ガタリヤ奮闘記㉖
「凄い存在感の方でしたわ・・」
「そうだな・・・多分、これから野良デーモンが現出すると思うが、あの人がいれば大丈夫だろう。よしっ・・・街中はパニックになってるそうだ!冷静に突き進むぞ!」
「はいっ!」
⇨ガタリヤ奮闘記㉖
しばらくして北門から街に入る。
道には植木鉢やバケツ、ゴミなどが散乱していた。
土砂も振ってきてたようで、足場も悪い。
ミールは転ばないように慎重に・・・しかし急いで星竜街7丁目に入っていく。
幸いな事に星竜街はガタリヤの北側に位置しているので、距離的には近い。
ミール達は急いでココ治療院を探す。
「ありましたわ!ミール様!」
「ナイス!」
元々、ここ星竜街は貴族連中が住むセレブ街で、立派なお屋敷が多く建ち並んでいた。
その数々の屋敷の豪華さに負けること無く医院は存在感を放っており、白を基調にした建物にはココ治療院と可愛らしい文字でかかれた看板が掲げられていた。
シンプルだがセンスが良いデザインが目を引く。
オープン祝いのお花が入り口に多数飾られているが、爆風の影響なのであろう。斜めになっていたり、倒れてたりしていた。
ミールは血だらけのリリフを背負いながら、構わず院内に入っていく。
「きゃっ」
「なになにー?」
「まあ、汚い・・・」
客層もやはり富裕層の人が多いようだ。貴族のおばさん連中は汚らわしい者を見るようにミールを煙たがる。
「こ、困ります!お客様っ!」
慌てて看護師さんと思われる女性が駆け寄ってくるが
「ああ、良いんです良いんです。ミールさんですね?どうぞこちらへ」
扉の奥から修復士と思われる男性が顔を出し、ミール達を奥へ案内した。
「もうっ!先生!事前に言っておいてくれないと困ります!」
「あははは。ごめんよぉ」
どこかノンビリとした雰囲気の修復士は笑顔を浮かべながらも、テキパキと準備をする。
「ここに寝かせて頂けますか?」
ミールは診察台に優しくリリフを寝かせた。
修復士は素早く全体を観察し、眉間にシワを寄せる。
そして白く光る手をリリフの頭から足の先まで、ゆっくりとかざした。
おそらく診断魔法ってやつだろう。
「ふうむ・・・かなり厳しいですね・・・この無くなった腕はありますか?」
「あ・・・あります」
ミールは後ろに下がり、荷物から腕を取るフリをする。
セリーやブルニには他の人にはマジックポケットの事を内緒にするように伝えているので、自然と影になるような場所に立ち位置を変えてくれている。
「これです」
ミールはリリフの左腕を診察台に置く。
少しバウンドウルフに噛みつかれているが、セリーが直ぐに回収してくれたお陰で状態は良い。
「おおっ。凄い。まるで今、正に切られた瞬間のような鮮度だ。これならいけるかもっ!」
修復士は目を輝かせて驚いた。
マジックポケットは異空間(多分)に繋がっているので、腐敗などは起らないのだ。
「アニータ!直ぐに鱗を持って来てください。早くしないと手遅れになる」
修復士は看護師に指示を出すが
「せ、先生・・・鱗は・・・在庫が無いです・・・先日から聖都からの物流が止まってしまってるので・・・まだ入ってきていません」
「なんですとっ??くそ!直ぐに他の治療院に連絡して在庫があるか確認してくださいっ」
「は、はいいっ!」
バタバタと大急ぎで受付に走る看護師さん。
「そ、それが無いと・・・治療は無理なのでしょうか?」
セリーの質問に
「かなり厳しいです・・・外傷はもちろん、内臓の破損も有り内出血が複数確認できます。すでに生命力もかなり削られているでしょう。これほどの状態になると、その他の触媒では治療に耐えきれず命を落とす可能性もあるのです・・・」
「鱗ってドラゴンの鱗?」
「え?あ、はい。そうです」
ミールはまた後ろに回ってマジックポケットから、ザザの村に飛来したドラゴンの鱗を取り出す。
「これは使えるかな?」
修復士はギョッとして
「こ、これは?!さ、最高級の鱗じゃないですか?!す、凄いっ。これほどの鱗は滅多に見られませんよっ?アニータァ!鱗ありました!直ぐ始めます!準備してください!」
「ええ??わ、分かりましたっ!」
アニータと呼ばれた看護師は直ぐに魔法陣を引き準備を進める。
と、そんな中、3人のおばちゃん達が診察室に入ってきた。
「ちょっとぉ!何時まで待たせるのよっ!?この子は後から来たじゃないっ。私が先でしょ?!割り込まないでくださるぅ?」
「そうですわっ!わたくし達の後にしてくださる?!」
「全く!こんな汚い小娘ほっといてくださるっ!?」
いかにも意地悪な人がかけてそうな尖った眼鏡(偏見)をクイッと手のひらで上げて、おばちゃん達はギャアギャア言ってくる。
「見れば分かるでしょう??急患ですっ。申し訳ないが少し待っててください」
「なによぉ?こんな小娘知ったこっちゃないわ。私を誰だとお思いかしら?抗議させますよ?ココ院長」
「そうですわ!ダルムル夫人を差し置いてなど以ての外!」
「そうよ!そうよ!」
「ダルムル夫人。今は命がかかっているのです。お願いです。少し時間をください」
「だ~か~ら~!こんな小娘、死のうが生きようが関係ないでしょっ?!私はこのご婦人方とお夕食に行かなくてはならないのっ!いいから早くして頂戴っ!」
「そうですわ!わたくしもほらっ!こんなに擦り傷があるのよ!化膿したらどうするのかしらっ!」
「本当よ!命の危険ならわたくし達の方があるわ!早く見てちょうだい!」
普段ならとっくに割り込んで、下手したら殴り倒しているミールだったが自重している。まだ会ったばかりで、院長がどのような人物なのか分からないからだ。
もしこのおばちゃん達に反抗的な態度を取って『お客様に対してそのような態度をする方をお助けする義理はありません』などと言われてしまったらアウトだ。
しかしこのババア達・・・さっきからギャアギャアと。
明らかに、ただのかすり傷に大袈裟に騒ぎやがって。
人の命をなんだと思ってるんだ?
これだから貴族は嫌いだ。
イライラが溜まったミールが拳に力を込めた瞬間、ココ院長の大声が院内に響く。
「出て行きなさいっ!ここは貴方のようなクズが来る所ではありません!さあっ!さあっ!!」
強引におばちゃん達を押し出す。
「きゃあ!乱暴はよしてちょうだい!」
「なによ!なによ!」
「ちょっ!ココ院長!こんな事してどうなるか分かってるんでしょうね!?言いつけますからね!覚悟しなさい!」
一斉に騒ぎ出すおばちゃん連中に、ココ院長は大声を張り上げる。
「やってみろってんだっ!クソババア!冒険者上がりを舐めんなあぁ!」
おばちゃんはキイイっと叫び声を上げながら、飛び出すように出て行く。
怒りが収まらないココ院長は
「カスがぁ!二度と来るなあぁ!ボケェ!」
と外に向かって大声を上げている。
普段おっとりしている人が逆上する事ほど、コワイものはない・・・
看護師さんも、院内で待っていた患者さんも、そしてミール達もポカンとしている。
ハッと正気に戻ったココ院長は
「失礼しました!さあっ始めます!皆さん!魔法陣の外へ!」
直ぐに冷静になって、ミールから受け取った鱗を魔法水に浸した。
ミール達は急いで魔法陣の外に移動して、成り行きを祈る気持ちで見守る。
ココ院長は切り離されたリリフの腕を、元あった場所に置く。
そして触媒の鱗に魔力を込めた。パアァっと光り輝き、鱗は魔法水に溶けていく。
「はあああああっ!!」
ココ院長は光り輝く魔法水をリリフに振り掛け、更に魔力を高める。
「レパレーション!(修復)」
ココ院長の力ある言葉が放たれた。
これを七色に光り輝くと言わないで何と言おうか?
鮮やかに色とりどりの光が、まるでダンスホールの照明のようにグルグルと回転しながら診察室を照らす。
一見すると鮮やか色に包まれているので、ノリノリな感じに見えてしまうが、ココ院長は額に汗を浮かべて苦悶の表情を浮かべている。
「むむむむむっ・・・」
険しい表情のまま魔力を送り続けるココ院長。看護師さんが額の汗を拭ってあげている。
「お嬢様・・・お願い・・・わたくしを置いていかないで・・・」
「リリフ姉様っリリフ姉様っ!」
「神様。どうか・・・」
セリーも、ブルニも、リューイも必死に祈りを送り続けている。
10分ほど経過し、光の回転は段々と速くなり、光も一段と強くなる。
パアアアアアッ
輝きがMAXになり、目が開けられない程の真っ白な光が現れる。
段々と光りは収束していき、替わりに腕の繋がったリリフがスヤスヤと穏やかな寝息をたてて現れた。
「ふう・・・成功です・・・」
ココ院長は静かに成功を伝える。
「!!!」
「うわああ~っんん。りりふねーちゃまあぁっ。よかったああぁ」
「良かった・・・本当に良かった・・・」
あまりに嬉しくて、そして本当に助かった事が信じられなくて。
セリーは声を出せずに大粒の涙を流し、ブルニはわんわんと大泣きし、リューイは静かに成功を噛みしめる。
流石のミールもヘナヘナっと椅子に腰掛け、安堵の表情を浮かべていた。
「ふうぅぅ・・・やれやれ・・・なんとかなったか・・・」
「お力になれてなによりです。こちらといたしましても久しぶりに緊迫した治療をして、初心に帰れた気がします。ありがとうございます」
「いやいや・・・あの貴族のババアは大丈夫なのか?なんか権力があるっぽい奴だったけど・・・」
「ははは。ダルムル卿。この街で先日粛清されたマンハッタンと肩を並べる4大貴族の1人ですね。そのご婦人です」
「えええ??だ、大丈夫なのですか?そんな方を・・・追い出してしまって・・・」
「まあ・・・大丈夫でしょう。あの方はこの界隈では有名なクレーマーなので。結構出禁になっているお店も多いと聞きますし」
「え!?貴族のご婦人を出禁なんかにしちゃって、仕返しされたりしないのですか??」
「ダルムル卿は一応穏健派で通っていまして、強引に権力を振りかざすタイプではないのですよ。まあ、その分策略家ではありますが、今みたいなご婦人のワガママな行ないには全く関与してこないですね。もしかしたらダルムル卿自身もご婦人にウンザリしているのかもしれません」
「なるほどねぇ〜」
「う、ん・・・ん・・・」
そんな会話をしていたらリリフが意識を取り戻す。
「あれ?・・・私・・・」
頭を支えながら起き上がるリリフに、思いっきり抱きつくセリー達。
「わああぁんん。おじょーさまあぁ!!よがったあぁぁ!」
「リリフねーちゃまあぁ!りりふねえちゃまあぁ!」
「リリフ姉様っ!本当に良かった!良かったっ!」
「み、みんな・・・あ、あれ?・・・いったい・・・」
未だ状況を理解出来ないリリフだったが、ミールの姿を確認すると一気に記憶が蘇ってきたようだ。
「あああっ!わ、私!私ぃ!ああああぁっ!」
食べられて殺される感覚が蘇ってきたのか、顔を覆いながら取り乱してしまうリリフ。
「リリフ!もう大丈夫っ!大丈夫なのですよっ!安心してっ!」
「りりふねえちゃまっ、りりふねえたまっ!」
「僕らは助かったのです。もう安心ですよ。リリフねぇ様」
しばらく背中をさすって落ち着かせるセリー達。
「ごめんなさい。そっか・・・私助かったのね・・・ありがとう、みんな。ありがとう、ミール・・・」
「本当に運が良かった・・・としか言えないな。数々の偶然が重なって、お前は助かった。しかし冒険者なんてみんなそんなもんだ。俺はお前が生きていてくれて嬉しいよ」
「ミール・・・」
うつむいてミールの言葉を噛みしめるリリフ。
セリーがリリフの頭を愛おしそうに撫でている。
「ミール様。偶然が重なったって、どういった事が重なったんです?」
ブルニが質問してきた。
「うーんと。まず今日朝早くに討伐対象のモンスターが現れてくれた事。これが朝早くじゃなかったら・・・1時間でも遅かったら間に合わなかったよ」
「な、なるほどぉ。あれ??討伐モンスターってぇ・・・凄くつよいって言ってたモンスターですよねっ??あれっ?」
「あとは、リリフ達がいた場所。バウンドウルフの巣がキーン寄りにあって俺がいた場所から近かった。しかも俺自身も人に会うのが嫌だったんで街道を通って帰ってなかったから湿地帯に近い場所にいた。これも巣が少しでも東とか南に、俺自身も街道を進んでたら間に合わなかった」
「そんな偶然が・・・あるのですね・・・本当に僅かな差ですわ・・・」
「あ、あの・・とうばつもんすたぁ・・・倒しちゃったって事です・・・よ・・ね?よねっ?」
「更にヨウレン川。今の時期は水かさが少ないが、それでも普通だったら足で渡るのは難しい。しかし、ちょうど大木が岩に引っかかってて、橋のようになっている個所があった。だから一直線で来る事ができたんだ」
「す、凄い・・」
「はうぅ・・」
「そして最大の偶然は・・・」
「さ、さいだいの・・・偶然は?・・・」
「ごくり・・・」
リリフ、セリー、ブルニ、リューイ、話を把握していないココ院長までドキドキしながらミールの言葉を待っている。
「俺がお前達の仲間だったって事だ。ラッキーだったな。ついてるぜ、あんたたち」
その言葉を聞き、嬉しさでまた涙が溢れる。
素っ気なかったが、優しさに溢れる言葉、そして確かに自分達を仲間と言ってくれた事がなによりも嬉しかった。
「体調はどうですか?痛いところなどはありますか?」
ココ院長が尋ねる。
「あ、はい・・・痛いところは特に・・・ちょっと左腕に違和感があります」
「ふむ。完全に切り離されていましたのでね。まだじゅうぶんに繋がってないのでしょう。3日後にまた来院して頂けますか?」
「あ、はい。分かりました」
リリフは左手を握ったり開いたりしながら
「私・・・どうやって助かったの?・・・なんかおぼろげながら・・・身体中噛みつかれているときに、ミールが来てくれた事は・・・なんとなく覚えてる・・・凄く・・・光ってて・・・神様みたいだった・・・」
「結界を纏いながら来てくれましたっ。でも直ぐに結界が壊されちゃって・・・それからはブルニもよく分かんないです。もの凄い爆音と強風で、吹き飛ばれないようにするのがやっとでした・・・」
「周り全てが吹き飛ばされて、地層が現れるくらい根こそぎ大地が削られていました。ですので・・・モンスターはもちろん・・・あの方達も・・・」
「そっか・・・前に言ってた魔石を使ってくれたんだね?凄い貴重なやつ・・・ホントごめん。私なんかを助ける為に・・・貴重な魔石を・・・」
「リリフ・・・」
「私・・・助かってよかったのかな・・・なんか全然ミールに恩を返せないし・・・逆にドンドン迷惑ばかり・・・負担になってる気がする・・・リンちゃん達の方が全然強かった・・・私は何もできなかった・・・自分のワガママで冒険者になったけど・・・向いてないのかなぁ、私」
リリフは完全にマイナス思考モードだ。
そりゃそうだ。沢山の悲鳴を聞いて、助けを求める友達になにもできなくて、自分も死ぬ寸前までいって・・・
こんな時にも前向きに「よしっ次頑張ろうっ」と言っていたら、その人は逆に頭のネジが数本抜けている。
そんなリリフに励ましの言葉をかけたのは、意外にもココ院長だった。
「わたしもね。仲間を全て失った時があります」
「え?」
リリフは意外な人からの告白に目を丸くする。
「あれはもう5年くらい前の事ですかね?・・・当時の私は紫ランクで、そろそろ黒も狙えるのではないかという・・・まあ簡単に言うと調子に乗っていた時期でして。そんな中、クエスト帰りに洞窟を発見しましてね。気が大きくなっていたのでしょう。ちょっと探索してみようぜって自分が提案しました。そしたら中は狭く、沢山の分かれ道が幾重にも重なって、気付けば僕らは迷子になってしまいました。なんとか出口を見つけようとさまよっていると・・・ゴブリンの集団に襲われました。普段でしたらゴブリンなど雑魚中の雑魚ですから、全く問題ないんですが・・・洞窟は狭く剣を振るうことも出来ない、道も複雑で挟み撃ちになったりと・・・気付けば私1人になっていました。それはもう必死に逃げました。無我夢中で暗闇の中を手探りだけで進みました。そこで偶然居合わせた冒険者達に救われて私1人だけ助かりました。街に着いたら、そりゃーもう凹みましたよ。調子に乗って向かわせたのに、当事者の私だけが逃げ帰ってきたので。もう冒険者は辞めよう。本気でそう思いました。しかし助けてくれた冒険者に言われました。仲間の死を糧に、更に沢山の人を救う冒険者を続けるのも、仲間の死のせいにして、冒険者を辞めるのも貴方の自由だ。願わくば、死んだ仲間達に誇れる自分でありたいですねってね。私はそのまま、その冒険者達のPTに加わり銀ランクにまで上がることが出来ました。リーダーがちょっとした国の王族で、跡を継がなければならなくなったのでPTは解散しましたがね。でもあの時辞めなくて本当に良かったって今は思います。修復士にも成れたし、こうして貴族も平民も差別しない医院を設立する事も出来ましたしね」
リリフ達はココ院長の話を黙って聞いている。
「俺も似たような意見だな。正直今回の女の子達のように、圧倒的な力に蹂躙される事は珍しくない。毎年何百人、何千人という冒険者達が世界中で命を落としている。リリフ達も全滅する覚悟をしただろう。しかしお前達は生き残った。もう一度言うが、お前達はラッキーだ。こうして自分達がなにをしたいのか自分自身に向き合える事が出来るんだからな。俺だって冒険者を始めたばかりの頃は失敗だらけだったよ。命からがら逃げてきた事もあったし、自分のせいで死んだ仲間もいる。冒険者達はみんなそうだ。みんな多かれ少なかれ、心に傷を持っている。だからこそ考えて欲しい。この先なにをしたいのかを。例え辞める決断を下しても俺はお前達の考えを尊重する。冒険者だけが人生じゃないからな。しばらくは休息をとってみんなで話し合うといい」
「うん。わかったわ・・・」
それからココ院長に深くお礼を言ってから宿に帰っていった。全員口数は少ない。1人1人思うところはあるだろう。
例えどんな決断を下しても、ミールは応援するつもりだ。
久しぶりに自分の部屋で静かな夜を過ごすミールであった。
翌日、まだ所々で爆風の影響が出ている路上を進み、ミールは星風街に向かって歩いていた。
ピコルにはリリフ達の事は連絡してある。
新人の子もかなりショックを受けているようで直接謝りたいと要請があったが、とりあえず先延ばしにしといた。
リリフ達の方向性が決まってからの方が良いと思ったからだ。
ギルド長にはしつこいくらい直接会ってお話をっと言われたが、テキトーな理由を付けて断っている。 今会うと爆発の事も絶対に聞かれるからだ。
リリフ達が巣で襲われた事、女の子達は全滅したがリリフ達は助かった事、その巣のある場所で大爆発が起った事、ミールがリリフ救出に向かっていた事・・・
ピースは揃いすぎている。
絶対にザクトーニはミールが絡んでいると思っているハズ。
ここまで大規模な地形変動を起こしておいて、お咎めなし・・・なんて事にはならないだろう。
今の所、上手く誤魔化す言い訳が思いつかないので当分会わないつもり。触らぬ神に祟りなしって奴だ。
そして、当のミールは以前訪れた魔法石屋に向かっていた。あの憑依魔石を大量に購入した少し変わった店主がいるお店だ。
そこで確認したい事がある。
あの魔石をどうやって入手したのかを・・・
話は戻り、ミールが巨大食中プラントに遭遇した時の話。
相変わらず、なにも起らない日常に完全に退屈しているミール。段々と警戒心も薄れてきている。
クルッピも初日こそ一生懸命警戒してくれていたが、5日目ともなると最早、呼びかけても出てくる様子も無い。完全に無反応だ。
逆に仕事熱心なのは死霊騎士さん。
目下、使役モンスターの召喚最長記録更新中である。
ミールは完全に雑魚モンスターは死霊騎士に任せて、お鍋に料理を仕込み中だ。こうもやることが無いと楽しみは食事くらいになってしまう。
今日はこだわって何時間も煮込んで最高のスープを作る予定だ。
ミールはグツグツとアク取りをしていると、唐突に結界の周り一面にトゲトゲが現れる。
ミールがそれを食中プラントの口だと認識する頃には、ほぼ全て丸呑みされる直前だった。
幸いなことに周囲にはバチバチと閃光がほとばしっており、結界自体が機能しているのは確認できた。
つまりギルドが懸念していたドラゴンと同じ、結界通過型のモンスターではないという事。
だがしかし、大ピンチなのは変わらない。
結界は結界石を中心に円状に展開している。
なので大地に埋め込んで半円が覗いている状態でも、地中にも結界は展開されているので仮に地下からの攻撃にも防ぐ事が出来る。
だがこの巨大食中プラントは、結界ごと全てを丸呑みにしようと試みているようだった。
なるほど、そういう事か・・・
ミールは瞬時に、このモンスターが結界を無効化してきた術を理解した。
おそらくこのまま丸飲みにする。
結界はビリビリと反発するので口の部分で止まる。
しかし、その他の全て。
土も、テントも、ミールも、そのまま下に落下していく。まるでフルイにかけられたように結界だけ口に残り、残りは胃袋に直行。
ぺっと結界は吐き出して、ミールはプラントの養分となる。
これが結界石を発動した冒険者達を数多く葬ったカラクリだろう。
でも能力は解放されてるんでしょ?大丈夫なのでは?
いやいや、そんな楽観的な状況ではない。
確かに、ミールの力は解放されている手応えはあるので、内部から切り刻めばいけるかもしれないが、絶対ではない。
もし伸縮性が富んでいる構造だったら?
消化液に満たされていた場合は?
酸素が無い状態だったら?
力が解放されているとはいえ、剣を振るえて始めて意味をなす。
いきなりドボンとゴムの液に落とされたと想像してもらいたい。
水の中では水圧の影響で、腕を振る威力が激減するのはプールなどで経験済みかと思うが、それが更に粘着力があるゴムの液のような消化液だったら・・・想像するだけでゾッとする。
なにも出来ずに酸欠で死亡確定。
いくら力が有っても、それを発揮できる場所でないと意味が無いと言うことだ。
地面がえぐられ口の中に4分の3が入っている状況。
なんとしても脱出しなければっ!
しかし肝心の大地が崩れ去っており、ジャンプしようにも不安定で上手く出来ない。
マズイ!非常にマズイ!
ミールの脳内に最悪の瞬間がイメージされた、正にその瞬間。
ミールの予想していなかった事が起る。
ドンッ
死霊騎士はミールを突き飛ばし、口の中から脱出させたのだ。
「?!」
何回も説明しているが、再度言わせて頂きたい。
基本使役モンスターは召喚者を守ろうとは行動しない。
ただ敵が出てきた時に排除するのみなのだ。
しかし、今回の死霊騎士は明らかに守った。
ミールを突き飛ばし守ったのだ。
ミールは大地に転がりながら、飲み込まれていく死霊騎士をずっと見ていた。
死霊騎士はミールの事を助けられた事を誇っているのか、満足そうな表情(仮面を被っているので変化はないがミールにはそう見えた)を浮かべて口の中に消えるのだった・・・
話は戻るが、そういった事があったのでミールはどうやって入手したのか、魔石のルーツを聞きに来たのだった。
なにか手がかりが見つかるかも知れない。
相変わらず分かりづらい場所にある店内に入ると、店主は変わらずに作業に没頭していた。
「やあ、調子はどうだい?」
急に話しかけられてビクッとした店主は、ミールを見ると安心したのか笑顔を見せる。
「ああ。あんたか。いらっしゃい。この間はありがとう。お陰で助かったよ」
「いやいや、こちらこそ素敵な魔石をありがとう。研究の方はどうだい?」
「ははは。全く進展無しってとこだね。申し訳ない・・・」
「全然いいよ。しっかり時間をかけて自分の納得いく物を作ってくれ。楽しみにしているよ」
「ああ、ありがとう・・・今日はどうしたんだい?なにか入り用かい?」
「ああ、実はね。この前・・・ここにしまっていた憑依魔石あったろ?あれってどこで入手したかって覚えてるかな?」
「ああ、あれか・・・えーっと・・・どこだっけな・・・」
店主はしばらくウンウンと唸りながら考え込む。
「うーんとぉ・・・なんだっけなぁ・・・もうちょっとで思い出せそうなんだけど・・・」
「買い出しとかは行ってるのかい?」
「いやいや、ここにあるのは全部、商人や冒険者が売りに来た物だよ」
「そっか・・・じゃあいちいち覚えてられないよな・・・」
「いや・・・売りに来たって言っても年に数人くらいしか来ないから・・・覚えてるんだよ・・・あれ~なんだっけなぁ・・・ああ!逆に気になる!思い出したいっ!モヤモヤしてきたっ!」
年に数人・・・いったいどんな商売をしているのだろう・・・ミールはどうしても店の経営が気になってしまう。
「うーん・・・うーっん・・・もうここまで来てるんだ・・・ああ!なんだっけなぁ・・・えっと~えっとー・・・」
額に汗を浮かべながら一生懸命思いだそうとしてくれている。やはり人柄は信用できるみたいだ。
「年に数人じゃあ商売もキツくないかい?商売繁盛とまではいかなくても・・・少しは・・・」
ミールが少しは真面目に働けとやんわり伝えようとしたその時
「むおおおおおわわわああああ!!それだあああああああああ!商売繁盛!そうっ!商売繁盛だあああああああああ!思い出したああああああぁぁ!」
馬鹿デカい声で叫ぶ店主。
「はああぁぁ・・・スッキリしたあぁ・・・」
店主は思い出した事に満足してしまったのか、スッキリした顔で作業に戻ろうとしている。
「ちょ!で?でっ?!」
「ああっ!そうそう!ごめんごめん。思い出して満足しちゃったよ。でね、売りに来たのは老人だった。商売繁盛って怪しい提灯をぶら下げて、なんか不気味に笑ってる人だったよ」
「はあぁぁん・・・」
ミールは老人に心当たりがあった・・・というかあり過ぎた・・・
ぜってーアイツだ。
ミールは嫌な予感がしつつも、極力平然として話の続きを聞く。
「なんだっけな?・・・あ、そだそだ。なんか今は滅んでしまったなんとかって国にゆかりがある魔石って言ってましたね、確か。がーどろるん、がーどるりん、違うな・・・えっと・・・そうそうっガーヤルデルン!ガーヤルデルンって言ってた気がします。なんかそんな名前の国の魔石だそうです」
「・・・」
ミールは無言で店主の話を聞いていた。
何かを思い出している・・・そんな感じだ。
「なるほどな・・・ありがとう。全て解決したよ」
「そうですか?・・・とりあえずお役に立てて良かったです」
「ああ・・・助かったよ」
店主はミールの様子に少しいぶかしげな表情を見せるが、深く追求せずに作業に戻っていく。
しばらくぼーっと何かを考えていたミールだったが、唐突に魔力を込め始める。
死霊騎士と出会ってから、なにかモヤッと頭の中にあったモノ・・・
ずっと不確かな状態だったが、それが今ハッキリしている。
それに魔力を込めたのだ。
パアァっと小さな店内の床が光り輝き、そこから死霊騎士が浮き上がって来た。
「ぎゃああぁぁ!なに??なんだいっそりゃ?!」
店主はパニックになる。
そりゃそうだ。普通の人なら使役モンスターなんて見たことない。どうみても悪魔側のモンスターとしか見えないだろう。
ミールは店主の問いには答えずに、死霊騎士に話しかける。
「よお、久しぶりだな・・・正直全く分からなかったよ・・・」
死霊騎士は片膝をつき、ひざまずく。まるで『はっ!お久しぶりです!ミール様!』と言っているようだ。
「相変わらずお前は自分の事は二の次なんだな」
死霊騎士は頭に手をやり、照れてるような仕草をする。
「とりあえず・・・この前はありがとな。マジで助かったよ」
死霊騎士は片手でトントンと胸の辺りを叩く。『あの程度、軽い軽い』といっているようだ。
死霊騎士の身体が薄く透明になっていく。やはり結界内での召喚は消耗が激しいみたいだ。
「これからも宜しくな。キギリス」
死霊騎士はほとんど見えなくなった姿で腕をガシッと構える。『私にお任せくださいっ』と言っているように見えた。
完全に精神世界に還っていった死霊騎士を見届け、ミールはふうっと1つ息を吐き、未だビビりまくっている店主に謝る。
「悪かったな。助かったよ」
そういって店を出て行く。
ミールの顔は久しぶりに昔の友に出会ったような、そんな明るい表情をしていた。
食堂に戻ったらリリフ達が集合してミールを待っていた。
「あっ、ミール。お帰りなさい」
「ただいま」
ミールはリリフ達が決断をしたと思い、リリフの前に座る。
「あ、あのね・・・ミール」
「うん、どした?」
ミールはリリフが話しやすいように、なるべく優しい笑顔を浮かべる。
リリフは少し顔を赤らめるが、ハッキリとした声で語り出す。
「私達・・・この宿を出て行く事にした・・・本当に今までありがとう」
いつも別れは突然だ。
ミールも今まで何回も経験しているとはいえ、やはり慣れない。
「そっか・・・次の仕事は決めているのか?まだだったら決めてからで良いぞ?出て行くの。今更遠慮なんてするな」
「へ?次の仕事?」
ミールの思った返事とは違った反応を示すリリフ。
それはリリフも同じだったようでミールの問いに素で反応してしまっている。
「え?違うのか?」
「やだっ!全然違うよっ!私達冒険者続ける!もっともっと立派な冒険者になるのっ!」
「今のはリリフの説明が足らなすぎですわっ!もっと詳しく言わないとミール様には分かりませんわよっ!」
「えーん。ごめんなさい。えっと・・・私達・・・やっぱりミールに頼りすぎてる気がするの。自立しているつもりでも、やっぱり何処かで頼ってる。立派な冒険者に成るには、まずはそういう所を無くしていこうって事になったんだっ!」
「まずはしっかり自分達の生活は自分達で賄う。当たり前の事を当たり前にしていく必要があると感じましたの」
「ぶ、ブルニも今まで・・・甘えてしまって好きな定食を注文してしまいましたが、これからは1番安いA定食にしますっ」
「しっかりと自分達でお金を稼ぎ、生活で必要なお金を払い、そして税金を納める。まずはガタリヤ街民として当たり前の事をしていきたいです」
「ミールも前に言ってたじゃない?初心者用の武器や防具から、少しずつ自分達で稼いで、新しい武器を揃えていくのも冒険者の楽しみだって。だから生活もそうしようと思うの。私達の今の収入じゃ、個室なんて借りれないからシェアハウスとかになっちゃうかもしれないけど・・・しっかりと冒険をこなして、いつかは自分達の家を買いたいってっ」
「そうか・・・冒険者を続ける事に辛さは無いのか?」
「辛さがない訳じゃないわ・・・怖さもある・・・いつまた同じような目に遭うかって考えたら身もすくむ思いよ・・・でもね、やっぱり私は・・・私達はもっと強くなりたい。そして沢山の人を救えるような力を持ちたい。ここで冒険者を諦めたら後で絶対に後悔するって事だけは分かるから。出来るか出来ないかじゃないの。やること、挑戦する事が私達にとっては大切な事なのっ!」
ミールはリリフ達の決断に思わず涙腺が緩み、涙を流す。
「ええええ??!み、ミール!泣かないで!」
「まあっ!まあっ!どうしましょっ!?どうしましょっ!」
「そ、そんなにブルニと離れるのがお辛いのですねっ!」
「ブルニ・・・落ち着け・・・」
「ははは。すまんすまん。なんかお前達の話を聞いてたら、なんか泣けてきた・・・凄いな、リリフ達は。ほんと凄い・・・」
人が涙を流していると、自分も泣いちゃうのはよくあること。
リリフ達も大泣きで感謝の言葉を口にする。
「しょんなことないよおぉぉ!いつも、いつもっ本当にありがとお!」
「わたくし達がいるのはミール様のお陰ですわっ!」
「ぶるにも離れるの辛いでしゅううう!」
「ぶ、ぶるに・・・ぐすっ・・・そういう事じゃない・・・」
大泣きしているリリフ達にグワンバラが声をかける。
「なんだい。あんたら出て行くのかい?こりゃ寂しくなるねぇ・・・」
「ううんっ!母さん、違うの。もちろんガタリヤにいる時は毎日食べにくるよっ!こんなに美味しくて安いお店は他に無いものっ!」
「そうかいそうかい。そりゃ一安心だね。じゃあ部屋は引き払うのかい?」
「・・・私だけ住む・・・」
ルクリアが手を上げる。
「ちょっ!何言ってんのよ!ルクリア!自立するって決めたでしょ!?」
「・・・自立してる・・・自分の給料であの部屋を借りるもん・・・おばちゃんが食堂を手伝うのを条件に格安で貸してくれるって前言ってたし・・・ね?・・・」
「へ?あ、ああ・・・それは構わないけど・・・あんた一人じゃ広すぎないかい?あの部屋」
「・・・ミールさん・・・一緒に住む?・・・」
「ダメエエえええええエエえええ!!!ぜっったいにダメええええええ!」
リリフの絶叫がこだまする。
さっきまで涙ぐんでいた瞳は、今はメラメラと炎が宿っている。
「・・・私は自分のお金であそこに住むの・・・私は冒険者じゃないからそこまでミールさんと距離を置く必要もないし・・・りりふっち・・・反論を述べよ・・・」
「と、とにかくダメっ!絶対にダメ!ルクリアあそこ住んだらぜっったいに毎日エッチするじゃん!絶対する!ダメ!とにかくダメ!超絶ダメ!ダメったらダメええええ!」
ゼエゼエと肩で息をして、感情をぶつけるリリフ。
「・・・でも・・・」
「ダメエエえええええエエ!」
「・・・とにかく・・・」
「ダメエエえええええエエ!」
「・・・つまり・・・」
「駄目エエエエえエエエエ!!」
ルクリアが何か言おうとしたら被せて来るリリフ。とにかく絶対に駄目ってことらしい。
「お、落ち着いて・・・リリフ。まずは話し合いましょう」
「ゼエゼエ・・・」
「・・・でも・・・私・・・仕事終わりとか休日とかは部屋で勉強とかしたい・・・シェアハウスとかだと・・・集中できないし・・・コワイ・・・」
「た、確かにルクリア姉様の意見ももっともですっ。リリフ姉様っどうかご慈悲をっ」
しゅんと耳を垂らしながら必死にお願いするブルニの姿に、リリフも少し冷静さを取り戻したようだ。
「わ、分かったわ。それじゃあみんなで4畳半の部屋を借りましょう。それならギリギリお金も足りるはずよ」
「えええ??5人で4畳半ですの?!狭すぎますわっ!」
不満を口にするセリーをギロッっと睨み付け
「なに?!なんか文句あるのっ?!」
眼光が鋭い。めっちゃキレている。
正直今のリリフだったら、ウォーウルフも逃げ出しそうだ。
「ぼ、僕も・・・一緒なのでしょうか?・・・」
「ダメぇエエェ・・ぇ・・じゃないわね。リューイなら良いわよ。女の子ばかりの部屋じゃ気まずいものね」
「え?でもお兄ちゃんも一緒じゃないと・・・ブルニは不安ですぅ・・・しゅんっ」
「でもブルニちゃん。お兄ちゃんも男の子だから色々と溜まってしまうのではないでしょうか?」
「たまって・・・お兄ちゃんのえっち・・・」
「えええ!??」
「しょうがないですわね。ではたまにわたくしのおっぱいで抜いて差し上げますわ」
「え?!ほ、本当ですか??」
リューイはめっちゃ嬉しそう。
「冗談に決まってるでしょ?わたくしのおっぱいはミール様のものですわ」
セリーの冷たい視線と反応に、一瞬舞い上がったリューイはガクッと膝を折るのであった。
結局、ルクリアとリューイも含めた5人で狭い部屋を借りるという事で落ち着いたようだ。
その後、物件探しで当然苦戦するリリフ達であったが、グワンバラの知り合いの不動産屋さんを紹介してもらい、ボロで汚いが6畳のシャワー、キッチン付きの部屋を格安で借りる事が出来た。
場所もグワンバラの宿と目と鼻の先。リリフ的には大満足の物件となったようだ。
それからココ院長の言われた通り再度腕の状態を見せに行き、微調整の魔法をかけてもらうリリフ。完全に違和感は消えたようだ。
その後、ギルドに顔を出したら新人のクレムちゃんが大泣きで謝ってきたのは言うまでもない。
「うえええんん。本当にごめんなさいいいいぃぃ。うえええんん。無事でよかっだぁぁ」
「あはははっ。クレムちゃんが謝る事じゃないよ。強いモンスターの目撃情報を確認しなかった私達が悪いんだ。ちゃんと見なきゃ駄目って事は知ってたのに怠ったんだもん。それに・・・クレムちゃんが気にかけて、ピコルさんに相談してなかったらミールに伝わる事もなくて私達は命を落としていたわ。逆に本当にありがとう。貴方のお陰で助かったわ」
「しょんんああああ。しょんなことないでしゅうう・・・うえええんん。やさしいよおおおお・・・りりふしゃん大好きいいいっぃぃ!!」
リリフは大泣きしながら抱きついてくるクレムちゃんの頭を優しく撫でている。そんな所にギルド長が駆け寄ってきた。
「おお、リリフさん。お話は聞いております。大変でしたな・・・それで・・・ミール様はご一緒ではないのでしょうか?・・・」
小声で聞いてくるザクトーニ。
「あ・・・えーっと・・・最近会ってないので・・・分からないですわ」
「そ、そうでしたか・・・因みに・・・リリフさん達はなにかご存知ないでしょうか?例の爆発の原因などを?・・・」
「へ?あ、あははは・・・えっと・・・どうなんでしょう?・・・私達にも分からないですわ。おほほほほ」
タジタジになりながらもなんとか誤魔化すリリフ。
そしてクルッとセリー達をみて
「さあっ仕切り直しねっ!まずは役割を決めましょ!クエストは全員で相談してから私が受注してくるわ。セリー達は強敵の目撃情報などを確認する事。そして大切なのが、ギルドを出る時に全員でもう一度確認しよう!クエストはどんなのを受けたのか、目撃情報は確認したのか、装備はしっかりしているか、補充品はあるか、結界石は持っているか。この前みたいに話しかけられて、なあなあで終わらないように!まあ、今日は良いかって気持ちにならないようにみんなで気をつけよう!」
「了解ですわっ!」
「はいっ!リリフ姉様っ」
「僕も逐一確認します。遠慮しません」
大きく頷いて、巨大魔法画面機の前に立つリリフ。
「さあっ!まずはどのクエストを受けましょうか?!」
リリフの瞳には光が輝いている。
ミールは一人、図書館で調べ物をしていた。どうしても気になる事があるのだ。
既にかなり巻き込まれてしまっている感は否めないが、ここでなにもしなければ奴らの思う壺。
知識は時として、強大な敵にも太刀打ち出来る程の力を発揮する。
――敵も自分の事も知らなければ、必ず負ける――
――自分を知り、敵を知らなければ勝ったり負けたりする――
――敵も知り、自分の事も知っていれば、必ず勝つ――
昔の人がそんな事を言ってたような気がする。
冒険者にとって情報は重要なのだ。
何故ミールが今、情報不足だと認識しているかというと・・・
それは巨大食中プラントと戦った時まで話は遡る。
口の中に飲み込まれた死霊騎士を見届けると、ミールは透明な剣を抜き炎を纏わせた。
その炎はいつもにも増して巨大な揺らめきをしている。
死霊騎士を倒され感情的になっている証拠だ。つまりイラッとしているということ。
「遊びは無しだ。いくぜ」
ミールは一言いうと、大きな口で捕食してくる食中プラントを軽々と交わし、上にジャンプする。
「はあああああっ!!」
そして真上から一撃。
巨大な炎を纏わせながら、上から根元まで真っ二つにする。
「キュイイイイイイイイィィィィィィィ!」
食中プラントは炎に焼かれながらクネクネと身体を動かし、ドンドン小さくなっていく。
やがて、10分の1くらいまで縮んだ食中プラント(それでも2メートルはあるが)は真っ黒になりながら完全に息絶えたのであった。
巨大食中プラントを一撃で倒したというのにミールの表情は冴えない。
無表情のまま、剣でツンツンと根の部分を掘り出してみる。
弾力性に富んでいたと思われる、樹齢何百年の大木のような太さの根っこは、今や電柱のように縮んで真っ黒になっており干からびている。
まるで・・・・最初からそう仕組まれていたかのように・・・
あらかじめ本体が倒されれば、根っこも滅びるようにインプットされていたかのように・・・不自然なほど綺麗に滅んでいる。
そしてミールの表情が曇っている1番の原因は・・・
見てしまったのだ。
倒す直前まで気付かなかったが、確かにそれはあった。
ザザの村で出現した変異種のドラゴン、そいつの尻尾にあったモノとそっくりな異物。
あの『脈打つ瞳』が・・・
花びらの影になっていて、剣を振り下ろしている時にようやく気付いたその瞳は、ミールをずーっと見つめていたようにも感じた。
そして本体が滅びると同時に脈打つ鼓動は止まり、瞳を閉じて消滅した。
ザザの村だけだったら気のせいで終わるだろう。
しかし今回も変異種のモンスター、しかも脈打つ瞳付きだ。
これでもなお、まだ確証は無いが・・・的な事を言っているようでは永遠に奴らには勝てない。
絶対に何かが起きている。
しかも悪意を持っている何かだ。
早く対処しないと後手後手に回るばかりだ。
ミールはその手がかりを求め、またページをめくる。
静かな図書館内に微かにミールをあざ笑うかのような笑い声が聞こえたような気がした・・・・
ガタリヤ奮闘記 ~完~
次話 『聖女巡礼』
リリー『ここまで読んでくれて、ありがちょぉぉ!』
リリフ『え?!だ、誰??』
セリー『か、可愛いですわね・・』
ブルニ『ウサギさんみたいですぅ!』
リリー『わあぁいいっ♪うっれしいなぁっ!良い子良い子っ♪』
リューイ『でへへっ』
リリフ『秒で陥落したわね』
セリー『見事の一言ですわっ』
ブルニ『お兄ちゃんのエッチ』
リリー『なんかぁ。作者の人に気に入られちゃってぇ。私的にはぁ、有りっちゃ有りかなって感じでぇ。だからぁ、これから・・・』
リリフ『あっ、ごめんなさいっ!あんまり時間ないみたいだから、先に言いますねっ!最後まで読んでくれてありがとうございます!良ければ『いいね』や『評価』を宜しくねっ』
セリー『ブックマーク』や『コメント』も頂けると嬉しいですわっ!』
リリー『ちょっとっ!人が話してる時に邪魔しないでよ!ふざけんなっ!』
リューイ『ひいぃぃ』
ブルニ『ふええぇぇん!豹変したですぅ!怖いですぅ!』
セリー『これは触らぬ神に祟りなしですわねっ』
リリフ『そうねっ、それじゃあ、せーのっ!』
リリフ、セリー、リューイ、ブルニ『まったね~!』
リリー『勝手に締めくくるな!ちょっと!私は蘇生されるのよね!?ねえ!?』
作者『・・・』
リリー『いやああああぁぁ!!』




