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夢屋 胡蝶  作者: 真鶴 黎
第五夜 茜さす日の照る空に風はなく
39/88

#8

 火鉢の炭がパチンと爆ぜる。赤々と燃える火はあの日の炎と茜色の空を思わせる。

 茜は火箸で炭を転がしながら語り終える。


「もう亡くなっているとはわかっているんだけど、二度目の死を与えるわけにはいかなかった」


 茜が死ぬことで二人がまた死んでしまう。それは嫌だと思った茜は生きると決めた。二人の分まで生き延びなければ、二人に申し訳ないと落ち着いた頃に思い至った。


「その後はもう周さんに泣きついてね。小さな子供みたいに」


 わんわんと泣いた。怒りと悲しみと虚しさと様々な思いが綯い交ぜになった気持ちを発散する術が茜にはわからず、近くにいた周の胸に泣きついた。周は何も言わず、茜にされるがままだった。彼の衣がびしょびしょになるぐらい泣いた茜は、熱と泣き疲れたせいで眠ってしまった。


「気づいたら満月医院で、杏介さんに怒られて、他の薬師に怒られて、最後に棗先生の拳骨つきのお説教を受けて」


 茜は当時の面々の顔を思い出しながら苦笑する。

 満月医院の面々にあそこまで怒られたのはあの一度だけ。大トリの棗が一番怖かった。丸い目をつり上げ、逞しい足がタシンタシンとずっと床を踏みつけていた。地響きのようなその音と共に低い声で叱る棗を二度と怒らせないと誓った。


「まあ、それからもあれこれあってね。他の生き残りのことや、犯人のこととか」


 例の少女と幼子も生き残った。彼女たちは山の麓の街の隣に避難していたようだ。周がそれを教えてくれた。幼い二人のことが心配だった茜は棗に無理を承知で一時的にでも構わないから病室で一緒に過ごさせてほしいと頼み込んだ。茜の予想に反して、棗は少女と幼子を快く受け入れ、色々と世話をしてくれた。

 他の数少ない生き残りもそれぞれがそれぞれの生活をしていることが後ほどわかった。現在、生き残った者たちは皆離れ離れになってしまったが、交流は途絶えていない。茜としては、これからも交流が続いていけばいいと思う。

 犯人のことについては、今も許していない。一生許すつもりもなく、むしろ、死してなお、苦しんでほしいと願わずにはいられない。

 犯人の下っ端たちが捕らえられ、それからしばらくして、逃げ回っていた主犯格の妖怪も捕まった。それから後は事が早く進んだ。

 亡くなった妖怪たちは多かった。残された者たちも多くを失い、ある者は後遺症を負い、ある者は消えない傷を残した。

 生き残った者たちに二度と消えない傷を負わせた。襲撃した彼らがしたことは決して許されることではない。そのような声が多く、奉行所もそのように判断した結果、彼らは拷問の末、処刑という処分が決まった。

 処刑の様子を茜は一人で見に行った。少女と幼子を連れて行くには惨い場所だと判断したからだ。茜が行くことも止められたのだが、どうしても、と頼み込んだ。どんな者たちが家族を襲ったのか、憎い相手の顔を見ておきたい、彼らに重い罰が下されるように、とそんな思いで茜は足を運んだ。

 彼らの最期は何とも醜いものだった。謝罪の言葉も、懺悔の言葉もなく、ただただ己のことしか考えていない発言ばかりだった。自分たちは悪くない、生き残るためにしたことだ、と。そのようなことばかり言っていて、茜としては腸が煮えくり返り、自らの手でとどめを刺してしまいたかった。

 それは他の者たちも同じで、彼らを罵倒し、石を投げつけた。処刑されてからも、晒された物言わぬ身体に被害者たちは罵詈雑言を浴びせた。

 これでよかったのか。彼らが処刑されれば気持ちが多少は晴れるのではないかと思っていた茜だが、余計に胸の内に黒い負の感情が澱んだ。今までに経験したのことない怒りや憎悪、虚無感が茜の心を染め上げた。彼らが死んだからと言って、父や兄が帰ってくるわけでもない。以前のような生活ができるわけでもない。

 そんなことを考えていたら、涙が流れ出した。常盤街では怪訝な眼差しを浴びながら、茜は満月医院へ戻った。泣き腫らした目の茜を出迎えた少女と幼子も泣き出し、周や杏介たちに慰められた。


「本当に迷惑をかけたなあ」


 何から何まで迷惑をかけっぱなしだった。その恩を返すために、満月医院で働くと決めたのだ。手配したお礼だけでは足りないと茜は思い、手が欲しいと薬師の募集をかけていた棗に掛け合った。簡単な試験を受けた結果、雇われることとなった。杏介の教育の元、薬師として新たな一歩を踏み出したのだ。

 少女と幼子も自立できるまではと雑用を任せようと棗が雇ってくれた。まだ幼い二人でもできるような雑用を任せ、給金まで出してくれたのだ。

 二人とも成長し、自立した頃、二人は満月医院を出た。それぞれにやりたいことができたらしく、今は二人とも故郷の近くの妖街で暮らしている。時々、常盤街に来ては満月医院に顔を出しにくる。茜が帰省するときには、二人と一緒に食事をする。

 茜自身のこともそうだが、二人のこともよく見てくれた。棗をはじめ、周や杏介には本当に世話になった。感謝してもしきれない、大きな恩がある。


「茜さん……」


 静かに茜の話を聞いていた望は茜の表情を窺う。

 父と兄が亡くなったと話す辺りから、茜は苦しそうに語っていた。後悔や怒り、悲しみ、恨みなど、様々な感情が混ざり合って複雑だと言わんばかりの面持ちだった。今も寂しそうな眼差しで望と視線が合わない。


「辛い記憶ではあるけど、あの頃と比べたらかなり向き合えるようになった」


 茜は夢玉を指先で撫でる。艶々とした夢玉は瑪瑙のようにも見える。


「あの頃繰り返し見た夢……記憶が詰まった夢玉なんだ、これ」


 帰りが遅いと叱られたときの夕方の茜色の空を、何もかもを奪っていった炎を、己の名を。

 生きると決めた茜さす日差しの色。

 それらを連想させる色の夢玉は多くを失って床に伏せていた茜が見ていた夢であり、記憶を収めたものだ。

 茜は夢玉を握る。茜にとって、この夢玉は大切な記憶であり、夢であってほしいと願った記憶でもある。記憶の中に残る父と兄との思い出だ。

 処刑を見届けてから、今までに抱いたことのない感情の発散方法がわからず、精神が不安定になっていた。同郷の妹分たちのこともあり、これからどうしようという不安もあった。

 そんな茜のためにと棗が周の夢治療を受けたらどうかと提案された。寝つきも夢見も悪い茜に、まずは身体の回復を優先させるためにという意図があったそうだ。周からいくつか夢を見せてもらい、悪夢を上書きするような治療法だった。その過程で、茜の眠りの質に関わっていた事件当時の記憶や凱と天との思い出を取り出してもらった。それが、今、茜が肌身離さず持っている茜色の夢玉だ。

 今も時々夢に見る。楽しかった思い出と受け入れたくない悲しい記憶。夢玉を使おうが、使わまいが見る。ただ、夢玉を使うときの方が凱と天との日常を見ることが多い。朝、目覚めると、ほんのりと夢玉が熱を持っているように思う。

 自分たちはここにいる。夢玉が熱を持っているように思うのは茜の勘違いかもしれない。だが、わずかに熱を持っている夢玉の中に二人がいるのだと茜は思いたい。


「こうして、誰かに泣かずに話せるぐらい、強くなったと思いたいな」


 茜は力なく笑う。泣いてばかりで二人に心配をかけ、守られてばかりだった頃に比べれば、自分は精神的に強くなったと胸を張れる。二人はどう思っているのだろうか、と時々夢玉に問いかけたくなる。

 天にはまだ甘いと言われるだろうか。凱にはよく頑張ったと言われるだろうか。そんな二人の声を思い浮かべる。


「ごめんね、暗い話をして」


「いいえ、そんな……。私なんかでよければ、いつでもお話聞きますから」


 ありきたりな言葉しか出てこない。望はもっと気の利いた言葉が出てきたらと思うも、他に思い浮かぶ言葉がない。

 家族を喪う。それも、寿命を迎えたというわけではなく、残酷で目を背けたくなるような状況を茜は見ていた。そして、己の手で家族を葬った。どれだけ心に深い傷を負い、今こうして望に話してくれたのかと思うと安易な慰めの言葉をかけられない。

 では、どう言葉をかければいいのか。それがわからず、茜に申し訳なくなる。周や杏介なら茜の心を少しでも軽くできるような言葉をかけられるだろうにと思う。


「ありがとう、望ちゃん。それと」


 茜はゆっくりと立ち上がると、襖を開ける。


「あちゃー……」


「げっ……」


 部屋の外、廊下に座り込む周が気まずそうに視線を逸らす。その周の膝の上、杏子色の毛並みの狐、杏介も同じように目を逸らす。


「お二人とも、寒いでしょうに。……あ、ちょっと、周さん、直人君まで連れて来たんですか?」


 茜は周と狐姿の杏介の間で丸くなっている直人を見つける。狐の身体とふさふさの尻尾に小さな身体を埋め、うとうととしている。翡翠色の瞳が溶け出してしまいそうだ。


「いやあ、ごめんね、茜ちゃん、望ちゃん。盗み聞きするつもりじゃなかったんだけど……」


「どう考えても聞き耳立ててましたよね? もう、寒いですから中に入ってください。望ちゃん、いいよね?」


「はい」


「あ、ちょっと待って。足が痺れた……」


「周、わりーな」


 杏介は周の膝から飛び上がると、宙で一回転する。くるりと回り、金髪の男性、望が見慣れた人間姿の杏介が現れる。人間姿の杏介は直人を小脇に抱きかかえ、周の手を引き上げる。


「あー、いてて……。直人君、重くなったね」


 立ち上がった周は足の痺れに苦笑する。子供の姿と言え、眠くなり、意識を手放しかけていると力が抜けて重くなる。あまり体勢を変えることができないこともあり、血の巡りが悪くなってしまった。


「そうだな。周、行けるか?」


「うん」


 周は杏介の肩を借りる。そうして三人が部屋に入ると茜は襖を閉める。茜と望の二人きりの部屋に成人男性二人が入ると狭くなる。


「あの、直人君大丈夫ですか?」


 よいしょ、と言って腰を下ろした杏介の隣で直人は壁にもたれかかりながら機嫌が悪そうに眉間に皺を寄せている。


「お眠だな」


 直人ー、と杏介が呼びかけると、さらに眉間に皺を寄せる。口をへの字に曲げ、不機嫌だと訴えている。


「そんな直人君と一緒にどうして聞き耳立てていたのですか?」


 茜は目をキリリとつり上げる。周と杏介は気まずそうに視線を交えると小さく息をつく。


「……ほら、やっぱり心配だなって」


 杏介は吐息交じりに白状する。

 茜が満月医院を抜け出した日のこと。手分けして茜を捜しつつも、医院としても動いていた。いつ帰ってくるのかと皆が気を揉んでいたところ、夜更けに周と茜は戻ってきた。体調を悪化させているだろうという予測の上、すでに看病の準備はできていた。二人が戻ってきてすぐ、棗と杏介、他数名で茜の看病にあたった。茜の身体は凍傷を負っていた。ほぼつきっきりの看病が行われたのだ。


「身体もそうだったけど、精神的にも不安定だったから」


 周は当時の茜の容態を思い返す。

 心の方がずっと曇ったままであった。そのため、食欲はなく、食べても戻してしまうことが多かった。そのせいか、身体の回復がかなり遅れた。肉体的なことは満月医院に、精神的なことは周が面倒を見ることになった。二人は茜のことをよく見ていたからこそ、いつもこの時期になると様子を窺ってしまう。本人は大丈夫と言っても、当時、人目のないところで静かに泣いていたところをよく見かけていたこともあり、その姿がどうしても二人は忘れられないのだ。


「確かに、ご迷惑をおかけしました。ですが、あれからどれだけ経っていると思うんです?」


 あの悲劇から何度新たな年を迎えたか。何度朝日を浴びたか。


「私はもう子供ではありませんよ」


 常盤街で暮らすようになった茜の手を引いてくれたのは周と杏介だ。

 父と兄がそうしてくれたように、二人は茜を導いてくれた。だが、もうその手がなくとも、茜は歩くことができる。


「時々、頼ることもありますが何から何まで手を尽くしてもらうほど幼くありません」


 二人よりも年下ではあるが、子供ではない。兄妹のようだと言われることもあり、茜としても兄のように二人を慕っている。

 しかし、二人は茜の本当の兄ではない。本当の兄は父と一緒に還った。


「寂しいと思うこともあります。あの日の光景を思い出して、苦しくなることもあります。でも、私はもう大丈夫ですから」


 独り立ちしないとなと言われたとおり、茜は茜なりに自分の足で立っている。誰かに導かれるだけでなく、誰かを導くような立場にもなった。満月医院で働くようになった茜を指導してくれた杏介のようにとまではいかなくとも、後輩の直人の教育係を務めている。


「……そっか。茜ちゃん、強くなったね」


 あの雪の日。気持ちのはけ口がわからず、湧き上がる感情を周にぶつけていた彼女は今こうして生きている。死を望んだ茜は楽しそうに笑いながら生きている。


「ならいいけどよ。茜もため込むから、いつでも言えよ」


 自分の周りはそんな奴らばかりだと思いながら、杏介は周の横顔を盗み見る。あの夏祭りの夜のように、周も時々吐き出すことが必要だ。


「もちろん、望もな」


「はい。ありがとうございます」


 望はほっと息をつく。茜の過去をリアルタイムで知っている彼らなりの気遣いと全く知らない望とでは対応が違う。望にできることは限られてしまうと思うが、もしも茜に何かあったら、周や杏介を頼ればいいだろうと思う。いつかは望自身がどうにかできればと願うばかりだ。


「うう……寒い……」


 直人の身体が震える。


「部屋戻ってよかったんだぞ、直人」


「でも、茜姉ちゃんの音が、不安定だったから」


 茜の音がおかしい。そう直人から聞いた周と杏介はこの時期柄からして、茜の過去のことが原因ではないかと思った。


「ああ、それで直人君も一緒に女子会の盗み聞きしてたんですね」


「俺らは休んでいいって言ったんだぞ。でも、直人は気になるって言うし」


「湯たんぽにもなったからね。途中で抜けてもいいよって言ってはいたんだよ」


 直人と狐姿の杏介を膝にのせ、暖をとっていた周だが、あそこまで足が痺れるとは思わなかった。杏介の重さはある程度予想できていたが、直人の身体は思ったよりも重くなっていた。夏は線の細い身体つきだったのが、半年の間に美味い物を食べて肉がついたのだろう。生意気なところもあるが、何かと可愛がられて餌付けされているから、と杏介が言っていた。


「私としては話してもよかったんですけど。それよりも、直人君が風邪ひいたらどうするつもりだったんですか」


 もう、と頬を膨らませる茜に周と杏介は身を縮こまらせる。


「ごめんなさい」


「悪かった」


 幼子のように謝る二人に茜はため息をつく。


「ご心配をおかけしました。直人君もごめんね」


「ううん。あ、そうだ。大福、美味しかった」


 直人は顔を上げて満面の笑みで言う。


「よかった。もう一個食べる?」


「うん、食べる!」


 どうぞ、と茜は大福をひとつ直人に差し出す。眠気が吹き飛んだのか、直人は嬉しそうに受け取ると、早速包みを開け、頬張る。


「直人君、それ、一口で食べるの?」


 望は一瞬で消えた大福に目を丸くする。リスやハムスターのように頬を膨らませて食べる直人はコクリとひとつ頷く。誰も横取りすることもないし、慌てて食べることもないのにと思いながら望はハラハラしながら直人の様子を見守る。


「ところで、茜さん。俺たちの分は?」


 杏介は猫撫で声で尋ねる。


「ありませんよ」


 ぷいとそっぽを向いた茜は箱にふたをする。まだ残りはあるのだが、前科者に渡すわけにはいかないと二人の手の届かない場所によける。


「去年、望ちゃんの分まで食べた悪い方たちですからね」


「それは、本当に申し訳ないと思っていて……」


 周が下手に出るも、茜は知らぬふりだ。


「試験を頑張っている子の分までペロリと平らげるなんて……。言語道断です」


「悪かったって、茜」


「謝る相手は私ではないでしょう!」


 ピシャリと叱りつける茜に杏介は身体を震わせる。隣の周も目をぎゅっと閉じる。


「お二人の分は今年はなしです!」


「そんなあ……」


「周さん、そんな可愛い顔しても駄目です」


 しゅんと見るからに落ち込み、雨に濡れた子犬のような顔をする周に対して、茜は容赦なく言い放つ。


「望、試験終わるのいつだ?」


 最後の頼みだと言わんばかりに杏介に尋ねられた望は頭の中のスケジュール帳を開く。


「月末までありますけど……」


 今期は筆記試験が少なめであった。その分、レポートが多くなってしまったものの、そのレポートの多くは提出するだけの状態となっている。


「よし。終わったら、美味いもん奢ってやる。何でもいいぞ」


「杏介さん、望ちゃんを丸め込もうとする魂胆が丸見えです」


 図星だ。茜に指摘された杏介の三角形の耳がぺたんと折れる。 


「お二人とも、本当に反省してます?」


「してる!」


「してるよ!」


 二人の声が重なる。息ピッタリだな、と思っている望の腕が突かれる。そちらを見れば、杏介から離れた直人がちょいちょいと手招きしている。リスのように口いっぱいに頬張っていた大福を食べ終えたようだ。

 望が首を傾げると、直人は口元に手をあて、再度手招きする。直人の口元には大福の粉がついている。ティッシュを渡そうと思いながら、先に話を聞こうと望が身を屈めると、直人は望の耳に口を寄せる。


「なあ、茜姉ちゃんが、お姉ちゃんしてる」


「あー……言われてみれば?」


 周、杏介、茜では茜が一番年下である。実際、兄がいたということもあってか、茜は兄の後ろをついていく妹のように思われることが多い。昔の話を聞いていてもそうだ。周と杏介がいるときもそんな感じだ。しかし、今は弟を叱りつける姉のような状態に見えなくもない。


「いっつもぽやーってしてるのに」


「茜さん、おっとりしていることの方が多いから」


 むしろ、おっとりしているところ以外見たことがない。天然で、柔らかな雰囲気の茜がこうして年上二人を叱りつけるという絵面がまず珍しいのではないかと思うぐらいだ。昔の茜が怒りをぶちまけて周に掴みかかったというのも想像できないぐらい、今の茜はおっとりとしている。


「変な感じ」


 そう言って直人はそーっと大福の箱に手を伸ばす。


「直人君! もうおしまい! 来年の分なしにするよ!」


 茜にピシャリと言われた直人はすぐさまその手を引っ込めた。

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