久しぶりの日本文化
僕と優依は僕の家族が現実を理解するのにもう少し時間がかかると言われ、夕食の時にステータスをお披露目することになった。って言っても夕食まで五時間くらい時間があるんだけど…なにしよう?とりあえず僕の部屋で優依と遊ぶことになってるけど…
う~ん…
「ねぇ!ゆ…ルーク!百人一首しよ!百人一首!リディア様がくれた物の中にあると思うんだ!」
「えっ!…………ホントだ…」
「ねっ!やろやろ!」
優依に言われてマジックバックの中を確認すると本当に入ってたよ…百人一首…。丁寧に読み上げ機まで…。優依は百人一首で次代のクイーン候補って言われるくらい強くてその練習に付き合わされる僕も級の認定こそ、受けてないもののなかなかの腕だったりする。まぁ優依には負けることがほとんどだけど。
どうやら、読み上げ機は一回、一回ランダムで読み上げられるらしい。
ここで、わからない人のために簡単に説明すると…まず、百枚ある取り札(取り札には下の句だけが書かれているよ)を五十枚ずつに分けて、片方を取り札、もう片方は空札で別に分ける。次に取り札を対戦相手と二十五枚ずつに分けて自陣に並べる。並べ方は人それぞれだよ!そして、対戦が始まったら読者の人(僕達の場合は読み上げ機)ランダムで読み札を読み上げるので読まれた上の句のペアの下の句の札を取るんだ!取った札が敵陣の札なら自陣の札を一枚対戦相手にあげて(送り札っていうよ!)取った札が自陣なら何もしない。そして最終的に自陣の札がなくなったら勝ち。
こんな感じでルールを覚えてさえいれば簡単なんだけど百首全部覚えるのが大変なんだよね…
「ルーク、多分畳もあると思うんだけど…」
「え?………ホントだ、畳もある…」
畳があることに驚いたけど、百人一首がある時点でいまさらか…
畳の上に札を並べ、正座して優依と向かい合う。
「「よろしくお願いします。」」
それから読み上げ機を起動させる。
「「ありがとうございました。」」
…うん!四試合して全敗!やっぱ次期クイーン候補は強いや!
「ふぅ…ルーク!楽しかったね!」
「うん!僕は全敗したけど楽しかったよ!でも、時間余っちゃったね…」
「うん…もう一試合やっとく?時間になったら切り上げる感じで…」
「うん、そうだね…」
ってことでもう一試合することになった。
「「よろしくお願いします。」」
バンッ!
畳を叩く音がする。試合を続けてると僕はたまたま優依が苦手な札が二枚読まれたので二枚連取することができた。
そして、次読まれた札は運悪く優依の得意札で手も足も出なかった。優依が弾いた札は部屋の中心で試合していたにも関わらず部屋のドアの近くに刺さった。けど……
「うわぁ!な、何これ!ここまで飛んできた!?」
「イクル兄様!?いつの間に入って来たんですか!?」
そう、いつの間にか部屋のドア付近にいたイクル兄様の頬スレスレだったのだ。
「イクルさん、ごめんなさい!大丈夫?怪我してない?」
「う、うん。怪我は大丈夫だよ」
「よかった…」
優依はイクル兄様の側に行き、怪我がないか確認して怪我はないと聞きホッとしたみたい。
「イクル兄様、いつの間に部屋に入って来たんですか?」
「それは、夕食の準備が整ったからルーク達を呼びに来たんだよ。けど、ノックしても返事がないし、バンッって音がしたから何事かと思って入ってみたんだ。そしたら何かカードを取り合ってるみたいで話しかけるタイミングがなかったからどうしようかと思ったらカードが飛んできたんだよ。」
「そうだったんですね。心配かけてごめんなさい…」
かるたって凄い集中力使うから兄様が入ってきたことに気付かなかったよ…
あっ!ちなみにフェンリルはずっとお昼寝してたよ!
そんなこんなで、僕達は食堂に向かった。
「父様、母様、カーズ兄様、遅くなってごめんなさい。」
「皆さん、待たせてしまってごめんなさい。」
予定の時間より三十分近く遅れてしまったので、謝罪しながら食堂に入る。もちろんフェンリルも一緒にね!
「あぁ、大丈夫だ。」
「えぇ、大丈夫よ。ルークちゃんもユイちゃんも座ってちょうだい。」
「「はい。ありがとうございます。」」
僕達が席に着くと食事が運ばれてきた。
「「「「「「世界の神々に感謝を」」」」」」
優依もこの世界の常識はリディア様に教えてもらったみたいで皆に合わせている。
「いただきます!」
「あっ…『いただきます』は言い直すんだ…」
優依はこっちでの『いただきます』をしたあとに日本の「いただきます」をやり直したよ…
「エヘヘ♪だってなんか『いただきます』ってやらなきゃ変な感じするんだもん。」
「…分からなくはない、かな。」
そう、実は僕もこっちの『いただきます』に未だに慣れてない。いや、確かに神々には感謝してるんだけどずっと「いただきます」だったから慣れないんだよね…
「ほら、ルークも!」
「…うん。そうだね。せっかく優依とも再会したし久しぶりに日本風にいこっか。」
「そうこなくっちゃ!」
「「いただきます!」」
結局僕達は「いただきます」をやり直して夕食を食べ始めた。