夏祭りイベント開催中。武器強化おふだ毎日ログインボーナスキャンペーン実施中!
広場を見渡して空いているひまわりの花壇前のベンチに腰掛ける。
今日で夏の飾りも見納めかと思うと少しの寂しを覚えた。
イベント終了の花火が打ち上がるまで大分時間はあるが、その前に知り合いと次回イベントの情報交換兼場所取り。
微糖の缶コーヒーをチビチビ飲みながらチェス盤を出してひとりで暇つぶしをする。
一人二役で駒を動かしていると大きな獣……パンダの腕が伸びて来て私から遠い方のビショップの駒を動かした。そのまま続ける。
「前回の七夕イベントの星座装備シリーズじゃん。いつの間に揃えてたんだよ?」
「強化に時間がかかったの。魔法職はやっぱりコチラの方がいいのよね」
防御力は劣るけど、魔法詠唱短縮に補正が効いて詠唱中長い袖がはためくエフォクトが気に入っている。
「それにしても次回がなぁ。ネタに走ったな運営」
「このランドセルって何なの?」
「あぁ、そっか。君は海外組だったな」
次の体育祭イベントで馬鹿みたいに耐久値の高い四角いリュックがネタ装備だと話題になっていたけれど、パンダの説明でやっと謎が解けた。日本の小学生が使うのね。
運営からのイベントお知らせ情報を眺めながら駒を動かす。
「パンダはこのマイホームに飾れる文房具セットが欲しいんだっけ?」
「そうそう。えんぴつ、消しゴム、ノートなんて職場じゃもう使わないからな。桃太郎の絵本と量子力学の書ネコ付きとか欲しい」
この品々を昔はパンダも使っていたと言うけど、話ぶりから大分歳上なんだろうなぁと思った。
アンティーク品が充実しているからこのフルダイブ型VRMMOをはじめたと言っていたし。道具入れ拡張に屋根裏部屋でも作るかって言ってたから、相当収集してるな。
「そうだ。ポーカーフェイス拾ったんだけどいるか? 俺は顔周りあんま動かないから使っても意味なくてな」
確認したら夏祭りイベント品。アバターの無表情固定化とか聞いたコトないけど、狐のお面に紛れてとんでもないモノが出て来た。非売品なので、おふだ100枚と交換する。
「チェックメイトよ」
「あー……負けた」
そんな中、花火が打ち上がった。これからイベントの最終結果発表。
大画面に個別のランキングが下から順に発表され、私の名前が表示されてため息をつく。
1位 ☆PA☆N☆DA☆
2位 賢者
天才ゲーマーと呼ばれている私だけどこのザマですよ。
人型アバターに紛れて突如現れた激レア種族パンダのおかげで、私は今日も退屈しない。次こそ負けるもんか!