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スライムには負けるけど魔王には勝ちます  作者: すふぃ~だ


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ガタリヤ奮闘記⑧

「さあ、着いたぞ。俺は職業関連の本を探すから、お前達は興味がある本があったら遠慮無く持ってきていいぞ。3冊まで許すっ」

「わあい!やったー!」

「ど、どうしましょう・・あれも気になる・・・これも気になる・・・あああん!」

「・・・古代怪獣プスドンを追え?!あるかな?・・・」



 それぞれ思い思いの場所に散り本を探索する。1ヶ月前は想像つかなかった光景だ。

 楽しそうに本を探すリリフ達を見ながら口元が緩むミールであった。



 ⇨ガタリヤ奮闘記⑧




 翌日のお昼過ぎ、ミール達はギルドに来ていた。

 リリフ達がどんな適性を持っているかを確認する為だ。



 扉を開け、ギルド内を進むミール達。そこに颯爽と2人組の男が絡んでくる。



「よおよおっ。ねーちゃんたちぃ。この辺じゃ見ない顔だねぇ。新人さんかなぁ?こんなショボい男と一緒にいないでさぁ、俺たちと遊ぼうぜぇ~」



 久しぶりの有象無象の絡みに懐かしさにも似た感情が生まれ、思わずニヤけるミール。



「おいっ、てめえ。なにニヤけてんだ?」

「あ、はいっ先輩!失礼しましたっ!僕元々こういう顔なんですっ!あはははっ」

「っけっ。気持ち悪いな・・・」



 よそ行きの対応でハキハキ答えるミールに、嫌そうな声を上げる2人組。



「そんな事よりさっ!なあ、いいだろ?こんなひ弱な男と一緒にいるより、ずっと楽しい思いをさせて上げるよ。うへへへへぇ」



 2人組の男はイヤらしい目つきでリリフ達の身体をなめ回す様に視線を送る。



「ひっ、い、いえ・・・わ、わわわわわたわた私達は・・・だ、大丈夫です・・・」

 リリフはタジタジになりながら答える。



 リリフはこれでも一応お嬢様だった身分だ。あまりこういう男に直接絡まれた経験は無い。

 しかも今回は、何故かめちゃくちゃ強いミールがへつらっている。



 もしかしたらこの人達って『もの凄い強い人達なのかも??』って感情と、普段素っ気ないミールが凄いハキハキしているのを見て、『ナニコレ可愛いっ』て感情が合わさり混乱中だ。



「失礼ですがわたくし達は用がありますので、これで失礼致します」

 セリーが毅然と対応して、去って行く。



「ちぇっ」

「また声かけよーぜ。あの爆乳たまんねー」

「だなー。要チェックだぜ。あの女の子」



 この2人組の男に限らず、ギルド内にいた冒険者達の視線を感じる。

 やはりリリフ達は外見はかなりの美人だ。歩くだけで周りの視線を奪ってしまう。



「うーむ。なにかチンピラ対策をしないといかんな・・・」

「え??なにか仰いましたか?ミール様?」

「あ、いや・・・・ほらっ。あれだよ。あの魔石に触れるとわかるんだ」



 ミールが指差した方向には、皆さんの世界でいう所のコンビニに置いてあるATMのような魔道具が設置されていた。

 一般的にギルドには適性やスキルを確認する用のスペースが作られており、この魔道具の魔石に触れると魔法画面機に表示されるようになっている。



 画面には一応仕切りはされているが覗き込めば他の人も見る事が出来るので、新人さんとかはギルドスタッフと一緒に確認してアドバイスなどを受ける事が多い。

 リリフ達も当然初めてする事なので、ミールを含め4人全員で一緒に画面を見ながら確認する事にした。



「じゃあまずはリリフからやってみようか?」

「う、うんっ・・・はあぁぁ。緊張するぅ・・」

「ははは。大丈夫。7~8割くらいの人が無適性なんだから。なくても後から獲得出来るし気楽に行ってみよう」

「はいっ。行きますっ!」



 リリフはエイッと魔石に触れる。

 魔石はパアァァっと光を放ち、魔法画面機に文字が浮かび上がる。



「おおおっ!素質適性あるぞっ!どれどれっ」

「ええ?!本当!やったっ!」

「おっ、凄いぞっ。『忍び者』だ」

「シノビモノ?それって凄いの?!レア?!」



「う~んっと。ここら辺ではそこそこレアだと思うよ。ただ東の国にジャポラってのがあるんだけど。そこでは逆にかなりメジャーな適性だね。ルーン国周辺では忍び者適性の人は少ないと思うけど、適性持ち自体の人口は多いから特別凄い訳でもないって感じかな?」

「うぅぅ・・なんか微妙~・・」


「いやいや、なにを言ってるんだっ?そもそも素質適性がある人なんて全体の2割くらいなんだぜ?凄いことなんだよ。レア職なんてルーン国全体で10人いるかいないかってくらいの存在なんだから」

「そっか・・・うん、そうだよねっ。高望みしたらバチがあたる。とりあえず適性をもってて良かったぁっ」


「そうそう。もし気に入らなければ別の適性獲得を目指せば良いだけだしね」

「そっかぁ。このシ・ノ・ビ・モ・ノ・ってのはどんな特徴がある適性なの?」


「俺もそんなに詳しくはないんだけど・・・DPS系だよね、確か。あ、えっと・・・DPS系ってのは前衛職で攻撃担当の人ってことね。ダメージを与えるのが仕事的なやつ」

「おおっ!かっこいいっ!」


「うーんと・・・おっ、もう既に1つスキル持ってるじゃん。えっと・・・『感覚鋭利』ってのらしいね。ふむふむ。どうやら視覚や聴覚、嗅覚などが強化されてるみたいだな」


「なるほどぉ。だから前におじょ・・・リリフが街を巡回している兵士達を遠くから発見できたのですねぇ」

「えぇ~。そうだったんだぁ。私的にはなんでみんな見えないんだろ、気付かないんだろって思ってたけど・・・気付かないうちにスキルが発動してたって事だったんだぁ」


「・・・リリフっちだけ・・・イキやすかったのもスキルのせい?・・・」

「いえ、あれは愛する人を思い描いていたからにすぎませんわ」

「コラァ~~~~!!!」

 リリフは2人の口を後ろから塞ぐ。



 素質適性がある者も、ギルドで専用の魔石に触れないと自分がどんなスキルを持っているのか知らない者が多い。

 子供が遊んでいたら突然攻撃魔法を発動させてしまい大騒ぎって事件は、多々起ることなのだ。



「ねえねえっ、ミール。私ってこのまま忍び者の経験を積めばスキルってどんどん増えていくものなの?もし、スキルが増えた場合って、今みたいに魔石に触れるまで分からないのかしら」

 リリフは2人のほっぺをつねりながら質問する。



「うんとね。スキルってのはその適性の経験値を積むと徐々に覚えていく仕組みだね。経験値ってのは目に見えるモノじゃないんだけど・・・不思議な事にステータスの適性欄に登録すると経験値だったり熟練度だったりが一気に増え始めるって言われている。登録すると意識が変わるからだとかいう学者もいるけど詳しい事は分かってないんだ。別に適性欄にセットしなくても多少は経験値を獲得出来るらしいけどセットしてるのと比べると雲泥の差だから適性欄に登録するのが一般的かな」


「へえぇ。それって何処でセットする事が出来るの?」


「セットは役場や大きめの施設、このギルドでも出来るぞ。ステータスの変更・・・例えば住所の変更とかは役場しか出来ないけどな」

「そーなんだぁ」


「そしてね、獲得した経験値に応じて段々とスキルが解放されていくんだ。だからリリフの場合はまだ適性欄に登録してないから、このままだと新たにスキルを獲得する可能性は低いよね。あと、街の中で経験を積むのと、フィールドで経験を積むのでは大きく違いが出るみたいだよ。例えば街の建築業で重宝されている測量術士が街中で家の建設などの仕事をこなしてるのと、冒険者として実際にモンスターと戦っている人とでは、スキル獲得のスピードが冒険者の方が段違いに早い。あとは・・・スキルには2種類あって、今回リリフが持っている感覚鋭利ってスキルはパッシブスキルって言うんだけど、それは特に魔力を込めたり意識をしなくても勝手に発動しているスキルってやつなんだ」

「ふんふん」


「もう1つは自分で意識して魔力を込めるスキル。これらは使っていくうちに熟練度が上がり上位のスキルを獲得出来るってのも特徴だね。例えば火の攻撃魔法だけど最初は火の玉が使えて、使っていくうちに炎柱、爆炎、滅焔って上位スキルを獲得していくんだ」

「へえぇ~」


「それでリリフの質問だけど、新たなスキルを獲得した場合はね、身体がパアァァっと光るんだよ。ぼんやりとちょっとの間だけどね。説明だとよく分からないかもしれないけど、実際体験すると直ぐ分かるよ。あ、スキルが増えたってね。でもなにが増えたとかは魔石に触れるまで分からないのは同じだね」

「そっかぁ、楽しみだなぁ」



「で、では・・・わたくしも参りますわっ」

 次にセリーが魔石に触れる。

 リリフと同じように魔石が光り、魔法画面機に文字が浮かび上がる。



「げっ!セリーも素質適性持ってるぞっ!」

「ほ、本当でございますか?!どんな適性でしょう??」


「攻撃魔法士だな。スキルは・・・まだ無いみたいだから魔法は使えないけどね」


「まあっ!魔法士って事は・・・ズカンドカンと魔法を打ちまくる人ですわよねっ??わたくしやってみたかったのです!嬉しいですわっ!」


「まあ、ズカンドカンと打てるようになるには結構修練が必要だけどね。でも一撃で戦況をひっくり返す事が出来る魅力ある適性なのは間違いないな」

「へえぇ~良いなぁ」

「わたくし頑張りますわっ!」



「それにしても・・・2人も素質適性持ちだったとはね。かなりレアっていうか、珍しい事だよ。ほとんどの人は学校行って地道に基礎適性を獲得するのにな・・・」



 ミールの言っていることは事実で、実際にミール達のいるスペースには少し人が集まって、遠巻きに成り行きを見ている。



「こんにちはっ。ミールさんっ、リリフっち、セリーっち、ルクリアっち。なんかザワザワしてるなぁって思って見に来たらミールさん達でびっくりですっ。話を聞くと素質適性が出たとかで?!凄いですねぇっ」


「そんなに珍しい事なんですか?」

「珍しいですよぉぉっ。1ヶ月に1~2人ってとこですもん、毎月」

「・・・ううう・・・なんか逆にプレッシャーが・・・」

 ルクリアは青ざめた顔で呟く。



「そうだよなぁ。でもこいつら2人が異常なだけだから。気にしないで触ってみ」

「ミ、ミールさん・・・言い方っ・・・」



 ルクリアは1度深呼吸をして、そぉぉ~っと触れる。

 2人と同じようにパアァァっと魔石が光り・・・と思いきや、輝き具合が違う。

 まるでギルド全体が光に包まれたかのように一瞬真っ白になる。



「うわわわぁぁっ」

「ひゃあぁぁああっ!」

「ええっ!なになにっ?!」



 ミール達も、遠巻きに見つめていた人々も、カウンターでクエストを選んでいた冒険者達まで、唐突の光に驚きの声をあげた。

 光は直ぐに収まったのでミールは直ぐに魔法画面機を確認する。



「まじか?!」

「え?!なにがあったんですっ?!」

「・・・・吟遊詩人だ」

「ぎっ・・・・」

 ピコルは思わず絶句する。



「え?なにそれ?凄いの?」

「全く分かりませんわ。ギンユウシジン?」

「・・・コワイ・・・」

 リリフ達は頭に『?』マークを浮かべていたが、他の人達はそうではない。

 一瞬の沈黙の後にギルドは大歓声に包まれた。



「うおおおおぉぉ!!すげえぇ!俺、レア職って初めて見たあ!」

「信じられんっ!本当に存在したのかっ?!まじですげえ!」

「ぐおおおぉぉ!まさかこんな瞬間に立ち会えるとはぁ!」

「お嬢ちゃん!握手してくれっ!」

 大盛り上がりのギルド。



「み、ミールっ!一体なんなの?この盛り上がりっ?!」


「吟遊詩人ってのは・・・超超レア職で有名なんだよ。確か・・・80年くらい前に1人だけ出たことがあるってギルドの職案内ページで見たけど・・・多分今は世界で1人もいないんじゃないか?」


「せ、世界で1人ってこと??ひえぇ!」

「や、やばいですわねっ。よく分かりませんが・・・やばいですわねっ!」

「・・・ううぅ・・注目されてる・・・」


「えっと・・・今あるスキルは・・・」

「スキルは?!」


「声帯強化だな。声が普通の人より遠くまで通るって書いてある」

「・・・案外普通ですわね・・・」



 魔法画面機にスキルが表示された際にどのようなスキルなのか説明も書かれている。

 事実、適性は多種に渡りスキルも星の数ほどあるので、このように説明文があると冒険者にとっては非常に分かりやすく、有難いのだ。



 因みにこの説明文は、歴代の冒険者達から情報を取りギルド本部(大聖女の街ハミスにある)が作った物だ。いわば何百年、何千年という年代物の自作である。

 当然レア職のスキル解明はまだまだ進んでいないので、この吟遊詩人誕生というニュースは全世界のギルドに駆け巡ることであろう。



「とにかく凄い事だわっ!まさか3人とも素質適性を持ってたなんてっ!これは神様のお導きねっ、きっと」

「・・・あの・・・」


「ホントですわねっ。あぁ。わたくしには見えますわ。魔法でズカンッバカンッとモンスターを蹴散らす姿がっ!」

「・・・あっ・・・・・」


「早速冒険を始めましょっ!あ、まずは武器防具よねっ?とりあえず今から見に行かない?!お店ってどこにあるのかしらっ?」


「わたくし見かけた覚えがございますわっ。確か時計塔の方に何軒かあったようですわよっ!」

「流石セリーねっ!さあっ行きましょっ!」

「・・・ぁ・・・」



 リリフはルクリアの様子など全く目に入っていない感じでギルドを出て行こうとする。

 そんなリリフ達に取り巻きの冒険者達が声をかけてきた。



「ねえねえっ。君たちぃ。俺たちのPTに入らない?こう見えても紫ランクなんだぜぇ。色々と教えてあげるからさっ。女の子達3人じゃ危ないだろぉ?」


「いやいやいやっ。俺たちのPTに来なよっ。俺は黒ランクなんだぜっ!俺のチームに来たら直ぐにランク上がるぜっ!人数も多いから楽しいぜ!」


「なあなあっ。さっきはごめんよぉ。突然声かけてビックリしたよな?でもさ、やっぱり一緒にいたひ弱な男なんかより、俺たちの方が良いぜぇ!色々教えてあげるからさっ!楽しい思いをさせてあげるよっ」


「なにいってんだいっ!お前達下心丸出しじゃないか!あんたたちのチームに入る方が危険だっつーの!・・・その点あたい達のチームは全員女だから気兼ねなく楽しめるよっ!全員まだ青ランクとか赤ランクだからそんなに離れてないしねっ。どうだい?!」



「えええ??ど、どうしよう・・・なんか凄い人気なんだけどっ!あははっ」

「ああんっ。確かに3人じゃ危ないかもしれませんわね。でもこんなに誘ってくれる人達がいるなんて・・・初心者でお荷物になってしまうのにお優しい方が多いのですねっ。冒険者の皆様って」



「あのー。お取り込み中申し訳ございません。ギルド長のザクトーニでございます。皆様素質適性の取得、おめでとうございます。つきましては是非吟遊詩人の追跡調査をお願いしたいと思い、お声をかけさせて頂きました。もしご協力頂けるのであればギルドから毎月協力金を捻出させて頂きます。いかがでしょうか?とりあえずピコルっ。皆様を応接室にお通ししてっ。詳しいお話はそこでさせて頂きましょう」



「まあっ!まあっ!協力金ですって!凄いですわっ」

「やだぁっ!どうする?どうする?どれくらいもらえるのかしらっ?!」

「でわっ皆さんっ。どうぞこちらへっ」

「はぁーい」



 ピコルの案内についていくリリフとセリー。

 しかしルクリアは無言で唐突に走り出しギルドから出て行ってしまう。



「あっ!ルクリアっ!どうしたの?!」

 追いかけようとするリリフ達をミールは厳しめの声で止める。




「リリフ!セリー!待て!」




 2人はビクッと立ち止まりミールを見る。

「ちょっとこっちに来い。今すぐだ」

「は、はい・・・」



 ミールの口調は明らかに怒っている。

 ミールから厳しめの言葉は何回も受けて来たが、自分達に対して怒った事など1度も無い。

 初めてミールが怒っているのを見て、今までウキウキしていた気持ちは一気に吹き飛び、変わりに絶望感に近い感情がリリフ達を支配していた。



 ミールは併設している食堂の隅っこのテーブルに移動する。


 ピコル達も、チームに勧めて来た者達も、遠巻きに見ていた冒険者達も。

 ミールを知っている者はなんで配達将軍が偉そうに?って感じで、知らない者は何故か黄色ランクの癖に説教しようとしている男と、それに黙って従う女の子達の様子に機を失ってしまったようだ。



 ミールはしばらく黙って2人を見つめている。

 2人は視線を合わす事が出来ず、ずっと下を見ていた。



「お前達、ルクリアが何故出て行ったか分かるか?」

 ミールが話し始めて一瞬ビクッとしたがリリフが答える。



「えっ?・・・えっと・・・注目されて嫌だったから?」

「セリーは?」

「わ、わたくしは・・・吟遊詩人という職が・・・あまりにレア過ぎてビックリしてしまったのかと・・・」

「はあぁ~・・・」

 ミールは深いため息をつく。



「お前達、ルクリアとちゃんと話した事あるのか?ルクリアはお前達にとってなんなんだ?」

「えっ?!話だったら毎日してるわっ。ルクリアは大切な仲間よっ!ミールだって分かってるでしょ?!」

「その通りですわっ。本当に幼い頃からいつも一緒に過ごしてきた家族同然ですわっ」



「じゃあセリー。そこまで言うなら当然分かってるよな?ルクリアってどんな子なんだ?」

「ル、ルクリアは・・・真面目で、頑張り屋で、口数は少ないですが、でも凄く優しくて、いつも自分の事は後回しに・・・し・・て・・・ま、まさか・・・」

「え?なになに?!どういうこと??」



「リリフ。お前はグレービーとの食事会で言ったよな?もうお嬢様とメイドの関係ではなく友達として接して欲しいって?」

「ええっ!その通りよっ」



「じゃあお前は1度でもルクリアがやりたい事を聞いた事があるのか?ルクリアの口から冒険者をやりたいと聞いた事があるのか?自分についてきて当然の主人とメイドの関係じゃないんだろ?友達なんだろ?なのになんで1度もルクリアの気持ちを聞いてあげてないんだ?!」



「え・・・そ、そんな・・・わたし・・・わたしっ・・・」

 リリフの目から大粒の涙が流れ落ちる。



「ど、どうしよう・・・私っルクリアの気持ちをなにも考えてなかったっ!自分の事ばっかりでっ!勝手に思い込んでたっ!勝手にルクリアも冒険者になりたいはずって決めつけてたっ!わ、私っ!とんでもない事しちゃった・・・ルクリアを傷つけちゃったっ!」



「わたくしもですわっ。ルクリアの事はなんでも分かっているつもりだったのにっ!本当につもりだけでしたっ!自分の将来の事で舞い上がってしまってルクリアの気持ちを全然考えておりませんでしたわ・・・あまり本音を言わない子だって分かってたはずなのにっ!いつも我慢して自分の事より他人を優先する子だって分かってたはずなのにっ!」



「ミール!ごめんなさい!そして・・・ありがとう。気付かせてくれてありがとう!私、ルクリアに謝りたいっ!今すぐ会いたい!」


「ダメですっ!ルクリア通話に出ませんわっ!」


「じゃあ探しに行こうっ!私は時計塔の方に行くからセリーは領主様の屋敷の方をお願いっ!見つけたら直ぐ教えてっ!」

「了解ですわっ!」


「俺はお前達の部屋でルクリアが帰ってくるのを待ってるよ。なんかあったら連絡する」

「はいっ!」



 リリフ達は大急ぎでギルドを出て行く。

 それを呆気にとられながら見送る面々。



「ま、まあ・・・また今度声かければいいよな・・」

「そ、そうだな・・・急ぐ必要は無いしな・・・」

「てか、あんたらあの子達の身体目的だろ?ひっこんでなっ」

「何言ってんだっ。吟遊詩人だぞ?そう簡単にひっこめるかってんだ!」



 冒険者達は口々に言い争いながらその場から離れていく。

 入れ替わりにピコルがミールのもとに遠慮がちに近づいてきた。



「ミールさん・・・知ってたんですか・・・ルクリアちゃんの気持ち・・・私ダメだなぁ。全然気付かなかったですぅ・・」


「いやいや、ピコルは実質1日だけだろ?あの子達と話したの。それで気付けてたらヤバいっての」


「ふふふっ」

「?・・・なんだ?」

「いえいえ、やっぱりミールさんだなぁって・・・」

「なんじゃそりゃ?」

「ふふふっ。褒め言葉ですっ」



 ピコルはそう言うとギルドの仕事に戻っていく。

 ちょうどギルド内に設置してある置き時計が15時を知らせる音楽を響かせていた。




 ミールはルクリアが好きと言っていたメロメロパン(メロンパンのこと)を3つ買い込み部屋に戻っていく。

 ルクリアは部屋には戻っていないようだ。

 ミールは3人が読み散らかした本を整えながら、職業案内の本のページを何気なくめくる。



「まさか吟遊詩人とはね・・・これからの対応も考えとかなくちゃな・・・」

 ミールは窓際に椅子を持っていき、外を眺めながら今後の対応に思いをはせていた。




 辺りはすっかり陽が落ち、街灯に明かりが灯っている。

 仕事帰りの人々はお酒を一杯ひっかけに、お店に続々と入っていく。

 この宿に併設してある食堂は、夜は居酒屋にもなるので今の時間は大忙しだ。至る所から笑い声が聞こえてくる。



 ミールは通話を2人にかけた。



「あっ。はぁはぁっ。ど、どうしたの?ミール」

「もう時間も時間だ。そろそろ帰ってこい」


「嫌よっ!ルクリアに謝るまで帰れないわっ。絶対に見つけるんだからっ」


「リリフ、いいか?良く聞け。お前がもし仮に変な男達に襲われたどうする?ルクリアは自分が逃げたせいだって思って益々居場所がなくなるぞ。ガタリヤは治安が良いから滅多にそういう事は起らないが、流石に夜も更けてくるとなにが起っても不思議ではない。もうこれ以上ルクリアを傷つけない為にも今日は帰ってこい」

「・・・・わかった・・・」



 同様のやり取りをセリーにも行い、2人は汗びっしょりの状態で帰って来た。



「・・・・・」

 そして一言も喋らずに窓まで歩いて行き、街道を歩く人々の中からルクリアを不安そうな顔で探している。



「ダメですわ・・・ルクリア通話に出ません」

 定期的に通話をかけているセリーが報告してくる。



 ミールは時間を確認する。あと少しで日付けが変わる時間だ。

 流石にそろそろ治安省の警備局に、行方不明者捜索の依頼をしないとマズイかもしれない。



 先程言った言葉は、リリフ達にもブーメランのように返ってくる。もしルクリアが誰かに襲われでもしたら、リリフ達は心に深い傷を負うことになるだろう。



 いやいや。0時なんて深夜でもなんでもないじゃん。大袈裟すぎ。



 そう思った人はおそらく日本在住の方だろう。

 果たして海外でも同じ事を言えるだろうか?

 この地域は危ないから行っちゃダメ。この先の通りは行っちゃダメ。この道は車を降りてはダメ。

 そんな場所は山ほどある。

 ましてはここは異世界。日本の常識は通じないのである。



 そして、ルクリアはご存知の通り、かなり美人で可愛い。

 こんな美少女が薄暗い道を歩いていたら、普通の人であっても、おもわず邪な気持ちを抱いてしまってもおかしくはないだろう。



 しかしミールが探索願いを躊躇ちゅうちょするのには訳があった。

 ミール達の世界では、1度犯罪や問題行動を起こした者は記録に残ってしまうのだ。

 え?貴方の世界でも同じだって?いやいや、もっと深刻な事になるのだ。



 例えば万引きをしたとしよう。

 そして取り締まりの兵士に捕まった場合、ステータスの欄に万引き犯として記録されてしまう。

 その記録はステータス確認の魔力を込めれば誰でも見ることが出来る、名前、職業、適性などと一緒に表示されてしまうのだ。



 なので初対面の人でも、相手がどんな犯罪を犯したのかが、わかる仕組みとなっている。



 貴方の世界のように偽名や経歴を偽われば普通に暮らせたり、いちいち特別な機関に問い合わせをしないと犯罪履歴が分からないような事はなく、1発でその場で分かってしまう。

 なので、ちょっとしたコンサートやスーパーに買い物に行くのも入場拒否されたりするなど、至る所で迫害や差別、偏見などに晒される、犯罪者にとって非常に生きづらい世界となっているのだ。



 また、少し話がそれるが、この世界では検問魔石が、かなり普及している。

 魔石を地面にセットするだけだし、いちいち1人1人に魔力を使ってステータスを確認する必要がないので便利なのだ。



 そしてこれら検問魔石は犯罪を未然に防いだり、治安を維持するのに非常に大きな貢献をしている。



 犯罪履歴がある者を発見する検問魔石は、イベント会場や重要施設で簡単にふるいにかける事が出来るので大活躍中。



 更に大きな抑止力となっているのが、追跡魔法が込められた検問魔石。これは人通りの多い大きな路上から細い脇道まで、街中の至る所に設置してある。



 そして税金を払ってない者や、犯罪に関わった疑いがある者などがリストアップされると、対象者が魔石の上を通過した際に、追跡魔法がかかる仕組みなのだ。



 あとは容疑者を捕まえるだけ。

 どんなに複雑な場所や隠し部屋に逃げ込んでも、簡単に居場所が分かってしまう。



 そのおかげか貴方の世界に比べ、犯罪数や迷惑行為、税金の滞納者などの数は極端に少ない。

 捕まったら厳罰(下手したら死罪)が下るというのも大きいのかもしれないが・・・




 話が多少ずれてしまったが、今回ミールが懸念しているのはルクリアが家出のような扱いになってしまうことだった。



 家出くらいでは当然犯罪者のような扱いを受ける事は無いが、記録は残ってしまう。

 そうすると、もし就職する事になった場合、他国に旅行や移住する事になった場合、はたまた縁談があった場合などに悪影響を及ぼす事があるからだ。



 通常であれば、まだガタリヤに来て間もないので、道に迷ってしまって迷子になったと言い訳する事が出来そうだが、今回はギルドで大勢の者が飛び出すルクリアを見ている。



 このままでも迷子で何事も無く処理される事も考えられるが、検査官によっては自らの意思で行方不明になった、つまり家出をしたと判断される可能性がゼロではないからだった。



 しかし躊躇している間に本当にルクリアが犯罪に巻き込まれてしまったら・・・



 ミールもギルドから飛び出したルクリアを直ぐに追わずにリリフ達に説教してしまった事を後悔し始めていた。



 まずはルクリアを確保してから2人に言い聞かせるべきだったか・・・



 そんな後悔が頭から離れずにいる。

 ミールもまた、ルクリアの気持ちが分かっているという自分に酔って、ルクリア自身の苦しさを理解してなかったのかもしれない。



 くそ、背に腹はかえられない。



「俺は警備局に行ってルクリアの捜索願いをしてくる。2人はここで待っていて・・・く・・・れ・・・」

 言葉を最後まで言う事無く、扉を開けた場所にうつむいたルクリアが立っていた。



「あの・・・みんな・・・ごめ・・・」

 ルクリアがションボリと謝ろうとした瞬間、リリフが電光石火にルクリアに抱きつく。



「ひゃへっ?」

 驚くルクリア。



「ルクリアぁぁ!!!ごめん!ごめんなさい!私、私っ!自分の事しか考えてなかったっ!これからは友達として接してって言ってたのに全然貴方の声を聞こうとしてなかったっ!ルクリアァァ~!!ごめんなさい!わああぁぁぁんんん!!」

 大粒の涙を流しながら謝るリリフ。



 セリーもぎゅっと抱きしめて

「わたくしもですわっ!ルクリア!ごめんなさい!あなたがどんな子なのかは知っていたはずなのにっ!自分の事で浮かれてしまってルクリアを傷つけてしまいましたわっ!本当にごめんなさい!ううぅぅぅ」



 大号泣している2人にルクリアも

「・・・わ、わたしも・・わたしもごめんなさあああいいいい!!言い出せなくて・・・でもっ・・・でも・・どうしてもモンスターと戦うのは怖くて・・・ひっくっ・・臆病でごめんなさぁいい!!うわわあぁぁんん!!」



「違うわっ!違うのルクリアっ!全然私たちの事は気にしなくて良いのっ!ルクリアの人生なんだからっ。強制してるみたいになっちゃってごめんなさい!私たちはいつまでも友達よっ!冒険者にならなくてもそれは変わらないわっ!」



「そうですわっルクリア!あなたはどんな事があってもわたくしの大切な妹っ。家族同然ですわっ!苦しめてしまってごめんなさい!」



「りりふさまぁぁ。せりーぃ。うわわあぁぁんん!!」

「もう・・・りりふさまじゃないでしょぉぉ!うわわあぁぁんん!!」

「りりふっちぃぃ・・・うえぇんん!」

「でも無事に帰って来てくれて良かったですわぁ!!ううぅぅぅ」




「ふたりともごめんなしゃぁぁいい。えっぐっ。えっぐっ・・・うわあぁぁんん!」




 扉を開けたまま部屋の入り口で抱き合って泣き叫んでいる3人。

 グワンバラが何事かと部屋の様子を伺いに顔を出すが、3人が抱き合って泣いているのをみて笑顔でそっと扉を閉めるのだった。




 少し落ちついた3人にミールは

「じゃあ、とりあえず今後の事は明日話そう。ルクリア、メロメロパン買ってあるから食べてな。それじゃあまた」



「あっ・・・ミ、ミールさん・・・心配かけて・・・ごめんなさい・・」

 ミールはルクリアの頭を軽く撫でて部屋を出て行く。



「・・・メロメロパン・・・やった・・・」

「食べる前にみんなでお風呂に入りませんこと?涙と汗でグショグショですもの」

「あっ。それいいねっ。さんせー!どうせだったら今日は1つの布団で一緒に寝ないっ?」

「・・・暑そう・・・」

「大丈夫よっ。魔風冷造ガンガンに使いましょっ!」

「もうっ。いつまでも甘えんぼさんだことっ。いいですわっ。今日は特別ですわねっ」

「わぁいっ!やったー!」

「・・おっぱいマクラ・・わいわい・・」



 シャワーを浴びメロメロパンを食べ、リリフ達が仲良く眠ったのはうっすら朝日が昇ってくる頃だった。





 翌日のお昼を過ぎた時間、ミール達はグワンバラの宿に併設されている食堂で遅い昼食を取っていた。



「それで、ルクリアはなにかやりたい事は見つかったのか?」

「・・・んと・・・なにかやりたいってのは思ってる・・・でも具体的な事はなにも・・・色々と見て回って、経験してから決めていこうかと思ってたりする・・・」

「そうですわよねぇ。急に人生を決めろって言われても決まらないですわよねぇっ」


「ねえねえっ、ミール。この職業案内の本とか色々読んだんだけど、実際ルクリアが出来そうな職ってどんなのがあるのかな?」


「う~ん。結構色々あると思うよ。ルクリアは・・・そういえば何歳なんだ?ルクリアって」

「・・・20・・・」

「!」

「うふふ。見えなかった?ちなみに私も20よ、同い年」


「へえぇ~。正直15~16くらいかと思ってたよ。意外と大人なんだな・・・」

「そうなのですっ。それがルクリアの秘技『ギャップ萌え』なんですことよっ」


「・・・セリー母さんは18歳・・・」

「!!」


「ちょっ!ルクリアっ。嘘はいけませんわっ。わたくしは今年で27になりますわ。ちょうど結婚適齢期でございますのよっ、ミール様」


「ちょっとっ!セリーっ!なにしれっとアピールしてるのよっ!」

「あら?これくらい普通でございますわよっ?」

「・・・りりふっち。独占欲強すぎっち・・・」

「このぉぉ~。こいつめぇ・・・」

「・・い、いたひ・・・むぎゅうう・・」

 リリフはルクリアの柔らかいほっぺを引っ張ったり潰したりしている。



「ま、まあ・・・20歳なら結構業種も沢山選べると思うぞ。企業やお店などは若い人材を欲しているからな。未経験でもオッケーって所は多いからね」


「へえぇ~。そうなんだぁっ。なんか経験とか学歴とかが無いとダメなのかと思ってたわ」


「まあ・・・ある程度年齢が高い場合とか大企業とかは学歴とか経験を重要視されるかもね。でも学歴関係ないって所も多いし、若い子はじっくりと育てて、いずれ主力として働いて欲しいって狙いがあるから。だからこそ安易に決めないで色々選びたいってルクリアの意見は個人的にはとても良いと思うよ」

「・・・えへへ・・・」



 褒められて嬉しがるルクリアとは対照的に、ぷく~っと頬を膨らますリリフ。

 確かにちょっと独占欲が強いのかもしれない。

 ただ感情を隠すことが下手なだけかもしれないが・・・



「それじゃあ、ちょっと代表的な職業について説明していこうか。ルクリア、なにか気になる事とかあったら遠慮無く言うんだぞ」

「・・・わかった・・・」



「まずは・・・常に求人がかかっていて、しかも給料も高い、特別な技術も必要無いって仕事から説明しようか」


「え~。そんなのあるのぉ?」

「うん。魔力提供者って言うんだけど」


「あっ!それ知ってるっ!雑誌の裏側とか、道の街灯とかに張り紙で良く見かけるわっ。『仕事中でも好きなことが出来ます。私は供給をしながら勉強して大学に合格しました』とかなんとか書いてあった気がする!」


「そうそう。正にそれだね。それでどんな仕事かというと・・・リリフ、今この店内で使われている照明や魔法機材を動かしている魔力はどこから来てるんだと思う?」


「え?コンセントからでしょ?」

「そのコンセントの魔力はどこから来てるんだ?」

「えっ・・・それは・・・コンセントに魔石が埋められているとか?・・・」


「ということは無尽蔵に魔力を放出する魔石が至る所に埋められているってことだね?」


「あ・・・そっか・・・そんな事ないわよね・・・そんな魔石があったらみんな使っているはずだもの・・・だめだなぁ私。また考え無しで行動してた」


「いやいや、リリフは素直に反省出来る所は凄く長所だと思うよ」

「え・・・そかな・・・」

「あらあら。顔が真っ赤ですわよっ。熱でもあるのですか?」

「・・・恋の病・・・」

「ああんっもう!ミール!続き続き!」


「あ・・・うん。えっと・・・それでね、コンセントに魔力を供給しているのが魔法省の魔力管理局って所なんだけど、供給源はそこで働いている人間の魔力そのものなんだ。魔力管理局には大きな魔石があってね。そこに魔力を貯めて、各家庭まで魔力を届けているのさ」


「どうやって魔力を貯めているのでしょうか?まさか・・・カプセルみたいなのに無理矢理入れられて搾り取られるとか・・・はあぁぁん。ゾクゾクしますわぁっ」



 ドMな性癖をちらつかせるセリー。

 なんか食中毒で死にそうになった辺りから、Mな一面をチラホラ見せてくる・・・



「ははは・・・手首にね、専用のリングを取り付けるんだ。それは貯蔵する大魔石に繋がってて、装着してれば後は勝手に魔力を吸い上げてくれる仕組みだね。1人1人に専用の個室が用意してあって、そこで寝てても良いし、本を読んでても良いんだ。食事も提供されるから本当に1日中ただボーっとしてるだけで平均を超える給料を貰えるのが魔力供給者だね」



「ええええっ!!凄く良くない?!なにそれぇ?!」

「思ったより楽でガッカリですわ・・・」

「・・・みんな応募するんじゃ?・・・」



「それがね、魔力供給者は常に人手不足なのさ。新しく入っても直ぐに辞めてしまう人が多くて、ずっと供給者1本でやってる人ってかなり少ないと思うよ。だから少しでも人材を確保しようと高額な給与を設定してるんだよね」

「ええ~??どうしてぇ?!」


「やってみると分かるけどね、自分の魔力を吸われるって感覚は結構不快な感じなんだよ。あと、拘束時間も長いしね。当然1日の終わりにはグッタリさ。身体も動かしてないし、魔法も使ってないのに魔力が無くなるって感覚は、心の疲弊にも繋がるみたいだしね」


「へえぇ~。結構一筋縄ではいかないんだぁ。でもちょこっと参加してドバッと供給しちゃえばいいんじゃない?私、なるべく嫌なことはササッと終わらせたいタイプだもの」

「はははっ。それは誰でもそうなんじゃないかな?・・・セリーは違うかもしれないけど」


「流石はミール様ですわっ!是非今度じっくりとイジメてくださいましっ!」


「そ、それでね。人間の身体ってのは元々魔力吸収耐性ってのがあるらしく、短時間で一気に吸い取る事は出来ないみたいなんだよね。一応理論的には出来るらしいんだけど、無理矢理一気に吸収すると意識が無くなって下手したら命を落とす事になるみたい。だから徐々に少しずつ吸い取る必要があるんだって。なので高額支払いをする条件として12時間以上供給出来た者のみって書かれているんだよね」


「はぁぁん。そんな事になってるんですわねぇ。身体に負担があるのはちょっと・・・て気持ちは理解出来ますわっ」


「プラスでやることが無いってのも離職率が高い原因かもね。部屋から出れないからね、する事が無いんだよ」


「・・・本とか読めばいいのに・・・」



「うんうん。そうだよね。みんなね、本を持ち込んだり、勉強したり、創作活動に励んだりするんだけどね。長く続かないんだ。徐々に魔力を吸い取られていくだろ?最初は良いかもしれないけど集中力が続かないんだって。こんなんで受験勉強なんて出来るか!って怒って帰ってしまう人もいるんだってさ」


「それじゃあ、やっぱりぼっ~っとするしか無いって事かぁ」

「ぼ~っとするしかないって案外ツライものですものね・・・わたくしはミール様の放置プレイでしたら喜んで耐えられますが」


「ホウチプレイ?それはなにっ??教えてセリー!」


「うふふ。では今度ゆっくり教えて差し上げますわっ」

「・・・りりふっちも変態の仲間になるの?・・・」


「ええ?!そっち??ヤダヤダ!私は普通がいいのっ!セリー!今の取り消しっ!」



 いつの間にかリリフとルクリアの中でも、セリーが変態という共通意識が芽生えているのは気のせいだろうか・・・



「ま・・・まあ・・・そういうことだから、魔力を貯める魔石はかなり昔に開発出来てるんだけど、魔力を生み出す動力っていうのかな?そういうのは全然上手くいってなくて、未だに人力で発魔(発電の事)しているって現状だね。もし自動で発魔するシステムを作り出せる事が出来たら、世界は劇的に変わるだろうなぁ」



 正確には大聖都ハミスで発魔システムは稼働し始めているのだが・・・色々と問題点が多いシステムなので詳しくはいつか語ろう。



「そっかぁ。そういう研究をしている所が魔法省って所なの?」

「うんうん。そうだね。とりあえず後は本を見ながら説明していこうか」

 4人で本を囲み、1ページ1ページめくっていく。



「あ、これいいなっ。デザイナーだって」

「ああ、服のデザイナーだね。結構人気だけど狭き門って感じかな。でも才能が認められればグイグイ出世出来るかもね。他にも家や部屋のコーディネートやお店の看板などのデザイナーもいるよ」



「ふむふむ。あっ、これも良いですね。ぱてぃしえ?なんかお菓子に囲まれて楽しそうですわぁ!」

「パティシエな。お菓子を作る職人さんだね。意外に肉体労働な仕事って聞いた事があるな。卵を泡立てたり、生地をこねたり、果肉をすり潰したり」



「あ、ギルドの受付嬢も募集してるぅ~。あ、でも大学卒だぁ」

「建設関係も募集は多いですわね。あら、測量術士や重力術士はかなり高収入ですわよっ」



「ああ、測量術士は数を一気に数えたり、正確にサイズを測ったりするのが得意で、重力術士ってのは物質を軽くして運びやすくしたりする事が出来るから、どっちも建設業界じゃ重宝するのさ。とはいってもその他大勢は基本肉体労働だから辞める人も多く、募集は多いのかもね」



「へえぇ~。あっ、お花屋さんもあるぅ」

「スーパーの店員さんもありますわ」

「・・・私、清掃得意だからお掃除の仕事もいいかな・・・」

「確かにぃ。ルクリアが掃除してくれたお部屋はピカピカだったもんね・・・でもそれだと新しい挑戦にならないんじゃない?」

「・・・ぐむぅ・・・そうだった・・・」



「貴方もタウンアイドル目指しませんか?ですってっ!ルクリアだったら人気出るんじゃありませんこと?!」

「・・えぇ~・・・人前こわい・・・」

「あははっ。でもそれ良いね。正に普段のルクリアとは真逆の挑戦っ!って感じで」

「人気が出たらお金ザクザク入るぞ」

「キラーン☆仕方有りませんわねっ。わたくしが挑戦いたしましょう」

「えぇ~・・・セリーめっちゃ歌下手じゃん。おっぱいだけじゃすぐ飽きられるよ」

「まあっ!ぺったんこなリリフに言われたくありませんわっ!」

「むっか~!ぺったんこ言うなぁ!!」



「・・・この魔法省って、さっきの魔力供給以外だとどんなことするの?・・・」



「色々だぞ。魔法全般を取り仕切ってるからね。このガタリヤにある魔法省は、魔法士の斡旋や魔石の管理などが主な仕事だと思うけど、聖都の魔法省本部では古代魔法の調査だったり、新魔法の研究だったり、魔石の開発だったり、かなり細かい部分まで研究しているらしいよ」

「へ、へえぇぇ・・・」



 お?ルクリアのちっちゃい鼻の穴がピクピクしてる。

 やっぱりルクリアは歴史の調査だったり研究が好きみたいだな・・・とルクリアの小さな変化を見逃さないミール。



「今言った魔法省とかは公務員になるんだけど、採用には大学卒ってのが多いね」

「・・・そっかぁ・・・しょんぼり・・・」



「でも公務員には色々あってね。魔法全般を扱っている魔法省、街の警備や防衛を扱っている治安省、難民認定でお世話になった人事省、税金などお金全般を扱う金融省、農業や家畜全般の地産省、食品管理や物品運搬全般の物流食品省、教育や学びの教育研究省、その他全般の総務省などなど。まだあったかもしれないけど・・・とにかくいっぱいあるんだよ。その中で魔法省は花形でエリート的な存在だから学歴とかも重視するけど、その他は結構面接だったり試験の内容を重視してるからルクリアにもチャンスはあると思う。教育研究省なんかは古代の文化や歴史、遺跡の調査などをするから向いてるんじゃないかな?」

 さりげなく誘導するミール。



「あらっ?良いじゃない。ルクリア、そういうの好きって言ってたもんねっ」

「・・・う、うん・・・でも試験かぁ・・大丈夫かな・・・」

「まあ、一般的な基礎知識とかだからキチンと勉強すれば大丈夫だと思うよ」

「・・・そっか・・・」



「ルクリアっ。まだまだ時間はたっぷりあるから慎重に決めましょうねっ。ルクリアの人生がかかっているんだもの」

「そうですわっ。わたくしたちも精一杯協力いたしますっ」

「・・・う、うん・・・」



「あ~、そうそう。あと、その考えもなるべく持たなくても良いと俺は思うけどな。確かに慎重に決める事は賛成だが、あまり深く考え過ぎるのもね・・・1回目で理想的な職場に出会えれば良いけど、そう上手くいかない人の方が多いと思うよ。別に失敗してもいいじゃないか。それも経験だ。コロコロ職を変えるのは良くないけど、沢山の経験はいずれ自分の糧となるはずだから」


「・・・そ、そうか・・・うんっわかったっ!・・・」


「わたくしとしたことが・・・また知らずにルクリアにプレッシャーをかけていましたわ・・・」

「私も・・・そうよねっ。失敗してもまたやり直せば良いだけだものね。私も視野を広げる必要があるみたい」




「だったらあんたたち、この食堂で働きなっ」




 いつの間にいたのか、グワンバラが腕を組んで仁王立ちの状態でテーブルの横に立っていた。


「ここはね、毎日沢山の人間がくるから接客するだけで良い経験にもなるだろ。なにより料理を覚えられるっ!料理が出来る女はモテるよぉ」


「!・・・ホントっ?!私働きますっ!元々グワンバラさんにはお礼をしなきゃと思ってたのでっ!冒険者の勉強もあるので毎日は無理かもしれませんが、出来る範囲で頑張りますっ!」


「わたくしも是非お願い致しますわっ。接客には自信がありますっ!」


「・・・わ、わたしも頑張る・・・接客は・・・苦手だけど・・・」



「がっはっはっ!良い答えじゃないか!早速厨房に入っとくれっ!仕込みは山ほどあるよっ!たっぷりこき使ってあげるからねぇ!」



「あ、はははは。お手柔らかにお願いします・・・」

 それから夜遅くまで、言葉通りこき使われた3人であった。





「ぐわああぁぁ~。疲れたぁあぁ・・」

 バタンッと布団に倒れ込むリリフ。



「本当に・・・予想以上でしたわねぇ・・」

「・・・すぴぃ・・・・」

「あっ。ほらルクリアっ。お風呂入ってから寝なさいっ。ほらほらっ。服脱いで」

「・・・んん~・・・一緒に入ろ?・・・」

「もうっ!しょうがないですわねっ!」



「ねえねえっ。セリー。明日はミールとギルドに行かない?そろそろ冒険者としての準備もしたいしっ」



 セリーはルクリアの服を脱がせながら

「もちろん構いませんわ。PTに入った方が良いのか、わたくしたちだけの方が良いのか。色々意見を聞いてみたいですわね」

「そうよねっ!そうよねっ!じゃ、じゃあ・・・私、ミールに連絡してみるねっ」



 リリフはイソイソと通話魔法に魔力を込める。

 やがてリリフの周りに膜が現れ、リリフがカチコチになりながら一生懸命話しているのが見て取れる。



 しばらくして膜が引き

「ミール、一緒に行ってくれるって!それとギルドで色々と相談するのもオッケーだってっ!うふふ」

「良かったですわねぇ。ミール様もお忙しいでしょうに」


「い、一応聞くけど・・・ミ、ミールと一緒のPT組むのって出来ないよね?・・・」


「う~ん。どうなんでしょうか?最初のうちは一緒に行ってくれる可能性はありますが・・・将来的は難しいんじゃないでしょうか?ミール様にとってわたくしたちは足手まといでしかありませんし・・・わたくしたちもミール様に頼ってしまって成長しないのではないでしょうか?」

「そ、そうよねっ。ごめん。聞いてみただけ」


「おじょ・・・リリフ。厳しいようだけど、浮ついた気持ちで挑戦出来るほど、冒険者の仕事は甘くないと思いますわ。リリフの願いを叶える方法は、一緒に冒険する事ではなく、一人前に成長した姿を見せる事だとわたくしは思います」


「うん。そうよね。ありがとう、セリー。まずは私達が成長しなきゃだねっ。よしっ!気分一新っ!がんばろっと!」


「・・・私は明日もグワンバラさんのとこ行ってみる・・・恩返しもあるけど・・まずは稼がなきゃだし・・・」


「げっ。そうよね~~・・・私達、全部ミールに出して貰ってるものね・・・少しずつでも返していかないとなぁ・・・」



「そのことなんですが・・・リリフとルクリア。わたくしたち・・・もっとミール様に感謝するべきだと思うのですっ!」



「ど、どうしたの?突然・・・分かってるわよ。本当にミールにはいくら感謝してもしきれない程の恩があるわ。ルクリアもそれは分かってるわよねぇ」

「・・・うん・・・だからこそ稼がなきゃ・・・」


「いいえ、分かっておりませんわっ。まずこの部屋代、もう1ヶ月以上わたくしたち住んでますが全部ミール様が払っているのですよ?」

「う、うん・・・そうよね・・・更にこれからも、しばらく住み続ける可能性大だし・・・」


「今までの食費、衣服や日用品、本まで全て!ミール様がお支払いになってますわっ」

「・・・確かに・・・あの皆で行った居酒屋も結局全部ミールさんが払ってたし・・・」


「そしてグレービーさんから調達した薬!これも全てミール様がお支払いになってますっ!ご存知ないかもしれませんが、通常の触媒用の品ですら一般市民には高価な品。それが今回は異端児からの特殊な薬剤です!かなり高額なお薬であったと想像できますわっ!」

「そ、そうなんだ・・・かなりの量、用意してもらっちゃったわね・・・」 


「そして極めつけは結界石ですわっ。わたくしたちを助けた後からずっと使い続けて下さり、常に結界で守られるようにしてくださいました。わたくし勉強したのですが通常は大地に埋めて使う物だそうで、移動しながら使うと効果時間がかなり短くなってしまうとのことでした。本来ミール様お一人なら使う必要ない結界石をわたくしたちを守るために使って下さったのです。そして結界石は製造された場所によって効力が違い、ミール様がお使いになった姿も音も匂いも全て消すことが出来るのはドーラメルク産の結界石だけだそうです。そしてそのドーラメルク産は・・・1個10万グルドはするそうなのです・・・」


「10万?!1個で??」

「・・・ミールさん・・・かなりの数ポンポン使ってた・・・」

「だよね!だよねっ!・・・ど、どーしよぉ!下手したら1年くらい普通に暮らせる程の金額になってるよねっ?!絶対!」


「そうなのですわ!トータルで考えるとかなりの金額をわたくしたちに使って頂いているのにも関わらず、ミール様は一切見返りを求めて来ませんのっ。それがどんなに凄い事だかわたくしたちはもっと良く知るべきですわっ!普通こんな事あり得ませんからっ!赤の他人にですわよ?!多数の男に陵辱されている女は軽んじられて見られる事も多いのです。最初は優しくしてきても、直ぐに身体を求めてくるようになると良く聞きますわ。ミール様はそれも全く無いですし、逆に常に気を使って下さいます。ゴブリン化で世間から差別を受ける状況になるかもしれないのに・・・自分も巻き込まれるかもしれないのに・・・自分になにもメリットなど無いのに・・・わたくしの・・・排泄物まで・・・本当に・・本当にもの凄い事なのです・・・」


「そうね・・・あんな絶望的な状況から脱出出来たのも、ミール以外では考えられない事だわ」


「・・・でも・・・沢山の感謝はするべきだけど・・・毎日毎日感謝して行動するのはあんまりミールさん好きじゃないんじゃないかな?・・・普通に接するっていうか・・・」


「そうなんですわ、ルクリア。ミール様自体はいつも通り接してくれって言うと思いますわ。わたくしもミール様があまり望んでない事はしたくありませんの。ですが・・ですが・・・なにかお礼をしたいのです。リリフとわたくしは冒険者という道を選びました。正直いつ命を落としてもおかしくない世界です。もちろん折角助けて頂いたこの命を簡単に無駄にする訳には参りませんが、絶対が無い仕事だからこそ・・・今、わたくしたちが出来るお礼ってないものでしょうか?」


「確かにそうね・・・徐々にお金を返していくってのは当然として・・・なにか別でお礼をしたいわね」




「・・・4人でエッチすればいいんじゃないの?・・・」




 一瞬静まりかえるお部屋。



「なっ?!ななななななにを言っているの?!ルクリアっ!そ、そそそそんなのダメに決まってるじゃないっ!」



「・・・どうして?・・・」

「ど、どうしてって・・・だ、だって・・・そういうことはお互いに好きになってするものよっ!そ、それを4人でなんて・・・ふ、不健全だわっ!」



「ふむ・・・確かにナイスアイデアかもしれませんわね。わたくしたちの身体を使ってミール様にご奉仕する。これは良いかもしれませんわっ!」


「な、なななにを言ってるのよ!セリーまでっ!だ、だ、大体・・・わ、私たちの身体で・・・お礼になったり・・・するのかな?・・・」


「・・・大丈夫、りりふっち・・・私、ミールさんが股間を固くしてるの見たことあるもん。興味が無いって事は無いと思う・・・」


「えっ?!ホント?!いつ?!」


「・・・最初の頃・・・みんな意識朦朧としてた時に・・・ピコルっちが買ってきた服を着せてくれていたときあったよね・・・あの時勃起してた・・・」

「そ、そうだったんだぁ・・・」



「リリフがなに嬉しそうにしてるのです。ミール様に喜んで頂けないと意味がないのですわよ?」



「わ、わかってるわよっ!て言うか、なに身体を使ってお礼するのが決まっているみたいな言い方してるのよっ!私は反対だからねっ!」



「・・・じゃありりふっちは不参加ってことで・・・セリー・・・二人でがんばろ・・・」

「そうですわねっ。やはり殿方を満足させるにはご奉仕する気持ちが大切ですから。嫌々参加されても良い結果は得られないでしょう」



「ちょっ・・・ちょっと待ってっ!・・・わ、わかったっ!やる!やりますっ!」



「・・・無理しないで・・・私たちに任せて・・・」

「ええ。これもメイドの勤めですから」


「だ、ダメっ!絶対駄目!わ、私も参加する!させてっ!・・・でも・・その代わりお願いが1つあるのっ!」


「お願い?・・・なんでございましょう?」


「ミールが初めてする相手は・・・私を最初にさせてっ!お願いっ!」

「・・・りりふっち・・・独占欲・・・」



「ああんっ!最初が良いの!お願い!お願い!お願いぃ!」



「ふうっ・・・まぁ・・・しょうがありませんわねっ・・・いいですわっ。その代わり・・・その後はわたくしたちにも譲って下さいましよ。あくまでミール様が気持ちよくなってもらう事が目的なんですから」

「う、うんっ・・・分かってるわっ!ありがとっ!」


「・・・りりふっちは本当にミールさんが好きなんだね・・・」


「う、うん・・・なによっ悪い?!しょうがないじゃない。好きになっちゃったんだもん」

「別に悪くなんてありませんわっ。強くて、優しくて、紳士で。素晴らしい男性ですものっ」

「うん・・・あとね・・・ちょっと思い出を上書きしたいのっ」


「上書き・・・でございますか?」


「うん・・・私ね、処女だったの。きっと素敵な人と初めてを迎えるんだろうなって想像してたんだけど・・・実際は名前も顔も分からない強盗に無理矢理奪われたわ・・・だからその記憶を上書きして・・・ちょうど新しい生活も始まるし、昔の記憶は封印したいなってっ」


「分かりますわ。そのお気持ち。わたくしも封印出来る事ならしたいです」


「えっ?・・・一応聞くけど・・・セリーは・・・初めてじゃないわよね?・・・」

「ああんっ。わたくしも初めてのようなものですわっ。ずっとお屋敷に勤めていましたから」




「・・・セリーは旦那様とエッチしまくりだった・・・」




「!」

「ちょっ!ルクリアっ!なにを言うんですの?!わ、わ、わたくしは・・・」


「・・・メイドのみんなは2週間に1度とか、1ヶ月に1度呼ばれるくらいだったのにセリーは週3~4で呼ばれてた・・・」



「えっ?えっ?!えっ?!」

 リリフは混乱している。



「わ、わたくしはっ・・・仕方なくですわっ。そうっ。旦那様に呼ばれて仕方なく・・・」


「・・・セリー、めっちゃ旦那様とのエッチ楽しんでた・・・メイドのみんな噂してたもん・・・セリー声デカすぎって・・・」



「えっ?!えっ?!旦那様ってお父様の事よねっ??えっ?!えっ?!メイドのみんなって全員としてたって事??お父様が?!」



「・・・うん・・・肉体関係無いのはメイド長のキレンばあちゃんだけ・・・」

「ル、ルルルルクリアっも??!」


「・・・私は1ヶ月に1回くらいだった・・・旦那様は大きいおっぱいが好きだったから・・・ちなみに私の初めては旦那様・・・」



「そんなっ。えっ?!そ、えっ?!」

 引き続きリリフは混乱している。



「だ、だって・・・だってっ、しょうがないじゃないですのっ!メイドの世界は狭いもの。出会いなんてありませんでしたわっ!わ、わたくしだって時には誰かに抱かれたい時だってありますのよっ!」

「・・・しょっちゅうしてたじゃん・・・」



「ちょっ!ちょっとっ!ちょっと待って!えっと・・・お父様が浮気をしていたってのは分かったわ・・・しょ、しょうがないわよね・・・男だし・・・で、でもお母様が可哀想だわ・・・なにも知らずに騙されていたなんて・・・」




「・・・奥様は奥様で料理長のレビンと毎晩毎晩・・・」




「ス、ストーーーップ!!ストップ!も、もう終わりっ!お、お屋敷の話は止めましょ!」




 ゼエゼエと肩で息をしながら話を遮る。

 思わぬ所から両親の知らない一面が見えてしまい動揺を隠せない。

 つくづく自分はなにも知らなかったんだなぁと、1人反省するリリフスピアーナお嬢様であった。



「・・・そういう訳だから・・・私も初体験が旦那様ってのはちょっとヤダ・・・だから大好きなミールさんとして上書きするっ・・・」


「わ、わたくしは・・・不覚にも旦那様とちょっと楽しんでしまいましたが・・・今は違いますわっ。やっぱり愛しのミール様としたいですもの」


「えっ?!愛しのって・・もしかして・・・ふ、2人もミールの事好きなの??」


「・・・そうだよ?・・・逆に気付かなかったの?・・・」

「まあ、リリフは好き好きビーム出し過ぎて、周りが見えてなかったですものね」


「うえ~ん。またライバル増えたぁ・・・」

「・・・また?・・・」

「うん・・・ピコルさん。絶対にミールの彼女だよね?」

「・・・そうなの?・・・」



「うん・・・多分・・・20日くらい経った時だったかなぁ。夕方にミールが荷物とかを差し入れしてくれて、色々お話してくれてた時あったじゃない?その時にピコルさんの匂いが身体からしたんだよね・・・あ、ピコルさんと身体を重ねてたんだなって思った・・・」



「あらっ?そうですか?・・・確かに肉体関係は有りそうでしたけど・・・お付き合いはされてないのではないでしょうか?・・・わたくしの直感ですが」

「えっ?!ホント?!まだチャンスあるかな?!」


「・・・あるある・・・そのためには最初が肝心・・・いかにミールさんを気持ちよくさせるかが勝負のカギ・・・」

「そ、それがどう関係あるのよぉっ!」


「・・・分からない?・・・気持ちよければ、またしたいって思ってもらえる。逆に気持ちよくなければ、もういいやって2度と抱いて貰えない。またしたいって思ってもらって、何回も身体を重ねれば自然と気持ちもついてくるはず。最初が肝心・・・」

「な、なるほど・・・一理あるわね・・・」


「さあっ!そうと決まれば早速行動ですわっ。決行は明日って事で良いですわよねっ?」

「えっ?!明日?!は、早くない??こ、心の準備が・・・」


「なにを言ってるんですの?リリフ。ノンビリしてミール様に彼女が出来てしまってもよいのですか?!」

「う・・・それは・・・イヤダ・・・」


「じゃあ覚悟を決めて下さいましっ!大丈夫ですわっ。わたくしたち2人もフォローいたします」

「・・・そうそう・・・でもミールさんが私を気に入っても恨まないでね・・・」



「あ~~~ん。それも嫌だぁぁ!でも・・・そうよねっ!恨みっこ無しっ!フェアに戦いましょ!」



 リリフの素直な性格と器のデカさに、思わず2人はニッコリしてしまうのであった。




                          続く

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