秘密の想い
朝、歩道を歩いている楓と和也。
「え? 明日、予定あるの?」
「ちょっとね」
「じゃあ、日曜日は?」
「日曜は大丈夫」
「じゃあ、日曜日に遊ぼう!」
「うん!」
私たちは本当に付き合ってるわけじゃないんだし、明日、木村さんと会うことを言う必要なんてないよね。
昼休みの教室で楓は窓際の席で本を読んでいた。
ヒヤッと頬に冷たい感触がした。
「きゃっ!」
振り向くと缶ジュースを持った亜武くん。
「飲む?」
頬に当てられた物の正体は缶ジュースだった。
「もう、いきなりびっくりさせないでよ」
「カップルがよくやることでしょ?」
「よくはやらないと思う」
笑いながら私の後ろの席に座る亜武くん。
亜武くんは私の背中に指で文字を書き始める。
気持ちいい……。
ぽかぽかの太陽の光が背中に当たる中、背中を指でなぞられ、私はびっくりするくらい気持ちよさを感じる。
「……伊藤さん、昼休み何する?」と背中に書かれた文を口にする楓。
「正解」
「亜武くん。背中、向けて」
私も亜武くんの背中に返答を指で書く。
「……これで秘密の会話を続けよう?」と亜武くんは私が背中に書いた文を口にする。
「正解」
「これ、凄く気持ちいいね」と亜武くんは言う。
「やっぱり? 暖かい陽射しが背中に当たってるから、より一層気持ちいいんだと思う」
「じゃあ、秘密の会話なんだから、今から書くことは言わないようにしよう」
「うん」
「次は俺が書くね」
亜武くんが背中に指で文字を書いている間に私は思う。
こんなに気持ちいいのは、たぶん……好きな人に指で背中をなぞられてるからだ。ずっとこんな幸せな時間が続けばいいのに。
私たちは昼休みの間、互いの背中に指で文字を書き、秘密の会話を楽しんだ。




