第1話 怪獣殺しと呼ばれる少年
「始まったみたいだね」
ビルの間から炸裂音と閃光が飛び交った。
僕は今誰もいない道路の上に立ち、その炸裂音の音源を眺めていた。
夜なのでよく見えやすいし、さらに咆哮が聞こえてきた。
――オオオオオオオンン!!!
どの動物にも該当しない、強烈でおぞましい鳴き声。
きっと今頃、あちら側も頑張っているだろうなぁ……とか呑気に思っていた時、ポケットのスマホがブルブル震え出した。
「はい」
『一樹君。たったいま「特生対」が怪獣の陽動を行っているわ。あと2分後にそちらに向かうはず』
「分かりました。周囲の避難は完了しているんですよね?」
『もちろん。今は我々が厳重に封鎖している。ユーツーバーだろうがマスコミだろうが決して入れないわね』
「そうじゃないと、僕も特生対も困りますからね」
などと言いながら苦笑してしまう。
何せこんなの世間に晒す事なんて出来ないしな……。
晒したとしても素直に信じる人がどれだけいるのか。
『そろそろ時間よ。健闘を祈るわ、一樹君』
「ええ。いつもありがとうございます、未央奈さん」
スマホを切った後、ドンドンと足音のようなものが聞こえてきた。
段々とこちらに近付いてくる。
未央奈さんの報告が正しければ、あと1分ほどでターゲットが来るはず。
奴が来るだろう前方を見据えると、あるビルの一部が爆発するように倒壊した。
――グオオオオオオオオン!!
瓦礫や粉塵の中から、ぬうっと巨大な影が出現する。
あれが今回のターゲットのようだ。
正体は『怪獣』。
大方、四足歩行のトカゲか恐竜のスタイル。
背中にはスピノサウルスのような背ビレを生やしていて、全身には血のような紅い鱗を纏っている。
自動車を踏み潰せるほどの巨体も特徴的だ。
先ほどまで攻撃を受けていたはずだが、鱗には傷1つ見当たらない。
精々、所々焦げていて煙を出しているくらいだ。
「コードネーム『サラマンダー』……火器を跳ね返すほどの鱗持ち……」
さっきもらった資料を復習するように呟いた。
いかにして攻撃を跳ね返しているのか定かではないが、いずれにしてもあちら側でも倒せないとなるとかなり強大な部類になる。
そのサラマンダーと名付けられた怪獣が、敵意を露わにした瞳で僕を睨んだ。
さっきまで攻撃されて気が立っているせいか、何の躊躇もなく肉薄する。
――ガアアアアアア!!
喉辺りが熱した鉄のように光った直後、口から膨大な炎が放出された。
なるほど、それがコードネームの由来か。
そう思った時には、炎が僕を容赦なく包み込んでいった。
――ガア……?
だが次の瞬間には、サラマンダーの首が斬り落とされた。
サラマンダーが何が起こったのか分からない的な表情をしながら、顔と身体を地面へと崩れ落とした。
対し炎に包まれた僕は無傷だ。
赤いエネルギー状の障壁で炎を遮断しつつ、振るった腕から斬撃系のエネルギーを放った。
サラマンダーの首を斬り落としたのも、その攻撃によってだ。
「もしもし未央奈さん。サラマンダーを掃討完了しました。あとは頼みます」
『相変わらず仕事が早くて驚くわ。まぁ、あとの事は私達に任せて』
「はい。じゃあ僕は帰りますので」
僕は懐から取り出した伊達眼鏡をかけた後、倒したサラマンダーを置き去りにした。
服……端っこが焦げてしまったな。新しいの買わないと。
『速報です。本日午前1時をもって、怪獣「サラマンダー」は特生対防衛班の活躍によって撃破されました。ただいま特生対による死体処理作業が行われています』
お読みいただき、ありがとうございます!
特撮・怪獣をテーマにした作品ですが、そこに思い切って主人公チート系要素を加えてみました。
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