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第13話 特生対防衛班 視点

 大鬼山の麓。

 そこでは防衛班が、ヒナの死骸の回収作業に当たっていた。


 まずヒナをフォークリフトで運んでから、冷凍庫機能付きのトラックへとつぎ込む。

 数十体にわたるヒナは科学班に回され、貴重な生体サンプルとして研究されるのだ。


 その様子を見ていた防衛班隊長が深くため息を吐く。


「群れを倒すのに15人が重傷を負った……中々の激戦だったな」


 何とかヒナを全滅させたものの、かなりの痛手を負ってしまった。


 ヒナとは言うが、もう既に人を丸呑みできるくらいの大きさを誇っている。

 それだけに飽き足らず、産まれて間もないのに飛行能力を持っており、そして親に似てかなりの凶暴。


 現に30人にいた防衛班が15人ほど重傷を負い、今なお担架で運ばれている。


 小型怪獣の群れとの戦いは、通常怪獣にも劣らない激戦だった。 

 油断していたら、間違いなく全滅は免れなかったに違いない。


「隊長」


「ん、どうした?」


「いえ、いつ見てもあれが信じられなくて……」


 近くにいた隊員が大鬼山に指差していた。

 その山肌には、既に息絶えたケツァルコアトルが転がっている。


 今は駆け付けた解体業者によって解体作業に入りつつあった。


 身体には死因と思われる大きな穴が開けられているのだが、それ以外は詳細不明だ。

 理由は単純。誰が仕留めたのかハッキリ確認していないからだ。


「上層部が言っていた増援ってのがやったみたいなんですけど、絶対ソイツら化け物ですね……」


「同じ防衛班に対して、化け物って言い方はどうかと思うぞ」


「でも事実じゃないですか。俺達がヒナの大群に苦戦している間に瞬殺したみたいですし……しかもソイツら、挨拶もなしに撤退したってのが腑に落ちないというか」


「うむ……せめて挨拶だけはしたかったのだがなぁ」


 作戦に入る前、ケツァルコアトルに対しての増援が来る事を隊長達は知らされていた。

 隊長はこれに少なからず不満を抱いていたが、かといって上の命令に逆らう訳にもいかなかった。


 結果として、彼らですら仕留められなかったケツァルコアトルを掃討したというのだから、驚きを隠せない。

 しかも誰にも見られないまま瞬殺したという事は、かなりスムーズに行っていったのが容易に知れる。


 隊長は内心、動揺を隠しきれずにいた。

 今でも現実に起こった事なのかと半信半疑だ。


「我々でさえ倒せなかったケツァルコアトルを一瞬にして……きっと優秀なまでに強い連中だったんだろうなぁ」


 嫉妬心はなくはなかったが、同時に敬意に似た感情が芽生えた。

 ケツァルコアトルを倒してそのまま撤退した事には解せなかったが、もし会う事があれば礼を言いたい……そう隊長は思っていた。



 

 なお隊長も隊員も、強大な大怪獣を倒したのが年端も行かない高校生だという事を全く考えもしていなかった。

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