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膠着脱出の起爆剤

 銃子は微動だにせず、スナイパーライフルのスコープを覗き込み続けていた。

 普通なら心臓の鼓動、呼吸、手先の震えなどで照準がズレるのだが、今のFPSを極めたアバター姿なら問題はない。

 まるでコンクリートで固定されたかのように微動だにしない。


「京太っち、かおるっち。アレから動きがないなの~」


 らきめもマークスマンライフルを構えているが、銃口の先は一定のタイミングでズレが生じている。

 これでもFPSアバターとしては平均よりは上だ。

 銃子が異常すぎるのだ。


「向こうさん、何か仕掛けてくると思うてたんやけどなぁ……。ウチの見込み違いやったか……?」

「う~ん……。わたしっちも何かやってくると思ってたなの~……。たとえば、何かを投げて注意を逸らして、いきなり突撃してくるとか……」

「投げ物かぁ。そのくらいやと、ウチらに対してはどうにもならへんやろなぁ」


 グレネード辺りを投げれば視線誘導+爆発の効果が得られるだろう。

 しかし、その程度のものならスルーしても問題ない。

 照準を合わせ続けるのみだ。

 もし、驚異的な投擲力でグレネードが近くに落ちたとしても岩は砕けないし、岩裏まで投げ込まれる距離なら撃ち落とせばいい。

 その場合はらきめがフォローして、岩陰から出てきた京天桃血を狙うだろう。


 厄介なのはスモークグレネードだが、これも煙が見えた瞬間に後方へ大きく下がって別の遮蔽物へ隠れれば問題はない。

 銃弾で小さなスモークグレネードを弾いても良い。

 距離さえ取れば銃子が負けることはないのだ。


「こっちは銃弾も回復アイテムも、まだバックパックにたっぷりとあるんや。持久戦でも問題なし」


 そのときだった。

 京太が岩陰から顔を出したのだ。


(ついにシビレを切らしてヤケクソかいな? 残念や……)


 銃子はトリガーを勢いよく引く……ではなく、銃身へ影響を及ぼさないように絞り込んだ。

 まるで赤子の身体を扱うように、優しく丁寧に。

 自分の鼓動のようにすら思える、銃声と振動が伝わってくる。

 スナイパーライフルの銃口から発射された細長いライフル弾は、内部のライフリングによって回転、安定しながら飛んで行く。

 距離、風向き、重力、空気中の湿度や塵、コリオリ力などをアバターが高速演算して観測手すら必要ない。

 この距離ならミリ単位……いや、ミクロン単位で命中させることすら可能である。

 上位アバターとは、人間の常識を越える存在なのだ。


 しかし、それは京太も同じだった。


「例のスキル――【神一重】って本当だったんやな……我が目を疑うでぇ……」


 京太はスキルによって、音速を軽く超えるライフル弾を回避したのだ。

 銃子からしたら信じられないことだが、噂は聞いていたので想定はしていた。

 すぐに二射目を発射しようとしたのだが、その前に京太が何かをしているのが見えた。


「ビーム刃の出てない光剣で……何を……」


 ただの柄の状態の光剣を振ろうとする動作と、その前に何かバスケットボールサイズの物体をかおるが両手で支えているのが見えた。

 その直後、京太が全力で光剣を振って、まるで極端に短いバットでボールをホームランするかのように何かを飛ばしてきたのだ。


 銃子はそれを撃ち落とすか一瞬だけ迷ったが、この岩陰までは到達しないようだった。

 岩の前に落ちても問題なさそうなので、照準を京太から動かさず、二射目を放とうとしたのだが――


「ん? 隠れた?」


 京太は岩陰へ隠れてしまったのだ。

 何のための行動だったかわからず、銃子は困惑した。

 しかし――京太が投げたものが大型ボム(・・・・)だったと気付いたときには遅かった。


「なっ!?」


 閃光、大爆発。

 それは遮蔽物としていた岩石すら破壊する一撃だった。

 その衝撃は銃子と、らきめすら吹き飛ばす。

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『星渡りの傭兵は闘争を求める』
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