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第43話 怪獣殺しの新たな苦難

 体育の時に五十嵐君が帰ってこないのでどうしたと思っていたら、どうも早退をしてしまったらしい。

 まさか五十嵐君が早退するなんてと、クラスが少しざわついたものだ。


 それで授業終了後。

 雨宮さんが明日に行う調査の件で、いち早く本部に向かうべく先に帰ってしまった。


 僕も昇降口で靴を変えていた時、後ろからこっそり森塚さんが寄ってくる。


「大都君、この先の道で合流しようね」


「えっ、うん」


 僕が返事した時には、もう既に彼女は行ってしまった。


 どうも僕と森塚さん、帰り道が途中まで一緒だったらしい。

 前にチンピラに襲われた時、それを知ったのだ。


 校門から出てしばらく歩けば、電柱に寄りかかる森塚さんの姿があった。


「やっぱり来てくれると思ったよ」


「いや、ああ言われたら断れないよ」


「その辺律義だね、大都君って」


 と言ってやんわり微笑む森塚さん。


 今思えば、彼女が笑っている姿を見たのは初めてかもしれない。


 普段はスマホをボケーといじっている姿とか、こっちをガン見している姿とか。

 多分、これが彼女の本来の姿なんだと思う。


「じゃあ、そろそろ行こうか」


「うん。それとさ大都君、1つ頼み事があるんだけどいいかな?」


「頼み?」


 一緒に歩き始めると、森塚さんが申し出をしてきた。

 

 一体何だろう。

 そう思っていると彼女がはみかみながら、


「今日だけでもいいからさ、眼鏡外してくれない?」


「えっ、眼鏡を?」


「そっ、眼鏡……」


 珍妙な頼みだけど、もちろん断る訳にはいかない。

 僕が眼鏡を外すと、やけに目を泳がせる森塚さん。


「や、やっぱさ……大都君眼鏡外した方がいいね。ONとOFFとじゃ全然違う……」


「お世辞を言っても何も出ないよ」


 あくまでこれは雰囲気を暗くする為の道具だし、それに外したところでその奥が良いものとは限らないはずだ。

 

 ……でも前に眼鏡外していたら、池上君にバレなかった時があったな。


 あれと関係あったり……いや、さすがに考えすぎか。

 そんなのないない。


「お世辞じゃないんだけどなぁ……。でもやっぱり、学校の時は付けていた方がいいね」


「そりゃあ付けるよ。僕として普通な生活をしたいんだから」


「確かに眼鏡なしだと女子達が……って、普段キツく当たってる奴らに大都君の素顔見てほしくないな。だからずっとそうして」


「う、うん……」


 森塚さんは何を考えているのだろう。

 こんな時、同じ女性の未央奈さんがいればな……。


「それよりもさ、いよいよ明日なんだね。群馬に行くの」


「そうだね。親御さんにはどう伝えてる?」


「そこら辺は神木さんがなんとかしてくれたよ。特生対のアルバイトをやっているとかって」

 

 ちなみに明日は祝日。


 森塚さんには、お爺さんの事を伏せつつ「伝承に関する調査」と伝えてある。

 さすがに最高機密レベルは言えないけど、森塚さんも深く入り込まないので大いに助かる。


「じゃあ、大都君の為にデザート用意しなきゃね。フルーツ入りのゼリーとか、アップルパイとか」


「いやいや、そこまで手の込んだ事をしなくても……」


「そりゃあするよ。神木さんからとびきり美味しいのを提供してって言われたし……それに……」


「それに?」


「……ごめん何でもない。とにかくあたしのデザートで大都君が元気出して、それで怪獣を倒してくれるなら嬉しいよ」


 まるで花が開くような森塚さんの笑顔。


 僕としたら、彼女に対してドキリとしてしまった。

 森塚さんはクラス内で相当の美人だから、笑顔を浮かべたらそりゃあそうなるけどさ……。


「ていうか、大都君が裏で怪獣を倒しているって事にまだ実感できないなぁ。五十嵐の奴が聞いたら腰抜かしそう」


「そういや彼、珍しく早退したよね。どうしたんだろう?」


「雨宮さんの件だよね。きっとプライド折れたんじゃない? まぁどうでもいいけど」


 森塚さんといい雨宮さんといい、五十嵐君の扱いが雑すぎじゃないかな?


「とにかく明日、楽しみだね」


「……まぁ」


 正直、今でもお爺さんの言っていた『モノ』が何なのか未だ疑問だ。


 もしかしたらそれが怪獣で、突然暴れたりしないかと思っている。

 その時は僕が全力で森塚さんを守らなければ。


 もちろん絵麻も付いて来るので、森塚さんと上手くいってくれることを願いたい。




 そんな事を思いながら翌日。


「兄さん。今日は兄さんが好きな砂糖入り玉子焼き作ったよ? 食べてみて」


「大都君。昨日言ったフルーツ入りゼリー、よかったら食べて」


「ゼリーは後でいいんじゃないですかね? デザートってそういうもんでしょう?」


「一口くらい、いいんじゃないかな? 別に今食べちゃ駄目って決まった訳じゃないし」


「……兄さん!」


「……大都君!」


 ……僕は両者に挟まれながら料理を勧められていた。

 どういう事なんだ……。

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