第1話 彼女の夢
天に刺さる程、石を積み上げた住居、馬がいなくても走る箱
夜になっても地上で星は光り、眩いばかりか、どこへ行っても喧騒が絶えず、
人々が寝る気配もない。
そして何より戴冠式が行われている訳でもないのにそれを上回る程の人、人、人
魔物はおらず、食に困らず、そんな夢の様な世界がある事を私は知っている。
というか夢で見た事がある。いや、毎日その夢を見ている。
その世界で私は****と名乗っていた。
正確にはとりついた幽霊の様なものだった。
私がその夢を見るようになったのはいつだったか正直覚えていない。
物ごころが付いた時には既にその世界を知っていた。
その頃は同じ夢ばかり見るのが当たり前なんだと思っていたんだ。
夢の中で私は同じ年の子供ばかりが集められた大きな屋敷で勉強したり
友達と遊んだりしていたんだ。
ただ、遊ぶ内容や勉強する事が毎日少し変わるだけ。
だから夢ってそういうものだと思ってたんだ。
夢の中での私は観測者。
私が右を向こうとしても勝手に視線は左を向いてしまったり、
前に進もうとしても座ってしまったり。
何度も自分で自分を動かせないもどかしさを味わったんだ。
そして何よりも嫌だったのが食事の時間だった。
決まった時間に毎日出てくる色々な料理。
見た事無い料理に初めのうちはおいしそーとかいいなーなんて思っていた。
だけど、見ているだけの私には味わう事なんて出来なくて、
料理を口に運ぶ姿を見ているだけ、香りも味も分からない。
別に家族の作ってくれる料理が嫌だった訳じゃないし、いつも
おいしいご飯を作ってくれるママに感謝していた。
ただ、見た事ない料理をおいしそうに食べる同じくらいの年の友達をみて
見るだけしか許されない私への当て付けのようなもどかしさを感じていた。