第5話 いつもの夢 …じゃない?
いつもの夢だ。
私が見ているこの夢の世界は多分私の世界とは違う世界だ。
同じ部隊。でも違うシチュエーション。
そんな夢をずっと見ているんだと思っていた。
けど、これは多分ある一人の人生を見ているんだと最近は確信している。
夢の中の彼がどこに住んでいるのか、私は彼の「今」を見ているのか「過去の記録」を見ているのか
そんなことはわからない。
でも、夢の中の彼の周りの人たちは優しくて、面白くて、彼はきっと
幸せな人生を歩んでいた?いる?のだと思う。
私は商人見習いとなって世間を知ってから彼の世界の生活水準がとんでもなく高い事に気が付いた。
そして彼の世界では誰もスキルを使っていない事も。
普段は変わり映えの無い。でも毎日違う生活を送っているのだけど、何年か前に夢に登場する
友達ががらっと変わった時があった。
今回もそんな場面転換の日であるらしい。
幼少期を除いて彼の周りには同年代の女の子はいなかったんだけど、今日はいっぱい。
心なしか彼も嬉しそう?いつもよりはしゃいでいる様に感じる。
私は寝ている間しか彼の世界を見れない。
弟子としての修業の日々で、ここのところ特に短い時間しか見ていなかった気がする。
でも今日で独り立ち。
好きな時間まで寝ていられるのだ。
彼の世界と私の世界。昼夜逆転の不思議な世界。
今寝てる私の世界は夜だけど、今起きてる彼の世界は昼だから。
ずっと夢だった。彼の世界に行ってみたかった。
でもそれは無理。夢で見ていられるだけで幸せ。
私の知らない世界。違う。この世界のだれもが知らない世界。
商人として成功したい私は、そんな彼の世界の事をもっと知るべきなんだと思う。
……べつにゆっくり寝たいとかそんなんじゃない。
でも、そんな彼は何しているのかというと…
え?ナンパ?
彼も新しい環境になって新しい友達に飢えていたのかな?
いままで男友達しかいなかった彼の境遇からしたら可愛い女の子とお話したい気持ちは
すごく分かる。分かってあげたいんだけど。
こう。親戚の子供の恋愛事情に触れているようなすごくむずむずする気持ちになっちゃう。
女の子も満更でもなかったみたいで一緒食事に行く事になったみたいだ。
あ。お酒。考えてみたら彼がお酒を飲むのを見るのはこれが初めてだ。
流石に今まで飲んだ事が無いとは思わないが、飲みなれていない様な気もする。
まぁ理性を保ってくれたらいいや…と思ったけど…
うん。ダメかなぁこれは
さっきワイン一本飲んで寝ちゃった私よりお酒に弱いんじゃないかな?
あー視界が狭い。このままでは彼が寝てしまいそう…
と思ったら世界が暗くなった。
彼が寝てしまったのだろう。過去にも彼が昼寝した時とかに同じ体験をした事がある。
このまま朝になるまで真っ暗なのでちょっと不安なんだけどね。
…と思ったら声が聞こえた。
「あれ?真っ暗だ?珍しいなまだ寝ているのかな??てか俺いつの間に寝たんだっけ??」