第6話 スタート地点前編。
「今回はどのようなご用件で?」
ベテラン風のおばさん受付嬢が聞いてきた。
あの件があったのか、僕はまだ顏が赤くなっていたが一息入れて質問を切り返す。
「そうですね。冒険者として2人登録したいです」
「でしたら、お一人様、登録料500ショルいただきます」
まさかのお金が掛かるのか……。ミキエルを呼ぶ。
「おいおい、お金が掛かるなんて聞いてないぞ。お前は持ってるか?それとショルっていくらだ?」
「持ってるわけないじゃない。ポテチならあるよ」
「あなたの住んでた世界の円だよ。だから登録料は500円ってことだね」
ポッケの中を確認するが、異世界に行く時に電池の切れたスマホとここでは使えない自分の世界のお金はあった。
……と言うことで僕たちは途方に暮れている。
あの女神も気を利かせてお金持たせてくれたらよかったのに。愚痴も言いたくなる。
「なにお通夜みたいな顔してるのよ。私に任せて。これでも天使よ」
この堕天使が何かをやるらしい。酒場で飲んでいたおじいちゃんに話しかけに行った。そしていきなり天使の羽と輪っかを出した。
「お迎えに参りました。この世に留まりたかったら料金2000シェル払いなさい」
おじいちゃんに向かって、脅迫じみたカツアゲをしている。お通夜ぽいことやってるのはお前じゃねーか。
「おい……。」
思わず僕は声を上げてしまった。速攻で止めて、全力でおじいちゃんに土下座した。
「「すいませんでした」」
全力で謝っていた僕たちを許してくれたのか、おじいちゃんは笑顔を見せた。
しかも、ギルドの冒険者登録の一件を見ていたのか4000シェルまで恵んでくれた。
「もうそんなことはするなよ」と一言付きで……。
おい……。良い人でよかったな。お前の姉さん泣いてるぞ。
「うっさいわね。ほっときなさいよ」
顔を赤くしながらミキエルは言った。