王都の屋敷にて
僕はマジックバックから畳を出し、並べた後百枚ある取り札を50枚に分けてそれをさらに半分に分けて畳に並べる。
読み上げ機を取り出して準備する。
「ルーク、私本気でいくよ。」
「僕も本気でいくよ。」
畳の上で正座して礼をする。
「「よろしくお願いします。」」
読み上げ機のスイッチを入れた。
『なにわづに さくやこのはな ふゆごもり いまをはるべと さくやこのはな いまをはるべと さくやこのはな』
序歌と言う試合の最初に必ず流れる詩が流れ身構える。(下の句は二回読まれるよ!)
『しの』
バンッ! ヒュッ! トッ!
「ひぃ!」
速っ!「しのぶれど」の決まり字の「の」がまだ読まれたか読まれてないかのところでとった!?
『しのぶれど いろにいでにけり わがこいは ものやおもうと ひとのとうまで ものやおもうと ひとのとうまで』
「やった!自分の得意札が一番最初なんてラッキー!」
「うん、優依良かったね。」
でも…
「カーズ兄様の頬スレスレでまた壁に刺さってるよ。」
「え?…あっ!ごめんなさい!怪我は無い?大丈夫?」
優依が心配そうに声をかける。
「お、おぅ。大丈夫の、はず、だ。」
「そっかぁ。良かったぁ。」
優依が安心したのかホッとしている。それから刺さった札を回収して畳に戻ってきた。
そういえば、優依はいくつかある得意札の中でも一番「しのぶれど」が得意だけどどうしてだろう?(得意札は人それぞれで詩の意味や自分の名前からとったりするよ!)確か、「しのぶれど」は平兼盛が隠していたはずの恋の感情を隠しきれずに顔に出てしまい、恋をしてるの?と他人に聞かれるところを詠んだって言われてるけど…どうして得意なんだろう?
「なぁ、兄上。」
「なんだい?カーズ」
「どうやったらあのカードがここまで飛んできて壁に刺さるんだ?しかも、速くて何が何だか分からないんですけど…」
「それは本当にそう思うよ。僕がこの前夕食に呼びに行った時もこうやって試合してて、カーズと同じように僕のところにまでカードが飛んできて壁に刺さったからね。」
「…兄上もですか…俺は今までで一番身の危険を感じました。」
「うん、僕もそれに関しては同意するよ。」
……兄様達が何か話してるけど、かるたに集中してて僕と優依は気付かない。
優依が取ったのは僕の陣の札だったため優依の陣から僕に札が送られた。
そうやって一試合は僕の負けで終わりを告げた。
「「ありがとうございました。」」
兄様達はなんとなく雰囲気分かったかな?
「兄様、どうでしたか?」
「その競技は見てると危ないってことが分かったなぁ。」
「「え~~!」」
カーズ兄様が競技かるたは危ないだなんて言ってるよ!いや、確かに優依の札が顔スレスレで飛んできたら危ないと思うけど実際に試合したら楽しいんだよ!
「はははっ!僕もさっきの坊主めくり…だったっけ?それがいいね。」
「「え~~!楽しいのに!」」
プーッ!イクル兄様まで!
「そうやって膨れてるルークも可愛いね。」
「あははっ!プニプニだ~!」
イクル兄様が僕の頭を撫でて優依が僕の頬をツンツンしてくる。
そんなことをしてると一人のメイドが部屋に来た。
「皆様、旦那様と奥様がお戻りになりました。」
「分かった。僕達もすぐに行く。」
「畏まりました。」
イクル兄様がすぐに行くと言ったのを聞き、残りのメンバーは片付けを始めた。
片付けが終わり、父様と母様のところに向かう。
「「父上、母上、おかえりなさい。」」
「父様~!母様~!おかえりなさい!」
「ヴィントさん!マリアさん!待ってましたよ~!」
兄様達が挨拶した後僕も挨拶して並んで座っていた父様と母様に飛び付く。それを見ながら優依が軽~い感じで挨拶する。
「あぁ、皆ただいま。ルーク?どうかしたか?」
「ふふっルークちゃんが自分から来てくれるなんて嬉しいわ~」
「父様!母様!聞いてください!実はさっき………」
僕はさっきあった事を父様と母様に説明した。
「ハッハッハッ!そうだったのか!イクルとカーズの言いたいことも分かるが、ルーク達が楽しかったらそれでいいさ!」
「それで拗ねてたのね~ルークちゃん可愛いわ!」
コンッコンッ
「入れ」
皆で話してたらドアがノックされたので、父様が部屋に入れる。
「失礼します。皆様、夕食の準備が出来ました。」
「分かった。すぐに行く。」
もうそんな時間なんだ。全然気付かなかったよ。
僕達は皆で食堂に向かった。食事が運ばれ食べていると父様が思い出したように話し出した。
「そう言えば、いま思い出した。ルーク、今日陛下に連絡したらすぐに返事が来てな。明日の会議の後陛下に謁見することになった。」
「え!明日ですか!?僕は全然大丈夫ですけど…どうしてそんなに大事なことを今まで忘れてたんですか!?」
「いや、ついな…」
ついって…
「ふぅ、分かりました。準備しときます。」
「あぁ、そうしてくれ。それと『子供達を連れて行く』と伝えておいたからイクルとカーズ、ユイも一緒に行こう。」
「「分かりました。」」
「はい!ちょっと質問です!」
父様の言葉に兄様達が返事をし、優依が手を上げた。
「どうした?ユイ」
「『子供を連れて行く』の中にどうして私も入ってるの?」
「ん?ユイも行くだろう?」
父様が当然のように答える。
「うん。確かに私もどうにかしてついて行こうって思ってたけど『子供を連れて行く』の中に私が入ってていいの?」
「ん?あぁ、そういうことか。それなら大丈夫だ。誰も『私の子供』とは言ってないからな。『子供』であれば大丈夫だ。」
「え、えぇ~」
と、いうことで優依も謁見することになった。