つかの間の休息、そして
闘魚で決着を付けた四人は、来たときと同じような大型トラックで運ばれていた。
かおるは返却されたスマホをいじり、銃子とらきめはイチャイチャ……もとい仲良くやっていた。
京太はというと――
「仮想変身解除したら、メチャクチャ身体が筋肉痛なんだが……」
大型トラック後部にある大きな長椅子に座るどころか、そこに寝そべっていた。
ここは配信もされていないので、背徳天騎士の姿から戻っても問題はない。
忘れがちだが、ある程度は仮想変身を解除しておかなければ危険なのだ。
「お前たちも解除しておいた方がいいんじゃないか……。まぁ、俺にみたいに筋肉痛地獄を味わうことになると思うがな!」
「そうですね、解除っと」
かおるは黒髪ロングの女子中学生の見た目に戻った。
特に問題無さそうで、またスマホをポチポチとイジり始めてしまう。
「……かおるは筋肉痛にならないのか?」
「平気ですね~。VTuberスキル【片羽根の天使】で酷使されたのは京太ですし」
「ぐぬぬ……」
何か理不尽に使われたような気分になってしまう。
京太が歯ぎしりをしていると、銃子とらきめも仮想変身解除をしていた。
らきめに関しては以前見た、アバターとは正反対の大人っぽい姿だ。
そして、銃子の本当の姿は――
「……あれ、銃子はどこに行った?」
「目の前におるやん」
「……お前、そんなにロリだったのか」
どう見てもツインテールの女子小学生だった。
服は素っ気ないシャツとショートパンツで、膨らみというものが見られない。
赤いランドセルを背負って通学していそうな姿が脳裏に浮かぶ。
「そういえば、最年少のFPSプロゲーマーだとか言ってたっけ……。たしかに最年少……小学生……」
「あはは、年齢は面倒だからヒミツや」
「何というか銃子とらきめはデコボココンビという感じだな……」
その言葉にらきめが茶々を入れてくる。
「あ、今胸を見て言ったなの? 京太っちのえっち~」
「見てねぇよ! 成人女性が、男子高校生に向かって言ってる方がセクハラだろ……」
「配信外なのでオッケーなの~! 炎上回避!」
たしかに今の銃子は胸が小さく、らきめは胸が大きい。
京太が言ったのはそういうことではなく身長差だ。
「たしか以前、らきめは銃子のためにアバターの姿を調節したとか言ってたからな。アバター時は銃子の方が背が高く、らきめの方が小さい。本来の姿だと逆になるということか」
「どうどう、エモいでしょ~?」
「ウチにはわからんなぁ」
「そんなクールなところも修子かわいい!」
またイチャイチャしだしてしまったが、何か本名のようなものが聞こえてきた。
「俺たちの前で本名を言っていいのかよ……」
「別に二人ならかまへん」
「それならいいが……」
意外と信頼されてしまったようだ。
戦いの中でこういう絆が出来るというのは、京太もMMO時代で何度か経験している。
もしかしたら、渋沢が生きていたら同じように絆が――と少しだけ脳裏によぎってしまう。
「あ、そういえば桃瀬っちはどこなの~?」
らきめがそう聞いてきて気が付いた。
聖丸を追いかけて行った桃瀬のことは知らないのか、と。
「聖丸と一騎打ちでダウンしたっぽいかな。……いや、一騎打ちじゃなくて、サバイブルもその場にいたっぽいが」
「サバイブル……聖丸っち……。もしかして、また悪巧みして手でも組んでたっぽいなの? ありえるぅ~……」
「だから、たぶん桃瀬とサバイブルと聖丸はダウンした地点が近いから、一緒に大型トラックで回収されたんじゃないかな……っと、言ってる側から桃瀬が連絡をしてきた」
京太は久しぶりにスマホを触り、桃瀬からの着信を取った。
「もしもし――」
「京君! 大変!! 聖丸がおかしくなって、実銃を取り出して、レイドボスが……!!」
「お、落ち着け……なにが……」
横でスマホをイジっていたかおるが、青ざめた表情でニュース動画を見せてきた。
そこには――
「隣の地区で不動だった超巨大レイドボスが、こちらへ向かっている……だと……?」