第8話 服
私を起こしたのはやはりメイドさんだった。
そろそろ昼になるらしい。久しぶりに寝すぎたが、彼の服を貰えたので
仕入れの事はちょっと置いておこう。
かなり遅い朝ごはんを食べながらメイドさんを口説く。
この子可愛いし出来れば定期的に会いたいけど、最悪でももう一回は合う口実を
作っておかないと!って発想がジゴロのそれで嫌だけど。
どうやら隔日でこの部屋の専属メイドをする担当なんだとか。
そもそもこの部屋高すぎて普段は結構空いている事も多いんだって。
今夜、お酒を飲んでも彼に会えなかったら明後日また来てみよう。
可愛いから歓迎よなんて言われたらハマっちゃうからヤメテ…
高級宿をチェックアウト時間ぎりぎりに出て早速市場チェック。
正直、昨日別れた師匠の所へ今日行くのもどうかと思うし、市場でこの手の服を
私の力で扱っていけるならそうしたい。
……はい。無理ですー。こんなん扱えるほどの規模でやったら人手も時間も足りませんーー。
1枚2枚を売るなら大丈夫だけど、今後これを大量販売しようとしたら絶対的に何もかも足りない。
まぁ師匠には手に負えない様な物を仕入れたら仲介してやると昨日別れる時に言われていた。
実際には兄弟子が言うにはこれが本当の卒業試験らしく、卒業した弟子が手に負えないと
判断したものが何かを見る事で弟子の成長度合を確かめているみたい。
うーん。気が向かないけど…とのんびり歩いてみたもののすぐにで師匠の店に着く。
着いてしまった。
流石に1日で戻ってくるとは思っていなかったようで師匠にあきれ顔をされながら
「手に負えないもの」の話をする。
出所は聞かない事を条件に大量仕入れが可能だとして、その最初の1枚を高く買ってくれるならと
条件を出したらやる気なさそうに聞いていた師匠がノッてきた。
「おめぇがそこまで惚れた商品ならいいだろう。俺が買ってやる。だが、一体何を手に入れたんだ?」
えーと、そこまでやる気になられると少し困る。
「服です。上質な服です。」
師匠が目に見えて落胆した。
しかもいくら上質とは言え、服だ。手に負えないはずがない。
庶民が着る服というのは大体が中古品だ。
勿論庶民など手が出せないレベルの服なのかもしれないが、
古着屋など街中にあふれている。
貴族街の近くへ行けば十分取り扱えるなんて分かるだろう。
…とありありと師匠の顔に書いてある。
「…見せて見ろ」
それでもぶん殴って追い出されないからには私もそこそこ信頼はされているようだ。