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スライムには負けるけど魔王には勝ちます  作者: すふぃ~だ


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ガタリヤ奮闘記⑩

 しかし、お会計時にグワンバラが

「うちはラブホじゃないんだよ」

 とのお小言に全員『あはははは・・・』と愛想笑いを浮かべるが、その後も結局夜遅くまで体を重ねあってしまうのであった。



 ⇨ガタリヤ奮闘記⑩




 次の日、ルクリアはいつも通りグワンバラの食堂に仕事に行き、リリフとセリーはミールに連れられて武器防具屋を訪れていた。



「わあぁ。いっぱい有るのねぇ!」

「広いですわぁ」



 武器防具屋と言っても今回訪れた場所は大衆向けのお店。イメージ的にはショッピングモールのような感じだ。



 広い店内には各種の武器はもちろん防具やアウトドア用品、一般的な服や靴などもズラッと揃っていた。

 値段も全体的には安めで品揃えも豊富という事もあり、冒険者以外の一般市民も多く買い物に訪れている。



「まずは武器だな。セリーは魔力が上がる魔法石が埋め込められている杖なんかがおすすめだけど、リリフは自分に合った使いやすい武器が良いと思うな。実際に手に持ってみて決めればいいんじゃないかな?」


「そうなんだぁ。忍び者って武器は何でも良いの?」


「そうだね、多くの適性は武器は自由だな。ゴリゴリの前衛職バトルマスターでも短剣を使っている人もいるし、中衛職は一般的に弓とかの遠距離攻撃出来る物を選ぶ人が多いけど斧を使っている人もいるよ。大袈裟に言えばセリーのような攻撃魔法職でも大剣を使ってもいいのさ。ま、意味は無いから装備してる人はいないと思うけど、それくらい自由なんだよ」


「へえぇ!そうなんだっ!」


「詳しく言うと、リリフの様に『忍び者』だったり『戦士』『騎士』『パラディン』そんな感じの適性は【個性適性職】って言われていて武器は自由なんだ。対して『大剣使い』『ハンマー使い』『弓使い』等々、武器を指定している適性は【武器適性職】って呼ばれその武器しか使えない仕組みだね」


「なるほどですわ。そういった適性もあるのですねぇ」


「【個性適性職】は武器は自由だが攻撃力そのものは【武器適性職】に劣るんだ。そのかわりリリフの様な『感覚鋭利』などの適性毎の固有のパッシブスキルを獲得する事が出来る。逆に【武器適性職】は固有のパッシブスキルは獲得出来ないし、武器も固定する事になるんだけど、そのかわり武器毎の強力な固有スキルが獲得出来るんだ」



「ミール様。1つ質問よろしいでしょうか?例えば大剣を使っている『戦士』がいたとします。同じ人が『大剣使い』の適性ももっていた場合はどうなるのでしょう?攻撃力も高い戦士が誕生するのでしょうか?」



「良い質問ですね。まず基本的に適性は重複して能力を発揮することは出来ない。例えば大剣使いの固有スキル【プラズマラッシュ】という強力な雷属性のスキルがあるんだけど、戦士で適性登録してた場合はこのスキルは使えない、もしくはかなり威力が弱くなってしまうんだ。逆に大剣使いで適性登録してた場合、戦士の代表的なパッシブスキルである【勇猛果敢】は発動しないって感じかな。このように適性が2つある場合はお互いのスキルが反発してしまって上手く能力を発揮出来ない事が一般的だね」


「そうなのですねぇ。ではわたくしが『戦士』の適性を獲得しても魔法が使える前衛とはならないって事ですわねっ。ちょっと残念ですわぁ・・・」


「もの凄く数は少ないけど、反発せずに使える人も中にはいるから、試してみても良いんじゃ無いかな?」


「ねえ、ねぇ。ミールはさ、もの凄い数が少ない人の1人なんだよね?回復魔法使えるんだもん」

「ああ、まあ、そうだな・・厳密には違うけどね」

「へぇ〜。凄いなぁ」


「あとね、元々両方使えるって適性も存在するよ。『魔法戦士』はセリーのお望み通り魔法も使いながら前衛が出来るし『賢者』は回復魔法も攻撃魔法も使えるって感じで。ただし、こういった適性は上位のスキルは使えないってデメリットもあるね。賢者とかだと、どっちの魔法も使えるけど両方中途半端な感じになってしまうんだ。まあ、賢者は状態異常を解除させるのが得意だし、魔法戦士は相手を弱体化させる特別な魔法を使えるから一概に上位スキルが使えないから駄目って事はないけどね」


「ほぉぉ。色々あるんだねぇ」


「逆にスキルはステータスに登録すると増えるようになるって前に言ったと思うけど・・・リリフのように素質適性を持っていて、スキルも所持していた場合は、ステータスに登録してなくても効果が自然と発揮されているって場合もあるんだ。要は相性みたいなものかな?結構意外な成長をするスキルもあるし。だからあまり最初から決めつけてしまうのは勿体ないから色々試してみても良いと思うよ。まあ結局、リリフが使いやすい武器が良いって事だね」


「うんっ。分かったっ」

「まずは手に取ってみてブンブン振ってみるといいですわっ」

「そ、そうねっ。やってみるわ」



 それからしばらく様々な武器を手に取って、あーでもないこーでもないと試行錯誤をするリリフ。



「あーん。どーしよぉ」

「わたくし、これに決めましたわっ。ビビッと来ましたのっ」



 セリーの手には1メートル程の杖を持っていた。先端には赤い魔法石がキラキラ輝いていて結構細かい模様が入っている。



「ええ~。いいなぁ。どうしよぉ~」

「候補はあるんだろ?どれで迷ってるんだ?」



「うんとね。ロングソードとショートソード、あとダガーナイフ、レイピア、短剣、ウイングナイフってのもいいなぁ・・・」



「おいおい・・・一貫性が全く無いな・・・そもそもロングソードは振れるのか?」

「うーん。ちょっと重いかなぁ」

「じゃあ難しいかもね」

「え?!そなの?!」


「今選んでるロングソードは初心者用で、かなり軽く作られているんだよ。それでも重いって事は、今後の事を考えると止めといた方がいいかもね。まあ、どうしてもこれが良いってこだわりがあるなら別だけど」


「そっか・・・わかったわっ」


「リリフはスピード重視のスタイルじゃないかな?一撃の攻撃力は低いが手数を増やして攻撃するような感じ。俺の予想だとリリフはスキルの影響で目も良いしバランス感覚も優れていると思うんだよね。そういった所は接近戦をする上で重要なパラメータとなるからあんまり大ぶりな武器ではなく小回りが利く武器の方が良いかもしれないね」



「ふむふむ。なるほどぉ。ちょっとイメージ出来てきたかも」



「あと、盾は持つか?盾を持つ場合は少し長めの武器でも良いと思うよ」

「持たない場合もあるの?」



「ああ、結構いるよ。リリフの職はDPSだからね。とにかくダメージを与えてナンボの職だから。ただし大抵の場合は別で攻撃を受け止める役の通称『盾役』ってのがいるから出来ることだけどね」



「ふむー。でもなんか私のイメージだと盾を持って戦うのは違うかも。ねえねえっミール。これって両手に武器をそれぞれ持っても良いの?」


「二刀流ってことだね。全然オッケーだよ。そういう人も沢山いるね」

「そっかぁ・・・よしっ。決めた!私これにするっ!」



 手に持ったのはダガーナイフ。ショートソードよりかはちょっと短いが短剣よりは長い武器で、そして形が湾曲しているのが特徴だ。



「あとねっこれもっ!」

 もう1つ手に取ったのはウイングナイフ。手首から肘辺りにかけて刃を伸ばす、すれ違いざまに攻撃するような武器だ。



「このダガーナイフってのがなんか形が格好いいから良いなって。あと、このウイングナイフは盾としても使えそうだし見た目も格好いいから良いなって!・・・ダメかな?・・・」


「いやいあ、全然それで良いんだよ。見た目って重要だと思うよ。ある意味自分の命を預ける武器だからね。自分が気に入ったので良いんだよ」

「そっかぁ。えへへ・・・」


「ダガーナイフもウイングナイフも沢山種類がありますけど、どれにするのですか?やっぱり見た目格好いいのはお高いですわね」

「そ、そうよね・・・」



 チラっとミールを見るリリフ。

 分かりやすい。少し値段が高い物を買って欲しそうだ。



 しかしミールは

「いや、一番安い初心者用のこれにしよう」

「は、はい・・・」

 明らかに残念そうなリリフ。



「俺はね、折角人生をかけて冒険者の道に入っていく選択をしたリリフ達に、思いっきり楽しんで欲しいんだ。もちろん命がけの仕事だからそんな甘い考えは危険なんだけど、それでも折角、命を賭けて冒険者をやっているんだから、全部自分の身で体験してほしい。冒険者を始めると最初は地味な作業ばかりだろう。あとで考えると、もの凄く非効率な事だったなぁって思う事もあるだろう。上手く行かない事ばかりだし、逃げまくる事もあるかもしれない。でもそれが冒険者なんだ。ここで俺があのショーケースに入っている高価な武器を買ってあげる事は容易いが、そうすると自分達でコツコツと貯めたお金で武器を買って、段々とグレードアップしていく楽しみを奪ってしまう。更に高価な武器は能力が優れているので知らず知らずのうちに武器に頼ってしまう事が多い。初心者にはまず己自身を鍛える事が重要だ。だから今日俺が買うのは全部初心者用だ。みんなそこからスタートしてるんだからね」



 ミールの言葉を黙って聞いていたリリフ達。



 すーっと深呼吸して

「そうよねっ。私もう冒険者としてスタートしてるんだもの。ごめんなさい。なんか気づかないうちにミールに甘えちゃってた。私、初心者用の武器にするわっ」



 セリーもいつの間にか綺麗に輝いていた杖から、お世辞にも光っているとは言えない魔法石が埋め込まれている杖を持っている。

「わたくしもですわっ。自身の甘えた心に喝ですわっ」



 そうして防具も初心者用の装備を選ぶリリフ達。

 リリフは皮の部分鎧と肘当てと膝当て、頭には皮のヘッドギアのような物を被っている。

 セリーは地味な皮のローブと同じく肘当て膝当て、頭には額部分だけを守れるような防具を被っている。



 どちらもハッキリ言って超ダサい。



 初心者用の装備なのだから当然なのだが、2人の装備は思いっきり『私たち田舎から出てきた初心者です!』と主張していた。



 ミールはすこしうつむく。



「あら?もしかしてミール様。今笑いました?わたくし達の事?・・・」

「い、いやっ!そ、そんなことないぞっ!くくっく・・・」

「ああー!ひっどぉい!ミールが言ったんじゃなーい!もぉー!」


「いやいあっ。悪い。あまりに『私達、田舎から出てきましたっ!』て格好だったから・・・つい・・・くくくっ」


「うふふっ。だってしょうがないじゃなーい。初心者だもーん」

「ええ。ええっ。そうですわっ。胸張って行きましょっリリフ」



 ミールが笑ったことに嬉しかったのかリリフ達も笑顔になる。



「そういえばミールって結構お金持ちなのに、どうしてピカピカの鎧とか服とかを身につけないの?」

「黄色ランクの俺が上質な防具を身に付けてたらおかしいだろ?」

「あ、そっか・・・」


「下手に高価な武器や防具を身につけてたら強盗に会う危険性もあるからね。カモフラージュってやつさ」


「そっかそっか。私達も今高価な品を持ってたら危ないものね、納得」

「今のリリフ達は初心者の主張が強すぎだけどね・・・くくくっ・・・」



 再度、笑いのツボに入ってしまったミールをほっといて、リリフは店内を見渡す。



「あとは・・・必要なのはなにかなぁ?」

「食料?野営用のアウトドア用品も必要ですわよね」

「ひえ~なにかと物入りねぇ」


「とりあえずしばらくは結界近くで経験を積んで貰うから、そういうのは後回しで良いかな?けど回復魔法石は最低2つは持っておいた方が良いね」


「回復魔法石って?」

「ほら。あそこで売ってる物だよ」



 ミールが指差した方向には、貴方達の世界で言うところの薬局のような雰囲気の場所があり、看板には魔石屋と書いてあった。



「あそこで魔石を買うんだ。込められた魔法は様々で回復魔法だったり、攻撃魔法だったり。魔石に自分の魔力を込めるだけで発動するから便利なんだよね。1回しか使えないけど」


「へえ!そうなんだっ!てことは私も攻撃魔法を使うことが出来るって事よねっ?!魔石を使えば!初手の目くらましとかに使えそうっ!」


「そうだね。使えるぞ、高いけど」

「げ・・・」


「基本的に魔石は高いし、重いし、かさばるからあんまり多くは持てないよね。だから回復役がいないPTとかは回復魔法石ばっかり仕入れるんだ。でもリリフが言うように初手で使ったり、奥の手として攻撃魔法の魔石を持っているのは悪い手じゃないと思うよ。少しの魔力を込めるだけで直ぐに使えるしね。俺も実際に1つ持ってるよ」


「まあ!そうなんですわねっ!どんな魔石なのでしょう??」

「ふふふ。それは内緒です」

「あ~ん。知りたいですわぁ~~」



「ねえ、ミール。魔法石と魔石は同じ意味?」



「ああ、そうだな。一応魔法石は魔法が込められている物、魔石は魔法が込められてない物って区分なんだけど・・・今はどっちも同じ意味だから言いやすい方で良いと思うよ」



「そっかぁ。あともう1個質問っ。この魔石って1回使ったら終わりって言ってたけど、また魔法を込める事は出来ないの?」



「ああ、俺の説明が下手だったな。すまん。基本的に魔石は使い回しするものなんだよ。回復魔法で使ったらまた魔石屋で回復魔法を込めて貰うのが一般的だね。永遠には使えないけど、1~2年くらいは使い回し出来る耐久力はあるからさ。魔石をいちいち買ってたら結構な値段になるし、当然魔法を込めて貰うだけの方が安いから。ほら、魔法士が駐在しているだろ?あそこに持っていって魔法を込めて貰うのさ。ここの魔石屋は大衆向けだから沢山の種類も置いてるし、あとで時間があったらじっくり見てみるのも勉強になるかもね」


「なるほどですわぁ。ではリリフとわたくしで1つずつ持っておいた方が良いですわよね?」



「ねえねえっミール。これってさ、あの・・・なんだっけ?・・・あ、そうだっ。修復魔法ってのは無いの?重傷の傷とかも直せるやつ」



「うんうんっ。良い質問ですね。今の所、修復魔法を込めた魔石は存在しないみたいだね。修復魔法はどうしても触媒を必要としてるでしょ?その触媒を修復士が魔力を込めて使って、初めて効果を発揮するみたいなんだよね。なんかそこら辺が魔石に込めるには難しいらしいよ。でも魔法水はあるよ」


「魔法水?それってどう違うの??」


「魔法水は既に触媒と修復士の魔力が付与されてるやつの事だよ。例えば風邪を引いたときとかはイソジンの種を浸している魔法水にあらかじめ修復士の魔力を付与されたヤツを飲むのが一般的だね。まあ、あんまり高度な修復には使えないみたいだけど」


「へえぇ・・・てことはフィールドに出る時に、傷口を治す魔法水とかを大量に持っていけば良いってこと?」


「確かにそれが出来るなら最強だけど・・・魔法水は保存が難しくてね。効果を保つには低温で管理する必要があるし、振動とかにも弱い。だから治療院とかでも専用の魔道具の中で冷蔵保存されてるくらいだから・・・基本的にフィールドには持って行けないかな」


「そっかぁ。残念・・・でも回復魔法でも、ある程度は傷口も治るんだよね?確か」

「その通り。ま、痛さを軽減したり、体力を回復したりする方がメインだけどね」



「ミールはさ、回復魔法使えるじゃない?ミールに込めてもらう事も出来るの?魔石って」



「専用の魔道具があれば理論上は出来るよ。ただその魔道具は大きくて重いし、値段もめっちゃ高いから、個人で持ってる人はほとんどいないんじゃないかなぁ。しかも使うには資格が必要でね。魔法を込める作業を資格がない人がやったら法律違反で捕まるんだ。昔、込める作業中に死亡事故が多発してね。そういう仕組みに変わったんだよ」


「そーなんだぁ。残念。お手軽に出来ると思ったんだけどなぁ」


「ふふふ。気持ちは分かるよ。とりあえず初級の回復魔法石を2つ買おうか。それから先は2人が稼いだ金で増やしていければいいね」



「ぎゃあっ!1個5000グルド!初級で??てことは・・・上級の回復魔法は・・・うげえぇ!嘘でしょ?!6万グルドだってっ!いやあああ!」



「これは・・・前途多難ですわねっ!」

「まあ・・・これは上級用の魔石代も入ってるから。空の魔石を持ってって込めてもらうだけならもうちょっと安いよ」

「へええ。魔石にも色々あるんだ?」



「ああ・・そうだね。そもそもリリフは魔石がどうやって作られてるか知ってるかい?」



「え?・・・そういえばどうやってだろう・・・」

「わたくしも分かりませんわぁ」


「魔石はね、特別な鉱石に樹液を素に作られた魔導粘液っていう物を、表面で覆い固めた物なんだよ。特殊なスキルを持つ者じゃないと加工出来ないけどね」

「へー」


「もちろん剥き出しの状態・・・つまり地層から鉱石として発掘された状態でも使う事は出来るけど・・・それだと発動したときに威力が安定しなかったり、込める魔力も沢山必要になったり・・・最悪、込められている魔法が消えてしまう事もあるんだ。だから人間に使いやすいように加工されたのが普段お前達が見ている魔石ってことだな」

「ほむほむ」


「そしてその特別な鉱石はランクがあるんだ。今回リリフ達が買おうとしている初級の回復魔石はナダルト鉱石ってのを使ってるんだけど、これは広く出回っていて値段も安いね。ただし、込められる魔法は初級までって制限があるんだ。威力が高い、効果が高い魔法を込めるには、それ相応な鉱石が必要なんだ」

「へへへー」


「例えば、超稀少なブラッディコアって最上位鉱石があるんだけど」

「ぶらんでーこら・・」

「リリフ。無理に復唱する必要はありませんことよ」


「その鉱石はね。最上級の魔法を込めることはもちろん、精密な魔道具にも多く使われてるんだよ。魔法画面機だったり、リリフ達の部屋に置いてある魔風冷房|(返してない)だったり。1つ1つに使われる量は欠片くらいだから少ないけどね。ちなみに、もしブラッディコアの塊を発掘したりしたら、めちゃくちゃ儲かるぞ。塊のほとんどは以前ルクリアの職探しの時にちょっと話したけど、魔力管理局で住民の魔力を貯める巨大魔石に加工して使われてるんだ。だから通常であれば一般市場にはほとんど流通しない代物。それを発掘しようものなら大騒ぎさ。俺も1度・・・ドルグレムだったかな?そこで見たことあるけど凄く複雑な色で輝いていたのを覚えているよ。そして輝きも凄いけど、値段も凄い事になってたな」


「い、幾らくらいなのかしら?・・・」

「確か・・・2億グルドくらいだった気がする・・・」

「にっににに・・・におくっ!!」

「凄いですわぁ・・・」


「手のひら大の大きさで2億だから夢はあるよね。でもさっきも言ったけど、ほとんど流通してないみたい。俺も数年前にドルグレムで見た1回しか遭遇してないし。大抵ブラッディコアの塊は貯蔵魔石に優先的に回されるから、一般的な市場には流れていかないみたいだね」

「そーなんだぁ」


「おっと・・・話がだいぶ逸れちゃったな。つまり魔石にもランクがあって、今のリリフ達は初級の魔石で十分。いずれ成長したら中級、もしくは上級な魔石を買えば良いと思うよ」

「ううう・・・大丈夫かなぁ・・・」


「ははは。今は想像つかないかもしれないけど、その分冒険者は一般的な市民より収入は高いからね。あまり先を見ずに一歩一歩って所かな・・・」



「そうなんだっ!そっか!そうよねっ!よーしっ!頑張って稼ぐぞぉ!」

「なんかワクワクしてきましたわっ!正に生きてるって実感が湧いてきてますっ!」



 それから簡易的な食料(ビスケット)と水筒も購入して店を出る。



「それじゃあ、いよいよ冒険者登録をしにギルドに向かおうか。初心者応援クエストもついでに受注しよう」



「初心者応援クエスト?」



「うんうん。初心者はさ、いきなり遠出は出来ないでしょ?危ないし。ギルドもなにも知らない初心者が危ない目に遭うのを望んでないしね。とはいえクエストを受注しないと収入が手に入らないから、昔はいきなり隣街までおつかいクエストに行って帰らぬ人になった冒険者が大勢いたんだ。それじゃあ良くないよねって聖女セブンで話し合いがもたれ、国の税金からお金を捻出して街の近辺でモンスターを一定数倒すだけで1日分くらいの収入を得られるようにしたのが初心者応援クエストって訳さ」


「へええぇ。有り難いなぁ。でも一定数って数を数えてる人が一緒に付いてくるの?」


「いや、クエストを登録するとね、頭の中にクエストのアイコンが出てくるんだよ。そこに魔力を込めると通話とか時刻とかと同じ要領で、クエストの詳細と現時点の倒したモンスターの数がわかるようになってるんだ。その情報はギルドでも共有してて討伐数を満たせばそのままクエスト達成だ。別に特別証明する必要はないから便利だろ?その他にもランク昇格クエストの『ゴブリンを倒せ』だったり、『デーモンを倒せ』だったり。そういったクエストも受注すると追跡魔法の改良版みたいな魔法がかけられて、本当に対象モンスターを倒したかが分かるようになる仕組みなんだ」

「便利ですわねぇ」




 ほどなくして一行はギルドに到着する。

 リリフ達がギルドに入ると一斉にギルド内の空気が変わりザワザワし始めた。



「おいおい・・・なんで釈放されてるんだ?」

「ゴブリン化が移ったらどうするんだ?」

「政府はなにを考えてるんだ?」

 等々ヒソヒソ話しが尽きない。



 しかしリリフは全く気にしない風にグイグイと前に進む。

 そこに暁の杯リーダーコリンズが大声を上げて威嚇してきた。




「おいおいおいっ!!ビッチがなんの用だっ!ここはお前達のような低級な人間の来る所じゃねーんだよっ!ゴブリン化が移るだろうがっ!入ってくんなっ!」




 ツカツカツカ・・・

 リリフは完全無視。



「あーあーあー!一瞬でギルドが臭くなったわっ!まじで勘弁してほしいねっ!さては警備局の兵達にもお得意の性接待でもしてきたか?!流石は人間だけじゃなくモンスターにまで股を開くビッチだなっ!おいおいっ!お前ら!こいつらは誰とでもやらしてくれるらしいぞっ!頼んでみろよっ!ぎゃはっはっは!」


「おいおい。まじかよー?!お前頼んでみろよっ!」

「ヤダよ!ぜってー性病にかかってるじゃんか!淫乱女はお断りだぜ」

「ぎゃはっはっは!あそこ臭そうだしなぁ!」



 リリフがピタッと足を止める。

 唇を噛みしめ悔しさを押し殺しているようだった。




「リリフさあぁぁ~~~ん!!!」




 そこにバカデカい声でリリフを呼ぶ声がする。

 振り向くとギルドのアイドル、ピコルがめっちゃ笑顔で駆け寄ってきた。



 ギュッとリリフに抱きつくと

「おひさぁ!りりふっちぃ!セリーぃっち!元気だったぁぁ??」

「ぴ、ぴこるさん・・・」

「うふふふっ!いよいよ冒険者登録ですかぁ?!楽しみですねぇ!!」

「う、うん・・・そうだね・・・」




「さあさあっ!登録はこちらですよぉ!ゴブリン化が移るとか淫乱女だとか言っている『バカッ』はほっといてあっちに行きましょっ!ゴブリン化が移る訳ないのにねー!本当に『クズでバカ』ばっかりなんですねぇ!私そういう事言う人『大っ嫌い』ですっ!もちろんここにいる人達は『ま・さ・か・』通報なんてしてないですよねぇ??ホント通報した人とか『軽蔑』しますぅ!『超』気持ち悪いっ!2度と『話しかけないで』欲しいですよねぇ!」




 ポカーンと口を開けたままのリリフとセリーだったが

「うふふ。そーよねー!ホント男ってくだらないわよねぇ!」

「全くですわっ!きっとお金を払わないと相手されない可哀想な人達なんでわっ!」



「あはははっ。ホントホント!ダッサいよねぇ!!ま・さ・か・このギルド内にそんな『クズ』はいないですよねぇぇぇ???!」

 ピコルはぐるーっと周りと見渡しながら大声で言い放つ。



 笑顔だが目は笑っていない。今までヒソヒソ話しをしていた冒険者達が一斉に目を背け散っていく。



 何故ならピコルはギルドのアイドルなのだ。

 かなりの冒険者達がピコルと少なからずお近づきになりたいという願望を持っており、ピコルもそれを自覚している。なので敢えて大声で言って冒険者達を牽制したのだ。


 リリフ達の悪口を言ったら私が許さないと・・・



 暁の杯リーダーコリンズもピコル狙いだったようでチッと舌打ちしたのち、その場を離れていった。



「はああぁぁぁあぁ・・・ピコルさぁぁん。ありがとおぉぉぉ!」

「助かりましたわぁ。ピコルさんお強いのですねぇ。格好いいですわっ!」


「なにを言ってるんですかぁっ!私たちお友達でしょっ!困ったときはお互い様ですっ!」


「うんうんっ。ピコルさん、だぁいすきっ!」

「私もりりふっち、だぁいすきっ!」


「ああんっわたくしもですわぁぁ!」

「私もセリーっちのおっぱいだぁいすきっ!」


「ああんっそれは違いますわぁぁ!!」

「あはははっ」


「さてと・・・ピコル、ありがとな。助かったよ。それじゃあ登録していこうか?」

「はいっ!」

「いよいよですわっ」

「えへへっ・・・」



 リリフ達はカウンターに座り、向かいにピコルが席に着き、手続きを進めている。

 クスッとピコルが笑った。



「??どーしたの?ピコルさん?」

「えへへっ。なんだか感慨深いなぁって。ちょっと前までお部屋から出れなかったお二人が今や冒険者ですよっ?」


「だよねーっ!あははっ!自分でもそう思うっ!」

「本当に目まぐるしい1ヶ月でしたわっ!」

「それにそれに、何より意外だったのがっ」

「意外だったのが??」


「2人とも超美人で可愛いのに!2人とも超ダサいんだもーん!どうすればそんな田舎者感が出せるのー?おっかしーっ!あははっ!」

「ぎゃぁー!ピコルさんにも笑われたー!」

「あはははっ!」



 和やかな雰囲気に包まれるリリフ達。

 おそらくリリフ達を気遣って、敢えて空気を変えようとしているのであろう。

 本当に心の優しい子なのだ、ピコルは。



 ピコルは魔法画面機に視線を移し、しばらく操作していたが、『ヨシッ』と一言呟き、近くにあった引き出しから魔石を取り出す。



「お待たせしましたっ!それじゃあリリフさん、セリーさん。こちらの魔石に触れて下さい」



 パアァっと鈍く光り、リリフのステータスが更新された。



 リリフ・スピアーナ 『職業:冒険者(緑) 適性:忍び者』

 セリー       『職業:冒険者(緑) 適性:攻撃魔法士』



「わああ。セリー、載ってるわよっ冒険者って!」

「リリフもですわよっ!遂にデビューですわねっ」



「お二人とも、おめでとうございますっ!それでは早速クエストの受注方法のご案内をさせて頂きますっ」

「はいっ!お願いしますっ!」



「ではでは。こちらが今あるクエストの一覧です」

 ピコルは魔法画面機をリリフ達に見えるように向きを変える。



「ここと同じ内容があちらの巨大画面機に載ってますので、あちらも是非ご利用下さいっ」

「あっ、ミールが言っていた初心者応援クエストがあるぅ。えーと、30匹討伐で・・・800グルドかぁ」

「本当は500グルドなんだぞ。他の街だと」

「え?!そうなの?」



「ああ、このガタリヤの領主は昔から冒険者第一に考えてくれてる人でね。街の警備も冒険者に結構任せてたり、育成にも力を入れてくれてたり。その影響で、こういった周辺の警備とか初心者向けのクエストには街から支援金が出て上乗せされているんだよ」



「へええ。ねぇねぇ、ピコルさんっ。これってセリーと2人で30匹?2人で800グルド?」



「はあい。ではでは、クエストについて説明しますねっ!この初心者応援クエストは人数毎のお支払いが可能となっているクエストなんですよっ」

「へえぇ?てことは2人で30匹倒したら、合計1600グルド貰えるってこと??」



「ぶっぶぅ〜。リリフっち、ふせいか〜いっ」

「・・ぶぶーって・・・」

「なんだか楽しそうですわ・・」



「うふふっ。ごめんごめん。なんかお友達にクエスト紹介できるのが楽しくって。謎テンション入っちゃいました。てへへ」

「あはは・・」



「ではでは、気を取り直して!えっと、2人で報酬を受け取る場合は、60匹の討伐が必要になってきますっ」

「ふへぇ・・やっぱりそうよねぇ」



「それと初心者応援クエストを受けれるのは、1日1回ですっ。サクッと倒せたから、もう一周行っちゃおーってのは出来ないんですっ」



「わたくし、30匹すら倒せるか心配ですわぁ」

「分かる。ねぇ、ピコルさん。これって翌日に持ち越しても良いの?」



「もっちろーん。例えば、昨日50匹討伐してて、今日10匹倒したらクエスト達成ですっ!報酬満額もらえますよっ!更に今日追加でクエストを受けることも出来るんですっ!1日1回ですからねっ。昨日の分を今日クリアしても、今日の分は無くなりませんっ」

「へえぇ・・・」



「でもでもぉぉ〜!受注できるのはクエスト達成してからですっ!毎日クエスト溜め込んでぇー、週末に一気にやっちゃおー!ってのは出来ないですよぉ。ざーんねんっ」

「やっぱり楽しそうですわ・・」



「あはは・・これって60匹で受注したら60討伐するまでクリアにならない感じ?」

「わあおぉうっ!流石リリフっち。良い質問っ!」

「・・わーおーって・・・」



「例えば昨日60匹で受注して、今日30匹討伐した場合。途中で完了報告する事が可能ですっ!その場合は30匹分の800グルドをお支払いとなりまーすっ」



「初心者クエストは1日1回ですわよね?てことは今日の分60匹、昨日の未報告分の残り30匹、合計90匹受注できますの?」

「うきゃ〜!セリーっち!その質問を待ってましたっ」

「うきゃー・・て・・」



「クエストは報告した時点で、残りは破棄されますっ!なので未達成の分があっても無くなっちゃうので、注意っ!ちゅーいいっ!」

「誰?・・ピコルさんにお酒飲ませたの?・・」



「だ・け・ど・おぉ。別クエストを重複で受けれる場合もあるんですよぉっ!討伐クエストとかはぁ、複数受注できないけどぉ、初心者クエストはぁ、重複できちゃうんですぅ!だからぁ、畑、家畜護衛クエストと一緒にぃ、受注する人は多いですよぉ!ダブルで報酬貰ってっガッポガッポぉ!」



「へぇー。護衛クエストっていくらなのかしら?」

 リリフ達は魔法画面機に視線を移して調べ始めた。

 ミールも何気に視線を画面機に移す。




 その瞬間・・・




「ふふふオラオラ楽しそうにしてるだろ?和気あいあいとしてるだろ?でもお前らには今後一切笑顔を見せねーからな塩対応してやるからなざまーみろお前ら全員顔覚えたからなあからさまに態度変えてやるからな友達をバカにした報いを受けろバカめ」



 え?



 ミールは、パッとピコルを見る。

 ピコルはニコニコといつも通りの笑顔を見せていた。



 ・・・




 時間にして3秒ほど・・




 一息でボソッと早口で呟いたので、リリフ達は全く気づいていない。



 正に完全犯罪だ!



 もしかして、最初リリフ達の装備を笑ったのも・・・

 説明が異様にハイテンションだったのも・・・

 全て、他の冒険者達に楽しそうにしている自分達を見せつける為の計算だったのか?!



 ミールは何事もなかったかのように、ニコニコと笑顔を浮かべているピコルの闇の部分に背筋が寒くなるのを感じる。



 しかし、ミールが1人で冷や汗をかいてる事など、つゆ知らず。

 ピコルは変わらずに、リリフ達にクエスト説明をしている。



「ふわぁ!畑、家畜護衛クエストは6時間かかるけど、12000グルド?!わっ!結構貰えるねっ!」

「ですわっ!やはりミール様が仰ったように、冒険者は収入が高いのですわねっ!初心者なのにこれだけ貰えるとは!」

「あははっ。ざーんねんっ。これは達成度100の場合の金額ですっ」

「達成度?」



「ですですっ。一応護衛クエストなんでぇ、護衛してナンボなんですよぉ。だからぁ、なーんもしないでボーっとして、被害をたーくさん出しちゃったら報酬ゼロなんですよっ」

「へえぇっ。そりゃそうよねっ。でもどうやって見分けてるのかしら?」



「最初にぃ、どれくらいの区画を担当するか決められますっ。区画が多いほど報酬はデカいですが難易度も上がりますよっ。そしたらぁ、マーカーさんが魔法を使ってインプットしますっ。そしてぇ、最初と終わりの被害の照らし合わせを行って、報酬が決まるって感じですねっ」



「まあっ。結構キッチリしてるのですわねっ」

「だねっ。ねえ、ピコルさん。一番小さな区画だと報酬どれくらいなの?」



「えっとですねぇ。それだとこのD区画かなぁ。ここは達成度100で8000グルドですっ。でもここは強いモンスターも多いから、リリフっち達は最初はGとかH区画の方が良いかもっ。こっちはDよりかは広いけど強いモンスターも少ないからっ。達成度100で4000グルドですねっ」

「そっかぁ!でも4000でも凄いよねっ!?初心者応援クエストと併せたら4800グルドだもんっ」

「ですわねっ。これからも一石二鳥で参りましょうっ」



「あははっ!でもでもー。初心者応援クエストを受注できるのは緑ランクだけなんですぅ!だから調子にのって無駄遣いしてたら、後々苦労するのは、あ・な・た・ですよっ!」



「ぎゃー!そーなんだぁ。じゃあ今のうちに貯金しとかなきゃだねっ!色々と節約しなきゃっ」



「セリーは食費がかかるからな・・・」

 ミールも会話に参加する。



「あははっ。そうだそうだっ、セリー。一人前になるまでオカワリ禁止ねっ」

「ひぃぃんん。そんなぁ!!」

「もしくは、ずっとモヤシ定食って手もあるな」

「あははっ。そうだそうだっ。モヤシライスにモヤシ炒め、モヤシのスープ!」

「ふえーーんっ!あんまりですわっ!せめてソーセージくらい付けてくださいましっ!」

「あははははっ」



 3人のワイワイとしているやり取りを見ていたピコル。

 何か違和感を覚える。



「あれ?・・・あれ?あれ?あれぇぇ??」

「え?・・・な、なに?ピコルさん??」

 ピコルはジーっとリリフ達を見定めている。



「変っ!なんか変!!絶対変!」

「ど、どうされましたの?ピコル様??」



 ピコルは尚もジーとリリフ達を見ている。



 何かが違う。


 何かお互いが信頼しているような・・・


 いやいや、前から信頼関係は見てとれた・・・


 でも何かが違う・・・



 距離感?



 そう、3人の距離感が自然なのだ。なにか硬い絆が出来たような・・・



 ピコルの女の直感が答えを導き出す。




「りりふっち、せりーっち。もしかしてミールさんとエッチしました??」




 唐突にド直球な質問をぶつけるピコル。



「ぶっ!ええぇ??!!あ、あのぉ!えっと・・・」

 リリフの目が完全に泳いでいる。



「やっぱり。はぁ~ん。遂にライバルが増えたかぁ。ま、いずれはこうなると思ってたし!私、負けませんよっ!」



「あ、あの・・・いいの?ピコルさんは??」

「いいもなにも、そういう条件で私もミールさんに抱いてもらってますしっ!だってしょうがないですよねっ?ミールさんカッコいいしっ!」

「そ、そうなのよっ!カッコいいよねっ!そして優しい!」

「うんうん!分かるぅ!」



 盛り上がるリリフとピコルとは対照的に小さくなるミール。大声で話すのやめてと願いながら・・・



「わたくしもですわっ!もっといじめて欲しいって思いますわよねっ?」

『それは思わない』

 セリーの一声に2人の声がシンクロするのであった。




 2人はミールが言っていた、初心者応援クエストを早速受注しギルドを出る。



「30匹討伐って・・・思ってたより結構多いわね」

「確かに・・・2人ですと60匹・・・大丈夫でしょうか・・・」



「まあ、南門周辺は比較的低級モンスターしか出ないから、まずはそこから始めようか。そしてまずはセリーが魔法を使えるようになる事を目標にしよう。それが出来たら今度は街全体を一周するようにしていこう。焦らず少しずつな」

「はいっ!」


「早く魔法を覚えたいですわぁ」

「具体的にどうすれば覚えるのぉ?」


「とりあえず魔法士として適性登録したから、これからグングンと魔法士としてのスキルを覚えて行くと思うよ。なにもしなくても覚える人は覚えるんだけど、一番はモンスターと実際に戦うといいみたいだね。経験値っていうのかな?目には見えないんだけど街中で魔法の練習をするより、モンスターと戦う事の方が段違いに得られる経験値は高いみたいだね」


「ということは、とりあえずリリフに戦ってもらって、わたくしはその場にいるだけで良いってことでしょうか?」


「そうだね。多分魔法士だから直ぐに魔法は解放されるはずだから。最初はポンポンとスキルが増えていくから楽しいぞ」

「へええ!楽しみっ!」


「魔法が使えるようになったら、今度は熟練度・・・これも目には見えないんだけど。何回もスキルを使っていると熟練度が上がり、ワンランク上のスキルを覚えるようになるんだ。冒険者は一見自由で開放的な感じに見えると思うけど、実際は日々コツコツ鍛錬をする者が生き残る世界なんだよ」


「なるほどですわねっ。わたくしも日々の鍛錬を欠かさないように努めますわ」

「さあ、ではでは。門をくぐりましょうか」



 門の前には兵士が2人立っている。

 門には通常、検問魔法陣が展開されているので1人1人に身分を確認したりはしない。

 無国籍や犯罪歴がある者以外は自由に出入りができるのが一般的だ。

 もちろん、犯罪者などを自動的に弾く事が出来る魔法陣があるから出来ることなのだが・・・



「とりあえず最初は結界とギリギリの所で戦おうか?もし危なくなったら直ぐに結界に逃げれるように」

「わ、わわわわかりました」

「おじょ、おじょっ・・・リリフ。気をつけてくださいねっ」



 リリフはダガーナイフとウイングナイフを両手に装備する。

 緊張で震えているせいで、武器からカタカタカタっと音が聞こえてきていた。



「落ち着けって。ここら辺は本当に雑魚モンスターしか出てこないから」

「は、はいっ!」



 びょこっと雑草からキラキラ光るジェル状の物体が出てくる。

 典型的な雑魚モンスター、スライムだ。




「ぐわああああああああああああああああああああああぁぁ!!!!」




「きゃっ!え??な、なになに??」

「どっ、どうなさったんですのっ!?」



 ミールは顔面蒼白で結界内に逃げ込む。その大声に釣られて、リリフ達も思わず結界内に逃げ出した。

 ミールは膝に手をつき肩で息をしている。

 スライムはぷるんとその場でプルプルしたままだ。



「む、む・・・・む・・・」

「む?なになに?むって?」



「・・・無理・・・・」



「ああっ。分かりましたわっ!ミール様はスキルのせいでスライムが恐怖の大魔王に見えてるんですわっ!リリフっ、わたくしたちも経験したではないですかっ!」


「ああっ!そっかそっか!あはははっ。忘れてたぁ」


「お、俺は近寄れないから・・・お前達で頼む・・・飛びついて衣服を溶かそうとしてくるから・・・ヒットアンドアウェイで相手をよく見るんだ・・・リリフなら出来る・・・おえっ・・・」


「う、うんっ!わかったっ!」

「リリフっ!しっかり!」

「任せてっ!」

 


 リリフは、ジイッとスライムと対峙する。

 プルプルと震えている身体は半透明で、太陽の光を反射してキラキラ光っていた。



 ぴょんっ



 スライムがリリフの腰辺りを狙って飛びついてきた。

 スッとリリフはスライムから視線を逸らさずに冷静に横に(かわ)す。



「えいっ!」



 リリフはミールから言われた通りにスライムに一太刀入れると直ぐに離れる。

 攻撃を受けて活性化したスライムは、ぴょんっぴょんっと連続して攻撃してきた。

 しかし、リリフは冷静に躱しながらカウンターで一撃を食らわす。



  ぷしゅ~



 まるで水風船に穴が開いたように、今まで球体状になっていたスライムが只の液体になり、地面に染み込んでいく。



「ふぅ~、やったな。おめでとう」

「え?!倒したの?!」

「凄いですわっ!リリフっ!おめでとう!」




「やったあああぁぁ!!」




 リリフは身体全体で嬉しさを表現する。

 ふとパアァっとリリフの身体が一瞬光った。



「え?!なに?!」

「おめでとう。スキルを獲得したみたいだな」

「え?!そうなんだっ!へええぇ。これが」


「おめでとうございます。リリフ。なにを獲得したのでしょう?あ、そういえばギルドに行かないと分からないんでしたわね」


「そうだね。一応頭の中にボヤッとなにかがあるのはわかると思うんだけど。どうかな?」

「う、うん。なんとなくだけど・・・なにかあるような・・・ないような・・・」


「そうだとしたらパッシブスキルではなく実践的なスキルかもしれないね。あとでギルドで確認しよう」

「はいっ!」


「じゃあ引き続き結界沿いを進むとしようか。悪いが俺は結界の中から付いて行くよ。恐怖は結界内だと多少和らぐから。リリフ、落ち着いてな」

「はいっ!」



 リリフは草の動きなどを見ながら慎重に進んでいく。



「街に入るときはミール様が結界石を使って下さっていた事もあり、全く気にかけておりませんでしたが・・・こうやって歩いていると、いつモンスターが襲ってくるかでドキドキしてしまいますわね」


「そ、そうなのよぉぉ・・・ちょっと風で草が動くとビクッとしちゃうわぁ・・」


「まあ、そこら辺は慣れだね。最初のうちはやり過ぎくらい臆病の方が良いんだ。フィールドはちょっとの油断が命取りになるからね。それをよく覚えておくように」

「わかったわ」

 深く頷くリリフ。



 ぴよ~ん



 またスライムが出てくる。



「またきたわねっ!行くわよっ!」

 今度はサクッと一撃で液体化させるリリフ。



「やったですわっ」

「まだよっ。もう一匹いるわっ」



 流石に感覚鋭利のスキルを持っているだけのことはある。

 索敵能力は人一倍あるようだ。

 その後も何回かスライムが襲ってきたが、危なげなく対応する事が出来た。



 夕方近くになり10匹くらい倒した所で、今度はセリーが一瞬光に包まれる。



「お、セリーもなにか獲得したみたいだな」

「やりましたわっ。魔法ですわね、きっと!」

「なにかボヤッとしたものが頭の中にあるかい?」

「う~ん。全くわかりませんわ・・・」



「そうか。まあ最初だからな。夕方になってきたし記念すべきデビュー戦はそろそろ終わろうか」



「ええ?!まだ行けるのにぃ!」



「気持ちは分かるが、初めての実践は自分でも気付かないうちに緊張で疲労しているものだよ。無理しない方が良い。あと、こういうフィールドは日中と夜では、全くモンスターの種類も変わってくるから用心だね。この草原の覇者ウルフキマイラが出てくるのも夜だから注意するように」



「そ、そうなんだっ。分かったわ」

「では早速ギルドに行ってスキルの確認を致しましょう。わたくし待ち遠しいですわっ」



 セリーは余程早く魔法が使いたいのであろう。リリフ達をせかしながらギルドに入っていく。




「あら・・・ミール様・・・これって・・・」



「ん?ああ・・・これは・・・パッシブスキルだな・・・『就寝時魔力回復小』寝たら普通の人より少しだけ魔力が回復する量が増えるっていう・・・」

「ああああん。そんなぁっ!」


「私は『切り上げ』だって。えーと、下から上に振り上げる際にこのスキルに魔力を込める(2秒以内)と威力が2倍になるんだって。使うの難しそ~」


「普通の前衛職はね、沢山のスキルをその都度使って戦っているんだよ。これも慣れだね。慣れれば自然と使えるようになるよ。練習、練習」


「そうなんだっ!わかったっ!明日はこれを意識して戦ってみるわっ」

「わ、わたくしも早く参戦したいですわぁ。リリフ、ごめんなさいね。あなたにばかり負担をかけてしまって」

「何言ってるのよっ!たった2人だけの仲間じゃないっ!焦らずに行きましょっ!明日になればきっと大丈夫よっ!」

「ええっ頑張りますわっ」

「じゃあグワンバラさんの所で晩御飯食べましょっ。ルクリアにも報告したいし」

「そうですわね。あーん。急にお腹が減ってきましたわぁぁ」

「うふふ」




 一行は食堂に足を運ぶ。すると・・・グワンバラが店先で怒鳴っているのが聞こえてきた。



「言い掛かりはよしとくれっ!商売の邪魔だよ!帰っとくれっ!」

「ち、クソババアが。あとで泣いても知らねーからなっ!」



 見るからにガラの悪そうな男が三人、通行人を威圧しながら立ち去っていく。



「ど、どーしたの?グワンバラさん?」

「おや、リリフちゃんじゃないか。お帰り。デビューはどうだったのさ?」

「う、うんっ!結構順調かな・・・でも課題も見つかったから明日も頑張るわっ」

「そうかいそうかい。そりゃ良かった。さっ。食べてくんだろ?入った入った」



 リリフ達の背中を押して店内に案内する。



(ゴブリン化の女が来やがった。気持ち悪いんだよっ!)



 かなり遠くから批判する声が聞こえてきた。

 リリフが振り返ろうとしたが、グワンバラが強引に中に入れる。



「リリフちゃんは気にしなくて良いんだよ。あんたっ!リリフちゃん達が帰って来たよっ!ご飯の用意しとくれっ!」



 いつも通りノッシノッシと奥に歩いて行くグワンバラ。

 店内はいつもこの時間だったら空席などなく、テイクアウトして自分達の部屋で食べるのだが、今日は ガランとしていてお客はほぼいなかった。



「なにか様子が変ですわね・・・」



「・・・今日ね・・・ひっきりなしに嫌がらせしてくる人がいて・・・お客さんも怖がって帰っちゃったの・・・」

 ルクリアがお水を持ってきながら教えてくれる。



「そうなんだ・・・嫌がらせって・・・やっぱりゴブリン化の?」

「・・・うん・・・」



「全く!ホント暇な奴らだよっ!アタシを潰した所で星光街の権利が取れる訳でもないだろうにさっ」



 星光街とはグワンバラの宿があるこの区画の事。

 ガタリヤでは一般的に低所得者が集まる区画として認識されている。



「ど、どういう事?・・・」


「グワンバラはこの星光街の町内会で役員をしてるんだよ。いま、この区画は整備しなおして貴族の別荘地にしようって話が持ち上がっていてね。それに反対しているのがグワンバラが役員している町内会って訳さ」

 リリフの疑問にミールが解説する。



「そ、そんなぁっ!ここは只でさえ密集して家が建ってるのにっ。そんな事したら人が溢れてしまうじゃない!どういうつもりなのかしらっ!」



「まあ、貴族の言い分では、この低所得者が集まる区画があるから、いつまで経っても序列が上がらないんだってさ。だから貧民は丸ごと追い払ってしまおうって魂胆なんじゃないかな?」



「まあっ!それでアーニャ様はどういうお考えなのでしょうか?」


「領主代理はもちろん反対しているよ。ただ、決定権は議会にあるからね。何とも言えない状況だな」

「えっ!?ダメってこと??」


「いや・・・この街には4大貴族と呼ばれている存在がいてね。今までは拒否権を与えられる代わりに領主派と連立を組んで、比較的スムーズに政権運営してたんだ。しかし最近はその大貴族の1人が連立から外れ、領主反対派に回ってね。結構大変みたいだな」


「お可哀想・・アーニャ様・・」


「リリフ達は実際に会って分かっただろ?今の領主代理はかなり若い。だから面白くないって思う連中もいるってことさ。元々市民重視の政策は貴族共にとっては不人気だったからね。議会で領主代理に反対の勢力もかなり増えて来ているらしい。今は領主代理が過半数取ってるけど、いつ反対派が過半数議席をとってもおかしくないって状況だよ。まあ、過半数取られた所で直ぐに領主交代とはならない政治体制だけどね」


「ほっ。そうでございますか。一瞬アーニャ様がお辞めになるのかと心配してしまいましたわ」


「領主も領主代理も民の支持は圧倒的だろ?下手に動いて住民の反感を買ったら最悪内戦だ。人口120万とはいえ、結界の範囲は直径8キロほど。こんな狭い土地で内戦でも起こそうもんなら、あっという間に街力は衰退。最終的に割りを食うのは貴族達だからね。しかし、領主代理が今現在、基盤を作れてないのも事実。今の時期に何とか評判を落としたい。そういった思惑がある貴族連中にとって、今回のゴブリン化とかのスキャンダルは領主代理の足を引っ張るのに好都合の話題なのさ」



「そ、そんな・・・私たち・・・とんでもなく・・・周りの人だけじゃなく・・・街全体に迷惑をかけているんじゃ・・・」



「バカ言うんじゃないよっ!あんたの正義は何処に行ったんだい?!こんな悪質な手を使ってくる奴らに屈するのかい?!あたしゃご免だねっ!アーニャ様が戦ってるんだっ!あたい達がくじけてどうするんだいっ!」

 グワンバラの恫喝どうかつが店内に響く。



 リリフは立ち上がり

「そ、そうよねっ!私間違ってないっ!そして絶対に負けないっ!グワンバラさんっ私絶対に悪評なんかに負けないからっ!」



「その意気さね!さあっ!沢山お食べっ!」

 グワンバラは豪快にがっはっはと笑いながらノッシノッシと厨房に歩いて行く。



「セリー。ルクリア。私たち絶対に負けないようにしようね・・・」

「ですわね・・・」

「・・・うん・・・」

 グワンバラの背中を見ながら呟くように言う三人であった。



    続く

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