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主役は遅れてやって来た

 ――出場者紹介PVが流れる直前まで話は戻る。

 京太たちは妊婦を護衛して、モンスターがいる最短コースを突っ切って病院に無事到着した。


「ありがとうございます……この子の命の恩人です」

「俺たちは当然のことをしたまでだ。ここからはそっちの〝戦い〟だ。頑張ってくれ」


 妊婦からの感謝の言葉に、京太はエールで返答する。

 妊婦は医者に誘導されてストレッチャーで奥へ運ばれていく。

 京太は優しい笑みで手を振って、病院から外へ出たあとに溜め息を吐いてしまう。


「さて、どうするか……」


 もう大会へは明らかに間に合わない。

 アバターの全力疾走でも怪しいし、身体能力がそこまで高くないかおるがいるのだから絶望的だ。

 そんな中、かおるがスマホを見せてきた。


「京太、三人寄れば文殊の知恵ですよ」

「いや、ここの三人で考えても無理だっただろ――って、これはかおるのメンバー限定コミュニティか?」


 メンバーとは、Yotubeの機能の一つである。

 月額を払えば、そのチャンネルの有料会員になれるというものだ。

 天羽かおるチャンネルの場合は、月額五百円で甘々ASMR限定動画が見られたり、メンバー限定コミュニティに書き込めたりする。

 ちなみに八王子兄妹もメンバー会員だ。


「三人でダメなら、もっと集めれば良いんですよ! メンバーのご主人様たちに現在の地点から、会場までの最短ルートを募集してみました!」


 スマホの画面にはかなり盛り上がったコミュニティのログが映っていた。


●天羽かおる ご主人様たちの知恵をお貸し頂きたいです! 今から貼るマップの最短移動ルートを考えてください! https――


● うお、通知がきたと思ったら何だこれ

● この病院から大会会場までの最短ルートか……?

● こういうの無理。詳しい奴任せた!

● ただ道なりに行くのが普通の最短ルートだけど、それじゃダメなんだろうなぁ

● 一直線でビルとかをぶち抜いていく! ストレートでぶっ飛ばす!

● 普通に民家とかコンビニとかあるし無理だろw

● 一直線という感じだと、ジャンプして飛び越えていくとか?

● 京太とピンキーちゃんはできそうだけど、かおるちゃんの貧弱さじゃきつそう

● かおるちゃん足手まとい可愛い

● やめろ、かおるちゃんが曇ってしまう(いいぞもっとやれ)

● かおるちゃんを京太が抱えて移動すれば時間短縮できるか……?

● それ採用だな

● といっても、一直線で何とかしても移動速度的にそこまで到着時間変わらなくないか?

● うーん、速度が出るタクシーだとモンスターがいる地域がダメだしな

● なかなかに難しいぞ

● 劇的に時間を縮めるのは不可能だろ

● これってRTAみたいだな……

● RTAと聞いて走者の俺参上! 倫理観無視で考えると近くの空港まで一直線で移動してハイジャックだ!! チケットもすでに買えないし、交渉してる時間もないからな!!

● アホかw

● クレイジーすぎる奴が現れて草

● いや、でも飛行機という線は良いかもしれない。ハイジャックしなくても、アバターなら飛行機にへばりついていける

● 丁度、調べてみたら会場の上空を通る飛行機が出るな

● おいおい、まさか……

● 上空でパラシュート無しスカイダイビングすればいいってことじゃんw

● コンプラ無視すぎて草

● まぁ、アバター関連はまだ法整備されてないから捕まるかどうかはわからないけどな

● 企業案件はなくなるwww




「という感じです! さぁ、京太! 私をおぶって空港へ!」

「マジか……」




 ***




「どうして私をおぶってくれなかったんですか!?」

「あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”」


 それはリスナーへの配慮である。

 かおるとしてはアバターの身体が触れる程度ならそんなに気にしないが、京太はリスナー側なので一定数のユニコーンと呼ばれると呼ばれる層に配慮しているのだ。

 それにピンキーのアバターも力が強いので、かおるをおぶって走ることが普通にできた。

 ――そんなことより、今は二度目のスカイダイビング中である。


「私の体重が重そうだからとか、そういうアレですか!? 京太は最低ですね!!」

「いや~……天羽さん。京君は高いところそんなに得意じゃないし、今は喋ることができないんじゃないかなぁ~……」

「パラシュート無しでスカイダイビングとか普通怖いだろおおおおお!?」


 京太が顔を風圧でブルドックのようにしながら猛抗議するも、かおるはどこ吹く風の涼しい顔だ。


「このくらいの高度ならアバターなら平気だと検証されていますし、そんなリアクション芸をサービスしなくてもいいのでは……?」

「あたしもあんまり怖くないかなぁ……」

「俺だけが普通なのか!? って、ヤバい!! もう会場に降り……うわああああ会場真上過ぎて突っ込むぞこれ!?」

「高い機材の上に落ちないように祈りましょうか」

「だからなんでそんな落ち着いて……あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”」




 ***




 ――こうして、京太たち三人は会場にギリギリで到着したのであった。

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『星渡りの傭兵は闘争を求める』
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