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授業参観

僕達は朝食を食べ終え、授業で使う資料を取りに行ったキリクを僕の部屋で待っている。

どうやら最初父様は大人数で見られたら緊張して集中できないんじゃないかと思ったらしい。でも大人数って言っても父様、母様、イクル兄様、カーズ兄様、シーマスの5人だけだ。日本での授業参観に比べれば見てるのは身内だけで緊張なんてしないけどなぁ。


そんなことを考えてたらキリクが戻ってきた。


「では、ルーク様今から算術の授業を始めます。」


「はーい!」


「まず、最初に前回までの復習から始めましょう。」


そう言って僕の机に問題が書いているであろう紙が裏返して置かれた。


「皆様、こちらの問題は前回の授業が終わった後、私が作ったもので、さっきまで私の部屋にありました。ですから、ルーク様は内容を知りません。」


「うむ、分かった。」


キリクがそう言ったら父様が代表して返事をした。

率直に言わなかったけど、キリクは僕が不正はしていないよって言ってくれた。この世界の算術のレベルって小学校レベルだから高校生だった僕はきちんとできる。けど、この世界の人達には中等学園、高等学園レベルの授業だから…疑われちゃうかもしれないもんね。


「ルーク様、準備はいいですか?」


「うん!」


「では、始めてください。」


僕は裏返された紙を表に戻して問題を見る。

…うん!めっちゃ簡単!桁の大きな(万単位)足し算、引き算に百単位のかけ算、割り算。かけ算と割り算は間違いがないように筆算で確認する。

最後にもう一度確認して…


「はい!出来たよ!」


「「「「え?」」」」


「では、答え合わせをしますので少々お待ち下さい。」


「はぁい」


うーん…それにしても…確認まで終わらせて5分経つか経たないかってところかぁ…なんか物足りないなぁ…


「ル、ルーク 一つ聞いてもいいか?」


「はい?どうかしましたか?」


どうしたんだろう?


「今、どのように計算したんだ?」


…?何を言ってるんだろう?


「普通に計算しただけですよ?」 


え?僕何か変なことしたかな?


「ルーク、ルークはいつもああやって計算してるのかい?」


「え?それ以外にどうやって計算するんですか?」


イクル兄様が驚いたように言うけど…この世界では別の計算方法があるのかな?


「そ、そうか…ルークにとってはこれが当たり前なのか…」


「流石ルークちゃんだわ!新しい計算方法を見つけるなんて!」


「俺には、もとから何がなんだか分かんねぇよ…」


カーズ兄様は相変わらずとして……母様?今、親バカ炸裂させながら何て言いました…?




それから詳しく聞いたところ、この世界には筆算がないらしい。全部暗算で間違いがないように5人以上の人が一緒に計算するんだって。どうやらそういう職業もあるらしい。


「ルーク少しいいか?」


「はい、大丈夫ですよ!」


昼食も食べ、午後の授業も終わらせ自室でまったりしてたところ、父様が訪ねてきたので部屋に招き入れる。


「ルーク、今日話してくれた筆算と言う計算方法だが、公の場に出してもいいだろうか?この計算方法は法則さえ覚えたら、誰でも簡単に計算でき、とても便利だ。多くの人の助けになるだろう。」


ふふっ 父様はわざわざそんなことを聞きに来てくれたんだ。僕の答えはもちろんイエスだ!僕としては筆算がなかったことに驚いたしね!


「もちろん、いいですよ!他の人のためになることでしたらいくらでも!」 


「そうか、分かったよ。ありがとう、ルーク」


「はい!」


そう言い父様に頭をナデナデしてもらう。父様の手はとっても大きいよ!


「ルーク、一つ聞いてもいいか?」


「はい!なんですか?」


父様がしゃがみこみ、僕の目線に合わせて優しく問いかける。


「お前は、この計算方法をどうやって見つけたんだ?答えたくないなら答えなくても大丈夫だからな。」


この質問、されると思ってた。でも…なんでだろう?今はまだ言っちゃダメって僕の勘が告げている。だから、僕はこの質問に…


「分かりません。どうしてかは分かりませんがこうやって計算するんだって思いました。」


そうウソをついた。


「そうか…」


「ごめんなさい…」


僕はウソをついた罪悪感もあり、何かを考え込んでしまった父様に謝る。


「お前は何も悪くないだろう?謝ることはない。」


「………はい…」


そう言うと、父様は僕を持ち上げ抱っこした。


「…?父様?」


「…ルーク、これだけは言っておく。これから先お前がどうなろうと私達はお前の側にいる。辛かったり苦しかったりしたら遠慮なく、私達に相談してくれ。」


僕はその言葉を聞いた途端、いきなり涙が溢れだしてきた。

……そっか、これが親のぬくもりなんだ。とても、あたたかい。


「ぅあっ  グズッ   ふぇっ」


「ほら、我慢するな」


「う、うぁぁぁん」


僕は頭を撫でられ、ホッとしたのか大泣きした。







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