


「ふふふ。ええ、それも最後まであがくつもりです。思いっきり駄々をこねて、往生際が悪いアーニャを聖女様にお見せしたいと存じますわ」


「そう・・・強いのね、貴方」


「いえ、私自身はとても弱い無力な人間です。ですがわたくしには支えてくれる沢山の人達がいる。そして応援してくださいます。わたくしはその方々から沢山のエネルギーを頂いて前に進むのみ。領主であろうがなかろうが、関係ないのです、聖女様」


「そう・・・思えばデトリアスの奴もそうだったわね。アイツも最下位になる事を全く恐れていなかった。当時はムカツク事ばっかりだったけど・・・振り返るとアイツだけだったわね、本音で話せたのは・・・今の領主や側近、貴族共はどう?どいつもこいつもお世辞やおべっかばかり。ウンザリするほど退屈な日常だったわ」




「しおらしくしてもダメだぞ。今のは俺の勝ちだ」




「ちょっとぉぉおぉ・・・ミールっ!器ちっちゃいっ!」

「流石に今のは引きましたわっ」

「大人になってくださいっミール様ぁ」

 一斉にミールを責める女の子達。



 しかし聖女は笑いながら

「ふふふ、あっっはっはっ。貴方って本当に不思議な人ね。未だかつて、ここまで私に対等に話しかけてきた人はいないわ。死ぬのが怖くないのかしら?それともただのバカなのかしら?」



「聖女様っミールは病気なんです。権力者に突っかかる病気」

「そうですわっ、しかも結構、後先考えずに突っかかっておりますの」

「ミール様は困ったちゃんなんですぅ」



「まあまあっふふふ、ただのバカだったようね?処刑しちゃおうかしら?」



「そ、それはダメですっ。聖女様っ!」

「ええ??だ、ダメですっ」

「聖女様っ!何卒後慈悲を頂きたいですわっ」

「ふえ~ん。それは嫌ですぅ」

 一斉に聖女を止める女の子達。



「な、なによ??え?貴方達・・・もしかしてこの男が好きなの??えっ、アーニャだけじゃなくて??嘘でしょ??」



「ミールは私達の命の恩人なんですっ」

「どんな事があっても返しきれないほどですわっ」

「ブルニがこうしていられるのもミール様のお陰なんですっ」

「ミール様はガタリヤになくてはならない方です。どうか聖女様、お考え直しを・・・」



「何言ってんのよ?アーニャ。コイツ黄色ランクよ??全く・・・自分が惚れた男だからって、そこまで嘘つく必要なんてないのに・・・貴方って意外と身内贔屓みうちひいきなのね?」


「は、はい・・・申し訳ございません」



 ミールの事を口外する訳にもいかず、アーニャは聖女の言葉を受け入れる。



「まあいいわ。貴方の初恋の相手を殺す訳にもいかないものね。でもっ!さっきのは負けたけど、トータルでは私が勝ってるからっ!調子に乗らないでっ!」


「ああん。そんなのワザと負けてやってんだ。またギャーギャー騒がれてもめんどくせーしなっ!」


「ほほん?嘘ばっかり!」

「ちっ、もう1回勝負だっ!」

「いいわっ!受けて立とうじゃないっ!」



 そうして結局、3日目で遂に聖女が総合1位を獲得したのであった。


    

    続く

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