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スライムには負けるけど魔王には勝ちます  作者: すふぃ~だ


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聖女巡礼④

「ふんぬ~!!違うもん!アーニャ様もきっとスライムパットだもん!偽乳だもん!絶対そうだもん!!」



 絶叫するリリフの後ろで、いつからいたのか、アーニャが引き攣った笑顔を浮かべながら

「あのー・・・もう少し声のトーンを落として頂けないでしょうか?・・・」



⇨聖女巡礼④




 翌日、アーニャの隊列はキーンの街にさしかかる。

 街道はキーンを経由して通じているので、どうしてもキーンの街の側まで行かなければならない作りになっていた。



「ブラトニック様はご出発されましたか?」

「いえ、まだのようです」

「そうですか。では、ここでしばらく待機いたしましょう」



 キーンは序列1位、ガタリヤは最下位。

 序列下位の街が上位より先に聖都に到着すると、後で色々と面倒なのだ。

 しばらくその場で待機するアーニャの隊列。

 1時間程が経過した頃、ようやく街の門が開きキーンの大行列が出てきた。



 先日の食中プラントの被害で超主力の第一部隊とタウンチームが全滅したそうだが、見た感じ影響は無いように見える。

 屈強そうな兵士達が見事に磨かれた鎧を纏って行進してくる。

 その数およそ2000人。



 聖女巡礼に参加する兵士は、誰でもいい訳ではない。


 兵士にも、冒険者のランクと似たような階級があり、その中でもトップクラスの精鋭兵と呼ばれる階級の者しか参加できないのだ。

 どの街も巡礼に出せるレベルの精鋭兵は1000人前後って所なので、これだけ多くの精鋭兵を出す事が出来るキーンは、兵の規模や質から見ても、やはり序列第一位は伊達じゃないといった感じか。



 隊の中央付近で、一際豪華な馬車が進んでくる。

 アーニャ達は、キーンの列の邪魔にならないように街道の外側に移動し、ずっとひざまづいていた。



 威風堂々と進んでいた大行列だったが、ちょうどアーニャの前に豪華な馬車が来るように、全体が止まる。

 馬車の窓が少し開き、アーニャを見下ろすように、キーンの領主ブラトニックが顔を出した。



「なんじゃ?アーニャよ、それしか兵がおらんのか?」

「はっ。ブラトニック様、お恥ずかしい限りでございます」

「しょーがないのー。ワシの列の最後尾に付くことを許す。そんな兵力じゃ、山賊にも勝てんぞ?」

「ははっ。ブラトニック様のお心遣い、感謝の念に堪えません。ありがとうございます」

「よいよい。よしっ、進め!」



 再び行進を開始した大行列の砂煙を浴びながら、アーニャの隊も列に加わるのであった。




 キーンから聖都へは3日はかかる行程だ。


 1日目の宿営地に到着した大行列は、早速野営の準備にとりかかる。

 焚き火の明かりや照明の魔石によって照らされたテントは、結界の光と調和して穏やかな光を放っており、暗闇の中で等間隔に並んでいる姿は、遠くからでも街の明かりかと見間違うほど圧巻で美しかった。



 一際大きなテントの前で、ブラトニックはアーニャを呼んで食事をしていた。

 ブラトニックはいやらしい顔つきで、アーニャを口説いているようにも見える。



「うわ~・・・ブラトニックのあの顔・・・気持ちわるぅい」

「やっぱりアーニャ様はお美しいので、ああいうウジ虫が湧いてくるのですわねぇ」

「ああぁぁ・・・手を握られてますぅ・・・あとで洗わないとっ・・・」



「もし・・・肉体関係を迫られたら・・・序列最下位だから断れないって事は・・・ないですよね?」



「流石にそれはないじゃろうが・・・アーニャ様自らが身体を差し出してくるよう仕向ける脅しはあるかもしれんのぉ・・・」

「えええ???アーニャ様自ら??絶対にないよ!そんなの!」


「例えば身体を差し出せば、序列の順位を上げるように、聖女様に進言してやるぞってとこかのぉ?」

「鬼畜ですわ」


「でもね。デトリアスのジジイの話だと、本当に身体を使ってのし上がっていった領主もいたんだってさ?なんでも今は序列5位のコートピアの街、その領主は今はすっかりババアになってるらしいけど、昔はもの凄く美人だったようでね。しかも、当時は領主になったばかりで透明感溢れる清純そのものって感じだったみたい。その時の領主達はデトリアスのジジイ以外、みーんな関係を迫ったらしくってね。そしたらなんとっ、その全員と寝たらしいんだよ。その見返りに9位だった序列は1位まで上がり、現在も5位を維持しているんだってさ。聖女巡礼に出た時は清純そのものだった領主様が、フェロモンむんむんの女になって帰って来たって話は有名だわさ」


「ひええぇ・・・アーニャ様もそうなったら・・・どうしよぉぉ・・・」

「逆にちょっと興奮しますわねっ・・・」

「アーニャ様はブルニが守りますぅ」

「アーニャ様は人間性の素晴らしいお方です。大丈夫でしょう」


「そうよね。私達に出来る事は少ないけど、なにかあったら直ぐに対応できる様に準備だけは万端にしましょっ!」

「はいっリリフ姉様!」



 リリフ達の予想通り、ブラトニックはアーニャの手をスベスベしながら、しつこく口説いていた。



「どうじゃぁ?ワシと一晩過ごせば色々と守ってやるぞい。順位融通をしてやってもよい。ふぇっふぇっふぇ。悪い話じゃなかろうて」


「おほほほ。ご冗談を・・・わたくしなどに関わると、キーンの序列にも影響されてしまいますわ」


「ひゃっひゃっひゃ。大丈夫じゃ大丈夫じゃ。この日の為に、手柄も沢山立てておる。先日の・・・ほれ、お前達が手間取った食中プラント。あれもワシらが討伐したではないか?んん??そうであろう?」



 なるほど、キーンが討伐したという事にしたいようだ。



 アーニャはブラトニックの思惑を察し

「はっ。あれは大変助かりました。お陰で輸送隊も無事、往来出来るようになりましたので。ありがとうございます」



「ぎゃっはっはっは。そうであろう、そうであろう。流石はアーニャ殿じゃ。あの偏屈ジジイとは違うのぉ。どうじゃ?このワシに全てを委ねてみんか?」



「ブラトニック様のお心遣い感謝致します。もし、今後・・・わたくしどもが苦境に立たされた場合は、考えさせて頂きますわ」

 アーニャは引きつった笑顔を浮かべながら、なんとかブラトニックの手を交わし席を立つ。



「本日はお招き頂きありがとうございます。また機会があることを楽しみにしておりますわ。それでは失礼致します」

「う、うむ・・・そうか。まあ、いつでも頼ってくるがよい。待っておるぞ」



「はっ」

 アーニャは一礼して、その場を後にする。



「ふむ・・・まあよい・・・時間はたっぷりあるでの」

 そう呟くとグラスワインを飲み干し、立ち上がる。



「ふーむ。よし、今日はお前じゃ」

 テントの前に一列に並んでいたメイドの1人を指名する。



 メイドは表情を変えること無く軽く一礼すると、ブラトニックと共にテントに入っていくのであった。




 アーニャは小走りで自分の野営地に戻ってくる。眉間にシワを寄せて表情は冴えない。

 側仕えのメイドがスッと近づき、アーニャの耳元でささやく。



「アーニャ様・・・お湯を沸かしております。まずはその手を洗い流してくださいまし」



 アーニャは心底ホッとした表情を浮かべ

「ありがとう。助かるわ」

 一直線にテントに入っていくのであった。



 しばらくテントから出てこなかったアーニャだったが、ようやくタオルで手を拭きながら出てくる。余程念入りに手を洗ったのかが想像できてしまう。



「アーニャ様っ、ご飯食べます?やっぱりもう食べてきちゃいましたか?」

「頂きますわ。もうぺっこぺこですぅ」


「あはは。わっかりましたぁ。今日はミール特製のお肉を使ってるので、とっても美味しいですよっ!」


「えっ??ミール様の!?」

「そうですわっ!美味し過ぎてビックリしますわよ?」

「ワシもビビったのぉ。人生でナンバーワンかも知れん」

「ブルニも美味し過ぎて、おかわりしちゃいましたっ!」



 アーニャは緊張した面持ちで、切り分けられたお肉を口に運ぶ。



「!」

 とても柔らかく、そして旨味が口いっぱいに広がった。

 アーニャは想像以上の美味しさにビックリしながらも、目を閉じ、しっかりと味わいながらお肉を平らげていく。



「はぁあぁぁ・・・これは想像以上の美味しさですね。正直ビックリしました。どこのお肉なんでしょうか?かなり高価なお肉ですよね?全員に振舞って頂けるとは・・・領主代理として感謝を述べさせて下さい」


「わっかるぅ!絶対に高価なお肉だと思いますよね!」

「え・・?」



 アーニャは予想外の言葉と、ニヤニヤしている周りの反応に硬直する。



「わたくしも完全に騙されてましたわ。まさか、これがガタリヤ産のお肉だとは思いませんものっ!」


「ええー!?が、ガタリヤ産なんですか?!これが??」

「そうなんですって。あたしらも未だ疑心暗鬼よ、全く」


「あはは。酷い言われようですね。正真正銘ガタリヤのお肉っすよ。熟成肉ってやつらしいです。作り方は僕もよく知らないですが」


「そ、そうなのですか・・・一体何処で入手出来るモノなのですか?」



「いや~・・・領主代理には、ちょっと言いづらいんですけど・・・グレービーっていう触媒屋の店主がいて・・・まあ・・・ここだけの話、異端児ってやつですね。そいつが作ってるんですよ。なんでも菌ってやつの力で、旨みを凝縮させるらしいっすね。でも作り方が難しく下手をすると腐らせるだけらしくて・・・今、安定して作り出せるように研究中らしいです。そのおおすそわけで貰ったんですよ」



「そうなのですね・・・以前、リリフさんのお仲間の・・・るくりあさん?・・・とても可愛らしい方が仰っていたのはこういう事なのですね。何故異端児ってだけで差別されなければならないのか・・・私達は異端児の人に助けられたんだって・・・なるほど。私も会ってみたいですね。その方に。そして直接お話してみたいです」



「あー・・・あははは・・・それは・・・やめておいたほうが・・・いいかなぁ?・・・」

「え、ええ・・・ちょっとあれですわ。アーニャ様はビックリされるかもしれませんわね・・・」


 グレービーの猛烈なアタックに、引きつった笑顔を浮かべるアーニャの姿が、目に浮かぶリリフ達であった。



 ちなみに。


 この世界にもビルビル(ビール)やワイン、チーズなどなど。数多くの発酵食品や、熟成食品が存在する。

 しかし、作り方は、全くの別物。

 こちらの世界では、錬金術師という適性を持った者が、食材と食材を組み合わせ、魔力を使って作り出しているのだ。

 故に、グレービーのように、実際に菌を使って発酵させる技術は、全くの未発達なのである。




 その後、もう2泊野営した一行は、ようやくお昼過ぎに聖都ルーンスワイラルに到着する。

 聖女巡礼が始まる前日だ。



 聖都の外壁は、各街の領主率いる兵士で埋め尽くされていた。

 1番門に近い場所に序列1位のキーンが待機し、そこからドンドンと左に並んでいく順番のようだ。



 以前も少し説明させて頂いたが、街は結界から少し距離を取って外壁が造られている。

 つまり、外壁と結界の間に、スペースがあるという事。

 通常の街は2〜300メートルくらいなのだが、聖都となると5〜800メートルくらいはありそうだ。

 なので、およそ1万人くらいの兵士達も、余裕で待機する事が出来ている。



 アーニャ達は一見、ただの見回りの兵士と勘違いされそうな人数を率いて、奥へ奥へと進んでいった。



「おい、なんで冒険者がいるんだ?」

「どこだよ、あれは?」

「ガタリヤだ、最下位の」

「あー・・・こりゃ今年も最下位だな」

 そんな声が至る所で聞こえてくる。



 アーニャ達はガタリヤが待機する場所まで到着した。

 見事なまでに浮いている。



 イメージ的にはサッカーグラウンドの中央で、30人が固まっているような感じ。

 他の領主達はスペースが足りない程の兵を率いてきているので、尚更、場違い感が否めない。



 しかし、最前列のアーニャは、微動だにせずに真っ直ぐ前方を見て、直立不動で立っていた。



 通常、人間は片方ずつ足に重心をかけて立っている。ずっと両足に平等に重心があると疲れるからだ。



 しかし、アーニャはピクリとも動かない。



 余程小さい頃から教え込まれてきているのであろう。

 こういったちょっとした事でさえ美しく見える。

 アーニャが子供の頃から努力してきたのが、垣間見える一面だった。




「あのっ、アーニャ様!お初にお目に掛かります。巡礼出立式の進行役を任されておりますクロップと申します」



 アーニャの前に馬に乗った一団が駆け寄ってきた。



「はじめまして。アーニャと申します」



「は、はいっ・・・あ、あの・・・そちらにいらっしゃるのは・・・冒険者ですよね?ちょっと冒険者の方は・・・遠慮して頂きたいのですが・・・」



「こちらの方々はわたくしの個人的な護衛です。聖女巡礼の兵ではございません。なにか問題でもおありでしょうか?」



「え??そ、そうですか・・・えっと・・・ご、護衛・・・は、兵士ではいけませんか?」



「残念ながらわたくしの兵は見ての通り、数が非常に少ないです。その数少ない兵をわたくしの護衛に割いてしまいますと、聖女様をお守りする事が出来ません。不出来なわたくしに免じて、何卒ご容赦頂ければと存じます」



「さ、左様でございますか・・・か、かしこまりました。一応聖女様にご一報させて頂きます。よろしいですね?」


「構いません。無理を言ってしまい申し訳ございません」



 クロップは弱々しい笑顔を浮かべて、去って行った。




 その後、各街の領主や主要な兵達は、聖都内のホテルに宿泊したようだ。

 外壁沿いに残っている兵は少なく、ちらほらと松明の明かりだけが元気に揺れている。



 もう季節は冬に入っているので、比較的温暖なルーン国でも夜は寒い。

 急な呼び出しだった事もあり、リリフ達は全く準備をする時間が無かったので、ガタリヤ隊が用意してくれたモコモコのマントを全員羽織っている。



 アーニャはそのまま待機場所で、他のみんなと一緒に野営するようだ。

 真ん中の焚き火を囲んで、アーニャ達も近衛兵達もリリフ達も、一緒になって食事を取った。



 だが、兵士達はかなり緊張した面持ちで、あまり食が進んでないようだ。

 それもそのはず。普段、アーニャと会話する事はもちろん、同じ空間を共有してる事さえ(はばか)られる。

 ましてや、食事を共にするなど(もっ)ての(ほか)

 イメージ的には国の王族のような感じ。

 それほど兵士達にとってアーニャは(おそ)れ多い存在なのだ。



 そんな緊張しまくっている兵士達は当然だが、明日が正念場なだけあってリリフ達もルチアーニ達も口数は少ない。



 しばらく焚き火のパチパチとした音、スプーンと食器が触れるカチカチとした音のみがガタリヤ隊を包み込む。



「アーニャ様・・・明日は・・・大丈夫ですよね?・・・」

 リリフが沈黙に耐えられずアーニャに話しかける。



「リリフさん、ごめんなさい。私にも分からないです・・・私が冒険者達を率いて待機しているのは、昼間のクロップさんが、既に聖女様に伝えていると思います。なので、明日が勝負ですね・・・」



「でも、でもっ。既に伝わってるのになにも言ってこないって事は・・・可能性はありますよね??ダメだったらとっくに言われていると思うしっ!」



「リリフさん。残念ながら、聖女様は悪戯好きなのです。こういった面白そうな出来事は、じっくりと味わってから処分を下すでしょう。なので、現時点ではなにも確定しておりませんわ」



 シーンとお通夜のようになるガタリヤのみなさん。

 他の領主の兵達はお酒を飲んでいるのか、風に乗って微かに笑い声が聞こえてくるので対照的だ。



「まあっ・・なるようにしかならんっ。それなら今考えるだけ無駄じゃ。ワシらの最後の夜になるかもしれんのに・・・こんなお通夜みたいな雰囲気はごめんじゃ!なにか楽しいことをしようぞ!」


「楽しい事・・・うーん・・・」



「分かりましたわっ!世界序列ゲームを致しましょう!」



「え?え?せかいじょれつげーむ?なにそれ?」


「世界序列ゲームとは最初にお題を決めて、順番にリズムに乗って答えていくゲームですわっ!まずはやってみましょう!そうしましょう!」



 お分かりかと思うが・・・要は山手線ゲーム、古今東西ゲームと同じだ。



「こ、これって・・・アーニャ様もご参加するのですか??」

「えっと・・・わたしは・・・」


「参加するに決まっとるじゃろ!アーニャ様もメイドちゃんも兵士達もな!間違えると罰ゲームがあるぞい!本気でな?!」


「わ、わかりましたわ・・・」

「ひいい。自分もでありますかぁ・・・」

「わたくし、アーニャ様のお世話がありますので・・」

「ダメじゃあ!逃がさん!さあ行くぞい!」



 アーニャはもちろん、メイドや兵達も普段はこういった遊びはしてない様子。

 最初はかなり苦戦していたが段々とどういうゲームか理解してきたようで、なんやかんや大盛り上がりで白熱していった。



「ブブー!リリフ!リズムに乗れてないので失格ですわっ!」

「ぎゃー!だってぇ。直前で言おうとしてたの言うんだもんっ!」


「あっはっは!リリフちゃん、後1回で罰ゲームだからね!」


「アーニャ様も後1回で罰ゲームよ!ほらほら、頑張ってぇ」

「あ、あのぉぉ・・・リズムが難しいですぅ・・・」



 弱々しい声を上げるアーニャ。



「ではではー!次のお題は~・・・異性の好きな所や仕草は??じゃっ!」



「えええ???なんですかあ??それはぁっ!」



 アーニャの悲鳴も虚しく、ゲームはスタート。



 パンパン

「料理上手!」

 パンパン

「寝顔が可愛い!」

 パンパン

「気遣いが優しい!」

 パンパン

「エッチがお上手ですわっ!」

 パ、パンパン

「む、胸がデカい!」

 パンパン

「お兄ちゃんのエッチ!」

 パンパン

「器がデカいんじゃ」

 パンパン

「じ、自分は華奢な所が好きであります!」

 パンパン


「え、え、っとえっと!その・・・最初は憧れみたいな感じで・・・話を聞いているうちに、いつの間にか好きになってたっていうか・・・初めてお会いしたときに目が合って・・・その瞳がとても優しくて素敵で!」



「・・・アーニャさま・・・そこまで詳しく言う必要ないです・・・」



 シーンと静まり返るガタリヤのみなさん。



「きゃああああああぁぁぁあぁぁ!」



 アーニャの悲鳴が草原に響く。アーニャは恥ずかしさのあまり顔を隠しうずくまった。



「ブブー!アーニャ様っ、リズムに乗れてないので失格ぅ~」



 リリフ達はもちろん、兵士達やメイドまで。

 こんなに取り乱すアーニャは見たことないので、驚きながらも嬉しさが込み上げてくる。

 親近感という奴がグイグイと生まれてきているのだ。



 大笑いに包まれる中、アーニャが反論する。



「ちょっと!ちょっと待ってくださいっ!さっきのブルニちゃん!あれはなんでオッケーなんですか??お兄ちゃんのエッチ!ですわよ??私、納得出来ません!」



 アーニャが猛烈に反論する姿もおかしくて、更に笑いに包まれる。

 アーニャも自分がムキになって反論している事にビックリして釣られて笑い出す。



 初めてかも知れない・・・



 こんなに大勢の人と笑い合ったのは。





 翌日、勢揃いするルーン国の領主と精鋭兵士達。

 総勢1万を越えると思われる兵士達が、一斉に綺麗に立ち並ぶ姿は流石に壮観である。



 その街ごとに基本色は違うので、彩りも鮮やかだった。

 ちなみにガタリヤは美しい白銀色の鎧で、キーンは漆黒の黒だ。



 皆、聖女が登場するのを今か今かと待っている。

 いつもは開いたままになっている東門も今日は閉まっており、聖女が到着したのかは直前になるまで分からない。



   ギイイィィィ



 重苦しい音を響かせながら、東門がゆっくりと開いていく。

 全員に緊張が走るのが分かる。

 聖女巡礼は冒険者にとっては鬼門のイベントだが、かといって兵士達も決して油断は出来ない。



 とにかく聖女が気まぐれなのだ。



 唐突に買い物したいとかは当たり前で、あれが食べたい、これが飲みたいなどなど。

 フィールドの道中でも、あの木の実が食べたい取って参れとか。

 川遊びがしたい、魚が食べたい、あの鳥が食べたいなどなど。

 少しでも粗相をしたものなら、即、粛清されてもおかしくはないのだ。



 毎回、聖女巡礼では多数の冒険者が犠牲になっているが、実は、その倍くらいの兵士達も命を落としている。兵士達にとっても気の抜けないイベントなのである。



「ねえねえ。ルチアーニさん達は聖女様を見たことはあるの?」

「あるわよぉ。もう何十年前って所かしら。遠くからだから、よく分らなかったけどねぇ」

「へえ~。ミールは?」

「俺もあったような・・・なかったような・・・あんまり記憶に無いな・・・」

「なにそれぇ?・・・あはははは」



 東門でザワザワしているのが分かる。

 リリフ達には、他の兵士達の影になっているので見えないが、大きな縦長の国旗が数多く掲げられているので、そこに聖女がいることは遠巻きながら感じる事が出来た。



 そしてその国旗は段々と左に、つまりガタリヤの方に近づいてくる。

 どうやら序列順に1人1人、領主が挨拶をしているようだ。

 ルーン国の街は合計で10個。つまりガタリヤは10番目だ。



 段々と近づいてくるにしたがって、なんとも言えない緊張感が漂ってくる。

 アーニャすら手の平に爪の跡が付いてしまうくらい、ギュッと力いっぱい握りしめていた。



 隣の9番目の街まで来た。



 兵士の隙間から、少しだけ聖女の姿を見ることが出来る。

 なにかの乗り物に乗っているらしく、座っているように感じた。

 服は白を基調としているドレス。とてもフィールドに出るような服装ではないように思える。



「皆様。ここが正念場です。なにを言われようとも決して声を上げないでください。例え、私が処刑される事になってもです。そうすれば皆様は救われるはずです。良いですね?」



 頷く事しか出来ないリリフ達。



 そして・・・



 遂に聖女が目の前に現れた・・・・




 アーニャ一同、ひざまずき、頭を下げている。

 その前に、ガラガラガラと音を立てて何かが前に止まる。



「アーニャ、久しぶりね」

「はっ。聖女様もご機嫌麗しゅうございます」

「うふふ。色々と聞いているわ。良いわ、アーニャと従者ども、面を上げなさい」



 顔を上げる一同、聖女の姿をマジマジと見る。

 若い・・・アーニャと同じくらいの年齢のように見えた。



 髪はオレンジがかかった茶色で、サラサラのロングヘアは腰辺りまで伸びている。

 三つ編みを絡ませてある髪型に、小さなティアラを載せていた。

 数多くの宝石がちりばめられているティアラは太陽の光に反射して、聖女が動く度にキラキラと輝きを放つ。



 瞳は黒に近い茶色、肌は透き通るような白で、ファンデーションの影響か、こちらもキラキラと小さな粒が光沢を放っていた。



 浅草にある人力車のような車に乗っており、アーニャ達を見下ろす形となっている。なので身長は定かではないが、アーニャと同じくらいに思えた。



 側仕えのメイドが大きな日傘を差していて、聖女を日差しから守っている。

 その他にも飲み物が直ぐに飲めるようになのか、水差しとコップを持っているメイド、上着を持っているメイド、巨大な扇で仰いでいるメイド、化粧道具と思われる箱を持っているメイドなどなど。メイドだけで10人は後ろに引き連れている。



 当然立派な甲冑に身を包んだ衛兵達も同じように後ろに引き連れている。

 1番近くにいる近衛兵と思われる男性は、顔で選んでいるのではないかと思ってしまう程、かなりの美青年だ。

 そんな衛兵達だけで、アーニャ達の総数を超えているように思えた。



「貴族を粛清したそうね。随分と苦労してるじゃない、アーニャ」


「はっ。お恥ずかし限りです。わたくしの力不足の為、貴族は反発し、反乱を警戒するためこのような少数の兵しか派遣出来ませんでした。ガタリヤの街、自分の領土を優先する対応を示してしまい、聖女様には合わせる顔もないといった状況でございます」



 これを聞いた聖女を含め、衛兵達、メイド、他の領主や兵士達も驚きの表情を浮かべた。



 街の序列は聖女の独断と偏見、気分で決まる。

 聖女巡礼の場は、いかに聖女をもてなし、良い気分にさせ、そして自分がいかに街の為に行動したか、 街を発展させたかをアピールする場なのだ。

 その為、アーニャのようにマイナス部分を話すのは異例中の異例となっている。



 しかし、アーニャにとっては予定通り。

 この正直にマイナス部分を認めることで、聖女から慈悲をかけてもらい、許しを得たい。

 そういう思惑があるアーニャにとって、今まさに正念場の時なのだ。



「ふふん。そう・・・なんか大爆発も起こったみたいね?大丈夫だったのかしら」


「はい。街への被害は軽微なものでした。そして、爆発地には水が溜まり、結果的に貯水池が出来たことで農作物の収穫は飛躍的に上がりました。しかし、狙った政策ではありませんし、未だに原因も不明です」



「ふふふ。なんか冒険者も随分と減ったようね?」


「はい、ドラゴン討伐において多くの損害を出してしまいました。ドラゴンは変異種だったようで、幸いにも近くを通りかかったトリクメスタン国のガウディ一派が討伐して頂けて事なきを得ました。そうでなければと思うと・・・ゾッと致します」



 アーニャが言っている事は嘘では無い。そして聞かれている事だけ答えている。

 1位から8位までの領主は、聖女の問い1つに10の返答で返すほど、必死に自分達をアピールしていたので、全くの真逆。

 平然と扇を仰いでいるメイドすら、心の中で『もっとアピールすれば良いのに』と思ってしまうほどだった。



 しかし、アーニャ達にとっては予定通り。

 さあ、どう出る?聖女様。

 リリフ達やルチアーニ達、そして兵士達は固唾を飲んで聖女の反応を伺う。

 こちらは言うだけの事は言った。やれる事はした。

 あとはアーニャ様の直感を信じるのみ!




「あっっはっはっは!ダッサーい!あの偏屈ジジイ!冒険者中心の街作りとか言っといて、全然出来てないじゃない!ウケルー!」




 聖女は大爆笑、シーンと静まりかえっている平原に笑い声がこだまする。

 聖女が言っている偏屈ジジイとはもちろんアーニャの叔父、デトリアス・イウ・スローベンの事だ。



「全くあのジジイは巡礼中、事ある毎に私に説教してきて本当にウザかったわ!ムカついたからずっと最下位にしてやってたの。でもアーニャ。話を聞いてる限りだと、貴方の代になっても今年もガタリヤの最下位は、どうやら確定のようね?」



 この言葉に他の領主達は少しホッとする。



 今まで確定的に最下位を取り続けていたガタリヤが、今回から領主代理が参加するという。

 順位が聖女の独断と気分で決まるせいで、最後まで気が抜けないのが順位発表。



 もしアーニャが聖女に気に入られでもしたら、順位は大幅に変動するだろう。



 仮に自分達の街が最下位なんてものを取ったら、恥ずかしくて家に帰れないくらいなのだから・・・

 そういった意味で、今年も最下位の心配は無さそうだなって、ホッとする領主達。

 


 対して、アーニャ達はがっくしだ。

 率いる兵士達が少なすぎる点の打開策として、正直に全てを話し、許しを得る作戦だったが、聖女の反応は今一つ。とても救済しようとは思っていない感じだった。



 完全に当てが外れている。



 この分では、冒険者を連れている事も最悪の結果になるかもしれない。

 アーニャは背筋から汗が噴き出ているのを感じる。

 なんとしてもそれだけは避けなければ・・・




「聖女様!もう良いでしょう!こんな輩と会話するべきではありません!即刻処分するべきです!」




 いきなり口を出してきたのは、カールしている口ひげが印象的な、日焼けした中年の男性。

 身につけている甲冑の素晴らしさと、この状況で意見を言える事を考えると、かなりの権力を持っている人物だと想像出来る。



「そうね。残念だけどアーニャ、もう街に帰っていいわよ」



 最悪の言葉が聖女から出てしまい、絶望の表情を浮かべるアーニャ。

 リリフ達も無念の表情、悲壮な表情を浮かべる。



「それとも、なにか他に良い話でもあるのかしら?」 



 聖女は少しイタズラっぽい笑みを浮かべ、頬杖を付きながらアーニャの反応をみる。



 ラストチャンスだ。



 ここで何か言わなければ、本当に聖女巡礼さえ参加出来なくなる。

 そうなったら、完全にガタリヤの領主ではいられなくなる。



 民達の期待に応えなければ・・・

 お爺様の期待に応えなければ・・・

 何か、何か言わなければ・・・



 しかし、そう思えば思うほど、身体は硬直し頭は真っ白になるアーニャ。



「聖女様っ!時間の無駄です!こんな虫けらほっときましょう!」

 先程の口ひげの男が聖女をせかす。



 聖女はふうっとため息を吐き、椅子に深く腰掛け

「行きなさい」

 人力車を引っ張っている男に命令する。




「はん。ダストン将軍に手も足も出なかった奴が偉そーに」




 ピクッと反応する口ひげの男。



「誰だああああぁぁ!今俺を侮辱したのはあぁ??!!」



「あれ?俺はあんたの名前なんて一言も言ってないけど?てことは自分でもそう思ってるって事か?ウケるな。ぷくくくっ!」



 挑発しているのはミール。

 ヘラヘラとその場から立ち上がり、悪態をついている。



 アーニャもリリフ達も、ルチアーニ達も兵士達も。

 悲壮とか無念とか、そういうレベルではない。

 よりにもよって、聖女の目の前でケンカを売っているのだ。



 驚愕、絶望、そして終焉。



 もう終わりだ、完全に殺されるという思考。

 そして目の前で起っている事実に現実を受け入れられない表情を浮かべて、ヘラヘラと笑っているミールを、まるで宇宙人をみるような目で見上げている。



「貴様ぁぁあぁ!死ぬ覚悟は出来ているんだろうなぁ!?」



「いやいや、僕じゃないですよ。ダストン将軍から伝言を頼まれていただけなんで。苦情はダストン将軍に言って下さい。貴方が勝てなかったダストン将軍に。深夜に隠れて闇討ちしに行ったら逆に返り討ちにあったダストン将軍に。聖女様には言わないでと泣いて懇願したらその通りに約束を守ったダストン将軍に。その後、毎年内緒でお中元を・・・・」




「ちょっっっっとおおおおおおおお!!!待てエエエエエエえエエエエ!!」




 ミールの話を強引に遮る口ひげの男。肩でゼエゼエ息を吐きながらも、目は血走っている。



「なんですかぁ??ルゾッホ将軍。あ、今年のお中元の内容ですか?えーっと、ルピロス産トンプーのハムと・・・・」




「ぬおおおおおおおおおぉぉおぉおお!!!」




 甲冑をガシャガシャと鳴らしながら、大股でミールのもとに走り、手で口を塞ぐ口ひげの男。

「ぐむむぅ・・・」




「アアアアーニャ!こ、こいつを連れてきたのは貴様かあ!??聖女巡礼に冒険者を連れてくるとは良い度胸だ!貴様も死ぬ覚悟が出来てるんだろうなあ?!」




 口を塞がれたままのミールから、アーニャに視線が送られる。

 なにもビビる必要など無い。その目はそう言っているように聞こえた。

 アーニャは力が湧き上がるのを感じる。



「お言葉ですがルゾッホ将軍。この冒険者はわたくしの個人的な護衛です。聖女巡礼にはなんら関係ありません」



「護衛だとおお??ふざけるなぁ!ジジイとババアとこいつは黄色ランク!あとの奴らは全員緑ランクときたもんだ!しかも亜人なども連れおって!そんな奴に護衛が務まるかあ!」



「ルゾッホ将軍。貴方の言う護衛という任務に必要な資質はなんですか??」


「なんだとお??そんなの・・・決まっとるじゃろ!力だ!経験だ!」



「わたくしはそうは思いません。護衛において1番大切なのは信頼感です。どんなに力があっても裏切る可能性がある人に背中は任せられません。どんなに経験があっても自分勝手に動く人に自分の運命を預ける事など出来ないのです。この冒険者達は確かにランクは低いです。年齢も高い人が多く、力も皆様のような騎士様には遠く及ばないでしょう。しかし、絶対に裏切りません。絶対に私を見捨てません。最後までわたくしを守ってくださる方だと確信出来ます。この方達はわたくしにとって最高の護衛です。馬鹿にするのは止めて頂きたい」



「ぐむぅ・・・・」

 言葉に詰まるルゾッホ将軍。



「あーははっっはっははっ!貴方の負けね。ルゾッホ」

 聖女は手を叩きながら大爆笑でルゾッホの負けを認める。



「せ、聖女様!」

 非難の声を上げるルゾッホ将軍。



「いいわ。中々良いじゃない、アーニャ。やけに大人しいからガッカリしたけど、今の感じはとても良いわ。貴方達の同行を認めます。ただし、ずっと最後尾で付いてきなさい。精々山賊に襲われないよう願う事ね」



 ルゾッホ将軍はミールから離れ、聖女に駆け寄る。



「せ、聖女様!いけません!ぼ、冒険者を連れて巡礼に行くなど・・・」



「私はこの者達の同行を認めると言ったのです。私の決定に異を唱えるのですか?ルゾッホ」

 うって変わって低いトーンで威圧的な態度を示す聖女。



「ははー!も、申し訳ございません!全て聖女様の仰せの通りにっ!」

 土下座で許しを請うルゾッホ将軍。



 ルゾッホ将軍は聖女に継ぐナンバー2の立場だ。

 その権力は領主よりも上。

 主にルーン国の軍事面は、このルゾッホ将軍が仕切っていると言ってもいい。



 そんな立場のルゾッホ将軍でさえ、聖女の機嫌を損ねれば命の保証はない。

 そんな聖女の絶対的な権力が垣間見えるルゾッホ将軍の土下座であった。





 聖女が東門へと去って行ったのを確認すると、一斉に脱力感が溢れてくる。



「だああああぁぁああぁ・・・た、助かったああぁぁ・・・」

「もうダメかと思いましたわあぁぁあぁ・・・」

「うえええんん。嬉しいよぉぉ!」



 アーニャもその場に立ち尽くし、放心状態のようになっている。

 華奢な首筋から汗が滴り落ちているので相当な緊張感であったと想像出来る。



「テメエっ!ミール!ジジイの寿命を縮める気か?!」

「ホントおばちゃん、心臓が止まるかと思ったわよ」

「ははは。イラッとしたのでつい・・・」


「信じらんない!!いつもは私達に考えて行動しろっとか、権力者には逆らうなとか言ってる癖にいぃぃ!私達、ミールのせいで死ぬとこだったんだからねっ!」


「悪かったって。ごめんて」

「もおぉぉぉっ・・・」



 リリフはぷんすかするが、心から怒っているのではない。

 ミールが突っかかったお陰で助かったのが分かっているからだ。



「でもなんかエライ詳しかったのぉ?あれは全部真実なのかい?」


「ははっは。この前まで図書館に籠もりっきりだったので・・・結構小ネタが増えましたよ。ロイヤーさんのもありますよ?言いますか?」


「にゃ、にゃに??い、イヤ。遠慮しとこうかの・・・」


「まあ、黄色ちゃんのお陰で助かったってのもあるしね・・・結果論みたいな感じだけど正真正銘ピンチだったのは本当の事だし。終わりよければ的な感じだわねっ!」


「あはははっ」



 全員脱力感が凄いので、未だに座り込んで力無く笑っている。

 立っているのはミールと、そしてアーニャのみ。

 そのアーニャは先程からピクリともしない。ミールも横から様子を伺うが、未だ放心状態のようだ。



「アーニャ様?・・・大丈夫?」

 リリフが心配そうに声をかけると、ようやくピクっとして、ゆっくり振り向く。



「も、申し訳ございません。今になって足が震えてきてしまいました・・・」 



 アーニャは弱々しい笑顔を浮かべると、フゥッと気を失ったようで棒立ちのまま後ろに倒れる。



「アーニャ様っ!?」

「きゃあ!」

「アーニャ様ぁっ!!」



 リリフ達もルチアーニ達も兵士もメイドも、突然の事に悲鳴をあげた。



 しかし、寸前でミールがガシッとアーニャを支えて事なきを得る。

 幸いアーニャは直ぐに意識を取り戻すが、ミールに抱きしめられている事、ミールの顔がめっちゃ近くにある事に動揺を隠せない。



「ご、ごめんなさい」

 真っ赤な顔で謝る。



「アーニャ様、こちらに」

 メイドが簡易の椅子を用意したので、ミールは支えながらアーニャを座らせた。

 アーニャは椅子の上で借りてきた猫のようになっている。



 その様子を微笑ましい顔で見守るガタリヤの皆さん。

 唯一、リリフだけは不満げにぷく~と頬を膨らましているのであった。



    続く

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