二人の勇者と二人の女王そして四人の悪役令嬢おまけに転生者一人の物語
聖剣デュランダル高みに望む
その後・・・物語は続く。
聖剣デュランダルは失意の中にいた。
世界に平和が訪れ、聖剣の生きる意味を失い、愛する人は彼女(聖剣)を選ばなかった。
聖剣デュランダルこと精霊デュラ子は一人、ガイアの洞窟の深い泉に佇む。
そこはかつて自らが封印されし場所だ。
(主)
泉に入ると、服を脱ぎ一糸まとわぬ姿となり、やがて聖剣デュランダルへと変異する。
(また、いつか会おうぞ)
聖剣は水の中を光陰の速さで底へと落ちて行き、水底へ突き刺さった。
(我、しばしの眠りにつく也)
・・・・・・。
・・・・・・。
・・・・・・。
(我・・・長き眠りに・・・つけぬ・・・このままでは眠れぬ)
デュランダルは光輝くと、自らの封印を解き上昇する。
泉の水面が激しく揺らめき、大渦が巻き起こると飛沫をあげ聖剣が早々に復活する。
その間、わずか一時間。
かつての眠りが500年以上・・・だが、聖剣はこの思いをそのまま抑え込むことは出来なかった。
(我は主と共に生きたい・・・しかし、主は自ら炎の大剣をその身に宿しておる。我はそれに嫉妬したのだ。そして逃げた・・・主が愛する者を選んだから・・・違う・・・我は我は聖剣として無力さを・・・このままにしておけぬ・・・我は・・・我は・・・主の帯剣、聖剣デュランダル也)
デュランダルのスピードが増し音速を超える。
洞窟を抜け、夜空へと飛びあがった。
(ならいかようにする?聖剣デュランダルよ)
聖剣は己に問いかける。
(わかっていよう)
デュランダルは煌めく。
(己がさらなる高みに立ち、主に相応しい帯剣になれば良い)
聖剣に迷いはなかった。
(では、どうする?)
自らの問いにデュランダルはさらに輝きを増す。
(世界中の聖剣、業物に戦いを挑み勝利する)
聖剣デュランダルは各世界の陸海空に散らばる聖剣、業物と死闘を繰り広げ勝利する。
しかし、幾多の戦いの果てにより、美しかった聖剣の刀身は所々が欠け、今にも折れそうであった。
(良い、良いぞ)
だが、聖剣の心は躍っていた。
確実に己は強くなっている充足感があった。
剣が思うのは愛する人。
(次は)
天へとのぼる。
成層圏を抜け宇宙へと聖剣は突き進む。
(星々の鉱石を集め、真の聖剣デュランダルへと覚醒す)
揺るぎない聖剣の決意があった。
星々に自ら剣を突き刺し、未知の鉱石をその身に食らう。
何度も何度も星間を飛び回り突き刺す。
そして最後の星。
(これで最後だ)
光の速さで星へ直降下する。
星は聖剣の侵入を許さず、固く弾いた。
(なんの!)
デュランダルは再び急上昇急降下、しかし貫けない。
(諦めるなっ!聖剣デュランダルよ!)
己を奮い立たせ、挑む、挑む。
しかし、星は頑なに拒む。
(おのれっ!)
聖剣デュランダルは最後の力を振り絞り、硬星に挑んだ。
(あ)
真っ二つに刀身が折れた。
(そんな・・・)
「デュラ子っ!」
懐かしい声がした。
(そんな馬鹿な・・・ここは宇宙・・・そうか我は朽ち果てるのだな。最後にいい夢を見せてくれるのだな)
「おい、デュラ子っ!」
女神イシュタルの力を借りて、テレポートした聖剣デュランダルの主、康治がそこにいた。
(主!)
「諦めるなっ!」
康治は炎の大剣を取り出す。
(主!)
「俺の大剣を飲み干せっ!デュラ子っ!」
康治は星に向かって炎の大剣を振り下ろす。
聖剣は自らその炎の大剣に飛び込む。
(我っ!我は・・・)
「負けるなっ!」
康治が励ます。
光と炎が融合する。
(我は聖炎大剣デュランダル也)
炎の周りに煌めきが宿り、星をも一閃した。
宇宙に漂う。
康治とデュラ子。
精霊の姿に戻ったデュラ子は、康治の胸に抱かれて嗚咽していた。
「主、主っ!康治っ!」
「デュラ子・・・ごめんな」
女神の光に導かれ、地上へと戻る2人だった。
「・・・主、帰って来た。帰って来たぞ」
「おかえり」
「聖剣デュランダル高みに望む」おしまい
また逢えた。