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スライムには負けるけど魔王には勝ちます  作者: すふぃ~だ


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ガタリヤ奮闘記④

「それじゃあ布団を運ぶの手伝っておくれ。ほれっ。そこの乳のデカい姉ちゃん!いくよっ」

「あ、はいいっ」

「それじゃあルクリア。私たちはお掃除をしましょう」

「・・・わかったっ・・・お水汲んでくるっ・・」

 3人の瞳には希望が溢れていた。



 ⇨ガタリヤ奮闘記④




 ミールはグレービーから受け取った薬を手に、全力で走っていた。

 深夜にミールの足音が響き渡る。



 クソッ遅すぎるぜ、俺の足。



 分かってはいるが、どうしても能力解放されている時のスピードを思い出してしまう。

 スタミナも無く、横っ腹も痛くなってきた。


 荒い息づかいで、必死に唾を飲み込みながら、それでも休憩せずに走り続ける。

 頭の中には、どうしても悪いイメージが浮かんできてしまうからだ。

 もし今、3人のうち誰かがゴブリン化してたら・・・



 頼む!間に合ってくれっ!



 そんな願いを込めながら、足に溜まった乳酸を振り払い、両足を前に出し続けるのであった。




 話は少しさかのぼる。

 ミールは薄暗い路地を曲がり、細い道に入っていく。

 注意深く歩いていないと、通り過ぎてしまうような場所。

 そこにグレービー商会と書かれた看板に、ちっちゃい明かりが1つだけ付いてポツンと掲げられていた。


 B1Fと矢印が示されている。

 ミールは薄暗い階段を降りて、植物がびっしりと巻き付いている扉の前に立つ。



   CLOSE



 まさかの閉店??嘘だろ?!とミールは、しばし呆然としてしまう。

 しかし帰る訳にはいかない。

 ダメ元でノブを回す。すると思いの外あっさりと扉は開いた。



 カランカランと乾いた小さな音がする。

 店は狭く壁一面にびっしりと瓶が並んでおり、中には乾燥された植物の種やら鉱石のカケラやら爬虫類の干物やらが入っている。

 照明は薄暗く、何故かピンク色をしていた。



「あらっ。いらっしゃ~い。かわいい子猫ちゃんねんっ」



 扉を開けて直ぐの所にカウンターがあり、そこにピンクやら紫やらのフリフリの服を着た筋肉ムキムキの中年の男がバックに荷物を詰めている所だった。


 髪は短く紫色がメインだが、所々メッシュに緑色が入っている。

 肌は日焼けをしていて真っ黒でテカテカ光沢を放っており、瞳には付けまつげ、唇には真っ赤な口紅をさしていた。



「あ、あの・・・ピエールから紹介されて来たミールって言います。初めまして、グレービーさん」

「あらま~ん。貴方がミールちゃんねんっ。お話は聞いてるわ~ん。待ってたのよぉん。実はねぇ、これからドルグレムに急遽行くことになってねん。お姉さんあんまり時間ないのよぉ」

「そ、そうでしたか。で、ではっ早速で申し訳ないんですが・・・触媒を購入したいんですが・・・売って頂けますか?」

「うふふ。いいわよ~ん。売ってあげる」

「ほ、本当ですか?!ありが・・・」



「た・だ・し・」

 ミールのお礼を遮って言葉を続けるグレービー。



「何処に泊まってるのか教えなさ~い。それが条件」



「グワンバラの宿だ。そこに部屋を確保している。被害者は女の子達3人」



 ミールが即答したことに、少し驚くグレービー。

「あらぁ?私通報しちゃうかもよん?そんなに簡単に教えて良いのかしらぁ?」



「構わない。俺には時間が無いし、あんたが信じれるか信頼できる人かなんて今の時点でわかりようが無いからな。だったら俺のカンを信じる。そしてなによりピエールが紹介してくれた人が悪人な訳ないからな」

「ふふふっ。ピエールを信頼しているのねっ」

「当たり前だ。あんたは信頼してないのか?だったらあんたの目は節穴だ」



 猫かぶりは開始1分で止め、口調がいつも通りになっているミール。

 グレービーが、じいっとミールの本質を見抜こうとしている事に気付き、自分を作るのを止めた結果だった。



 そんなミールを見て、グレービーはニンマリと真っ白い歯を輝かせる。



「ふふふ・・・・あーっはっはっは!気に入ったわっ!ミールちゃん!貴方最高ねっ!いいわっ!売ってあげるっ!」



 そう言って前もって準備していたのであろう、ドサッと袋をカウンターの下から取り出して、中身を説明し始める。



「いい?ゴブリン治療には時間が勝負よっ。今どれくらい経過しているのかしらん?」

「だいたい36~7時間くらいだ」

「まあ・・・ギリギリね。いいわっ!お姉さんがしっかり教えてあげるから集中して一回で覚えて頂戴っ!まず最初は・・・」



 ミールは基礎魔法の魔法メモを起動し、グレービーの説明をしっかりとメモをする。

 それから『下心はないわっ、万が一の為よっ』と言い張るグレービーと通知登録をして、グワンバラの宿に向かって全力で走り始めたのだった。




 ———以前、『薬』という単語は、この世界では麻薬を意味すると説明させて頂いた。しかし、この異端児達は触媒の事を『薬』とも呼ぶ。ここは皆様にも分かりやすいように、しばらくは触媒=薬として表記するのをご了承頂きたい———




 グワンバラの宿に着いたのが、グレービー商会を出て20分ほど経過した頃、ミールにしてはかなり早く着いたほうだった。

 時間は午前2時近く、37時間を経過していると予想できる。



《いい?そろそろいつ症状が出てもおかしくないわっ。まず急に暴れ出したり、叫び声を上げたりするから、しっかりと身体を抑えるのよ。初めは一時的なもので直ぐに正気を取り戻すわ。しかし段々と正気に戻る時間が減ってくるから、それまでに薬を飲ませて対処しないといけないのっ。とにかく急いで帰りなさいっ!》



 グレービーの言葉が頭でグルグル繰り返す。

 頼む、間に合ってくれっ。



 バタンっと大きな音をたてて宿に入るとグワンバラが階段の上で待っていた。

「こっちだよっ!」

 ミールは直ぐに階段を駆け上る。



「この奥の部屋だよ。今、中から奇声が聞こえ・・・・」

 グワンバラの言葉を最後まで聞かずに



「グワンバラ!お湯を用意してくれっ!大至急だ!」



 扉を勢いよく開ける。

 ミールの目に飛び込んできたのは、ウ~ウ~っと唸り声を上げているルクリアを、リリフとセリーが涙を流しながら必死に床に押さえ込んでいる光景だった。



 ルクリアの瞳は薄い色だが、ゴブリンのように赤みがかかっている。



「ルクリアァ!しっかりしてっ!」

「あっ!ミール様!ルクリアがっ!ルクリアがっ!」

「ああ、分かっている。そのまましばらく押さえ込んでくれ。すぐ正気に戻るから。俺は薬の準備を始めるっ!」

 そう言うと袋から触媒と調合道具を取り出す。



《いい?1つめはこれ。ガンジスの種。これを粉末にしてからお湯に溶かして飲ませて頂戴。1人に対して10粒が目安よんっ。粉末にする時はこれを使って。注意点として粉末にして空気に触れると、どんどん効果が薄くなっていくから、飲ませる直前に砕く必要があるの。これを朝昼晩、毎日1ヶ月くらい続けるのよんっ》



 しばらくしてルクリアが正気を取り戻す。



「ルクリアァ。良かった・・・」

「・・あれ?・・・私・・・わ、わたし・・・ああぁ・・ああああ!!私、ゴブリンに・・・いやあああ!!」

 事態を把握したルクリアは取り乱してしまう。



「ルクリア!大丈夫だ!俺を信じろ!」



 ミールが強めに言葉を発する。


 一瞬ビクッとなったルクリアだったが、すぐに落ち着いて

「・・・ご、ごめん・・私、ミールさんを信じる・・・負けない・・・」


「ああ!任せろ!・・・よしっ3人共毛布を脱いで布団の上に横になってくれっ。今から薬を飲ませる」

 3人は言われた通りに全裸になって、布団の上に寝転がる。



「はいよっ!お湯お待ちどおさまっ!」

 グワンバラがお鍋にたっぷりのお湯を入れて部屋に入ってくる。



《い~い?まず女の子達に薬を飲ませる。それから最低5日間は誰も部屋に入れないこと。これが重要なのよん。ストーブでもコンロでもいいんだけど、部屋の中は常に蒸気を沸かすようにしなさい。そしてそのお湯の中にこのトレル草を入れるの。そうすると部屋が殺菌・・・悪い状態を消すって事ね、それに出来るから。でも誰かが外から入ってくると、また菌を持ち込んじゃうからとにかく注意してっ。換気は1日1回だけ、朝3~5時くらいの空気を入れること。外から持ってきた物は、このトレル草の蒸気で殺菌してから使いなさい。あと、火を使うから夜は良いけど、昼間は暑くなるわっ。水分補給はしっかりしなさい》



「さんきゅ。グワンバラ。早速で悪いんだが、すぐ出て行ってくれ」

「なんだいなんだい。随分とごあいさつだね」


「違うって。今からこの部屋は誰1人立ち入り禁止だ。5日間はなるべく無菌状態ってやつにしたいらしい。鍋とコンロは・・・よしっ、あるな。必要な物はあとで友人に届けてもらう事にする。時間が惜しい。頼む!」

「はいはい。わかったよ。でもミール。なんかあったら遠慮無く言うんだよ?」

「ああ。わるいな。助かるよ」



 ミールはガンジスの種をすり潰してお湯に加え、ルクリアにまず飲ませる。



「・・うげぇ・・苦い・・・」

「我慢して全部飲め。飲み終わったら横になって安静にしててくれ。よしっ、次はリリフだ。ほれっ」

「は、はい」



 ミールは次々と薬を飲ませ、次にトレル草を入れた水を沸騰させ部屋を蒸気で満たす。

 そんな事をしていると、またルクリアの様子が変わってきた。



「ミール様っ。ルクリアが!」

「ああ!任せろ!お前達は安静にしててくれ。ただ・・・お前達のどちらかがゴブリン化の症状が出たら、もう1人がとりあえず押さえ込んでくれ。頼むから3人同時にならないでくれよっ!」



 ミールは唸り声を上げているルクリアを押さえ込みながら2人に声をかける。



「わ、わかりましたわっ。お嬢様。お、お先にどうぞっ」

「えっ?私?!ええっと・・・う、うう~・・・これってどうやってゴブリン化するの??」

「落ち着け、リリフ。成らないなら成らない方が良いんだ。心を落ち着かせて安静にしてくれ」

「ご、ごめんなさい」



 2人は横になって目を閉じる。


 ルクリアは1回目より少し長くゴブリン化していたが、ようやく落ち着いたようだ。

 まずいな、早く次の薬を塗らないと・・・



《さあっ。最後はこの白い塗り薬、ファーベットの実よんっ。ゴブリン化の原因の精液を直接破壊するのっ。これが上手く行けば、ゴブリン化の症状が出てても治せる可能性はあるわっ。これは全員に5日間、朝昼晩続けてねんっ。もう加工してあるから直ぐに使えるわよ。きゃ~!グレービーちゃんったら親切ぅ~!・・・・・・おほん。で、そのゴムの棒の先端にファーベットの塗り薬をたっぷりとつけて、直接子宮に塗って頂戴。自然と広がっていくから結構グリグリと塗りたくっちゃって大丈夫よんっ。え?何言ってんの?ミール、あんたがやるのよっ。ずぶりっと突き刺して奥の奥、一番奥に塗って頂戴。うふふっ。燃え上がるわぁぁ~~》



 ミールは急いで、ファーベットの実をゴムの棒に塗りつける。

 そしてルクリアの足を掴み、ガバッと股を開かせた。



「きゃっ。ミ、ミールさん・・・」

 ルクリアは一瞬恥ずかしそうに足を閉じかけたが、直ぐに力を抜きミールに全てを委ねる。



 ミールはためらいも無く、ずぶりっとゴムの棒を子宮めがけて突き刺す。

「・・・ん・・・ぁ・・・」

 ルクリアは声が出るのを必死に我慢する。



「・・んっ!・・」

 ルクリアがビクンっと身体を震わせる、どうやら子宮に届いたようだ。



 ミールはグリグリとゴムの棒を動かし、薬を塗りたくる。

 ビクビクっと身体を震わせながら、枕を掴み黙って耐えているルクリア。



「よしっ。次はリリフな」

「は、はいっ」


 ミールはトレル草のお湯でゴムの棒を洗い、再度薬をつける。

 リリフは既に枕で顔を覆っている。



「んんんっ~!」

 ミールはゆっくりと棒を入れていく。

「あっ!・・・・」



 子宮にゴムの棒が届くとお尻を持ち上げ、身体をえび反りになるリリフ。

 ミールは構わずルクリアと同じようにグリグリと薬を塗っていく。



「んんんっあっ・・・んっ!・・・」



 ビクンッビクンッっと身体を痙攣させるリリフ。どうやらイッてしまったらしい。

 ミールがゴム棒を引き抜くと、ぐたぁ~っと身体に力が入らないっといった感じで伸びてしまった。



「最後セリーな」

「お、お手柔らかにお願いしますわ・・・」


 ミールは先程と同じようにトレル草のお湯でゴム棒を洗い、ファーベットの薬をつける。



「・・・ん・・・っ・・・」

 セリーも身をくねらせて耐えている。

 流石に身長差があるからなのか、ゴムの棒はほとんど入ってしまうくらいに挿入された。

 グリグリ薬を塗るとセリーの吐息が聞こえてくる。



 無事全員塗ることが出来て、とりあえず一安心。

 しかしまたまだ油断は出来ない。

 グレービーも5日間が勝負って言ってたしな・・・



《いい?薬を全員に塗ることが出来ても安心しちゃダメ。ガンジスの種の薬は免疫力・・・元々備わっている病気への抵抗力って事ねっ。その免疫力を極端に落としてしまうの。だからまずは5日間、しっかり密閉した部屋で安静にする事。どうしても魔法と違って徐々に徐々に効果が出るのが私達の治療法だから、こうやって無理矢理にでも抵抗力を落としてゴブリン化までの時間稼ぎする必要があるのよん。恐らく初日から全員意識が無くなるくらい重篤な状態になるはずよ。まずはそこからの体調回復を目標に頑張ってみてぇ。あと、トレル草の蒸気で部屋を満たすことも忘れないでねんっ。5日間が過ぎて女の子の日が来た人から、ファーベットの塗り薬は使わなくていいわよん。え?女の子の日がなにかですって?いやねん。生理よ、せ・い・り!!ファーベットの塗り薬は、女の子の日が来るのを促進する効果があるから、大体5日間くらい塗れば、大抵の場合はあの日になるわ。逆に女の子の日が来ないうちは、いつまでも気を抜けないから注意するのよぉ。全員が女の子の日を迎えたら、とりあえずゴブリン化はもう心配無いわ。で・も・!免疫力が下がっているから実はそこから一ヶ月が大変なの。ちょっとした風邪でも重症化しやすいから。せっかくゴブリン化を防いでも別の病気で死んじゃったら悲しいじゃないっ。え?免疫力を落とすガンジスの種を、飲み続ける必要があるのですって?あらやだ、良い質問じゃない。ミールちゃん、異端児のセンスあるわねぇ、うふふっ。ガンジスの種はね、免疫力を落とすけど再生もするの。身体が新しい細胞に作り変えるのを、お手伝いするって言うのかしら。だからずっと飲み続ける必要があるのよーん。いい?何回も言うけど一ヶ月はしっかりと殺菌、消毒、安静、そして栄養ある食事。頑張ってねんっ》



 ふ〜っと一息ついたミールだったが、直ぐにルクリアが、またゴブリン化の症状が出たので布団に押さえ込む。



 こりゃしばらくは夜も寝れないな・・・



 窓を見るとうっすらと光が差し込んで来ている。

 長い1日になりそうだ。

 ミールはルクリアの身体を押さえつけながら、そんなことを考えていた。




 グレービーが言っていた通りガンジスの種が効いてきたようで、午前8時頃には全員脂汗を額に浮かべて荒く呼吸している。

 呼びかけにはなんとか頷く事が出来るが、いつ意識を失ってもおかしくない状態のように見えた。



 ミールは汗をこまめに拭き取り、水で濡らしたタオルで身体を拭く。

 やはり常に蒸気を起こしていないといけないので鍋の火はつけっぱなし。

 部屋は温度も湿度もかなり高く、ミールも汗をかなりかいていた。



 今の時期のガタリヤの気候は夜は寒く昼間は暑いという、ちょっとした砂漠のような気候となっている。

 暑いといっても夏本番って感じではなく、春の終わりの時期くらいの暑さなのだが・・・そうはいっても昼間は十分に暑い。

 外気は暑いのに、ミールの部屋の窓にはそれでも結露が発生しているので、どれだけ部屋の温度が高温だかがお分かりだろう。



 せめて加湿器のように蒸気だけだせる魔道具があれば良かったのだが、序列最下位のガタリヤに、しかも貧民街と有名な星光街に、そんな気が利いた物は無い。


 頻繁に水分を取らせてはいるが全員具合はかなり悪く、少ししか飲むことが出来なかった。

 それでもミールは根気よく、1人1人身体を起こし支えてあげて、水差しで少しずつ飲ませてあげた。



 魔風器(扇風機のようなもの)は生暖かい部屋の風をそのまま熱風のように送くっている。



 貴方達の世界でいうクーラーのような物もあるにはあるのだが、開発されてまだ数年しか経っておらず、序列最下位のガタリヤにはどうしても品不足感が否めない。

 結構値段も張るので、政府の重要施設や富豪の皆さんに買われてしまい、グワンバラの宿のような3流宿屋には高嶺の花となっている。



「せめて氷でもあればな・・・・・・あっ・・・」

 ミールは独り言を言って自分でハッとする。



「これ使えるんじゃね?・・・おおっ、いけるいける」



 ミールは冷気属性の魔法を手のひらに発動させ、水を吸わせたタオルに冷気を纏わせる。

 しばらくして、タオルは表面がパリパリの状態になるまで凍らせることが出来た。



 冷気属性魔法を使える普通の人だったら、一瞬でカチコチにする事が可能だが、ミールはスキルの影響で強力な魔法は使えない。

 更に、あとで後述するが結界内では魔法の威力はかなり減少する。

 なので今発動させているのも実戦では全く役に立たないレベルのごく弱いものだったが、今のミールには十分すぎる威力があった。



「ぐあぁぁあぁ。生き返る~」

「ふふ・・・・おっさん・・・みたい・・・」

 相変わらずゼェゼェと苦しそうに呼吸しながらも、ツッコミを入れるリリフ。



「うっせっ」

 ミールは笑いながら3人に冷えたタオルを供給していく。

 額の上、首、脇の下、太ももの内側など。なるべく太い血管が流れている所を重点的に冷やしていく。



「わぁぁ・・気持ちいぃ・・」

「ほんとですわね・・・」

「・・・生き返る・・・」



 3人共、明らかに顔色が良くなりほっと一安心。

 ミールはふうっと一息つくと

「ちょっと通話する。食べ物とか用意してもらわないといけないからな」

「はい。ありがとうございます」


 ミールはピコルに通話をかける。

 今はちょうどお昼時、休憩に入っていると嬉しいんだが・・・



「はあいっ!ミールさあんっ!お久しぶりデスっ!ミールさんから連絡くれるなんてっ!!ピコルめっちゃ嬉しいですっ!」



 通話に出たピコルのテンションが高すぎて、自分とのギャップにおもわずウッとなりながらも、ミールは冷静に返答する。



「仕事中すまない。今ちょっと話せるか?」

「はいいっ!もちろんですっ!ミールさんが最優先ですから!」

「お、おう・・・あのさ。折り入って頼みがあるんだけど・・・」

「はいっ!やりますっ!」

「い、いや・・・まだなにも言ってないんだが・・・」

「ミールさんの頼みですよっ?!最優先デス!」

「ははは・・・さんきゅ・・・あのさ・・実は・・・」



 ミールはピコルに事の詳細を説明する。



「ほんっとに許せないっ!やっぱり男なんてミールさん以外みんなクズですねっ!それで女の子達は大丈夫なんでしょうか?」


「ん?んん・・・正直まだ助かる確率は50%くらいかな・・・でも絶対に助けたいんだ。」

「はいっ。絶対に助けましょうっ!ピコルも協力しますっ」


「助かるよ。それで早速なんだけど、とりあえず食料と衣類、日用品を見繕ってくれないかな?なるべく食料は消化に良い物・・・お粥的なやつとかが有り難いな。服も4〜5着、タオルは多めで頼む。今この部屋の出入りは出来るだけ減らす必要があるらしくてさ、とりあえず5日間は俺も部屋を出ることも出来ないんだよ。お金は後で払うからさ、頼めるかな?」



「ミールさんと5日間部屋で過ごせるなんてっ!なんてご褒美!・・・・あっ・・・失礼しました。はいっ大丈夫ですっ。ではこれから買い物行ってきますっ!」



「え?仕事中だろ?・・・・夕方の仕事終わりでいいぞ。まだみんな食べ物を食べる元気も無い状態だしな・・・」

「いえっ!有給とりましゅ!ミールさんに会えるんですからっ」


「あ・・・ごめん。他の人と接触しちゃダメらしいから買ってきてくれたら、扉の前に置いててほしいんだ・・・すまん・・・」

「ふええぇぇん。しょ、しょんなぁぁぁ・・・でもわかりましたっ。お任せくださいっ」


「すまん、助かるよ。宿に着いたらグワンバラって女将に部屋の場所を聞いてくれ。話は通しとくから」



 ピコルとの通話が終わり、トレル草のお湯を確認、少し水を足しながら3人の状態を見る。



「そういえばルクリアのゴブリン化する間隔が、だいぶ長くなってきたな・・・上手く薬が効いてきたってことか」

「ミール様・・・あの・・・おトイレに行ってもよろしいでしょうか?・・」

「ああ、わかった」

 ミールはセリーの身体を起こして支えながら一緒に歩く。



 リリフ達は街に着くため、かなり身体を酷使している。

 その為、全身が筋肉痛だ。

 ただでさえ体調が悪くフラフラしているので、サポートが必須という訳だ。



「すみません・・いたたたっ・・」

「気にすんなって。他、ツライこと、して欲しい事、なんでも遠慮無く言ってくれ」

「はい・・・ありがとうございます」



 セリーをトイレまで送り届けて、今度はリリフのタオルを交換して氷属性魔法で再び冷やす。

 そうこうしていると、ルクリアがまたゴブリン化っぽい症状・・・正確には熱にうなされているような症状が出始めたので頭を撫でて様子を見る。

 まるで雛の世話をする親鳥のように、あっちこっちと忙しく動き回るミールであった。




 お昼の薬の投与も一通り終わり、少し一段落した感じ。

 相変わらず3人共、状態は悪く、高熱でうなされたり、咳き込んだりする状態が続いていた。



  コンコンコンッ

 扉がノックされる。



「ミールさんっ。お待たせしましたっ。一通り買ってきたのでここに置いておきますねっ。追加で欲しいものとかあったら遠慮無く言ってくださいっ。ではでは~」

 いつも通りピコルの明るい声が聞こえる。



「すまない。助かるよ」



 ミールはお礼を言うが返答はない。

 ミールの要望通り、直ぐに立ち去ってくれたみたいだった。


 少し時間を置き、そっと扉を開ける。

 そこには大きな袋が4つ置かれていた。



 ミールはグレービーの言いつけ通り、トレル草のお湯の入ったスプレーを吹きかけながら荷物を部屋に入れていく。



 うっ・・結構重いぞ。



 ピコルのやつ・・・

 声は明るかったが、かなり無理して運んできてくれてたようだった。

 めっちゃ良い子じゃないか・・・



 ピコルとの関係はあくまで肉体関係。

 もちろんピコルはミールの事を好いてくれているが、ミールはピコルの想いに答えるつもりは無い。

 それなのにズルズルとこんな良い子と関係を続けてもいいのだろうか?と思わず申し訳ない気持ちになるほど、1つ1つの荷物は重さがあった。



「ありがとうな。ピコル」

 ぽつりと一言、中を開封していく。



 ギルドでも人気者のピコルが選んだだけあって、センスが良い。

 食べ物は要望通り、栄養があり消化に良い物が大量に入っており、服は可愛いプリントが入っているがしっかりと吸水性に優れている素材の物を選んでくれている。

 タオルも大、中、小揃っており、歯ブラシなどの日用品の他に生理用品なども入っていた。

 もしミールが買い物してたら見落としていた品物ばかりだ。



 早速ミールは女の子達に下着と服を着せていく。

 今は全員全裸で横たわっており、一応旅の道中に着ていた雨合羽のような服を布団の上に引いてはいるが、ボロボロでとても汗を吸い込むような機能は持ち合わせていなかった。


 汗を吸い込んでくれるだけで気化熱の効果が期待でき、気分的にもベトベトしてないので気持ちがいいはずだ。


 白いシャツとパンツはツヤツヤしていてかなり肌触りが良い。

 結構良い品を買ってきてくれた事が容易に想像できる。



 ミールは3人に下着をつけた。

 今まで全開だった身体が、下着をつけて隠れる部分が出来ただけで、ぐっと色っぽく感じるのは何故だろう・・・



 ミールは股間に熱いものを感じ『イカンイカン。病人相手になにを欲情しているんだ俺は』と頭をフリフリ、雑念を捨てながら可愛いプリントがついている寝間着を着せていく。



「あ、あり・・・がと・・」

 朦朧もうろうとした目をしながらお礼を言うリリフ。

 ミールは優しく頭を撫でながら額の熱を確認した。

 リリフの頬が紅潮していく。



「まだ熱があるな・・・どこかツライ所はあるか?・・・って全部だよな。なにを聞いてるんだ俺は・・」

「ふふっ。でも朝よりかは・・だいぶ楽になったわ」

「そうか。よし、ちょっと水を飲もう。よいしょっと」

 ミールはリリフを支えながら身体を起こして水を飲ませる。



「いたたたたっ・・・はぁ。こんなに身体って痛くなるものなのね・・」

「あはは、そうだな。食べ物とか食べれそうか?」

「う~ん。どうだろう・・・」

「ちょっとだけバルバルかじってみ」

「うん。ありがと」



 リリフはゆっくりゆっくりとバルバルを食べていく。

 バルバルとはバナナの事だ。



「ミールさん・・・私も水飲みたい・・・」

「おっ。ルクリア起きたか。ちょっと待ってな」

 ミールは同じようにルクリアの身体を支えながら起こしていく。



「ルクリアもちょっとだけバルバルかじってみるか?」

「うん。かじってみる・・」

「オッケー」

 ついでにルクリアの額の熱も確認する。



「まだまだ熱はあるな・・・でもゴブリン化の症状は、かなり感覚が長くなってきたぞ。薬が効いてる証拠だな」

「ほんと?・・・助かる?・・・」

「ああ!絶対に助かる。頑張ろうなっ」

「うんっ」



 希望が力を与えているのか、ルクリアはバルバルをがぶっと食べきり、笑顔で横になる。

 ミールは、よしよしとルクリアの頭を撫でていると、リリフがジトーっとした目で睨み付けているのに気づいた。



「ど、どうした?・・リリフ?」

「べっつにぃぃ~・・・」

 リリフは不機嫌そうにバルバルを最後まで食べきると、そのままミールに背を向けながら横になったのだった。




 それから3日間は同じ事の繰り返し。

 早朝に空気の入れ替えをして、トレル草の蒸気で部屋を満たす。

 ガンジスの種をすり潰して与え、ファーベットの塗り薬を子宮に塗りつける。

 着替えをして、こまめにタオルで汗を拭き取る。

 温度が上がってきたら、氷属性魔法で冷やしたタオルを使って体温上昇を防ぐ。

 筋肉痛はだいぶ改善されたようだが、まだまだ全員フラフラしており体調は悪そうだった。



 お昼にまた薬の投与、簡単な食事。

 夜にはまた着替えをして薬の投与、簡単な食事。



 5日目くらいになると、ようやく自分で動いたり着替えをしたりする事も出来るくらい、体調は回復してきたようだ。



 そうそう、グワンバラが衣類の洗濯をしてくれているので、かなり助かっている。



 毎日結構な量が出るので毎回

「全くっ。あたしは家政婦さんじゃないんだよっ」

 と言いながら、きっちりと翌日には綺麗に畳んで扉の前に置いてあるのだ。



 この1件が片づいたら、なにかお礼をしなきゃいかんな。



 そんな事を考えながら服をタンスにしまっていると、トイレの扉がバタンっと音を立てて開き

「ミールさん!生理きたっ!」

 ルクリアが、通常では大きな声で報告しない言葉を嬉しそうに伝えてくる。



「おぉ!・・よかったぁ・・・ほんとに。これで安心だな」

「うんっ!」



 5日目のお昼頃、遂にゴブリン化の症状に悩まされていたルクリアにも、女の子の日が訪れた。

 グレービーの話だとゴブリン化に関してはもう安心らしい。



「でもな、ルクリア。まだまだルクリアの身体は弱ってるから油断するなよ。ここから一ヶ月くらいは安静にな」

「はいっ!」



 現実的に1番危なかったし、自身もゴブリン化の症状が何回も発症しているので、人一倍安堵感と生還したという喜びが込み上げてきているように見えた。

 ルクリアは余程嬉しいのだろう。

 布団の上でぴょんぴょんと枕を抱えながら飛んでいる。



「本当に良かったですわっ。わたしも昨日生理を迎えましたし、これでとりあえず第1関門突破ですわねっ」

「ああ、そうだな。まだまだ安心は出来ないが、とりあえず最大の障害は越えれたな」



 ミール達が喜んでいると、1番窓際に布団を敷いているリリフが布団からむくっと起き上がり、呆然と一点を見つめている。



「リ、リリフ?・・・・どした?・・・」

 流石に様子が変なので声をかけるミール。



 リリフはまるで機械の首が錆びてギギギギっと音をたてて、なんとか回っているような感じで、ミール達の方を向き



「わ、わたし・・・まだきてない・・・」



「?・・・なにがですか?お嬢様」

 全員がハテナって感じで顔を見合わせる。




「わたし!・・・まだ生理来てない!来てないのっ!」




「え?!」

「まじか?!」

「うそ?!・・・」

 部屋中しばらく沈黙が訪れる。



「お、お嬢様・・・本当に来てないのですか?なにかうっかり・・見落としていたとか・・・」

「見落とすと思う?・・生理を?・・・・」

 リリフの怒りの満ちた言葉。



「・・・・思いません・・・」

「でも・・・体調が悪かったから個人差があるのかも・・・」

「そ、そうだよな。うんうん。明日にはきっと来るさ。・・・と、とりあえず薬を塗ろうか・・・」



 ぎこちない雰囲気の中、なんとかリリフをなだめて薬の投与、そして簡単な食事を取り、明日に向けて寝ることにした。




 翌朝、目覚めた全員の視線は自然とリリフに向けられる。

 当のリリフは布団の上で呆然としていた。



「お、お嬢様・・・い、いかがでしたで・・・しょうか?・・・」

 セリーの呼びかけにはなにも答えず、手で顔を覆い悲鳴のような声を上げる。




「私っ!・・・私っ!!・・こんな所で死ぬなんて!嫌だっ!ゴブリンなんてなりたくないっ!わああああんん!!」




 ギリギリで耐えていた理性も完全に崩壊し、泣き叫ぶリリフ。



「お嬢様っ」

 セリーとルクリアがリリフの元に駆け寄り抱きしめ合う。



「・・・わたしはゴブリン化の症状が出ても助かった。・・・リリフ様は出てない・・・まだ諦めるのは早い・・・」

「そうですわよっ。まだ6日目ですわっ。個人差があるのですよ、きっと。今日1日経ってから考えましょ」



 リリフはひとしきり泣いた後、ミールの方をしっかりと見つめて



「ごめんなさい。取り乱して・・・ミール。私負けないわっ。だってやりたいこと沢山あるもの。・・・・でも・・・でも、もし・・・もし私がゴブリン化したら・・・貴方の手で殺して欲しい。お願い・・・最後は貴方の手の中で眠りたいわ。お願い・・・」



 リリフの悲壮に満ちた言葉は、気軽に否定や反論などが出来ないような力強さがあった。



「・・・わかった」

 ミールはしばらく沈黙して静かに頷く。



 リリフの瞳から再度、一筋の涙が流れ落ちる。

 それは光に反射して、とてもとても綺麗に輝いており、ミールはしばらくその涙に見入ってしまうのだった。




 6日目も夜を迎えようとしていた。

 部屋の中に重苦しい空気が支配している。

 誰も声を出せない雰囲気がそこにはあった。



 女の子の2人は布団の上で心配そうにリリフを見つめているし、当のリリフはミール達に背を向け布団に横になっており、寝てはいないのだが起き上がってはこない。

 何故寝てないと分かるかと言うと、ときどき声を押し殺して泣いているのが分かるからだ。



 ミールはいつものようにファーベットの塗り薬をゴムの棒につける。



「さあ、リリフ。薬の時間だ。お前が最後まで諦めないって言ったからな。俺も諦めないぞ。今日もたっぷりと塗ってやる」



 リリフは黙って下着を脱ぐと、ミールに向かって股を開く。

 相変わらず顔は枕で隠している。



   ズブリッ



「・・・んっ・・・ぁ・・・」

 リリフの甘い声が微かに聞こえてくる。



 ミールはだいぶ慣れてきたので、遠慮なくグリグリと薬を塗りたくる。

 リリフは同じようにえび反りになって、最後はビクンビクンと痙攣しながら昇天してしまう。どうやらイキやすい体質のようだ。



 いつも通り荒い息づかいをして布団の上でグッタリとしているリリフ。

 その姿をみてセリーが、なにかに気付く。



「ミール様・・・お嬢様はいつもこのような状態になるのでしょうか?・・・」

「ん?・・・ああ、そうだな・・・」

「ふむ・・・」

 しばらく考え込むセリー。



「お嬢様・・・大丈夫ですか?」

 セリーはリリフのもとに歩いて行き、未だ枕で顔を隠しているリリフの身体を揺する。



「だ、大丈夫よ・・・ちょっと・・・痙攣しちゃっただけ・・・」

 リリフは照れ隠しをしながら服を着ていく・・・が、セリーはその手をガシッと掴み、それを止める。



「な、なに?!・・・」

「お嬢様っ。少し質問があります。・・・お嬢様は薬を塗られている時・・・何を考えておられるのでしょうか?・・・」

「え?・・・な、なにって・・・なにも考えてなんていないわよっ」

 リリフの顔が明らかに赤く染まっていく。



「もしかしてお嬢様・・・」

 じいっとリリフを見つめながら




「ミール様とセックスしていると思い込んでいませんか?」




「なっ!ななな、何を言ってるのか分からないわっ!分からないっ!ええ!全く分からないわっ!」

 明らかにビクッと図星を指されたように動揺するリリフ。



 セリーはリリフの頬を両手でガシッと掴み、真っ正面から再度質問する。

「どうなんですか?お・じょ・お・さ・ま!」

 ジーッとリリフの目をみて問いただすセリー、リリフは目をそらしてしまう。



「う・・・うぅ・・・」

「お嬢様っ」



「ええい!分かったわよっ!白状すればいいんでしょ?!セリーの言う通りよっ!だってしょうがないじゃないっ!どうしても思い出しちゃうのっ!薬を塗られるだけってわかってても、ゴムが私の中に入ってくると思い出しちゃうのよっ!あんなのはもう思い出したくないのっ!だから違う人の・・・私の好きな人のモノが入ってきてるって思えば、恐怖も無くなったし怖くなかったから・・・だからっそれで・・・その・・・ああああっ!違うのっ!あのっ!あのっ!」



 開き直って白状したはいいが、勢いで意中の人に想いを告げてしまって混乱しているリリフスピアーナお嬢様。



 そんなリリフの手をしっかりと握りながら

「お嬢様っ。もしかしたらそれが原因なのかもしれません。前にミール様も仰っていましたが、これだけ魔法医療が進んでいるのにも関わらず、未だにゴブリン化を防ぐ有効な手立てがない原因は、呪いが関係あるかもというお話でした。呪い・・・現在も具体的な解呪方法は確立しておらず、精神的な要素が多々有ると聞いた事がありますわっ。ファーベットの塗り薬はゴブリン化の原因を破壊し、無力化すると同時に生理を促すとお聞きしました。わたくしが思ったのは、薬はしっかりとゴブリンの精子を破壊したと思われます。しかし肝心の呪い・・・精神的な部分でお嬢様はゴブリン化の治療を、好きな人との愛の営みと捉えてしまっています。そのある意味ゴブリン化を受け入れてしまっているような、ちぐはぐな思いが治療に影響しているのではないでしょうか?」



「なるほどなっ!そうか・・・うんっ確かにそうかもしれん。凄いぞセリー!」

「い、いえ・・・そんな・・・」

 頬を赤らめて照れるセリー。



「よしっ早速実行だ。リリフ、準備はいいか?」

「え?え?・・・あのっ、ど、どうすればいいの?」



「お嬢様。これから行う治療は忌むべき存在、ゴブリンに犯された事の治療です。いいですか?おツライとは思いますがしっかりと思い出してください。わたくしたちを道具のように、性のはけ口として乱暴に卑劣に犯された時の事を。その行為の治療です」



「わ、わかった・・」

 リリフは今度は枕で顔を覆う事はなく、しっかりと天井をみて身構えている。

 その瞳には憎しみと悲しみが同居したような、なんともいえない輝きを放っていた。



 ぐっとミールはゴムの棒を差し込む。




「い、痛い・・・う・・・ぐぅ・・・」




 今回は全くえび反りになる事もなく、むしろ拒絶しそうな力を必死に抑えているって感じで、歯を食いしばって耐えている。



 ミールはいつも以上に念入りに薬を塗りつける。



 治療が終わった頃には苦痛に耐え抜いたって感じで、汗をびっしょりとかいて息を切らしていた。



「はあ・・・はあっ・・・はあっ・・・」

「お嬢様っ。頑張りましたねっ」

「リリフ様・・・偉い・・・」



 2人はリリフの手を握りながらリリフをねぎらう。

 リリフは治療に耐えた達成感にも似た、満足した笑みを浮かべる。



「さてっと・・・もう夜も遅いし寝るとしますかね。なんか今回は上手くいきそうな気がする。明日が楽しみだなっ」

「ダメですよっ。ミール様。そんな事言ったらお嬢様のプレッシャーになってしまいます。もっと気楽に、ドーンと構えて」

「・・・セリーお母さん・・・」

「ルクリアっ・・・今なんと?・・・」

「・・・ひゃっ・・・ご、ごめんなさい・・・」

「あははっ。みんなありがと。気負わずに前向きに頑張ってみる」

「はいっお嬢様っ」

「・・・ミールさんとの楽しい夢でも見るといい・・・」



「ちょっ!な、何の事だか全く分からないわっ!ホント分からないっ!え、え~と。あ、そだっ!寝る前にトイレ行ってこよっとっ」

 逃げるようにトイレに駆け込むリリフ。



「ふふふっ。照れちゃって」

「リリフ様はセリーと違って純粋だから・・・」

「はあ?わたくしほど清らかな心を持ってる乙女は他にいなくってよっ」

「・・・妄想お母さん・・・」

「ルクリアっ!ちょっとそこに座りなさいっ!」

「ひゃっ!・・・ミールさん・・・助けて・・・」



「ははは。ほらほら、2人とも、まずはこれ飲んでからなっ」

 ミールは砕いたガンジスの種を2人に与える。



「相変わらず苦いですわ・・・」

「・・・・げぇ・・・・」

「ははは。異端児の間では良薬口に苦しって言うらしいぜ。・・・それにしてもリリフ遅いな?うん○か?」

「ミール様っ!」

「あ、はい・・・すみません・・・・」



 完全にみんなのお母さんと化したセリーの叱咤を受けながしつつ、皆で笑い合う。

 部屋の雰囲気も、さっきまでとはうって変わって穏やかな空気が満ちていた。



  ギイッ


 

 トイレの扉が開きリリフがゆっくりと出てくる。

 リリフはうつむいたまま

「きた・・・」

「?」

「なにがですか?お嬢様」

「・・・・・」

 うつむいたま沈黙のリリフ。

 しかしバッと顔を上げたリリフは目を輝かせて大声で言う。




「生理が来たあああぁぁ!!!」




 両手を大きく挙げてガッツポーズ、全身で喜びを表現している。



「!!!」

「うそっ?もう?!ホントですか?!お嬢様っ!」

「・・・早すぎる!!信じられないっ!・・・やったっ・・」

 女の子3人は抱き合いながらぴょんぴょんと飛び跳ねて喜んでいる。



「うわああんんん!嬉しいよぉぉおぉ!」

「やりましたわっ!やりましたわっ!」

「・・・リリフ様・・・おめでと・・」

「ありがとお!!みんなありがとぉぉ!!」



 死ぬかも知れないという状況から脱出できた訳なのでしょうがないと言えばしょうがないのだが、正に喜び爆発って感じで叫びまくっている。



 当然・・・



「ちょっとっ!何時だと思ってるんだいっ?!この部屋は居酒屋じゃないんだよっ!」

 ドアの外からグワンバラの大声が飛んでくるのだった。



     続く

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