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第17話 エミリーの適正2。

「ダメですー。人間の姿だと魔法を使うと元の姿に戻ってしまいますぅー」


エミリーは涙目になっていた。その横で、リリィはため息を吐いている。


それもそのはず、そのやり取りは2時間を超えている。魔法以外にも回復魔法のヒールや支援魔法も使っただけでも元の姿に戻ってしまうのだ。



「うーん。やっぱり、無理そうですぅー」


人間の姿に戻り、エミリーはぺこりと座り込む。



「攻撃自体は素晴らしいものがあるのだけどね。使ってみると初級魔法なのに中級魔法みたいな攻撃力だからもったいないね」


リリィは教官のような感じで腕を組み、さらにため息を吐いた。


確かに全体的のステータスはドラゴン級みたいだ。

しかし人間の姿で少しでも魔法を使うと、魔力がキャパオーバーしてしまい、上手く調整が出来ないみたいだ。



「ちょっと休憩しない。日差しがこうもキツいと暑いんだけど。肌が焼けちゃう」


ミキエルが羽根を広げ、ぷかぷか浮きながら聞いてきた。


エミリー曰く、リリィ、もぶっ続けでやっているためか、疲労感が現れている。



「そうだな。そろそろ休憩するか」



木の陰になる所があったので、ゴザを敷いて僕らは座り込んだ。



「次は魔法銃でも使ってみる?銃はいいよ。初めは打つのに苦労するけど、次第に打つ感覚が身につき快感になる。モンスターを撃ち抜いた感覚はというと、もうスリルがビンビンと伝わって、うーん、堪らないです」


リリィが持っているライフルを抱きしめ、身体がビクンビクンと興奮している。



どうかこの変態中二病をどうにかして欲しい。こいつは本当に軍人なのか?と思ってしまう。


「うーん。魔法が使えないってことは、あとは剣士か武道家しかないか。魔法系と回復系は厳しそうだしな」


僕はエミリーに提案をした。一応、僕は鍛冶屋の端くれだ。以前エミリーの足に刺さってあった剣を改良して持ってきていた。

その剣をエミリーに渡して、エミリーはその剣をチラリと見る。



「この剣を見るとトラウマが現れそうですね」


「剣術は私が以前メイドで貴族のお家に勤めていた際、ナイトの方の剣術を見たことがあったのでなんとか出来そうです。それでは今度は剣をもってみます」


エミリーは僕に笑顔を見せると、僕が持ってきた剣を受け取り近くにあった木の前に立った。


するとエミリーは剣を下から上にジャンプしながら出し、木を切り裂いた。


「クレッセントスパーダ」


剣の切れスジは三日月の形を描いた。すると木は真っ二つになり、ドスンと右左とサイドに半分づつ落ちた。エミリーの姿は人間の姿をしている。



思った以上の威力に唖然としつつ、これは即戦力になると僕は喜んだ。


「やったよ。人間の姿でもいけそうなジョブが見つかったな」


僕は親指を立てて、エミリーを称えた。



「やったね。凄い威力だよ。さすがドラゴン級だね。これはナイトの上のクルセイダでもいけるんじゃないか」

リリィは腕組みをしつつ、うんうん、頷いている。



「これで楽できる。あとは任せたよ。あ、お茶くみ係は別途でお願いね」


堕天使は羽根を広げ、ぷかぷかしながら言った。



「ありがとうございます。あなた方のおかげですー。良かったですぅー」


「それじゃもう一度切ってみます」

エミリーはニコッと笑みを浮かべている。



「お、見せてくれよ。このドラゴン級の切れ味を」



「さすがドラゴン級。見込んだだけのことはあるね」



僕とリリィは笑顔で頷き、これは期待だとばかりにエミリーを見た。


再度、木の前に立つとエミリーは叫ぶ。


「クレッセントスパーダ」



大きな風が周りを吹いた。「「「……、ん?」」」と3人はキョロキョロと周りを確認し、周りの状況がおかしいことに気づく。


そして、エミリーの顔が真っ赤になっている。



よく見ると木は全く切れてなく、当たってもいなかった。

するとさっきの振動から、蟹みたいなモンスターが出てくる。


蟹みたいなモンスターは、軽く軽自動車みたいな大きさぐらいあった。



「へー。これはクラブハンマーだね。名前の通り、両手のハサミをハンマー代わりに使って相手を倒すとされているから注意だよ」


リリィの話を聞く限りでは、動きはハンマーが重いため遅いらしい。

そして、いつもは冬のシーズンに動き回るのだが振動で起きてしまったようだ。



「私に任せてください。この姿、この剣で倒します」

エミリーは気合いを入れている。



「今夜は蟹ね。楽しみ。ワクワク。じゅるり」



ミキエルはよだれを出しながら、エミリーにエールを送っている。



「お前も手伝うんだよ。ヒール打つ準備でもしておけ」



「ちぇー。わかってるわよ」



羽根を広げ、後ろで待機している。リリィは空を飛びながら魔法銃を構えている。



「サポートするぞ。エミリー頼んだよ」



エミリーの気合いが高まったのか。一言皆んなに言ってからモンスターに斬りかかった。



「皆さん行きます。クレッセントスパーダ」



蟹モンスターはとっさに手を顔に出し、ガードのポーズを取った。


『スカ』

周りに剣から出た突風が吹き出した。


エミリーは顔を真っ赤にして、茹でタコみたいになっている。


正面の全く動いていない相手を2度連続で外してしまったのだ。



「おかしいです。うーん。なぜか。当たらなくなりました」



するといきなりクラブハンマーはエミリーの身体に向かってハサミを拳代わりにして振り上げた。



『ゴ〜ン』



周辺に痛々しい音が流れた。


「大丈夫か?エミリー、……?エミリー?」


エミリーは顔色ひとつ変えてなく、むしろ一歩も動いていない。それどころか、クラブハンマーの様子がおかしいことに気づく。


クラブハンマーは口から泡を吹いている。ハサミの拳は砕けていた。



「凄い防御力だね。まさかクラブハンマーの硬い拳が砕けるとは恐れ入ったよ」



「もう剣士って言うより、壁役だね。私を守ってね。頼りにしてるわ」



リリィとミキエルはエミリーに伝えた。



「うーん。そうですね。できる限り頑張りますぅー」



エミリーの防御力はドラゴン級だったみたいだ。攻撃が当たらないカウンター専門のナイト。今後、戦力になるのだろうか。


そう言った不安がよぎるなか、ミキエルが僕に言ってきた。



「マサル!!。この蟹持って帰るから手伝って」



今夜の夕食が、蟹料理に決定した中、エミリーは女騎士として登録するために冒険者ギルドに向かった。

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