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余命わずかの偽彼氏  作者: AuThor
14/26

デート

翌日、テーマパークの中を歩いている楓と和也。


「平日だから人もそこまで多くないね」


「私、ずる休みして遊ぶなんて初めて」


「いい先生になるには、なんでも経験しておかなきゃ」


「もうっ……」


「さあ、行こう!」

楓の手を握る和也。


「ちょっ、ちょちょちょ。なんで手を繋ぐの?」


「恋人のふりの練習。伊藤さんの演技、ぎこちないんだもん。もっと恋人らしく振舞ってもらわないと」


「男性経験0の私に無茶言わないで」


「ははっ、俺だって女性経験0だよ」


「っ……」


テーマパークの喫茶店の席に座る楓と和也。


アイスがのったスプーンを楓の口の前にもってくる和也。


「ほら、アーンして」


「恥ずかしいよっ」


「恋人っぽくなるための練習だよ」


私は仕方なく口を開ける。たぶん私の顔は真っ赤だ。

やがてアイスの味が口の中に広がる。


「美味しい?」


「……美味しいよ」


「じゃあ、次は俺の番ね。食べさせて」


私は亜武くんがしたようにアイスを亜武くんに食べさせる。


「あはっ」

楓は笑う。


「何? 何?」


「いや、なんかおかしくって」


「楽しい?」


「うん、楽しいよ」


「俺も楽しい」


くすくすと笑い合う楓と和也。


「次はジェットコースターに乗ろう」


「うん」


テーマパークの中の道でクレープを持って一緒に歩く楓と和也。


「伊藤さん、このクレープおいしいよ。食べる?」


「え?」


間接キスになるんじゃ……。


「ほら」

和也は楓の口にクレープの先端をくっつける。


「ちょっと! 口まだ開けてないでしょ!」


「あはは、クリームのひげができてるよ」


「もうっ!」

楓も持っていたクレープを和也の口にくっつける。


「うわっ」


「仕返し。クリームのひげができてるよ」


「あはははっ」

笑う和也。


「ふふふっ」

笑う楓。


楽しいな……。

楓と和也は笑顔で笑い合いながら、そう思う。


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