聖女巡礼⑩
「そんな未曾有の大災害が起った場合はタウンチームやカントリーチーム、精鋭兵が対応する事になり、わたくし達が出る幕は無いかと思いますが・・・わたくし達が強くなる事も決して無駄ではないはずですわっ!これはピッチを上げる必要がありますわねっ!」
「ブルニっ頑張りますっ!」
「ほっほっほ。良いこと言うわい。ワシらも負けてはおれんのぉ」
盛り上がるリリフ達を尻目に、人知れず1人浮かない表情を浮かべるアーニャであった。
⇨聖女巡礼⑩
巡礼隊はいよいよキーンの街に入っていく。
晩餐会は19時から。まだ少し時間があるので、アーニャ隊は街を見て回る事にした。
「うっわあぁ~!建物がデカーいっ!そして高い!」
「あれは高層ビルって奴じゃぞ、リリフちゃん。キーンは2つしか建っておらんが、聖都は10以上は建ち並んでおるぞい」
「ひええぇぇっ!ガタリヤとは大違い!」
「1番高い時計塔さんも隠れちゃいますぅ」
「すみません・・・」
「あああ!違うんです!アーニャ様っ!私ガタリヤ好きですもの!」
「リリフちゃんの出身地の聖都スーフェリアはもっと凄いぞよ!見渡す限り高層ビルで首が痛くなっちまうんだ」
「んだんだ。ありゃ~凄かったのぉ・・・」
「魔法で動く箱みたいなのがあってね。レールの上しか走れないんだけど、とっても早くて1度に沢山の人を運べて便利だったわっ」
「へええ!そうなんだぁ!ガタリヤはみんな荷馬車ですものねっ!」
「道のあちこちにお馬さんのうん○が落ちてますぅ」
「・・・ホントすみません・・・」
「あああああっ!ち、違うんです!アーニャ様っ!私荷馬車好きですっ!」
「流石にキーンは準聖都だけあって、脇道とかも明るいな」
「確かにのぉ。そうじゃ、スーフェリアは街灯だけじゃなく道も光っておったのぉ。交差点とかカーブとかを知らせてくれるんじゃ。ありゃ凄かった」
「そうなんだ?!脇道に入ったら真っ暗なガタリヤとは大違いっ!」
「道も凸凹で沢山穴も空いてますぅ!」
「・・・ガタリヤにお金が無いばっかりに・・・皆様に不便をおかけして・・・」
「あああああっ!違うんです!私っ暗い道好きですっ!」
「はわわぁっ!アーニャ様??どーしたんですかぁ!またお腹痛くなっちゃいましたっ??ブルニがさすってあげますねっ」
そんなやりとりを見て
「ついつい口が滑って、余計な事を言ってしまうリリフちゃんと・・・」
「余計な事を言っている自覚すらないブルニちゃん」
「どっちもどっちじゃの・・・」
「ですわね・・・」
落ち込むアーニャに必死に弁解しているリリフと、背中をさすっているブルニを見て、同情の表情を浮かべるアーニャ一行であった。
晩餐会ではキーンの領主ブラトニックによる、3年間の成果の発表が行われていた。
「・・・というわけで、我が街キーンは税収も今期最高を記録し、民も満足しております。又、兵士の士気も高く、多くのクエストをこなすことが出来ました。中でもガタリヤ東部のザザの村付近に飛来したドラゴン討伐において、我が精鋭兵が多大な貢献をしたことは間違いございません。更に冒険者達も兵士に負けじと活躍しており、先日多くの犠牲者を出した巨大食中プラント。聖都からの輸送隊をことごとく飲み込んだ、この忌まわしきモンスターも我が街の冒険者が討伐しております。このように、住民、兵士、冒険者が一丸となって活躍した3年間であったとご報告させて頂きます。では、続きまして聖女様への信頼の証の贈呈を行わさせて頂きます」
キーン領主ブラトニックが差し出したのは、書類だった。
「では、これが証明書でございます。お約束通り、こちらは聖女様に差し上げます」
「うふふ。ブラトニック。期待通り素晴らしい贈り物だわ。流石ね」
一体なにを贈ったんだ?っとザワザワする大広間。
「皆の者、聞きなさい。このブラトニックは今わたくしが乗っている『魔動車』を提供してくれたのよ。今現在・・・何台なのかしら?ブラトニック」
「ははっ、聖女様。世界に3台のみでございます。1台は大聖女ハミス様、もう1台は生産地ドルグレムにあるので、実質大聖女ハミス様と肩を並べる代物でございます」
「まあっ素晴らしい!聞きましたか?みなさん。このブラトニックは非常に入手の困難な代物を何十年も前から準備していたのです。正に私の望み通りの一品ですわ。褒めてあげるわ、ブラトニック」
「ははー!有り難き幸せっ!」
「では早速寝室に向かいましょう。ブラトニックの事だから、きっと素敵な男を用意しているんでしょ?」
「ははっ!ただいまっ!」
扉から入ってきたのは、爽やかな好青年。スランデルの自白魔法の回答も申し分ない。
聖女は深く頷くと、足取り軽く奥の部屋に向かっていくのであった。
翌朝、暫定順位の発表。
キーンの領主ブラトニックはもちろんの事だが、他の領主達も結果に注視する。
街の成果も贈り物も、童貞男の質も申し分ない・・・いや、どうみても今までの、どの領主よりも素晴らしい出来だった。
これでキーンが1位になれなければ、いよいよリビの領主ミラージュの国政の参加、つまり息子のペインと聖女の結婚が現実味を帯びてくるからだ。
聖女がゆっくりと大広間に入ってくる。
そして順位が書かれた紙が領主達の前にお披露目された。
1位 リビの街 ミラージュ
2位 キーンの街 ブラトニック
・
・
・
10位 ガタリヤの街 アーニャ
この結果に落胆するブラトニック。そして他の領主達。
残りの街はガタリヤとクリルプリスだ。もう結果は出たようなモノ。
領主達は最悪な事態を避けるべく、直ぐに行動を起こす。
「まあ、ミラージュ様。今回も1位で素晴らしいですわね」
「ミラージュ様の街づくり、大変勉強させてもらっています」
「いやはや、かねてよりタダ者では無いと思っておりました。正に能ある鷹は爪を隠すですなあっ!はっはっは」
領主達は口々にミラージュを褒め称える。
要は今のうちにミラージュのご機嫌をとって、ミラージュが国王となった暁には、特別に取り計らって貰おうといった魂胆だ。
「いえいえ、わたくしなど皆様の足下にも及びません。まだまだ勉強させてもらっている次第です。今後も宜しくお願いします」
「ええ、是非お願いしますわ。おっほっほっほ」
「いや~ミラージュ様は素晴らしいですなあ。がっははっは」
領主達の笑い声が響くなか、アーニャは暗い表情だ。
いよいよ次がガタリヤ。
この道中、特にアピール出来ている点は無い・・・というより逆にマイナスだ。
このままでは・・・
しかし、特別に用意する贈り物のアテも無い。
特に男を用意する事はどうしてもしたくなかった。
このような事で何百万という住民の生活が決められるのは、オカシイと感じていたからだ。
だがしかし・・・
『郷に入れば郷に従え』
自分のこだわりを捨て、皆と同じように贈り物をした方が良いのではないだろうか?
聖女のご機嫌を取り、金と男で順位を勝ち取る方が良いのではないだろうか?
ずっとその言葉が頭の中をリフレインしている。
リビの街に入る前の一悶着。
あそこで自分の信念のもとに行動し、そして打ち砕かれた時から、アーニャはずっとそんな事を考えていた。
簡単に言うと弱気になっているのだ。
そしてどんどんと時間だけが過ぎていき、遂にガタリヤの順番になってしまった。
なんとしても最下位だけは・・・最下位だけは避けなくては・・・
アーニャは自分の策の無さを今更悔いる。
何処か正直に行動すれば、自分の信念を信じて行動すれば結果がついてくると思っていた。
ガタリヤの中なら、まだ自分の権力でなんとかなった。
しかし一歩外に出てしまうと自分の力の無さを痛感する。
他の領主達は3年間、この日の為に住民からお金を吸い取り、それを聖女に捧げる。
この日の為に、聖女好みの男を捜し出し、それを聖女に捧げる。
自分は街を良くする事で精一杯で、そういった外交の努力を怠ってしまったのかもしれない。
正義無き力に対抗出来るのは、力ある正義だ。
私は力無き正義なのではないだろうか?
言うことだけは1人前でも、内容は伴っていない半端者なのではないだろうか?
考えれば考える程、弱気な心に支配されていく。
「アーニャ様っ、またご気分が優れないのですぅ??」
気がつくと、ブルニがアーニャの顔を心配そうに覗き込んでいる。
「ごめんなさい。大丈夫よ、ありがとう」
アーニャは笑顔を作り、ブルニの頭を撫でる。
ブルニは嬉しそうに尻尾をフリフリしている。
こんな笑顔をなんとしても守らなければ・・・
馬車に揺られながら、アーニャは真っ暗な暗闇に進んでいるような錯覚を受けるのであった。
今夜の宿営地に到着した。
いつものようにテキパキと準備をするアーニャ隊の人々。
そこに馬に乗った兵士が訪れる。
「アーニャ様、領主ブラトニック様からお食事のお誘いが来ました・・・いかがいたしますか?」
ルイーダは遠慮がちにアーニャに尋ねた。
「そうですか・・・」
テントの前で椅子に座っていたアーニャは一言、まるで他人事のように呟く。
しばらく沈黙した後、アーニャは立ち上がりルイーダに告げた。
「お誘い承りました、とお伝え下さい。少し準備してから向かいますと」
「かしこまりました、アーニャ様」
ルイーダはお辞儀をして、使者に伝えるべく歩いて行く。
アーニャは逆方向に進み、声をかけた。
「ミール様、少しだけ・・・よろしいでしょうか?」
「え??俺?」
「はい・・・」
石で作ったカマドでお米を炊いていたミールは、1つ深呼吸してから立ち上がる。
「オッケ。それじゃあ、あそこで良いかい?」
ミールは少しだけ小高くなっている丘を指差す。
「はい、ありがとうございます」
そしてアーニャと共に歩き出す・・・が、振り向いて
「リリフ、聞き耳を立てないようにな?」
「びえっ!?わ、分かってるわよっ!」
リリフは完全に見透かされたって感じでオロオロする。
やがて2人は小高い丘の上に立つ。
頂上に木が1本生えており、空には肉眼でもクレーターが見えるような大きな大きな満月。
まるで映画のワンシーンのようだ。
「領主代理、通知登録しとこうか?」
「え?!よろしいのですか??」
「ああ、そうしないとリリフに聞かれるからな」
2人は魔力を込め、通話を開始する。魔法の膜に包まれて、完全に外との音が遮断された。
「これなら安心して話せるだろ?まあ、向かい合って通話で話すのも乙なもんさ」
「はい、なんか少しワクワクしますね、秘密基地のようで」
「座ろうか?」
ミールは木の根っこに腰掛け、アーニャも隣に座る。
お互いの吐く息も白い。
ミールはそれ以上なにも言わず、アーニャが語り始めるのを待っていた。
アーニャはミールから貰った純白のマントを握りしめながら、絞り出すように言葉を発する。
「ミール様・・・私を・・・今から抱いて頂けませんか?」
「・・・」
ミールは答えない。草の茎を引っこ抜き、引っ張ったり、ねじったりしている。
「先程、ブラトニックから食事のお誘いが来ました・・・恐らく順位融通する代わりに私の身体を要求してくるはずです。明日にはガタリヤに着いてしまいますので・・・これがラストチャンスかもしれません・・・序列順位はナマモノです・・もしかしたら突然キーンが1位になる事もあるかもしれません・・・そうなったらブラトニックは、わざわざ順位を下げてまで私を抱こうとは思わないでしょう・・ですので・・・私は・・・今日ブラトニックに抱かれようと思っています・・・ですが・・・やはり最初の相手は好きな人としたい・・・ですので・・・ミール様、お願いします。私を抱いて下さい。そしたらどんな困難にも立ち向かえる気がするのです」
ミールは相変わらず、なにも言わずに草をいじっている。
「私は・・・どうすればいいのでしょうか?・・・今、ミール様にお話ししている最中も・・・まだ迷っています。なにが正解なのか・・・いえ、きっと正解なんてないのでしょう・・・しかし、なんとしてでも最下位だけは抜け出さなければなりません・・・最下位になってしまったら、今まで築き上げてきたモノが全て台無しになってしまいます・・・それだけは避けなければならないと・・・」
涙が唐突に溢れてくる。
「もうっ!また涙が勝手に流れてくる・・・私ってこんなに泣き虫だったのですね・・・ミール様の前だと特に感情が制御できなくて・・・・」
プルプルと身体を震わせるアーニャ。
「ホントは!本当は・・・あんな男に抱かれるなんて絶対に嫌っ!絶対に絶対に嫌!・・・なのに・・・私はこうする事でしか・・・皆を守れない・・・悔しくて、悔しくて、自分が情けない。自分の信念を突き通す事しか考えて無くて、なにも策を要していなかった私が情けない。本当にこんな無能な私に期待してくれている住民達に申し訳ない・・・でもっ・・・だからこそ、私はここで諦める訳にはいかない・・・ここで最下位を取るわけにはいかないのです・・・」
アーニャは唇を噛みしめながら、涙を溢れさせながらミールに懇願する。
「だから・・・ミール様、私を抱いて下さい。そうすれば今後どんなに辛くても耐えられる気がするのです。お願いします。ミール様」
「嫌だね、お断りだ」
間髪入れず予想外の返答をしたミールにアーニャは目を丸くする。
「悪いが俺は悲しみに暮れる女を抱く趣味は無いんでね」
そう言うと立ち上がり、去って行こうとする。
「み、ミール様っ!」
アーニャの呼び止める声に、後ろを向きながら立ち止まる。
「領主代理・・・いや、アーニャ。お前は確か、巡礼に旅立つ前にこう言った。普通の事をしててもなにも変わらない。危険を冒してでも中枢に切り込まなければならないと。だからこそ、俺たち冒険者を連れていったんだろ?だからこそ、なんの関わりがない平民の為に服まで脱いで命を賭けたんだろ?確かに時には負けるときもあるだろう。権力に押しつぶされ、なにも出来ない自分に落ち込む事もあるだろう。だからって自分の信念を曲げてどうする?お前はさっきから住民の為、みんなの為って言ってるけど、単純にみんなのせいにしてるだけなんじゃないか?住民の為に最下位を取るわけにはいかない・・・だからこの身体を捧げてでも最下位を免れる・・・違うね、そんな事誰も望んでいない。それはただ単純に自分の保身に走っているだけだ。自分の地位に執着し、保身に走る奴に何かを変える事など出来ない。最下位がなんだ?領主の座がなんだ?そんなもんクソ食らえだ。お前に出来る事は策を弄する事では無い。バカ正直に世界中の領主がマネ出来ない程の正義感を振りかざし、何処までも弱い立場の者、虐げられている者達の為に自分の身が粉々になるまで当って砕ける事しか無いんだよ。当って当って、跳ね返されても当りまくる。その先にしかねーんじゃねーの?お前の理想としている未来ってやつは」
アーニャは大きな瞳を見開きながら、まばたき1つせずに聞いている。
ぼーっとなにかを思い出しているような感じにも見えた。
その瞳・・・涙で赤く充血している瞳は・・・
先程までは怯えるような、不安な光を放っていたが、今はクッキリと決意に満ちた、まるで炎を宿したかのような輝きに満ちている。
ミールは少し振り向くと
「少しはマシな表情になったじゃねーか」
ニヤッと笑うと、アーニャに近づき何かを渡す。
それは草の茎で編み込まれたヒモだった。ミールはそれをアーニャの手首に巻き付ける。
「これが切れると願いが叶うらしいぜ。まあ、オカルトだけどな」
アーニャは草で出来た腕輪を愛おしそうに触りながら
「ありがとうございます。ミール様。私、急用が出来ましたので、失礼致します」
アーニャは立ち上がり、力強く歩き出す。ブラトニックの誘いを断りに行くためだ。
「アーニャ」
ミールの呼びかけに振り向くと、ミールはそっとアーニャを優しく抱き寄せキスをする。
「!!!」
アーニャは一瞬ビクッと硬直したが・・・直ぐに目を閉じ、ミールを受け入れた。
とても優しいキス。
ほんの10秒ほどだったが、アーニャには永遠のようにも感じ取れた。
ゆっくりと唇を離し、アーニャの頭を撫でる。
「良い表情だ。今だったらさっきの提案乗っても良いけど?」
アーニャは笑いながら
「うふふ。申し訳ございませんが、私これから行く所がありますので」
「ちぇー、惜しいことしたなー」
2人はクスクスと笑い、再度唇を近づける。
「ありがとう、ミール様。なにも無い自分だからこそ、私は最後まで精一杯突き進み、そして見事砕け散ってきます。最後まで見ていてください」
「ああ、盛大に花火を打ち上げようぜ」
アーニャは笑顔で頷き、丘を降りていく。
「トール隊長!馬を用意してくださいっ!出かけます!護衛をお願いします!」
「は?は、はいっ!只今!」
アーニャは馬に飛び乗る。
トール隊長はてっきり自分が手綱を引き、アーニャは後ろで横向きで乗るのかと思っていた。しかし、アーニャは予想に反して、颯爽と馬にまたがる。
これがまた、かなり様になっている。
「アーニャ様、格好いい・・・」
思わずリリフがそう呟くほど、真っ直ぐ背筋を伸ばして見事に乗りこなしていた。
「では行きます!遅れないように!」
アーニャは人が変わったかのように、キビキビと動いて馬を走らせた。その姿はエネルギーに、生命力に溢れている感じだ。
「こりゃまた、随分とエネルギッシュになったのぉ」
「そりゃー好きな人からチューされちゃーねー」
「しょうがないですわねー」
当然丘の上の出来事なので、アーニャ隊の全員が目撃していた。
少し遅れてミールが丘から降りてくる。
「よっ!流石は女たらしじゃのー!」
「まさかここで決めてくるとはっ!」
「はあぁぁ・・・満月の丘の上で、初めてのキッス・・・ロマンチックですわぁ!」
「ミールのエッチ!バカっ!もう知らないっ!」
「きゃー!ミール様っ!ブルニもあそこでチューしたいですっ!ミール様っ早く早くぅ!」
「ブルニ・・・オチツケ・・・」
「で?で?どんな話をしたんじゃ?ほれほれっ教えてみんしゃい!」
「ははは。現在の世界情勢を少々語っただけですよ」
「ぬおぉぉ!秘密にするとはズルイぞ!ワシにも教えろ!そのテクニックを!女を虜にする能力をっ!」
「なにバカなこと言ってんだい。プライバシーの侵害だよ?全くっ・・・でもアーニャ様が元気になってくれて良かったよ。ありがとね黄色ちゃん」
「いやいや、破滅への第一歩かもしれませんよ?たきつけるだけたきつけたので(笑)」
「うふふ。それならそれでも面白いじゃない。どーせ悪巧みなんてあたしらには出来ないんだ。なるようにしかならないさね」
その頃、アーニャはブラトニックのテントに到着した。
「おおっ!アーニャ殿、よくぞ参られた。ぐへへ。さあさあ、こちらへ・・・」
「ブラトニック様、お断り致します」
「へ??な、なにがじゃ?!」
「順位融通をガタリヤはお断り致します。私が領主である以上、ガタリヤは一切の裏取引を致しません。よって、わたくしの身体も気安く触らないようにくれぐれも注意を宜しくお願い致します。以上です。それでは失礼致します」
クルッと踵を返し、去っていくアーニャ。
「ア、アーニャぁ!ワ、ワシにそんな口を聞いて、後でどうなっても知らんぞ!?よ、よーし!ワシを怒らせるとはいい度胸だ!ワシの力を思い知らせてやるぞっ!後で泣きついて来ても知らんからなぁー!」
大声で叫びまくるブラトニックにアーニャはピタッと立ち止まり一言。
「食中プラントの件、ブラトニック様なにもしてないですよね?」
そう言うと、馬に乗って去っていく。
遠くからブラトニックの憎しみのこもった叫び声が聞こえてくる。
「アーァ―――ニャーーァ―ア―ァ―!!」
続く




