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第八話 愛と憎しみ

 10月25日、火曜日。

 明日の代理バトルに向け、校内での武器探しを試みた。自分が前にしたように、バトル前に持ち込んで隠している者がいるだろうと、植木の陰や掃除道具入れなどを見て回る。しかし、何一つ見つけられないまま、昼休みを迎えることになった。

 いっそ授業をサボって探すべきなんだろうが、そういう気にはなれないところがある。生死を賭けた戦いを前に、勉強なんてという気持ちが無いわけではないが、急に生活態度を変えることで、代理人ではないかとマークされたくはないし、理不尽な戦いに自分を変えられたくもない。

 それはテロがあっても、普段通りに暮らすようなものなのかもしれない。テロがあったからと生活を変えれば、ある意味において屈したようになるからと、街頭インタビューに答えていた海外の女性のことを思い出す。


 昼休み。

 体育館の周りを見て回る。周りは砂利が敷かれているので、歩くと石が擦れる音が鳴った。その石の感触と音を楽しむように歩いていると、ガギッと明らかに石ではない物の音がする。

 足元を見てみると、砂利の下に黒い棒状の物が見えた。砂利を除けて黒い物を手に取る。大きさは自分の手と同等。黒い持ち手部分にハメ込む形で、白くて平らな箇所があった。その白い部分には爪を引っ掛けるところがあり、そこをスライドさせると刃先が出てくる。セラミックナイフだ。

 うちでは調理用に使っているが、これも武器になるのかもしれない。回収してポケットに入れ、他にもないか探してみる。同じような感じで、黒いビニール袋に入れられたスタンガンが見つかった。

 それも回収してプールに持っていく。もうプールに近づく者もいないだろうからと、シャワーの下に堂々と置くことにする。堂々と置いてあった方が、かえって怪しまれない気がしたのだ。


 帰宅後。

 自室でパソコンを起動し、去年の学祭で撮ったクラスの集合写真を見る。二重谷が当時の彼女と肩を組んでいるのを見て、これは使えるかもしれないと判断。彼らだけを切り抜き、二重谷の顔に加工を加え、プリクラ風にしてプリントアウトする。シールタイプの印刷用紙で……。





 10月26日、水曜日。

 代理バトルの日になる。ターゲットの北村瞳子には、あれから会っていないし見てもいない。対戦相手のエネルギー源は“愛”だが、彼氏から写真絡みの追求をされたことで、その感情を抱くのは難しくなっているだろう。

 今までしてきたことと、バトル絡みの情報を整理しながら、いつも通りに学校に向かう。今回、自分では武器を用意していない。


 2年D組に入っても、声をかけられることもない。

 最初は寂しい気もしたが、今となっては楽だと思うばかり。嫌われないようにと自分の感情を偽るよりも、嫌だと思う奴には不快感を露わにした方が、向こうも寄って来なくなるのでいい気はする。

 勿論、相手は選ばなくてはいけない。

 自分の生活費を稼いでくれている親にそれをしたら、デメリットを被るのはこちらになるだろうし、ケンカしか能のないチンピラに不快感を出しても、くだらない暴力沙汰に巻き込まれるだけ。何事にも例外はある。

 そんなことを席に座って考えていると、担任が入って来てホームルームが始まった。




 昼休み。

 プールに置いた武器を確認しようと、体育館の傍を通りかかる。

 砂利を除けている女生徒がいた。学年章を見て三年生だと知る。黒髪のストレートロングで、いわゆる前髪パッツン。目が細くて顔は青白い。女性にしては背が高い方なので、目立つといえば目立つ方だと思うが、良は彼女を見た覚えはなかった。


「何をしてるんだ、参木!」


 南波健吾が怒鳴って、彼女に駆け寄る。良にとっては日本史の先生だが、生活指導も担当していたように思う。

 怒鳴り声に誘われるように、体育館でバスケをしていた男子が中から顔を出す。彼らは南波健吾の姿を見て溜め息をついた。そんな野次馬の存在も南波のことも気にせずに、彼女は砂利を除ける作業を続けている。隠した物を探しているのだ。


「参木!」

「砂利なら、後で戻すから気にしないで」


 彼女は吐き捨てるように言って、作業をやめようとしない。


「何で、こんなことを」

「先生には関係ありません。元に戻すんだから、別にいいじゃない」

「何だ、その口の利き方は!? ちょっと来い」


 南波健吾は彼女の手首を掴むと、グイッと引っ張って彼女を立ち上げらせた。彼女はふてくされた顔で舌打ちする。


「来いですって? そんなの私のアジェンダにないわ。そういう行為、他の先生方にオーソライズされていますか?」

「変なカタカナを言いよってからに」


 睨み合う二人を見て、今は回収すべきではないと判断し、良は立ち去ることにした。二人を見ていたバスケ男子たちも興が醒めたのか、バスケをやめるような話をしている。


 校舎に入ったところで、先のバスケ男子の集団に出くわす。


「また、あの霊感あります女だよ。南波を煽るなっての。あの海藻頭、機嫌が悪くなると周りにあたるからタチが悪い」

「それそれ。あぁ、でも自称霊感少女は中学の時の話だろ? 今は自殺癖で有名っつーか、最近は自意識過剰系で通ってるっしょ。私は選ばれた存在って、真顔で言ったらしいぜ」

「マジかよ、ヤバいな。えっと、何とか茉莉だっけ?」

「今は参木って苗字らしい。母方の姓にしたんだと」


 彼らの話を聴きながら、頭の中で参木茉莉なる人物について整理する。おそらく彼女も代理人だ。自分が見つけた武器を探しているということは、今日のバトルに備えて隠して置いたのだろう。

 昔は霊感少女を自称していて、今度は自殺癖という辺りに、私を注目してよ的なものを感じる。正直、関わりたくない相手だ。ああいうタイプが不快な感情をエネルギー源としていた場合、恐ろしい敵になるような気がすることも含めて。




 放課後になる。

 前の代理バトルは17:00からだった。武器を回収しても余裕で間に合うと考え、プールに歩いて行く。スタンガンとセラミックナイフは置いた時のままだった。周りに誰もいないことを確かめ、それをポケットに忍ばせる。


「シニ」


 名を口にした途端、目の前に人型の空気の揺らぎが現れる。


「バトルから逃げようとしても、ターゲットがいる場所まで、強制的に連れて行かれるんだよね?」

「そうだ」

「なら、彼女を探す必要はないわけだ」

「そういうことになる」

「それって、彼女が学校の外に出ていた場合でも?」

「ターゲットが学校の敷地外に出ることはない。我々がそう仕向けている」


 代理バトルは学校内で、ということだ。あちこちで戦われては、彼らも“うまくやる”のが大変なのだろう。

 何はともあれ、時間になれば自動的に体が動くというのだから、北村瞳子を探す必要はない。




 中庭のベンチに腰かけていると、急に体が勝手に動き始める。目線の先にあった時計で、あと数分で17:00になるのを確認。

 向かった先は2年B組の教室だった。教室にいるのは二人。ターゲットである北村瞳子と、その彼氏である二重谷透。前に見た時は楽しそうに話していたのに、今日の二人は沈んでいる。例の写真の件があったからなのか、それともバトル前だからかは知らないが、暗い表情は別れ話でもしていたかのようだ。


「あっ!」


 教室に入った良に気づいたのは、北村瞳子が先だった。驚いた顔を見せたかと思えば、徐々に表情が歪んでいく。


「撮らせてあげた写真なことなんだけど」


 例の写真を手に、彼女が近づいてくる。そんな彼女の肩を二重谷が掴む。


「待てよ、瞳子。この時間に来たってことは、アイツが俺の相手だ。なぁ、そうなんだろ?」


 北村瞳子を抱き寄せて、二重谷が睨んでくる。その口ぶりからして、彼が対戦相手で間違いない。エネルギー源は愛。恋人である北村瞳子はターゲットとして、打ってつけというわけだ。

 良は教室の時計で17:00になったのを確かめる。代理バトルの開始時間だ。

 何も言わずにポケットに手を入れ、スタンガンとセラミックナイフを握る。あとは彼女から憎しみを引き出して二重谷を殺すだけ。


「おい、答えろよ!」


 対戦相手かという質問をスルーしたことで、二重谷が激昂している。戦いを前にした焦りも、彼の表情からは感じ取れた。


「北村さん、その写真は僕が加工したものだよ。その写真を彼が見るように仕向けたのも僕。彼は何と言ったのかな? 誰だ、この男は……なんてことを言って、君の浮気でも疑った?」


 穏やかな口調で北村瞳子に語りかける。彼女の良を見る目が鋭くなっていく。


「何で、こんなことすんのよ! お陰で瞳子は、透クンに……」

「やめろ、瞳子! 奴のエネルギー源は“憎しみ”だ。気持ちを抑えろ」

「透クン……」


 二重谷が北村瞳子を抱きしめる。体の温もりで、憎しみを消そうとしているようだった。


「その写真のことで彼に何を言われたの? 君らの関係が揺らぐこと? たかが写真一枚で亀裂が生じる脆弱な関係。それが君らの云う愛だとしたら、その力もたかが知れている」

「バカにしないで!」


 涙目になって北村瞳子が叫ぶ。


「シニ、憎しみを変換」

「10,420ptだ」


 大輝の時に比べたら少ない。

 何故だろう? 憎しみ以外の感情があるせいだろうか。それとも、図星を突きすぎて憎しみを抱きづらいのか……。

 思わしくない状況なのに、良の心は乱れなかった。


「瞳子、俺を好きだと思う気持ちを膨らませろ! それで奴を倒す」


 北村瞳子が目をつむって頷く。そんな彼女を見ることなく、二重谷は良を睨みつけて言い放った。


「2,800ptで奴に炎をぶつけろ!」


 二重谷が伸ばした手から炎が出現すると、真っ直ぐに良に向かって行く。避けられずに当たった炎の塊が、学ランを焦がしていく。燃え移ったのだ。


「ハハハッ、黒焦げになれ!」


 嘲笑する二重谷を見た後に、良は平常心でつぶやく。


「炎の周りにある酸素を5m前に移動。酸素があった場所には、10秒ほど二酸化炭素を固定」


 学ランから炎が消える。


「420pt消費した」


 シニの報告を聴き、pt的にも効率の悪い攻撃パターンだと思う。こういう手は使わないでおこうと心に決める。


「君らの愛の炎は簡単に消せる。所詮は偽りの愛。だって、そうだろ? 次々に女を変えることで有名な二重谷の愛なんて、ただの性欲に過ぎないんだから」

「違うもん!」


 反論したのは北村瞳子だった。二重谷は目線を逸らしている。


「何が違うって言うのかな? 愛し合っていて、気持ちが通じていれば、さっき君が目をつむった意味を、彼は理解していたんじゃないのかな?」


 北村瞳子がハッと息を飲む。

 彼女は“俺を好きだと思う気持ちを膨らませろ”と言われて目をつむった。気持ちを膨らませる為にキスを求めていたのは明らか。そんな彼女を見ていない時点で、彼の頭の中にあるのは彼女の気持ちではなく、戦う道具としての彼女の存在なのだ。


「君は一年だから知らないだろうけど、彼はそういう男なんだ。二年生の間じゃ、狙った一年を何日で落とせるかって賭けが流行っててね。君は賭けの対象に過ぎないって訳さ」

「嘘……」


 彼女は呆然とした顔で二重谷を見つめる。その視線にも彼は気づかない。彼女の表情が愁いを帯びていく。

 良がついた嘘に対する反論しか頭にないのか、彼の目には良しか映っていなかった。


「デタラメを言うな!」

「そして、彼は今も君に目がいかない。不安を取り除いてほしいのに……」


 北村瞳子に優しく語りかけ、彼女の足元にセラミックナイフを転がす。


「取って見てみるといい。そこに映ってる彼を」


 二重谷から離れ、彼女はナイフを手にした。そこには二重谷の写真が貼られている。去年の学祭の時の物だ。


「そこに映ってる彼は、君には見せないような笑顔をしていないかい?」

「……」


 彼女は何も言わずにナイフに付いた写真を見つめる。彼が元彼女と肩を組んでいる写真だ。“君に見せないような笑顔”なのは間違いない。なぜなら、彼とは思えないほど優しい笑顔に加工しているからだ。


「北村さん、君はいつまで彼のデタラメに付き合うつもりなの? 都合のいい女にされて、不満は無いの? 自分の気持ちに気づかない彼を許していいの?」


 畳み掛けるように言うと、北村瞳子はナイフの刃を出して、持ち手の部分を握りしめた。


「よし、瞳子。それで奴を刺してくれ!」


 二重谷の言葉に彼女は愕然とする。俯いて震えだしたかと思えば、ポタポタと涙が床にこぼれ落ちた。


「彼女に人殺しをさせるとは、酷い男もいたもんだ……」


 良が彼女の気持ちを代弁する。北村瞳子は顔を上げると、二重谷をキッと睨みつけた。


「シニ、全ptを“殺意”に変換して、北村瞳子に注ぎ込め!」


 体をビクンッと震わせたかと思うと、北村瞳子は二重谷の胸元を一突きした。自分を攻撃するとは思っていなかった相手だけに、二重谷は避けることすらできずに胸元を赤く染める。


「瞳子、お前……」


 胸元を刺された二重谷は、よろけながら窓際に寄っていく。ショックと流血で足に力が入らないのか、彼はフラフラした状態でへたり込んだ。

 そんな彼に、狂気に魅入られた彼女が近づいていく。スタンガンを床に置いて滑らせ、彼女の近くに寄せておいた。これを使えとばかりに。


 自分の仕事は終わったと、良は教室を出て廊下を歩き始める。体が教室に戻らないということは、勝敗が決したのだ。何の感慨もない。シニも臓器に関する話をしてこない。興味が無いから必要ないと判断されたのだろう。

 そう、自分には罪の意識が無い。生きる為に仕方なくしているからとか、そういう次元の話ではなく、単純に現実感というものがないからだ。

 自分の手を汚していないというのは、そういう心の働きを奪ってしまう効果があるのだろう。ボタン一つで命のやり取りがされるようになれば、そこに殺しに対する葛藤などない。あるのは殺害という事実だけ。





「今、二重谷透の脳が死んだ」


 帰宅し、夕食を済ませ後になってシニが言ってくる。シニは蛇のような空気の揺らぎを作りだし、空中を這っているかのようだった。


「今なの?」

「ああ。ケースによっては、脳が壊死するまで時間がかかる。我々の死亡判断と、それは別だ」

「ふぅ~ん」


 あまり興味のない話だった。

 テレビをつけて、代理バトル絡みの報道を探す。帰りの電車ではスマホによるチェックもしたが、やはり報道はされていないようだった。


「良、“愛”との戦いはどうだった? 君が手強いと思っていた感情だ」

「別に……」


 今となっては感想すらない。ただ、気になることはある。


「あの二人は、初戦も協力し合っていたのかな?」

「それには答えられない」

「そっか……。もし、初戦も彼のターゲットが彼女だったら、二人の愛が深まっていてもって思ったんだ」

「ほう、その根拠は?」

「代理バトルっていう危険な状態に置かれたら、吊り橋効果になるんじゃないかってね」


 シニは人型になると腹を抱えて笑って見せた。


「それはダットンとアロンの吊り橋実験のことかね? 君は、その論文と実験内容を読んだ方がいい。ロクに調べもせずに広める輩に踊らされてはいけない」

「えっ……」

「法則というのは、再現性が無くてはいけない。他者が実験の効果を確認できて初めて立証されるものだ。その実験には否定的な実験結果もある。目を通してみるといい」

「そうなんだ……」


 それが載っていた雑学本を手に取って見ようかと思ったが、何もかも否定される気がしてやめる。


「その本の中身は確認済みだ。見た目が9割の根拠が、メラビアンの法則だったな。それも同じことが言える」

「でも、人は見た目で判断できる気がするけど……」

「それとこれとは別の問題だ。その実験が根拠にならないという指摘になる。アルバート・メラビアンが行ったのは、言語情報・聴覚情報・視覚情報の三つの手段で、矛盾した情報を与えられたときに、どの情報を優先して受け止めるかの実験だ。それが今では、見た目が大事な根拠として独り歩きしている」


 体中に複数の口のような部分をつけ、シニは全身で笑って見せた。


「メディアの多くは情報を垂れ流すだけで、その情報の信憑性のチェックや伝え方は二の次だ。時間がないのかもしれないが、カビの生えた理論が今も生き続けている。人間は脳の10%しか使用していない? いつの時代の俗説だ。そのくせ、見る者の考えを誘導したいときだけ、都合の良い箇所のピックアップと、不都合な箇所の削除は怠らない。もはや、古いメディアから得られる情報は、洗脳の危険しかないのではないか?」

「メディアリテラシーを持てって話?」

「行儀よく言えば、そうだ。話のついでに、君が持つ食品の危険性に関して書かれた本にも触れておきたい。発癌性物質の何々が使われている、某メーカーが出している何々には毒性があると記されているものだ」


 トランス脂肪酸が話題になった際に、興味を持って買った本になる。ただ、その中身の大半はトランス脂肪酸ではなく、他の食品添加物に関するものだった。


「毒性だけなら白菜にもある。君らが死なないのは、ミロシナーゼの摂取量が微量だからに過ぎない。白菜とて、君らに食われる為に育っているのではない。故に、自らを守る為に毒を有しているのだ」

「それじゃ、食べ過ぎれば毒ってこと?」

「そうだ。何だって取り過ぎれば毒であり、白菜に関しては事例もある。毒性の確認の為に過剰投与している実験の結果を受けて、危険だと騒ぎ立てている本の著者は、あり得ない量を摂取して初めて悪影響があった事実に目をつむっている。もしくは、そこを理解していない。そんな本を読むくらいなら、国連の合同食品添加物専門委員会が出しているADIでも眺めた方がマシではないか?」


 シニは人間の何を観察してきたのかと疑問に思う。その問いをぶつける間も与えずに、シニは話し続ける。


「君らは進歩してきたと思っているようだが、私には退化の間違いではないかと思える節がある。より多くのことを知っていなければ一人前と見なされない。その為に多くの時間を費やし、様々なことを覚えている。また、先人が築き上げた社会を維持する為に、人生の大半を労働に費やすことを余儀なくされている。そのことに君は、どんな価値を見出しているのだ?」

「そんなことを訊かれても……」

「今も必要最小限の知識で生きている者達がいる。君らが土人と呼んで蔑む存在だ。彼らの方が、よほど生きるという自由を謳歌しているのではないか。生きる為に必要なことだけを覚え、生きる為に必要な最小限度の活動に留める。あれもこれも覚えなくてはいけない君らに比べ、彼らの人生には制限というものが少ないのではないか」


 そこまで話すと、シニは急に黙ってしまった。

 どうしたのかと思って見守っていると、空気の揺らぎを球体にして時計の傍に移動する。時刻は21:00を示していた。ターゲットと対戦相手のエネルギー源が発表される時間である。


「次の相手が決まったんだね?」

「そうだ。次のターゲットは南波健吾。対戦相手のエネルギー源は“殺意”になる」

「“殺意”だって?」


 今まで、ターゲットに殺意を抱かせることで相手を倒してきた良にとって、それは同じ手が使えないことを意味していた。殺意を抱かせれば、それは相手のエネルギーとなる。“愛”なんかとは比べ物にならないほど厄介な相手だ。

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