待ち合わせ
体育館裏に2人で向き合っている楓と和也。
「俺は亜武和也。君の名前は?」
「伊藤楓です」
「同じ高2だよね? 行事で見たことがある」
「……隣のクラスです」
「そっか。2日前に俺と会ったこと、誰かに話した?」
「話してないよ」
「本当のことを言ってほしい。誰かに話してても怒らないし、嘘つかれるのが一番困るから」
「本当に誰にも話してないよ。誰かに話しでもすれば、私はとんでもない悪い人間だって恨まれることになるかもしれないし」
「……よかった。じゃあ、2日前に俺が駅の階段からダサく転げ落ちたことは俺の名誉のために秘密にしておいてね」
「……うん、秘密にしておくよ」
「さっきのお友達に何か聞かれたら、俺が学校に内緒で、ファーストフード店でバイトしてたのを見られたから秘密にしてほしいと頼まれたとでも言っといて」
「うん、わかったよ」
「バイトは昨日で辞めたということで」
「うん」
「部活やってる?」
「? やってないけど」
「今日、学校終わったら何するの?」
「……家に帰って読書かな」
「じゃあさ、今日の夕方に2人で話せない?」
「え?」
「学校終わったら校門で待ってる。一緒に帰ろう」
「あ……はい」
楓の返事を聴くと和也は校舎に向かって歩いていった。
昼休みに楓は美奈と廊下を歩いていた。
「亜武くん、バイトしてたんだ」
「……らしいね」
「あ、噂をすれば」
友達と校庭でサッカーをする和也が窓から見える。
ドリブルしていた和也が急に立ち止まり、片手で顔を覆う。
駆け寄る和也の友達。
「どうした? めまい?」
「……ああ、悪い」
「大丈夫か? 最近多くない?」
その姿を見ている楓と美奈。
「どうしたんだろ?」
美奈は特に心配してない様子でつぶやく。
「……」
楓は和也を見つめていた。
放課後に帰り支度をすませた楓は校門に向かうと、すでに和也は待っていた。
「ついてきて」
「……うん」




