いざ、異世界へ!
僕の名前は高橋 悠真
普通の高校二年生だ。両親は僕が2歳の時に交通事故で亡くなり、祖父母に育てられた。だが、祖父母も大きな地震で僕が14歳の時になくなった。その時僕は中学の修学旅行で地元から離れていたため無事だった。それからは僕の叔母に引き取られたが仕事柄家に帰ってくることは少なく、一人暮らしと変わらない。けど叔母さんも優しいし、誕生日の時は必ず帰ってきてくれる。だから僕は今の生活に不満なんてない。
僕はこの日いつもと変わらず登校していた。すると、
「いやぁぁぁぁっ!離してっ!」
と言う女の子の声がした。女の子の声がした方を見ると女の子の腕を左手で掴んで右手に持ったナイフを色々な方向に振り回している男がいた。他の人も女の子を助けたいが男が持っているナイフのせいで近づくことが出来ない状況だ。どうしたらいいか僕も必死に考えていたその時、、、
「うるせぇ!黙れ!このガキがぁ!」
と、男がナイフを女の子に振りかぶる。
マズイッ!
自分のことなど考えてる暇などなかった。
僕はとっさに男のところまで走り、男の右腕をつかんだ。
「おいっ!放せっ!このガキがぁ!」
男は女の子の腕から手を離し左手で僕に殴りかかってきた。だが、僕はその拳を避けることなど出来ずにそのまま殴られ、地面に体を思いっきり打ち付けた。
「がはっ!」
体を打ち付けた拍子に口の中を切ったのか血の味がする。
グサッ グチュッ
と自分の腹にナイフを入れられた。しかも、ナイフで腹を刺したままナイフを時計回りに回してくる。
「う……ぁ………………ゴホッ……」
目の前に死んだじぃちゃんとばぁちゃんの顔が見える。誕生日にケーキを買って帰ってくる叔母さんの顔も見える。 これが走馬灯ってやつなのかな?僕はここで死ぬんだなぁ。
「おいっ!キミ!大丈夫か!もう少しで救急車が来るからな!もう少しだけ待ってくれ!」
いつの間にか通り魔の男は他の人に取り押さえられていた。女の子も泣いているが大きな怪我があるわけでもなく、大丈夫そうだ。ずっと僕を助けようと声をかけてくれてる優しいおじさんには悪いけどもう、ダメみたいだ…
ここは………?
「ようこそ神の世界へ」
は?神の世界?
「はい、神の世界です。あなたは神々のくじ引きによって選ばれました。」
え?くじ引きで選ばれた?何に?というより心読まれてるの?
「はい。あなたはくじ引きで異世界への転生者に選ばれ、心も読んでいます。」
すると綺麗な白い髪と琥珀色の瞳の綺麗な女性が現れた。
「あー…僕、死んだんですよね?」
「はい。残念ながら」
「えっと…くじ引きで転生者に選ばれたってどういう事ですか?僕には何が何だか分からないんですが…」
「そうですね…あなたに分かりやすく言うのであれば飽きてしまったのです。何百年、何千年、何万年と生きていると代わり映えしない日々に。神々の世界…神界には娯楽もありませんし…とはいえ自分達で創った世界を観るのにも飽きてしまったのです。」
「そうなのですね…」
「はい。ですから神々で今まで前例にないことをしてみようということになったのです。そして、その前例にないことというのが異世界転生です。あなたの世界にあった物語を参考にさせていただきました。これは神々のワガママです。ですからあなたにも拒否権はありますのでどうぞお考え下さい。」
「そうですか…女神様、、」
「すみません。自己紹介を忘れていました。私の名前はリディア。どうぞリディアとお呼びください。」
「分かりました。リディア様、一つ質問をしてもいいですか?」
「はい。なんでしょう」
「どうしてくじ引きで転生者が選ばれたのですか?」
「申し訳ありません。説明を忘れていました。まず転生者は誰でもいいわけではありません。魂の清らかな者でないとそれぞれの世界にとって害になりますから。ですので神々で転生させたい者を推薦することになったのです。最初は話し合いで決める予定だったのですがなかなか決まらずに50年が経ってしまい、堂々巡りだったので推薦された者の中からくじ引きで決めさせていただきました。」
「ちょっと待って下さい!僕は17歳なんですが、50年が経ったんですか?」
「いえ、ただ時間の流れを変えて話し合っていただけです。」
「そ、そうなんですね…」
スゴいなぁ…神ってそんなこともできるのか…
「はい。神でしたら誰でもできますよ。」
「そうなんですね…」
しれっとまた心の声を読まれてるけどまいっか!
「ちなみに、異世界はあなたの世界でいうファンタジー世界なので楽しめるかと。」
「……少し考えます。」
「分かりました。」
そうか…ファンタジー世界か…マニアとしては好奇心がくすぐられるしせっかく神様達が選んでくれたんだ。なら答えは………
「決まったようですね。」
「はい!行きます!異世界に!」
「ありがとうございます。今すぐ準備をしますので少々お待ちください。転生するにあたって容姿やステータスなど希望はありますか?」
「いえ、特にありません。お任せします。」
「了解しました。」
するとリディア様は姿を消し、またすぐに戻ってきた。
「準備ができました。転生を開始します。」
リディア様がそう言うと同時に僕の体が光った。
「あなたは通り魔に襲われた7歳の女の子を庇い、亡くなりました。我々はその魂の清らかさに惹かれました。あなたはこの先どのような選択をし、どのように生きるのか知りたくなってしまったのです。ですがあなたは地球では消えてしまった存在。ですので異世界に転生してください。我々はあなたに試練など与える気はありません。どうぞスローライフを楽しんで下さい。」
「はい!行ってきます!」
「あなたに神々の加護があります様に」