北の大地の少女 ①
私は、冬の暮れの押し迫った羽田空港の送迎デッキにいた
夕暮れが近く、日差しが弱く肌寒さが際立って来ていた
やがて、彼女が乗る飛行機が滑走路の端の離陸コースに入ったのが見えた
思い返せば、私の格好は、彼女からプレゼントされた真っ赤なマフラーが、凄く目立っていたと思う
彼女は同じ大学に通う四年生
来春に卒業を控え卒業後は地元の会社への就職が決まっていた
私は未だ二年生で彼女より二つも歳下だった
ふとしたキッカケで半同棲が始まり
今、彼女は冬休みを利用して郷里の北海道の地方都市へ帰省する所だ
彼女の乗る飛行機が離陸の為に滑走を始めた
意外なぐらい呆気無く、彼女を乗せた飛行機は滑走路をフワリと離陸して飛んで行った
そして、すぐに小さくなって見えなくなった
気がつかなかったが、私は彼女のプレゼントの真っ赤かマフラーを思い切り振っていたらしい
ふと我に返ったら、周りの人々に笑われていた
私は、恥ずかしいと言うより、彼女が本当に居なくなった事を改めて思い知った
既に暗くなった送迎デッキから、帰りの電車へ乗るべく走っていた
そうするべきだと自分に言い聞かせるかのように
田中康夫の短編を意識して書いてみた
あちらは、彼が北海道へ単身赴任して
羽田空港で見送る彼女視点での物語である
学生の頃の体験を混ぜて、思い出しながら書いてみます
(;^ω^)