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スライムには負けるけど魔王には勝ちます  作者: すふぃ~だ


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ガタリヤ奮闘記㉑

 この広場は前例のない貴族の粛正という出来事、そしてアーニャの演説に感化された人々の、今後のガタリヤの将来に対する希望や期待が溢れており、アーニャが去った後でも盛り上がっている。


 しかしリリフ達の一画は、別の意味で異様に盛り上がっているのであった。



⇨ガタリヤ奮闘記㉑




「で、では・・・わたくしはこれで・・・」

 ラインリッヒがお辞儀をして帰ろうとしているのを、ミールが呼び止める。



「ちょっと、ラインリッヒさん。話が違うんじゃないの?」

「え?!な、なにかしましたか?わたくし」



「いやいや。領主代理の命令は、今日1日仕えるって事だろ?まだお昼過ぎだぜ?まだまだ働いてもらわなきゃ」

「ちょ、ミ、ミール。ラインリッヒ様に失礼よっ」



「何言ってんだ、リリフ。これは領主代理が決めた事だし、なによりグワンバラに対する、今までのお礼と、前回の謝罪だろ?しっかりと最後まで全うしてもらわなきゃ」



「し、失礼しました。確かにミール様の仰る通りです。で、では・・・なにか、わたくしがお役に立てることはありますでしょうか?」



「ちょっとグワンバラとは直接関係無いんだけどさ・・・まあ、その娘のような存在のリリフ達には関係あるから、それでもいいよな?」



「ええ。構いませんよ。どうぞ、こき使ってください」

 ラインリッヒの言葉にミールはニヤァッと不敵に笑う。



「リリフ。あの女の子と通知登録してたよな?ギルドに全員集合させといてくれ」

「え?リンちゃんの事?」

 ミールは大きく頷くと



「それじゃあ、行きますか?ギルドに」





 程なくしてミールとリリフPT、そしてラインリッヒと騎士達は、ギルド前に到着した。

 ラインリッヒはガタリヤの最重要人物なので、常に一定の数の騎士が護衛に付いてくるようだ。

 ルクリアとグワンバラ夫妻は、お店の仕込みがあるので先に帰っている。



「それじゃあラインリッヒさん。悪いんだけど、ちょっとだけ待ってくれる?すぐ呼ぶんで」

「分かりました。タイミング良いときに現れるといたしましょう」

 物わかりの良い返事をするラインリッヒ。



 ギルドに入ると、カウンター前でリンちゃんのPTが勢揃いしていた。

 被害に遭ったマリンちゃんの姿も見える。しかしかなり怯えていて、支えられていないと立っていられないような状態だ。



 そして問題のチーム暁の杯のコリンズや、その他のメンバーは、相変わらず併設されている食堂で、女の子だけのチームと言っていた連中と合コンを楽しんでいる。というより、一歩進んで、それぞれパートナーが決まっているような感がする。



「リリフさん。重要な話って何かな?・・・みんな、これからバイトだから、あまり時間ないんだよね・・・」



 息をするだけで(つら)そうなリンちゃんは、うつむきながらリリフ達を出迎えた。



「うん。みんな、今までよく耐えて頑張ったね。理不尽な事にも前向きに、今でも頑張っている。凄いよ。本当に・・・」

「まだまだだよ・・・正直お先真っ暗さ。振り出しに戻るってやつ」

「ご、ごめん・・・みんな・・・」

「あ、ごめん。マリンを責めてるんじゃないんだ」

「どゆこと?」



「あ・・・んと・・・マリンの治療費がさ、ちょっとかかっちゃって。ほら、瀕死の状態だったし、他にも避妊治療もしたしさ。それをみんなのお金で出したんだけど・・・結構かかっちゃってね」



「でもマリンは悪くないよ。アイツらがやり方汚いんだ」


「でもさー、正直マリンは、私達を見捨てて抜け駆けしたようなもんじゃん?それなのに、みんなのお金使うのは違うと思うけどなー」


「そういう事言うなよ、誰だって気の迷いはあるだろ!」


「そうだよ!仮に声をかけられたのが自分だったら・・・私もマリンと同じ事してたかもしれない。他人事では済ませれないよ」



 等々。リンちゃんPTでも、かなり色々な意見が出ているようだった。



「みんなの意見は分かったわ。でもね、悪いのはアイツらなの。みんながケンカする必要はそもそも無いんだよ?」

「それは分かってるけどさー。リリフさんは、なんか解決策があるっていうの?」


「うん!ある!とっておきのが!」

「え?・・・」



 腰に手をあてて胸を張って答えるリリフ。



「さあ、参りましょう。貴方方が受けた苦痛を、2倍にも3倍にもして返してやらなくてはならないですわっ」

 セリーに背中を押され、リンちゃん達は食堂まで歩いて行く。



 なんだなんだ?また揉め事か?と言わんばかりに、野次馬の冒険者達が少しずつ集まってきた。



「うげぇ!なんだよ!臭いんだよ!近づいて来んな!ビッチが!」


「ええ~?ナニナニ!?この子達ってどんな子なのぉ?」

 女の子だけのチームの赤毛のリーダーが、わざとらしく聞いてくる。



「ぎゃははっ!聞いて驚くなよ?こいつらはな、金さえ払えば誰とでも寝るんだ。例え、それがゴブリンでもな!」

「きゃー!ゴブリンにも犯されるなんて!私だったら恥ずかしくて生きていけないわー!」


「だろ?!だろ?!俺も昨日こいつとヤッたけど、色んな奴とエッチしてるからユルユルで全然気持ちよく無かったよ!しかもくっせーの!」


「ぎゃははっ!そりゃそうだろ?!だめだよ!カアクさん!こんな奴とエッチしちゃ!」

「やだーん。カアクさんは私だけとするんでしょぉ?他の女に手を出しちゃダメだからねっ!」


「わかってるってー!もう君だけだよ!」

「きゃー!抱きついてこないでよー!えっちー!」


「ぎゃははっ!ダメだわ!もう俺我慢できなくなってきた!ちょっと2人で抜けるわ!」


「あ、俺も!」

「俺も!」

「じゃあ今日は解散って事で!また明日!」

「よーし!やりまくるぞー!」

「今夜は寝かさないぜ!」

「きゃー!目がエローい!」



 大盛り上がりの暁の杯メンバー。

 食堂を出て行こうとするのでリリフ達が道を塞ぐ。



「ちっ!何なんだよ!邪魔だ!どけ!」

「どきません!」

「はあ?ビッチPTには用はねーんだよ!」




「貴方達の罪をここで公にし、償ってもらいます!ラインリッヒ様!お願いします!」



 

 リリフの呼びかけにバタンッと扉が開き、ラインリッヒを先頭に、護衛の騎士と警備局の兵が入ってくる。

 どうやら前もって、警備局の人に連絡してくれていたようだ。



 ズカズカとギルド内を進む光景に、これからなにが始まるんだ?と野次馬は更に増えて、食堂を取り囲むように人の壁が出来た。



 ピコルや他のギルドの職員達も、野次馬に参加している。



「な、ななな、何だよ!これは?!」


「申し遅れました。わたくし領主直属近衛騎士のラインリッヒと申します。簡単に言えば自白魔法士ですね」



「な、なんだと?!」

 あからさまにビビるコリンズ。かなりタジタジだ。



「ど、どうするよぉ・・・コリンズ、取り囲まれてて逃げれねーぜ」

「嘘じゃなさそうだぞ。マジでステータスが近衛騎士だ」

「お、落ち着け・・・自白魔法を食らわなければいいんだ。手は有る・・・」

 ヒソヒソと相談する暁の杯メンバー。



「では・・まず早速、ここにいる女性達が契約したという内容についてですが・・・」



「ああ。あれは全部破棄する。今、ここでこいつらを暁の杯メンバーから脱退させる。これで問題ないだろ?」

 その答えに、ワアッと少しだけ手を取り合って喜ぶ10人の女の子達。



「そうですか。ではその中の女の子1人が性的被害にあった件ですが・・・」



「それは、こいつが勝手に部屋に来て、誘惑したから男どもが暴走しただけだ。とはいえこちらに責はあるので、慰謝料300万グルドお支払いする。相場の3倍だ、これで文句ないだろ?」



「と、申してますが、如何いたしますか?」

 ラインリッヒはマリンちゃんに尋ねる。



 マリンちゃんは一言


「許さない」


 声はもの凄く小さいが、ハッキリとそう聞こえた。



「はあ?!3倍だぞ?!よ、よーし!分かった!じゃあ500万!500万出してやるよ!これで文句ないだろ!」

「絶対に許さない」



「ふざけるなぁー!500万だぞ?!いったい幾らなら良いんだ?!」

「1億でも許さない」



「はあ?バカじゃねーの!なめてんのか!」



「なめてんのはあんたよ!なんでもお金で解決出来ると思ったら大間違いなのよ!魔法大学出てるって言ってたけど、しょせんは中身は子供ね!このアンポンタン!」

 リリフの最大級の悪口が炸裂する。



「ということは・・・正式に性暴力の捜査をしなければなりませんね?」



「ま、待って!待ってくれ!わ、わかった!した!しました!認めます!だけど俺たちは初犯だ!死罪はないよな?!な?!」



「ええ。確かに初犯なら死罪は無いですね。冒険者資格剥奪と、20年程度の魔力供給服役となるでしょう」



 魔力供給服役とは、貴方達の世界でいう刑務所での様々な仕事の事だ。

 この世界では、服役する犯罪者は全て強制的に魔力供給に回される。

 実際に発魔(発電の事)している魔力の3分の1程度は犯罪者の魔力で占められているのだ。



「おい・・・コリンズ・・・」

「しょうがないだろ?死ぬよりかはマシだ・・・」

「でもよぉ・・・20年は長いぜぇ・・・」

「じゃあ他にどうするってんだ!?言ってみろ!」

「わ、わかったよぉ・・怒鳴んなよぉ・・・」



 コソコソと仲間割れを始める暁の杯メンバー。



 『しかしこれで助かった。とりあえず、死罪さえ免れれば後はなんとかなる。20年服役してもまだ40台後半だ。態度が優良だったらもっと短く出てこれる。なんとかなる!』

 そういう考えを、頭の中でシミュレーションするコリンズ。



「では・・・先程の契約書の不正疑惑ですが?こちらはどうされますか?」



「はあ?!どうするって?・・・その話はもう終わっただろ?!チームから抜けさせてやるよ!それでお終いだろ?!」

「いえ、それは不正したかどうかを、示す事ではありませんので」



「くっ!・・・ふ、不正した事を認めたら・・・どうなる?」



「契約書の不正は・・・そうですね。通常でしたら10年ほどの服役といった所ですが・・・今回は多数の被害者が出ている事、これは慢性的に不正が行われていたと言う事を示します。そして解約条件もかなり大きな代償を要求しています。それらを踏まえますと・・・2~30年の服役といった所でしょうか?」



「に、2~30年だと?・・・」



「でもよ!でもさ!主犯格とそれ以外では違うよね?!俺が入った頃にはもうその仕組みが出来てたから!ねっ?!」


「確かに違いは出てきますね。あまり関わっていないとなると10年程度かもしれません」

「よっしゃっ!」



「おい!カアク!てめえ裏切る気か?!」

「裏切るもなにもお前が勝手にした事だろ?!俺は知らん!」

「ふざけんな!お前も知ってて勧誘してきてただろ!同罪だ!」

「知らん!お前が悪い!俺は知らん!」



「おやおや、意見が対立しているようですね。では自白魔法を使い真実を明らかにするしかありませんか?」



「ちょっと待ってくれ!おいっカアク!バ、バカか?お前は!少しは無い頭で考えろ!自白魔法をかけられたら俺たち全員終わりだぞ?!分かってんのか?!」


「でも俺は40年も服役したくないんだよ!お前だけしとけ!」




「だ・か・らぁぁぁ!そもそも自白魔法で主犯格とそれ以外を証明しても、他の事を聞かれたら終わりだって言ってんだ!マジで黙れ!お前!」




 完全に頭にきているのだろう。もはやコソコソと話す気にもならないようだ。

 よく見るとコリンズに意を唱えている者は、マリンちゃんが毛嫌いしていた、口臭い冒険者だ。どうやら知能もかなり低いらしい。



「ほほう。他の事を聞かれたら終わりだと?なるほど、なるほど。それは興味深いですね。一体どういったやましい出来事があるのでしょうか?」



「今のは独り言だ!関係無い!」

 とてもそうは思えない、見苦しい言い訳をするコリンズ。



「あのーラインリッヒ様」

「はい、なんでしょう?リリフさん」

「私達も彼らに暴言や、誹謗中傷を受けました。それはもう、酷いやつ。これも罪になりますよね?」



「てめえ!ふざけるなぁー!」



「あ、ほら。今も受けました。これも罪になりますよね?」

「ええ。もちろんなります。完全な恫喝による脅迫罪、あとは内容にもよりますが・・・侮辱罪、名誉毀損、偽証罪、虚偽報告罪・・・等々ですね。全て適用された場合は、だいたい10年近くの服役ですかね?」



「ふっ!・・・くそ・・・」

 また怒鳴ろうとして踏みとどまるコリンズ。



「わたくしも受けましたわ」

「ぶ、ブルニも手を強引に掴まれ引っ張られました!」

「おやおや、拉致未遂罪も適用ですね。それも複数の人に対してですから・・・20年服役ですかね?」



「ろ、60年だと?・・・全部で・・・・」

 ガクッと膝をおるコリンズ。



「いやだあぁ!」

「お前が悪い!俺は悪くない!コリンズだけ裁いてください!」

「そうだっ!そうだっ!いつもお前だけ甘い蜜を吸いやがって!」

「こいつが主犯です!こいつを死罪にしてください!」

 ギャーギャー叫き出す暁の杯メンバー。



 しかしコリンズはまたケンカするかと思いきや、ガバッと男どもを集め、再びヒソヒソ話をする。



 しばらくして・・・

 立ち上がったコリンズ達は皆険しい表情をしていた。なにかを決意したようにも見える。



「ワアアアアアァァ!!」



 一斉に叫びながら、出口に突っ込んでいく暁の杯メンバー。

 強引に逃げる気だ。




「全員捕縛!」




 ラインリッヒの一声に、あっさりと鎮圧される暁の杯メンバー。

 普段、初心者相手にイキっているコリンズ達が、近衛騎士を相手にするには格が違いすぎた。



「くそぉお!離せぇぇ!」



 ラインリッヒは暴れるコリンズに魔力を放つ。

 一瞬で静かになるコリンズ。



「ではこれより、暁の杯リーダー、コリンズの尋問を開始します。まずは・・・そうですね。リリフさん達に暴言は吐きましたか?」



「はい・・・言いました・・・」

 あっさりと認めるコリンズ。



「具体的な内容は敢えて聞かない事にしましょう。大勢の人達が見ているので」

「お気遣いありがとうございます。ラインリッヒ様」

 お礼を言うリリフ。



「では次に、契約書の不正はしましたか?」

「・・・はい、しました・・・」

「どのように?」



「・・・契約書を交わすときに、脱退に関する文章が見えないように折り曲げました。説明もしてません」



「なるほど。では次に・・・このマリンさんを騙して集団で性的暴行をしましたか?」

「はい・・・しました・・・」

「どのように騙したのですか?」



「・・・マリンがもの凄くチームを抜けたがっていたのが分かっていたので・・・それを利用して誘い出しました・・・俺に抱かれれば抜けさせてやると・・・しかし最初から騙すつもりだったので口約束だけにしました・・・部屋に連れていったら逃げだそうとしたので・・・強引に連れ込んでレイプしました・・・その後・・・念のため最後に膣内を強引に洗浄させ・・回復魔法でアザも消しました・・・証拠隠滅の為です・・・」



 手で顔を覆い泣き崩れるマリンちゃん。慰める女の子達。全員涙を流している。



 これで全ての罪が公になった。コリンズは最低でも60年は出てこれない。もしかしたら重複しているのでもっと重い刑になるかもしれない。

 ようやく解決した・・・

 やっと一件落着だ。長かった・・・

 長い期間苦しめられてきた女の子達も、その場で動向を見守っていた野次馬達も、誰もがそう思った。



 その言葉を聞くまでは・・・




「では最後に・・・あなた達は、他にも同様の犯罪行為をしていますか?」




 シーンと静まり返るギルド。





「はい・・・してます・・・数え切れないほどに・・・」





 張り詰める空気が流れるギルド内。




「どのような犯罪行為をしましたか?」


「・・・主に女のレイプです・・・同じようにチームを抜けたいと言ってきた女を100万の代わりに集団でレイプを何度もしてきました・・・そのかわり、今まではチームを本当に抜けさせてやっていたので・・・女も泣き寝入りをしていました・・・少しムカツク女は100万を要求せずに、代わりに『最後にフィールドに出たらその後抜けて良い』と別の条件を出しました・・・ノコノコと付いてきた女をフィールドで全員で強引にレイプしてその場で殺しました・・・また、他にも初心者PTをフィールド内で見かけたら・・・全員で襲ってレイプしたこともありました・・・男はわざと生き残らさせ、仲間の女をレイプさせて暁の杯メンバーに迎えたりもしました・・・大抵男は仲間の女を抱きたいと思っている者が多いですから・・・そこにいるカアクもその1人です・・・」



「な、俺は違う!知らん!」



 カアクと呼ばれているのは、先程コリンズと低脳な言い争いをしていた、マリンちゃんが、もっとも嫌っている口臭い冒険者だ。

 なんと初心者の頃から仲間がレイプされているのに、その行為に参加して、挙げ句に殺して証拠隠滅をしていたとは・・・想像以上のクズだった。



「ということは・・・この場にいる暁の杯メンバー全員が、複数の性犯罪と殺人に関わっているということで間違いないですか?」



 コリンズは虚ろな目でグルッと周りを見渡し

「・・・その通りです・・・間違いありません・・・」



「ふざけるなぁー!コリンズ!てめえ!」

「俺は知らん!なにもしらん!」

「いやだあぁ!死にたくないいい!」

 泣き叫ぶ暁の杯メンバー。



 ラインリッヒは魔力を解く。直ぐにコリンズは、グエェと床に手をつき嘔吐反射を繰り返す。



 そこにピコルがすっと前に出てきた。

「失礼しますっ。近衛騎士様。わたくしはギルド職員のピコルと申します。以前からチーム暁の杯で異常に仲間の死亡届が多い事で、ギルド内で内密に調査をしていました。しかも全員女性の初心者のみです。ギルドで確認出来ている人数は13名です。以上ですっ」

 ピコルはすっと後ろに下がる。



「これで罪は確定しました。全員死刑です。刑は即日とします。連れて行きなさい」

「はっ!」

 待機していた警備兵はコリンズ達に魔法錠をかける。



「俺は知らん!コイツが主犯だ!俺は悪くない!」

「ベラベラと全部喋りやがって!マジでふざけんなよ!コリンズ!テメエ!」

「ちくしょぉ!こんなチーム早く抜ければよかった!」

「くそ!くそ!」



 コリンズは周りを見渡し、冷たい目で見ている女の子だけのPT、先程合コンしていた赤毛のリーダーの女に救いを求める。



「頼む!助けてくれ!」



「はあ?ふざけたこと言わないでおくれよ。私達は、あんた達が近いうちに大金を手に入れるって聞いたから仲良くしてやっただけだっつーの。勘違いしないで!」



「ぐっ!」

 うなだれるコリンズ。



 警備兵はコリンズ達を立ち上がらせ連行していく。



「助けてくれよぉぉ!死にたかねーよぉー!」

「誰かぁ!誰かぁ!ああぁぁ・・・」

「俺は悪くないんだぁ!信じてくれぇ!!」

 口々に泣き叫びながら助けを懇願する暁の杯メンバー。



 しかし誰も手を差し伸べない。

 そのかわり、軽蔑の視線をたっぷりと与える野次馬達。




「待って」




 唐突にリリフの声が響き渡る。

 まさか連行するのを止める人がいるとは思わなかった、セリー達や野次馬ども全員がリリフに注目した。

 リリフはツカツカと歩き出し、マリンの前で止まる。



「マリンさん。このままで良いの?」

「・・・え?・・・で、でも死刑になったし・・・死刑以外だったら嫌だったけど・・・」

「ううん。そうじゃない。貴方自身が受けた傷は、そんなものでは消えないと思うの」

「???」

 マリンちゃんはリリフが、なにを言おうとしているのか分からないようだ。



「2~3発・・・殴っとけば?」



 その言葉にパアァッと表情が明るくなるマリンちゃん。

「え?!良いですか?!良いですか?!」

 大はしゃぎで周りに同意を求める。



「ラインリッヒ様はなんか目眩(めまい)でうずくまってしまうみたいだから、きっと見ておられないわ。大丈夫よ」



 それを聞いてラインリッヒは慌てて

「お・・・う・・・何故か目眩(めまい)が・・・」

 と棒読みでうずくまる。



 騎士達も

「だ、大丈夫でございますかぁ?ラインリッヒさまぁ・・・」

 などとラインリッヒの演技に付き合って向こうを向いている。



 連行しようとしている警備兵は流石に手を離す訳にはいかないので、顔だけ天井を向いて口笛を拭いている。



 正にギルド内の考えが全員一致した瞬間だ!



 マリンちゃんは、さっきまで支えられないと立っていられない状態だったとは思えない程、軽快なステップを踏み、口臭いクズ冒険者ことカアクの前に立ちふさがる。



「あ、ま、マリンちゃん!・・・マリンちゃんからも言ってくれないかな?!俺がいなくなると寂しいでしょ?!そこんとこ強く言ってくれれば俺は死刑にならないと思うんだ!出所したら必ず幸せにするからさ!ね?頼む・・・ぎゅえっ!・・・」



 グダグダと、完全にマリンちゃんの怒りの火に、油を注ぎまくるカアク。言い終わらないうちに、マリンちゃんの右ストレートがカアクの顔面に炸裂する。



「てめえ!マジで口臭いんだよ!あと超気持ち悪いんだよ!マジで大ッ嫌い!お前の事なんて最初から最後まで1ミリも好きじゃねーんだよ!勘違いすんな!クズ!」



「そ、そんな事言って~ツンデレなんだ・・・ぎゃうっ!・・・」

 更に大きく振りかぶって右ストレート。



「マジで喋んな!どんだけ自分しか見てないんだよ!ゴミクズ!」

「もう・・素直じゃないんだからぁ・・・」



 一向に自分が嫌われているとは思わないカアク。

 ある意味強メンタルだ。


 マリンちゃんは少し考え・・・



「あと・・・あんたのイチモツが1番小さかったし1番下手だった。全然気持ちよくなかった。いつも自分で慰めてるからだね。かわいそー」



 それを聞いてリリフも乗ってくる。

「そーなんだぁ。だっさぁー」

「臆病者だから小さいのですわよっ。見栄っ張りなのですわねっ」

「ぷ~・・・クスクス・・・」

 セリーも加わり、周りの大勢の野次馬達からも、嘲笑が聞こえてくる。



 これにはカアクも癇にさわったようで

「ぬおおおおお!!!!俺をバカにするなああああああああ!まりいいいいんんん!!てめえええええ!」

 と鬼の形相で怒るカアク。



 ようやくカアクの心を傷つける事が出来て、満足なマリンちゃん。最後に、盛大に股間に蹴りを入れた。

「むおおぉぉぉぉ・・・」

 悶絶するカアク。



「あら、ごめんなさーい。小さくて見えなかったわ。おほほほほ」

 優雅にその場から立ち去る。

 カアクは苦悶の表情を浮かべながら、引きずられていくのであった。




「では、ラインリッヒ様。私どもはこれで」

「ああ、ありがとう。すまないがよろしく頼むよ」

「はっ!お任せください!」



 立ち去ろうとする警備兵の隊長さんに、リンちゃんが尋ねる。

「あ、あの!立ち会う事は出来ますか?アイツらの処刑に!」

「え?あ、えーっと・・・」

 ラインリッヒをチラ見する隊長。



「構いませんよ。自分達の目で確かめないと、今後の精神衛生上良くないでしょうから」

「はっ!では特別に許可する!警備局に着いたら連絡するように!受付には話を通しておく!」

「はい!ありがとうございます!隊長殿!」

 敬礼で答えるリンちゃん。



 全員が無事連行され、女の子達10人はヘナヘナと床に座り込んで、安堵の声を上げている。



「はあぁぁ~良かったぁ」

「超うれしー!超うれしぃー!」

「本当に解放されたんだね。もう自由なんだよね?やだ、泣きそー!」

「もう泣いてんじゃん!あはははっ」



 そこにリリフとセリー、そしてブルニが加わる。

「みんなおめでとっ!本当に良かった!」

「スカッとしましたわっ!やっぱり悪は滅びるのですわっ!」

「あの・・・みなさん良かったですっ」



 そんなリリフ達に抱きついて感謝をする女の子達。

「わああんん!リリフさん!ありがとおぉぉぉ!」

「ホントに超感謝!超超感謝だよっ!」

「私、私っ・・・本当にみんなに迷惑をかけちゃって・・・うえええぇん」

 マリンちゃんも張り詰めていた気持ちが緩み、涙が滝のように流れていく。



「もういい。もういいんだよっ。よく耐えたよ!最後はしっかりやり返せたじゃん!凄いよマリン!」

「うん・・・本当に最後やり返せて、めっちゃ気持ちがスッキリした!リリフさんっありがとお!」

「ええ??ち、違うわ。単純に私がムカついてただけっ。私も殴りたかったもんっ!」

「わかる~!私もメッタメタのギッタギタにしてやりたかったっ!」

「あはははっ」



「それはそうと・・・ラインリッヒ様ってめちゃくちゃエリートでしょ?凄くない?どこで知り合ったの??」

「もしかしてリリフさんの彼氏?!ねえねえ!彼氏なの?!」

「きゃー!格好いいもんねえ!あやかりたいわぁ!」

 尽きることの無い盛り上がりをみせる女の子達。



「ち、違うよぉ・・・ラインリッヒ様は今日だけ特別にお越しになってくださったのっ!本当に凄い方なんだから!私なんて釣り合いが取れないわっ!」

「えー?なんか必死に否定しているのが怪しぃー!」



「コラコラコラ!命の恩人様に対して無用な詮索はしないっ!聞いたでしょ?あたい達は誰もが犯されたり、殺される危険性もあったんだ!それを救ってくれたのはリリフさん達なんだよ!一同、頭が高い!」

「ははー!リリフ様、ありがとうごぜえますだぁ!」



「あはははっ。もうー!止めてよー!おっかしー!」



「うふふふっ。でも本当にありがとう!これでようやくスタートが切れるよ!あたい達の冒険者のスタートが!」



「そうそう。頼りにしてるよ!リーダー!」

「え?!あたし?」

「リンちゃんしかいないっしょー!」

「そうそう!リンちゃんリーダー爆誕!」

「では!早速リーダーのリンちゃんから抱負をどうぞ!」

「え??えっと・・・ガタリヤを代表するチームになるぞぉ!」

「おおー!」

「あはははっ」



 ワイワイと嬉しそうに喜んでいる女の子達を温かい目で見守る、ラインリッヒや騎士達、冒険者達やミールであった。




「それじゃあリリフさん!あたい達は警備局に行ってくるよ!一応ケジメをつけてくる!」

「うんっ。今度一緒にクエストしようね!」

「もっちろん!楽しみにしてるよ!」

「うん!」

「それじゃあ!」

「またねー」



 すっかり仲良くなった女の子達とリリフ達。ハイタッチでお別れをして、女の子達は警備局へ向かっていった。



「それでは、ご依頼達成ですかな?まだわたくしにして欲しい事はありますか?」



「あっ!ラインリッヒ様!その前に・・・先程は、ありがとうございました!お芝居までして頂いて・・・本当、本当に(つら)い思いをしていた子達なので・・・救って頂いてありがとうございます!」



「いえ、実はお礼を言うべきなのは、わたくし達の方なのです」

「ええ?!そんな滅相もないですわ!」



 ラインリッヒは静かに首を振ると

「正直・・・普段はこのような末端の部分というか、市民の皆様の意見を直に聞くことなどはいたしませんので。いつも重大事件の聴取やら、不正を未然に防ぐ為の定期問診、そして書類の整理の追われる日々・・・一応市民の陳情に答える仕事もありますが、出向いてもらうだけで、こちらから直接行くことはないのです。ですが、今回実際に皆様に接してみて、表に出ない凶悪犯罪がまだまだ沢山潜んでいる事が分かりました。そして罪に問われない不正行為で、苦しんでいる人達がいることも肌で感じました。ありがとうございます。今日は来て良かった。また明日から仕事に励もうと、エネルギーを沢山頂けました」



 シーンと静まり返るギルド内。

 なんせガタリヤ政府の超超VIP高官が、逆に頭を下げて感謝しているのだ。

 貴族もそうだが、人間は偉くなればなるほど性格は横柄に、傲慢になりがちだ。それなのにこのラインリッヒは、人を見下すような雰囲気は微塵も感じない。



「お前・・・良い奴だな」

 ミールが唐突にタメ口で話しかける。



「ちょ!ミールっ!ラインリッヒ様は、もの凄い偉い人なのよ!言葉使いを・・・」

「構いませんよ。逆に嬉しいのです、なんか1人の男として見てもらっているようで」



「まあっ!ラインリッヒ様はM気質なのですわねっ!奇遇ですわっ!実はわたくしもなのですっ!」

「M?Mキシツとは・・・失礼。あまり流行の言葉には疎いもので・・・よろしければ教えて頂けませんか?」

「もちろんですわっ!いいですか?!Mき・・・」



「あー!!はいはい!セリーの講釈はいいの!ラインリッヒ様、お気遣いなく!私たちの要望は全て叶えて頂きましたわ!ありがとうございます!」

「そうですか・・・ではわたくし達はお先に失礼させて頂きます」



「ダメだ」



「え?ちょっと!ミール?!」

「約束は今日1日って話だろ?まだ夕方じゃないか」

「そ、そうだけどさぁ・・・ラインリッヒ様はお忙しんだから・・・それにもうお願いする事も無いし・・・」

「いや、ある」

「え?なにかあるの?」



「祝勝会だ。グワンバラの食堂で酒を飲もう!打ち上げだ!」



「まあっ!良いですわねっ!もっと色々なお話を詳しくお聞きしたいですわぁ!」

「確かに、騎士様は普段どのような生活を送ってるのかは気になるわね・・・」

「ぶ、ブルニも沢山お話聞きたいですっ」

「僕も大変興味があります」



「そうですわよねっ!やっぱりみんなラインリッヒ様の性癖が気になるようですわっ!」



「う、打ち上げ・・・ですか?それはお酒を飲む・・・宴会的なものでしょうか?」

「そうですわっ!ラインリッヒ様はお酒は飲めますの?」

「ええ・・・まあ。一応ですが・・・そんなに強くは・・・」

「さあっ!では参りましょう!レッツゴーですわっ!」



 こういう時はセリーが役に立つ。半場強引にラインリッヒや騎士たちを率いて、堂々と路上を進んでいる。

 道行く人々は、白銀の鎧に身を包んだ騎士達連中を率いて、ノリノリで進んでいるセリーを見て



「みて・・・あの人ただ者じゃないわね。あんなに騎士を引き連れて」

「そうだそうだ!田舎者丸出しの格好に騙されるなよっ」

「ああ、関わり合いになるなよ?マンハッタンが粛清されたとはいえ、まだまだ油断出来んからなっ」



 ヒソヒソと話し声が聞こえる。

 一様にセリーの前の人垣は自動ドアのように開けていった。



 そして歩くたびに左右に大きく揺れる胸をみて

「た、ただ者じゃない・・・な・・・あの胸は・・・」

「ああ、ただ者じゃ・・・ないな・・・」


   

              続く

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