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3.道造り 下準備

軽快に上空を進むシュトローム。


今にも雨が降りそうな厚い雲が頭上を覆い、標高が高い事もあるせいか、だいぶ肌寒い。


「う~。寒い。何か羽織りが欲しかったですね・・・」


シュンさんの能力で暑さ寒さ対策ができないものでしょうか・・・。



(もしもーし、シュトローム聞こえる?)


(あ、シュンさん、大丈夫です。まずはどの辺から見ていきましょう?)


(えっとね。既存の道の左側に造っていくとなるべく直線でバルガーザまでの道が造れそうだから、とりあえず左側をお願い)


(承知いたしました。少し低く飛んで森の中も見ながら進みますね)


(了解。よろしく。良さそうだったら始めるから教えてね)


(分かりました!では!)


シュトロームはシュンからの指示を受け、蛇行しながら森の中を見回って行く。


森の中には大きなトカゲのような魔物が数匹集まっていたり、草食動物のような獣が点々と存在している。


「やはり竜人はいないですが、魔物がちらほらいますね・・・。簡単に振り分けられれば良いのですが・・・。地道にやるしかないでしょうか」


上空で一人呟き、思ったより大変な役割を受けてしまったと少し後悔するシュトローム。



「はぁ~、思った以上に地道な作業ねぇ。こんなことならハークライツに外出禁止令でも出してもらえば良かったわね」


「そんなことをしても恐らくダメだろうな。街の中の竜人はともかく、外から来る竜人には知らせようがあるまい」


「あ、そっか」


出番が来るまでは手持無沙汰になってしまったローザとユーバーが退屈そうに愚痴をこぼす。


「今の所やることなさそうだし、私もどんな魔物がいるのかその辺で見てこようかなぁ」


「私の記憶だと、爬虫類系の魔物が多かった気がするが、そこまで危険な個体はいなかったな。ローザなら一人でも何とでもなるだろう」


「だって!ねぇ、シュン。良い?」


「うん。でも気を付けてよ。油断大敵って言うからね」


「分かってるって!そこら辺の魔物くらいなら纏めて片付けてくるからさ!」


「うん。頼んだよ」


「まっかせて!もし道作る時になったら通信魔法で教えてね」


「あ、え?」


「ん?どしたの?」


「ローザ今なんて言った?」


「道作る時は教えてねって。ユーバーのツインシュートに当たりたくないもの…」


「いや、纏めて倒すって」


「あぁ、うん。言ったよ?」


「ぷっ。ふっふっふ。そうか。シュン、私もすっかり忘れていたぞ」


「俺もだよ。またシュトロームに申し訳ないことしたな・・・」


「え?何何?」


「ごめんローザ。魔物探索は無しだ」


「えー。・・・どゆこと?」


「これを忘れてたよ」


俺は口を尖らせて自分の顔を指さす。


「え!?いや何急に?ここで?え?ユーバーが見てるんだけど・・・」


何と勘違いしたのか、ローザが顔を真っ赤にして慌てている。


「あのー。・・・なんかごめん。・・・魔笛です」


「え?・・・あーーーっ!うん。うんうん。そうそう。それを使えば良かったんだよねー!私もそう思ってた!何謝ってるの?知ってたよもー!あはは!」



「・・・」



「・・・」



「ゴホン。じゃ二人とももうちょっと待ってね」


俺は気まずい間を埋めるべく速やかに事を進める。


(シュトロームごめん!何も聞かずとりあえず帰ってきて!)


(え?あ、はい。分かりましたー)


「シュトローム呼んだから。来たら戦闘開始だね!用意しといてよ!」


「うむ」


「おっけー」


二人が準備体操を始めて間もなく、シュトロームが凄い勢いで戻って来た。


「シュンさん!何かあったんですか!」


「あ、ごめん。ゆっくりでよかったのに」


「いや、我が主のご命令。即座に従わなければ従者としての面目が立ちません」


こんなんでこの人、魔人族の頂点に立てるのだろうか・・・。


「あぁ・・・そう。ありがとう」


「いえいえ!で、どうしました?」


「えーとね・・・」


俺はシュトロームに申し訳なくて何と言ったら良いかローザとユーバーに視線をやる。


「ごめんね。シュトローム。少しだったけど偵察ご苦労様」


ローザの甘えるような労いの言葉に、シュトロームの頬が緩む。いいぞ。


「はっはっは。シュトロームよ。すまんな。骨折り損のくたびれもうけというやつだ!」


ユーバー・・・。


「?はぁ・・・?」


「ごめんね。魔笛があるの忘れててさ。これで集めて魔物だけ一網打尽ってわけ」


「おお!それは素晴らしい。さすがシュンさん!いやー実を言うと空の上は寒くて寒くて。何か良い方法があればなーと思ってた所だったんですよ!」


ユーバーの口撃をものともせず、シュトロームは心から嬉しそうに喜んだ。


「ドラゴニアやっぱり上空にある大陸だけあって寒いよねー」


「ええ。思わず覚醒しようかと思っちゃいましたよ」


そこまで寒かったか。申し訳なかった。


「よし!それじゃこれからは魔物集めまくるから存分に体を動かして温まって!」


「承知しました!」


「ローザ支援頼むね!」


「おっけー!鼓舞の舞!癒しの舞!」


ローザのバフで再び力が沸き上がる。


「ありがと!」


俺は正面に向き直りながら礼を言うと、目一杯息を吸い込み全力で魔笛を吹き鳴らした。


「ふしゅー!ふしゅー!ふしゅーーー!!!」


人間には笛の音は聞こえないが、思いっきり息を吹いている為、少し間の抜けた風の音だけがふしゅふしゅ吐き出される。


「ふしゅー!ふしゅー!ふしゅーーー!!!」



「ふしゅー!ふしゅー!ふしゅーーー!!!」



「ふっしゅーーーーーーッッッ!!!」





「ね、ねぇ。シュン。ひとまずもう良いんじゃない?」


「そうですよ。シュンさんはいつもやりすぎなんですよ・・・」


確かに二人の言う通りだ。何故かこれを使うと無性に吹きまくりたくなるのだ。


「ふしゅ?(えっ?)ふしゅしゅしゅしゅしゅしゅー?(そんなことないよ?)」


『魔笛で会話すな!』


一糸乱れぬ三人のツッコミを受け、俺は、やむを得ず、吹くのを止めた。



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