聖女巡礼⑫
「これがわたくしなりの『聖女様への信頼の証の贈呈』でございます。世界でも、ココだけの料理の数々、お気に召して下されば光栄でございます」
「ふ~・・・なるほどねぇ。確かに世界で1つだけの品だわ。お見事ね、アーニャ」
⇨聖女巡礼⑫
「ありがとうございます、聖女様。しかし、今回のテーマは疲労回復でございます。もうひとつ聖女様にお届けしたい事がございますので少々お待ちくださいませ。ルイーダ、お願い」
「はいっ、アーニャ様っ」
ガチャッと大きな扉が開かれ、緊張の面持ちで入ってきたのは小さな女の子。
「ルクリアッ!」
「ええ??ルクリアっ?!」
「ルクリア姉様っ!」
そう、入ってきたのはお化粧され、頬をピンク色に染めたルクリアだった。
髪はツインテールにされ、水色のキラキラしたドレスを身に纏っている。
言っちゃ悪いが、まるで七五三のようだ。
「・・・ううう・・・注目されてる・・・」
ルクリアはうつむいて、ギュッとスカートを握りしめ、皆の視線に耐えている。
「なになに?!なんでルクリアが!」
「全く分かりませんわっ!この前通話した時にも、何も聞いておりませんもの!」
オロオロするリリフ達。
「わたくしがお呼びしたのですよ」
唐突に背後から声がしたのでビックリして振り向くと、そこには爽やかな笑顔をした自白魔法士ラインリッヒが立っていた。
「ラインリッヒ様っ!」
「お久しぶりです、リリフさん。セリーさん。ミールさん。そしてブルニさんとリューイさん。ルチアーニ様達は初めましてになりますね。領主専属近衛騎士のラインリッヒと申します」
「あらあらあら、随分とご丁寧な挨拶だねぇ。リリフちゃん達から聞いていたけど、外見も中身もイケメンねぇ。今晩おばちゃんとどう?」
「うっ・・・えっと・・・」
真面目なラインリッヒは言葉に詰まってしまう。
「ああん、ルチアーニ様っ!ラインリッヒ様をからかうのは止めて下さいっ!それで?!ルクリアを呼んだというのは??」
「ええ、皆さんが巡礼に参加している間もルクリアさんはコンサートを続けていまして。最近では結構街中で噂になっているのですよ?わたくしも何回かプライベートで聞きに行きましたが、とても素晴らしい歌声でいつも癒やされております。そこで昨日、アーニャ様と近況報告で通話している時にちょうど聖女様への贈り物で悩んでおられましたので、推薦をした次第でございます」
以前、外出するには15名程騎士達が護衛に付かなければならないので億劫になっていると話していたラインリッヒだったが、結構足を運んでいるみたいだ。
騎士達にとっても癒やしの時間となっているようなのでラインリッヒも外出しやすいといった所か。
「へええ!そうなんだぁ!凄いわ、ルクリア!」
「ふっふっふ。正にわたくしのプラン通りですわねっ!」
緊張しているルクリアの耳にも、リリフ達の声が聞こえたようだ。
ルクリアはキョロキョロと辺りを見渡しリリフ達の姿を見つけると、猛ダッシュで駆け寄りセリーに抱きつく。
「もおおぉぉうぅぅ!遅いよぉぉおおぉ!」
グリグリとセリーの胸に顔を押しつけるルクリア。
そんなルクリアを愛おしそうに撫でるセリー。
「よしよし、しっかりと1人でもコンサートを続けたのですわね?偉いですわ、ルクリア」
「・・・むぅぅ・・・大変だった・・・」
そんなやり取りを見て、ザワザワする大広間。
「なーにー?その子がなんかするのぉ??」
聖女が大きな声で聞く。
グデーっと椅子に深く腰掛け、足も伸ばしている。
なんか既にちょっと眠そう。
「失礼しました、聖女様。ガタリヤの贈り物として、最後にこの子の歌を贈らせて頂きます。どうぞお聞きになってください」
「うたぁ??その娘の歌が贈り物だっていうのぉ??」
「がっはっはっは!やはりガタリヤじゃな!まさか最後の締めくくりが歌とは?!」
「左様。折角の美味しい料理が台無しですな」
「まるでお遊戯会じゃな!正にガタリヤにふさわしい!」
「ぎゃっはっはっは!」
貴族連中の嘲笑が大広間に溢れる。
小さな唇を噛みしめるルクリア。
そんなルクリアの両肩をガッシッと掴み、目線を同じにしてセリーが言う。
「ルクリア、貴方の歌は素晴らしいですわ。あんなクズ達にバカにされる覚えはありません。堂々と聖女様に届けてきなさい!わたくしが付いてますわっ!」
ルクリアの目つきがかわり、ウンっと大きく頷く。
そして堂々と大股で聖女の前まで歩いて行った。(腕と足が同時に出ていたが・・・)
ペコッと聖女にお辞儀をして、1つ深呼吸する。
そして歌い出す、穏やかで優しい声で。
——心の花を——咲かせて——
聖女も、領主達も、従者やメイド達も。
ルクリアが歌い始めた途端、その歌声に引き込まれる。
領主同士で笑い合っていた者達は笑うのを止め。
料理を食べていた者はそのままフォークを置き。
聖女も椅子から立ち上がり、その小さな女の子から放たれる歌声を全身で浴びていた。
———貴方は気付いているの——その光に——
——誰にでもあるの——胸の中に——
——でも忘れてしまう——疑ってしまう——
——多忙な日々に——上手くいかない日常に——
——忘れないで——貴方は一人じゃない——
——忘れないで——貴方を必要としてる人がいる——
——少しでいい——自分を信じて——
——少しでいい——自分を好きになって——
——心の花を咲かせて——誰にでもある小さな欠片——
——空を見上げて——暖かい光をその身で感じて——
——心の花を咲かせて——眩しいくらい輝く種の一粒——
——1人1人——形は違う——同じ花なんてないんだよ——
——心の花を咲かせて——大丈夫——勇気を出して——
——笑われるかな——怒られるかな——
——そんな気持ちも肥料に変えて——
——心の花を咲かそう——
——色とりどりの素敵な花を——
——心の花を咲かそう——
——笑顔満面——笑いながら——
——そしてとびっきり綺麗な花束を——自分に贈ろう——
歌い終わり、ぺこりとお辞儀をするルクリア。
シーンとする大広間。
しかし、リリフ達が大きな拍手をすると、ようやく我に返ったのか大歓声が大広間を包み込む。
「ぬおおおっ!素晴らしい!素晴らしいぞ!」
「わしゃぁ泣けてきた!なんて歌声だ!」
「こんな気持ちの良い歌は生まれて初めてだ!」
聖女は呆然と大粒の涙を流している。
「せ、聖女様?・・・」
メイドのロココに呼びかけられ、ようやくハッと自分が泣いているのに気付いた聖女。
「やだわ、昔を思い出しちゃったじゃない・・・」
聖女はロココからハンカチを受け取り、照れくさそうに涙を拭いた。
ルクリアはスタスターっと走り出し、またピトッとセリーにくっつく。
「素晴らしかったですわ、ルクリア。流石わたくしの自慢の妹ですわっ」
「・・・ホント?・・・」
「ええ、もちろん」
「とっても良かったわよっ!ルクリア!」
「ルクリア姉様ぁ・・・ブルニ、涙が出てきちゃいましたぁ」
「とっても良かったです。ルクリア・・ぇ様」
「・・・えへへ・・・」
ミールと目が合い、褒めて欲しそうに上目遣いをするルクリア。
「心が洗われたよ。やっぱりルクリアの声は最高だな」
ルクリアの頭をナデナデすると、嬉しそうにピョンピョン飛び跳ねている。
「この方の歌声は世界唯一だとわたくしは思っております。皆様も心がスッキリとしているのを感じておられる事でしょう。正にこの者の歌声は心を癒やす歌。そんな歌を聖女様に捧げたいと存じます。これがわたくしなりの『信頼の証の贈呈』でございます。本日はありがとうございました」
アーニャは深々と頭を下げる。
パン・・・パン・・・パン・・・パン・・・
聖女の拍手が大広間に響いた。
「お見事よ、アーニャ。私の予想を良い意味で遙かに上回っていたわ。お疲れ様」
「はっ、ありがとうございます、聖女様」
「街の成果の報告は良いの?まあ、あの住民の出迎え様を見ると不満は特になさそうね。でも防衛の面はしっかりと整えた方が良いわよ。貴方の頼りの冒険者達はドラゴン討伐でかなり減ってしまったのでしょ?」
アーニャは少し考えた後、話し出す。
「では、聖女様。一点だけ訂正させて頂いてもよろしいでしょうか?以前聖女様には、めぼしい冒険者達はいなくなってしまったと説明させて頂きましたが・・・実は1人、かなりの実力者が在籍しております。この者がドラゴン討伐も巨大食中プラントも1人で討伐しております。この者の実力は世界屈指かと自負しております。よって、数こそ少なくはなりましたが、危険対処能力は以前と変わりありません」
「あら?ドラゴン討伐も巨大食中プラントもキーンの部隊が討伐したのではなくって?」
「キーンの部隊はなにもしておりません。ドラゴン討伐の際は、我々のギルドをかき回すだけかき回して、あっという間に全滅しております。巨大食中プラントの際も、キーン最強の兵士達が全滅し、タウンチームも全滅し、恐怖に駆られたブラトニック殿は全ての者の外出禁止令を発令しております。ブラトニック殿は正に臆病者の極みであると存じます」
「アアアアアァーーーニャーァー!貴様ぁ!」
ブラトニックの叫び声が大広間に響く。
「うっるさいわねぇ・・・大きな声を出さないで頂戴。ブラトニック、貴方今のアーニャの話は本当なの?」
「ははっ、大声を出してしまい申し訳ございません。聖女様、今の話は全くのデタラメ、信じてはなりませんっ」
「そう、それじゃあ自白魔法をかけても良いわね?嘘じゃないんでしょ?」
「えっ?!あ・・・そ、それは・・・なんと申しましょうか・・・す、少しだけ・・・合っているかも・・・しれません・・・」
「なにっ?!ハッキリしなさいっ!」
「・・・ぐむむむぅ・・・」
ブラトニックは顔を真っ赤にして、うつむく。
「ふう・・・まあいいわ、大体どっちが本当の事を言ってるのか分かったわ。それで?アーニャ、その冒険者って言うのは誰なの??」
「申し訳ございません、聖女様。彼は表舞台に出ることを非常に嫌う性格でして。この場でのご紹介とは出来そうにありません。いつか・・・機会がありましたらご紹介させて頂きます」
「そう、まあいいわ。貴方がそう言うなら本当の事なんでしょう」
おや?聖女が随分とアーニャの言葉を信用するようになったな?
「はあぁあぁ~。それにしてもぉぉ・・・あんなに良い歌を聴いてめっちゃ心がみなぎっているのにぃ!アーニャ、男は用意してないのっ?!」
「は・・・残念ながら・・・そういった趣向はご用意できませんでした。申し訳ございません」
「もー。折角良い感じなのにぃ・・・アーニャだってそうでしょ?良い男と楽しみたいって感じでしょ?」
「え・・・わ、わたくしはそのようなことは・・・」
「はあぁ??なに、アーニャ。貴方好きな人とかいないの??」
「えっ?その・・・いえ・・・おりません・・・」
アーニャはミールをチラッと見てタジタジしてしまう。
やはりリリフにすら言われるくらいアーニャは分かりやすい。
当然聖女もピーンと来ている。
「あら?あらあらあら??アーニャ、貴方・・・」
席を立ち、ズイズイとアーニャのもとまで歩いて行き、アーニャの顔を覗き込む聖女。
「な、なんでしょうか?・・・聖女様・・・・」
アーニャは泳ぐ目でなんとか誤魔化そうとしているようだ。
「ふーん。あの中にアーニャの好きな人がいるのね?どれどれー?なによ?ジジイばっかりじゃない」
聖女は腕を組んでじ~と見定める。
そこに後ろを向いているミールに気付いた。
「あら?貴方は・・・あの時の冒険者ね・・・なるほどねぇぇ・・」
ニヤッと笑う聖女。
アーニャがミールの事を好きなのが分かったようだ。
「ふっふっふー。アーニャ、貴方って男の趣味悪いのね?こんな黄色ランクの冒険者の事が好きなんて」
「むぅぅ・・・」
アーニャは恥ずかしそうにうつむく。
「あっはっは。可愛いじゃない、アーニャ。いいわ、面白いわ。そこの男を差し出しなさい。アーニャの意中の人に抱かれるのも燃えるじゃない」
「えええ?!ほ、本気ですか?聖女様!」
「あら?もちろん本気よ?しかも、ここであの男を差し出せば、ガタリヤは100%最下位脱出よ?そればかりか、かなり上位に入れるわ。私はとっても満足しているもの。さあ、アーニャ。あの男を差し出しなさい」
ザワザワする大広間。
ガタリヤが上位にくるという発言に動揺しているようだ。
しかし、アーニャは決意ある瞳でキッパリと宣言する。
「嫌です。お断りします、聖女様」
またザワザワする大広間。
「なんで断るんじゃ??」
「こんな良い条件他にないだろう?・・」
「なんてバカな女だ」
などと、アーニャの即決した発言を非難している。
「ふーん。アーニャ、貴方変わったわね?リビの街の時の貴方とはまるで別人だわ。私は好きよ、そういう瞳」
「ありがとうございます、聖女様」
「でも、ダメ。これは私への贈り物では無いんでしょ?だったらアーニャが断ってもあの男が私を受け入れたら貴方に邪魔する権利は無いわ。だってこれは2人の問題ですもの」
「う・・・」
正論に言葉に詰まってしまうアーニャ。
そしてミールの目の前に歩いて行き、一言。
「さあっ、黄色ランクの冒険者。喜びなさい、今晩は私が相手をしてあげるわ。どう?嬉しいでしょ?精々感謝することね」
「嫌だよ、バカじゃねーの?年を考えろよ年を。俺は200歳になろうとしてるババアを抱く趣味はねーんだよ」
シーンと静まり返る大広間。
もう流石にここまで来ると、リリフ達はある程度予想できていた。
「あちゃー・・・」
「やっぱりか・・・」
「また怒らせちゃいますわ・・・」
「ミール様は困ったちゃんなのですぅ・・・」
手で顔を覆い、悲観するリリフ達。
唯一アーニャのみ、人知れず安堵の表情を浮かべている。
「なああああんんんんですってええええぇぇぇ!?!?」
当然だが、聖女の怒号が響き渡る。
ああ、今度こそ死んだな、アイツ。
聖女様になんたる口の利き方。
折角のガタリヤの好印象を1人で台無しにする愚か者。
そんな人々の考えが手に取るように分かる雰囲気だ。
「あんた!一体なんなのっ?!口の利き方に気をつけろとあれほどっ!」
「まあまあ、そうカリカリすんなって。シワが増えるぜ?」
「はああ??シ、シワなんて無いわよ!バカにしないで!」
「ふーん。でも修復魔法でシワ取ってるんだろ?」
「なっ、なんで知ってるのよっ!」
「あはは、図星か。ウケるな」
「ムキー!はめたわね!」
オカシイ・・・
いつもならとっくに死刑になっているハズなのに・・・
どことなく聖女の口調も表情も穏やかに見えるのは気のせいだろうか・・・
「まあまあ、あんたが良い女だってのは認めるよ。ただ、俺は愛のないセックスは好きじゃないんだ。また今度な、クワレル・クックロース」
ビクッと聖女の身体が硬直する。
「・・・」
聖女は黙ってうつむくが、直ぐに顔を上げミールから離れていった。
「やっぱあんたムカツクわ」
そう言い残しながら。
・・・と、去って行くと思っていた聖女の足がピタッと止まった。
「あら?貴方は亜人ね?」
リューイを見て一言尋ねる。
「ひゃっ、は、はいっ!聖女様っ!自分は人獣でございますっ!」
「ふーん・・・で?あんた童貞?」
「えっとっ・・・そのっ・・・」
もじもじしてしまうリューイ。色々と恥ずかしがり屋な年頃だ。
「むー・・・お兄ちゃんのエッチっ・・・」
「あら?妹さんなのね?可愛いじゃない。ふーん。気に入ったわ、貴方今日私の相手をしなさい。人獣と1度してみたいと思ってたのよね。良いわね?」
「ええ??ぼ、僕なんかで良いんですか?・・・でへへ」
「お兄ちゃん嬉しそう・・・変態・・・バカ・・・もう知らない・・・プイ」
「ブ、ブルニィ・・・違うんだ・・・」
「リューイ。脱童貞おめ」
「なんと初体験の相手が聖女様だとはのぉ・・・」
「この先が思いやられるわい・・・」
「さあ、来なさい。それじゃあ皆さん、ごきげんよう」
聖女はリューイの腕を掴んで引っ張っていく。
「おにーちゃーんっ!」
「ぶるにーーーーー!」
全くお互いに止める気が無い、形だけの兄弟の叫びが大広間に一応響く。
みなさんはお気づきだろうか?
実は今まで何回かリューイのラッキースケベ的な展開があったと思う。
しかし今日この日、聖女の相手をする事によって、本格的に女難の相が始まった事をリューイはもちろん知る由もなかった・・・
聖女が奥の部屋に引っ込み、大広間もザワザワ感が戻る。
「さてと、ワシらも休むとしますか」
「ふ~。あと1箇所ですな。早く終わりたいものです」
「全くですなぁ・・ははははっ」
そう言いながら足早に大広間を後にする領主達。
それに続いて護衛兵や従者やメイド達もドンドンと引き上げていく。
先程まで、あれだけ多くの人がいたのが嘘のように、あっという間にリリフ達だけ取り残された。
大広間には、メイドや執事達が、後片付けに動き回っている。
「なんかあっという間に帰っちゃったね」
「まあ、しょうがないんじゃないかの?領主共にとっちゃ、はよ巡礼を終わらせたいって感じじゃからの」
「それにしてもミールは相変わらずじゃな。もうワシ、少し慣れてきたかもしれん」
「あ、私も」
「ホント困ったちゃんですねっ、ミール様は」
「みんなの期待に答えられて嬉しいぜ」
「開き直っとるわい」
「あ、でもでも~っ!さっき愛の無いのは嫌いって言ってたよね??ってことは~私の事は愛してるって事だよねっ!?うふふっ!」
「わたくし達全員の事ですわよっリリフ。独り占めはダメですわっ」
「ブルニも愛してますっ」
「あ・・うん・・・」
「そういえばさっきの・・・くれ・・くわぱる?・・・だっけ?あれって何なの?」
「あ~。あれな。クワレルだよ。クワレル・クックロース。聖女の本名だ」
「へええ!そうなんだ!すごっ!」
「全員、聖女様としか呼んでないからのぉ。本人も久しぶりに聞いたって感じだったように見えるわい」
「そうねー。ま、黄色ちゃんの暴走はあったけど、今回は一応大成功って感じじゃないのかしら。概ね聖女様の反応も良かったみたいだし。ね?アーニャ様」
「どうでしょうか?・・・私には分かりませんが・・・とりあえず、やり切れた事が嬉しいです。皆様、ありがとうございました」
「こちらこそですわ、アーニャ様。わたくし感動致しました。世界に1つだけの贈り物が、素敵なお料理と、まさかルクリアまで登場してくるとはっ。贈り物は金銀財宝しかイメージに無かった自分が恥ずかしいですわ」
「ホントホント。凄い発想力だと思ったぁ。ルクリアとも久々に会えたしっ。ねえねえ、今日は一緒に泊まれるんでしょ?ルクリア」
「・・・うん・・・セリーのおっぱい枕で寝るの・・・」
「もうっ・・特別ですわよっ!」
「・・・わい・・・」
「本当にありがとうございました、ルクリアさん。唐突なお呼び出しにも関わらず、とっても素敵な歌声でした。ラインリッヒが推薦するだけの事はありますね」
「・・・ぅん・・・」
人見知りのルクリアはセリーの後ろに隠れてしまう。
「えー。てことはこういった贈り物にしようって思ったのは昨日って事??」
「ええ、そうです。ブラトニックに断りを入れてからですね。何か私に出来る事は無いかと考えまして。ミール様とラインリッヒに相談して、急遽決まったって感じです」
「ブラトニックさんに断りを入れにいってから・・・じゃなくてミール様にチューされてからじゃないのかなぁ」
「なっ・・・」
ブルニの正直なツッコミに動揺するアーニャ。
「申し訳ございません。アーニャ様。ガタリヤ隊全員が目撃しておりますわ」
「んむっー!!」
アーニャは恥ずかしそうに口を一文字に結び、そしてミールを睨む。
「いや、だってしょうがないじゃん。そんなに睨むなって」
「良いなぁー、アーニャ様。ブルニもああいう所でチューしてみたいですっ」
「確かに・・・私達っていつも3人まとめてって感じだったから、ああいう特別感って無いわね・・・ねえ、ミールっ。今度2人でお出かけしよっ?!」
「ダメですわ、わたくしが先ですわっ」
「・・・ストップ、彼女ヅラ・・・」
「そ、そうだ。ルクリア言う通り。みんなの見ている前ではだな・・・」
「あんなに大勢が見てる時にチューしたくせにっ!」
ワイワイと盛り上がる女の子達に責められタジタジなミールをよそに、お年寄り達はお休みモードだ。
「じゃあ、ちと早いがワシらは寝るとするかの?」
「そうじゃな、老人には堪えるわい・・・」
「ええー??そんなぁ。なんか私はまだ眠くないなぁ・・・」
「ではリリフさん。あちらに遊戯部屋がございますので、そこで時間を潰されますか?」
「え?!ホントですかっ??アーニャ様!・・・あ、でも・・・あっちって聖女様のお部屋ですよね??リューイと聖女様の声が聞こえるのはちょっと嫌だなぁ・・・」
「うふふ。ご安心下さい。遊戯室と聖女様のお部屋の間には、メイドや護衛達の待機部屋がありますし、部屋も防音になっておりますので、声は聞こえないかと思いますわ」
「そっかー!それじゃあちょっとみんな行ってみようよっ!直ぐ解散するからっ、ねっ?」
「しょうがないのー、ちょっとだけじゃぞ」
「わーい。楽しみー」
リリフ達はゾロゾロと遊戯室に移動する。
遊戯室はビリヤードやダーツなど物理的な遊びから、瞬間魔力叩き|(モグラ叩き)や魔法円盤(エアホッケー)など魔力を競うゲームなどもあった。
「ねーねー。なにしよっか?」
「みんなで遊べるのが良いですわよね?・・・うーん、なにがいいんでしょう?」
「ワシらは別にいいぞい。リリフちゃん達で遊んだらええ」
「えー。ダメですよぉ。折角来たんだからみんなで楽しまなきゃっ」
「リリフ姉様っ、これなんてどうでしょうか?以前、姉様達に教えて貰ってとても楽しかった思い出がありますぅ」
ブルニが手に持っているのは魔道切り札(トランプ)だった。
「あーっ。いいねっ!それにしようっ!」
「確かにっ!ナイスアイデアですわっ!ブルニ」
「えへへっ」
「そんじゃあなにするかのぉ?ルチアーニ抜きでもするかの?」
「ルチアーニ抜き?」
ルチアーニはバコっとランドルップの頭を殴る。
「誰がババアだいっ?!ジジイに言われたくないよっ!」
「ぎゃっはっはっは!そうじゃそうじゃっ!」
「ではババ抜きから参りましょうっ!」
「はいっセリー姉様っ」
「さあさあっ、アーニャ様もご一緒にっ!」
「ええ??わ、私もやるのですか?!」
リリフ達、ルチアーニ達、アーニャ、そしてミールで丸いテーブルを囲む。
「ぎゃー!今絶対にアーニャ様、ジョーカー貰ったでしょー?!」
「な、ななななんのことだか分かりませんわっ!」
「アーニャ様・・・分かりやすいですぅ・・・」
「嘘がつけん性格じゃからのぉ」
「その点、ミールは全く分からんな」
「ふっふっふ。こういうのは得意ですっ」
「本当に黄色ちゃんは悪党だねぇ・・・」
ワイワイとみんなで楽しんでいると、まさかの聖女がひょっこり遊戯室に入ってきた。
「ええ??せ、聖女様っ?!」
「なんじゃ?随分と早いのぉ・・・」
「あっという間にいっちゃったって事?」
「でもあの若さですから直ぐに復活するのではないでしょうか?」
「・・・あの年齢はケモノ・・・」
「お兄ちゃんのエッチっ」
ヒソヒソと会話をするリリフ達を尻目に、アーニャが聖女に駆け寄る。
「せ、聖女様。どうなされたのでしょうか?」
「ふー。どうもこうもないわよ。入れた瞬間、果てちゃって。そしたら直ぐに気絶したのよ。今もベットで伸びてるわ」
「がっはっはっは!入れた瞬間か?!ソーローにも程があるのお!」
「いやいや、初めてならそんなもんじゃろ?」
「でも気絶するのは珍しいですわね?あの年齢は出しても直ぐに復活する鬼畜だと思ってましたのに・・・」
「・・・サルの発情期・・・」
「お兄ちゃんのエッチっ」
「全く・・・私も初めてよ・・・自分だけ気持ちよくなって聖女である私を置いて気絶するなんて・・・気がついたらお仕置きね」
「あー・・・なるほどね・・・」
ミールが何か分かったような言い方をする。
「え?ミールは何か分かったの?」
「ああ、多分だけど・・・リューイの適性って分かるよな?」
「うん、『愛の回復士』だよね??」
「ぷっ、なによそれー?それが正式な名前なの??」
「聖女様、正真正銘、正式な名前ですわ」
「この適性の特徴は、自分が信頼している人にしか回復魔法を発動させる事が出来ないって適性だったよな?」
「うんうん」
「多分それがパッシブスキルのように普段の生活にも影響してるのかもしれない。リューイの場合、相手に干渉するのは心を許した人のみって事になるからな。信頼していない人へ干渉するのはもちろん、干渉されるのもダメなんじゃないかな?だから信頼していない聖女の相手をして、気持ち良くなってしまったリューイは、心が耐えきれずに気絶してしまったって話さ」
「あー!なるほどっ!それはあるかも??」
「なによっ!?私の事を信頼してないですって!許せないっ!」
「いえいえ、聖女様。同じPTのわたくし達でさえ、リューイの信頼を勝ち取るのはそれはもう大変でしたわ。疑り深い子なのです」
「お兄ちゃんのエッチっ」
「ふーん、まあいいわ。それで?貴方達は何をしているの?」
「えへへ、ちょっと寝るのは早いかなー?って感じで魔道切り札(トランプ)して遊んでましたっ」
「お気楽ねぇ、貴方達・・・はぁ・・・こんな事ならペイン様を呼べば良かったわ」
聖女は特に気分を害している様子は無い。
もしかしたら話せるかも。そう考えたリリフは思い切って話をしてみる事にした。
「あのっ!聖女様っ!是非お耳に入れたいお話があるのですが??」
「ん?なに?平民」
「リリフさんっ!いけませんっ」
何を話そうとしているのかを、いち早く察したアーニャがすかさず止めに入る。
「アーニャ、いいのよ。さあ、話してご覧なさい。平民」
「ありがとうございます、聖女様。あ、あの・・・」
リリフは聖女が出てきた部屋の入り口に待機している、近衛騎士やメイド達を遠慮がちに見る。
「ん?なによ?そんなに聞かれたマズイ話なの?まあ、いいわ。貴方達、下がりなさい」
聖女は近衛騎士とメイド達に指示を出す。
「で、ですが・・聖女様・・」「聖女様っ・・」
同時に不安そうな声を上げる、騎士隊長ピッケンバーグとメイドのロココ。
「大丈夫よ。他の領主ならいざ知らず、少なくともアーニャは悪巧みはしないわ。貴方も分かるでしょ?」
「それは分かりますが・・」
尚も不安そうなピッケンバーグ。
おそらく立場的に少しでも離れる事が心配なのだろう。
リリフは直感だが、ピッケンバーグは口が固いイメージを持っていた。
そしてメイドのロココも聖女に対して高い忠誠心を持っていると感じていたので
「あああっ!あのっ!聖女様っ!ピッケンバーグ様とロココさんはそのままで大丈夫ですっ!お立場的に聖女様と離れるのは難しいでしょうからっ!」
「あら?そう?それじゃあ、この2人以外は下がりなさい」
リリフの言葉に、ホッとするピッケンバーグとロココ。
そして聖女の言葉通り、他の近衛騎士やメイド達は遊戯室を経由して、大広間から出ていった。
「ありがとうございます、聖女様」
リリフは近衛騎士達が出ていったのを確認すると、少し姿勢を正して語り出す。
「実はリビの領主ミラージュ様のご子息、ペイン様が聖女様を騙している可能性がございます。私は領主ミラージュ様とペイン様の会話を偶然聞いてしまいました。その話によるとペイン様は数多くの女性と今まで交わってきており、聖女様をまるで道具のように考えております。言いづらいですが、スランデル様も買収されているようです。そしてゆくゆくは聖女様とご結婚され、ルーン国を乗っ取ろうと考えているのです。是非彼らに自白魔法をかけて真実を追究して頂けないでしょうかっ??」
聖女はリリフの目を見て黙って聞いていたが、ふと視線を落とす。
一瞬だけだが、とても寂しそうな目をした聖女。
しかし、直ぐに明るい表情に変わる。
「ま、そうでしょうね。明らかに変だったもの・・・アーニャ、貴方は知っていたのよね?何故言わなかったの?それこそ晩餐会で暴露すれば大騒ぎになっていたでしょうに」
「・・・自分達の順位を上げる為に、人を陥れる行為が私は好きではないからです・・・あとは・・・スランデル様も関わっている事なので、国を揺るがす大事件に発展する可能性もあります。領主ミラージュ様が処罰されるとなると、リビの街も大混乱になるでしょう。そうなった時に巡礼中では対応出来ない事が多くございます。なので巡礼が終了して、順位の発表が確定した後に、それとなく聖女様にお伝えするつもりでした」
「ふうん。欲が無いのね、自分自身の身が危ういというのに」
「私は自分の信念を貫く事に決めました。もう私自身が領主であろうがなかろうが関係ないのです。それに・・・」
アーニャはここで言葉を区切り、目を閉じて胸に手をあてる。
「それに・・・聖女様の恋を邪魔したくはありませんでした」
「はあぁ??こ、恋ぃ?な、何言ってるのよ、ここここれはただの遊びよ。さっき言ったでしょ?明らかに変だったって!」
「ええ。でも、それでも恋してしまった。明らかに変だと思っても、オカシイと思っても、恋する気持ちは止められないものです。そして相手の言葉を信じてしまう。いえ、信じたい、この人の言葉を信じたい。この人とずっと一緒にいたい、この人に全てを捧げたい。そんな自分でも制御できない想い・・・私にも分かります。私も・・・ああ、絶対にこの人は私だけを見てくれるような人にはならないだろうなって思ってても・・・心が惹かれてしまう。例えその時だけでも・・・いえ、一瞬だけでも私を見てくれるならそれで良い・・・ふふふ、馬鹿ですよね?でも、それが恋なんだと私は思います」
静寂が部屋に訪れた。古時計の針が穏やかな時を刻む。
自分が言い出した事でこんな空気になっている罪悪感で、なんとかフォローしようとリリフが聖女に問いかける。
「あのぉ・・・聖女様もやります??魔道切り札」
「ちょっ!リリフ!聖女様に対してなんて口の利き方をっ!気安く誘うんじゃありませんっ!」
「あわわわぁ~・・・し、失礼しましたあっ!聖女様っ!」
頭を下げるリリフだったが、聖女はたいして気にしてないようだ。
「ふふ、流石ガタリヤね。このような庶民の遊びに夢中になれるとは」
「はっ、よく言うぜ。弱いからやらないだけだろ?」
照れ隠しにもみえる聖女の皮肉に相変わらずタメ口で絡むミール。
敢えて空気を変えようとしているのかもしれない。
少しだけ、ほんの少しだけミールの反応に嬉しそうな感じの聖女は応戦する。
「相変わらずムカツクわね。悪いけど、私強いから。たまにメイドとやるけど負けた事ないからっ!」
「はっはーっ!バカが!勘違いしてんじゃねーっての!メイドは手加減してるんだよ、聖女相手に勝つ訳にはいかねーだろ?真剣勝負ってのを見せてやるよ。座りな」
嬉々として絡むミール。
敢えて空気を変えようとして言っているという予想は勘違いかもしれない・・・
「ぐむむむぅ。いいわ、そこまで言うならみせてやるわよ!吠え面かくなよ!冒険者!」
というわけで、聖女も参戦のババ抜き開始。
「ぐわっはっはっは!残念でしたあ!」
「キイイ!ムカツクわ!所詮ババ抜きなんて運じゃない!こんなの無効よ!違うので勝負よ!」
「ははーん。いいぜ、それじゃあ7並べな」
「見てなさいっ!冒険者!」
というわけで、聖女を交えて七並べ開始。
「ちょっとっ!誰よ?!ずっと8を止めてる奴!」
「あ~ん。出せませんわぁ」
「ツライのぉ・・・」
「ひっひっひ。残念でしたぁ~」
「また貴方ねっ黄色冒険者!性格悪い!」
「ミール様が生き生きしてますぅ・・・」
「正に水を得た魚のようですわ・・・」
「これも運だわっ!もう1回!違うので勝負よ!黄色冒険者!」
「ふわぁぁああぁ・・・聖女様・・・ワシらはもう限界じゃぁ・・・」
「眠いのぉ・・・」
「それじゃあジジババ連中はここら辺で抜けさせてもらおうかね。黄色ちゃん、ほどほどにね」
「はい、お疲れっす。僕はもう少しこのバカ聖女をいたぶってから寝ることにしますよ」
「誰がバカですってええぇ!調子に乗るのもいい加減にしなさいよっ!大貴族っ!大貴族で勝負よっ!私これは負けた事ないんだからっ!」
大貴族とは大富豪の事だ。
「えっと・・・大貴族ってなんですかぁ?ブルニ初めてですぅ」
「ブルニちゃん。大貴族ってのは2が1番強いカードなんですわ。だから・・・」
セリーがブルニにルールを教えている間に、聖女は自分でカードを配り出す。
「あわわっ、聖女様、私がやりますよっ!」
「うるさいっ平民!さあ、始めるわよ!」
イライラした口調で言い返す聖女。かなりヒートアップしているようだ。
こうして、ミール、リリフ、セリー、ルクリア、ブルニ、アーニャ、聖女の総勢7名で大貴族(大富豪)スタート。
「ぐわっはっはっはぁっ!はいっ革命っと!」
「ぎゃああぁぁー!ミールの馬鹿ぁ!」
「この・・・平民・・・め・・・」
リリフもアーニャもかなり弱かったが、それにも増して聖女は激弱だった。
歯をギリギリとしながらフラストレーションを溜め続ける。
「おいおいおいっ。一体誰が強いんだって??ひひひ、言った通りだろ?手加減されてたのっ!バカにされてたのっ!これはもう認めるしかないんじゃねーの?ええ?おい?」
「ぐむむむぅ。もう1回よっ!もう1回!」
「あの・・・聖女様・・・そろそろ12時を回りますので・・・お開きに・・・」
「なにっ?!アーニャ!貴方勝ち逃げする気??最下位確定させるわよ!」
「えええ??そ、そんな・・・」
「聖女様」
珍しく後ろで観戦していたイケメン騎士ピッケンバーグが聖女に声をかける。
「なにっ?!ピッケンっ!」
イライラした口調で反応する聖女。
「僭越ながら、しばらくわたくしとご一緒にやりませんか?ちょっとしたコツなどをご教授できればと存じます」
「はっはっはっ。いやいや、ピッケンバーグさん。無理っすよ。コイツバカだから無駄に終わりますって」
聖女をコイツ呼ばわり・・・もはや何でもあり状態になってきている。
「いえいえ、ミール様。聖女様は本当にご聡明であらせられるのです。直ぐにミール様を脅かす存在へと変わるでしょう」
「がっはっはっ!買いかぶり過ぎですって!」
「おや?もしや・・・聖女様が成長されるのが怖いのですか?」
「へ?・・・」
予想外の煽りに素で返事をするミール。
それを聞いてニヤァっとした聖女は
「あらあらあら?散々偉そうにしていたのに、随分と器が小さいのですねぇ?あ~なるほどぉ。普段虐げられている毎日を送っているから、こういう時は自分も強くみせたいのですねぇ?寂しい人だわ。おっほっほっ」
「ふん、安い挑発だが受けてやる。吠え面かくなよ!クワレル!」
先程と同じような会話をして、しばらく聖女とピッケンバーグが一緒になって対戦することになった。
「あ、まだです。これを先に・・・」
「ここでこれを出します。そうすると次に自分の番になる確率が上がりますので・・・」
「これの上のカードはもう出たので、これを出せば自分の番になれます。そうしましたら・・・」
「これとこれとこれ。この3つはセットでお考えください。これを出せれば勝てるので、それまでに他のカードをどれだけ減らせるかが勝負です」
結構細かく、丁寧に教えるピッケンバーグ。
聖女は意外にも素直にピッケンバーグの意見を聞いて実践している。
「ふむふむ、なるほどね。ちょっと分かってきたわ。てことは・・・次はこれを出せば良いって事よね?」
「その通りでございます、聖女様。流石ご聡明であらせられる」
「うっふっふ。なるほどねっ!だいぶ分かったわっ!さあっ次が本番よっ!覚悟しなさいっ!」
聖女はピッケンバーグが言うようにかなり飲み込みが早く、あっという間に上位に食い込むようになった。
「くそっ!・・・ここでそれを出すかぁ・・・」
「あっはっはっはっはっ!さあっ!次はこれよっ!そしてこれ!」
「うわわあっ!凄いっ!聖女様!1位ですっ!」
「きゃ~!やったっ!やったっ!やったっ!やったあっ!勝てたあっ!うっれしいいぃぃ!やったっ!やったっ!」
めちゃくちゃ喜ぶ聖女。
ずっと最下位だったのが、自分の力で勝てて余程嬉しいのであろう。
「くそぉっ!たまたま運が良かっただけだろ!もう1回だ!」
「おっほっほっほっほ。いくらでもかかってくるといいわ、雑魚冒険者!」
その後も、完全にコツを掴んだ聖女はピッケンバーグの予想通り、ミールを負かすほどの腕前になっていった。
「ひええぇぇん。聖女様強~い・・・」
「革命されても強いなんて・・・」
「・・・聖女イズナンバーワン・・・」
「ブルニ、ビリばっかりですぅ・・・ふええぇぇん」
「おーっほっほっほっほっ!超嬉しいっ!なんて達成感なのかしらっ!凄く楽しいわっ!」
ご満悦の聖女はロココが用意した紅茶に口を付ける。
それに習ってリリフ達も一休み。クッキーや紅茶を楽しみながら談笑している。
「はあぁぁ。こんな楽しいの何年ぶりかしら。シャクだけど、褒めてあげるわっ!黄色冒険者っ!ムカつく貴方を負かすのがなによりも楽しいわっ!」
「あはは。聖女様・・」
「ふんっ。こんな庶民のお遊びで楽しんでもらえるなんて、随分お手軽な聖女様だな」
「ミール様。それは流石に負け惜しみですわ」
「ミール様が拗ねちゃってますぅ」
「ぐ・・・」
「ふふふ。でも確かに貴方の言う通り、だいぶ手加減はされてたようね・・・そのせいで勘違いしちゃってたのはあるかも知れないわ・・」
聖女はコクリと紅茶を一口。
そして開き直ったかのように話し出す。
「でもしょうがないと思わないっ?!だって誰も聖女だからって、ビビって近づいてこないし、何も言ってこないのよ?!全部、ぜーんぶ自分の言う通りになるんだから、そりゃ勘違いもするわよ、普通!」
「まあ、そうだな。お前の置かれた境遇を考えると、確かに同情の余地がある。周りはイエスマンだらけ。気に食わない事があれば、即排除できる環境に身を置いてたら、俺だって天狗になるだろうからな。だが、そんな環境は、ストレスはないかも知れないが、同時に極上の喜びを感じる事もできないかもしれないな」
「ど、どういうこと?」
「今の魔道切り札と同じってことさ。負ける悔しさ、つらさを感じながら、一生懸命努力して、自分の力で勝ち取った勝利は格別な味だったんじゃないか?ストレスもかかり、苦しさもあっただろう。だが、それを乗り越えての勝利だからこそ、極上の喜びを味わえたんだと俺は思うね。逆に手加減されてストレスのない試合で勝ち続けても、達成感は得られない。自分の力を過信した天狗になった者が誕生するだけだ。私は強い、凄いと勘違いしてる者ほど、見ていて滑稽なものはない」
「確かにね・・・でもどうしようもないじゃない。私は聖女なんだから。誰だってビビって何も言ってこないもの」
「そうだな。だがクワレル、俺はアーニャみたいな人間を側に置くのは良いと思うぞ。コイツは直ぐ正義感を振りかざそうとするからウザいぞぉ。上手く行かないと大泣きするしな」
「ちょっ!ミール様っ、あんまりです・・・」
「あっはっはっは。確かに。アーニャ、貴方ちょっと泣きすぎかもしれないわね。女の武器として使うのはいいけど、あそこまで鼻水たらしてガン泣きされると流石に引くわ」
「うう・・・」
「でもそうね。アーニャ、確かに貴方は違うかも知れないわね。これからも遠慮無く言って頂戴。貴方らしくね」
「はっ、はいっ!聖女様っ」
ちょっとだけ穏やかな雰囲気が部屋を満たす。
「ふわあぁぁ・・・流石に眠くなってきたな。そろそろお開きにしようぜ。今回の所は俺の勝ちってことで」
「はあぁぁ??何言ってるのよ?私の勝ちでしょ!」
「ちっちっち、総合的には俺が圧勝だぜ?何事も積み重ねてる奴が凄いの」
「ふんっ、まあいいわ。次は圧勝してやるんだから」
「私こそ負けないわっ!」
「ブルニも頑張りますぅ!」
なんだかんだいって、結構盛り上がったトランプゲーム。
それぞれ、自分の部屋に戻ろうと席を立った時に『ガチャッ』と聖女の部屋へと続く扉が開く。
そこにはモジモジしたリューイがバスローブ姿で立っていた。
「あ、あの・・・すみません、聖女様・・・僕って・・・いったいどうなったのでしょうか??」
どうやら気絶して記憶が無いようだ。
そんな兄にブルニが一言。
「お兄ちゃんのエッチっ」
続く




