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王都へ(3.ギルド)

来ました、冒険者ギルド!

エドさんは渋ってたけど、王都まで行く道すがら冒険者やってお金を稼ぎたいとか冒険者の情報網でユグドラシルの場所が分かるかも知れないとか色々言ってたら、身分証明のためにギルドに入るのは悪くないと言って連れてきてくれた。

ギルドは赤煉瓦の二階建てで結構可愛い。

入ると正面奥にカウンターがあり、右のほうに談話スペースと売店がある。

「こんにちは!」

受付嬢が愛想よく挨拶してくれる。

エドさんはまっすぐカウンターに進み、

「新規登録をお願いしたい」

と言った。

「そちらの方ですね、はい、それではこの用紙に必要事項を記入してください」

受付嬢は紙とペンをくれる。

紙に書いてあるのは日本語に見える。良かった。

「書けるか?」

エドさんが心配して聞いてくれる。

「代筆してもらえますか?」

読めるのは読めたけど、職業とか出身地や魔力適性とかどう書いたらいいか迷う欄が多かったので、エドさんにお願いした。

エドさんは、名前(カノン)と職業(強化魔法師)と性別(女)、年齢(21)だけ書いて、あとは書かずに保証人欄にサインして提出した。

「はい、エドワードさんが保証人ですね。では、エドワードさんのパートナーとして登録していいでしょうか。」

「頼む。」

ギルドで登録するのもエドさんの助けがないとできないとは。これから先どれだけお世話になるんだろう。返しきれるかな。ちょっと俯いてしまう。

私の様子を見て、エドさんがフードの上から頭ポンポンしてくれる。優しすぎる。

「はい、ではこれがカノンさんのギルドカードになります。依頼の受付・取り消しの際には必ず必要になりますので、持ってきてくださいね。また、ギルドカードは身分証明書となり、他に通信機能、金銭管理機能が搭載されています。無くされましたら再発行に10000ベルかかりますので、注意してくださいね」

「分かりました」

そう言って、銅色のカードをもらう。

よし!

「エドさん、さっそく依頼を受けていいですか?」

「ん、まあそんなに焦るな。とりあえず弓と笛を買って、装備を整えよう」

「笛?」

「使えるやつ持ってないだろ」

そっか、あれが特殊な笛だってこと、わかる人には分かりそうだもんね。

「あ、そうでした。本当にありがとうございます」

私たちは隣にある売店に行った。

そこでエドさんは一般的な弓と矢、笛を買い、私に渡してくれた。

ここで一旦エドさんへの借金を書いておくと、服屋で553200ベル、武器を70000ベルで合わせて623200ベルだ。どれくらいの大金かは分からないけど、きっとものすごく大金だと思う。

「エドさん、今日何か依頼受けちゃダメですか?とりあえず宿代くらいは稼ぎたいです」

「もう日が暮れるから、無理だろう。明日から頑張ればいい」

って事は借金返済は明日からか。

「うーーん、そうですか、分かりました」

「今日はもう宿をとって、荷物の整理とかしよう」

エドさんは安心させるように笑う。なんでこの人こんなにいい人なんだろう。

「はい、お世話になります」

私は弓と矢筒を肩にかけて、エドさんの後を追ってギルドを出た。


エドさんは通りを迷いなく歩き、眠る羊亭という宿屋の前でとまった。

ドアを開けると、受付に赤毛にそばかすの元気そうな女の子がいた。

「いらっしゃい、あ、エドワードさん!」

女の子は嬉しそうに言うと後ろの私に気づき、

「えーめずらしい!じゃ、今夜はダブルでいいですか?」

と、目を丸くしてから満面の笑みで言った。

「いや、シングル2つで」

「えっ、私はダブルで大丈夫ですよ」

全然床で寝ます。

「いや、断固シングル2つだ」

エドさんは頑なだ。確かに、他人と一緒は嫌かもしれない。

「ふふっ、はい、シングル2つですね。二階の奥2つご用意しますね!」

女の子は可愛く笑って言うと、鍵を渡してくれた。

「じゃ、荷物置いて夕食にしよう」


食堂に行くと、いい匂いがする。イタリア料理の匂いだ。

「カノン」

エドさんはすでに座っていた。

「待たせてごめんなさい」

私は慌ててエドさんの元に向かう。

「今日はカノンのおかげで飛竜の卵も無事にとれた。ありがとう」

「いやいやいや、全部やったのエドさんですから!私何もしてないよ。むしろ必要なもの全部買わせてごめんなさい」

「いや、私が生きてるのもカノンのおかげだから…」

「きっとエドさんなら自力で蘇生できてましたよ、感謝するのはこっちです…」

お互い感謝し続けるという無限ループをしばらく繰り返し、私とエドさんは顔を見合わせて笑った。

「とりあえず食べるか」

「はい!」

お食事はすっごく美味しいイタリアンでした。


自分の部屋に帰って、弓を見ながら、弓の強化ってどうすればいいんだろうと、ふと思う。矢をつがえてたら笛吹けなくない?

『はーい、リリアーナちゃんが答えます!なんと、口笛でいいのです!じゃあ、記憶を送るねー』

口笛による強化法が頭の中に流れ込んでくる。立っていられなくなって、そのまま頭から床に倒れた。意識はあるのでとにかく痛い。弓の時立ち眩み程度だったから油断した。次があったら絶対ベッドの上でしてもらおう。

『ごめんね、カノンちゃん!大丈夫?』

リリアーナの声がする。

“大丈夫、だけど口笛で強化できるってすごいね。でも強化時間は1分くらいが限度だし効果も笛を使う時より下がるんだね”

『そうなの!でも、便利よー』

えっへんという様子が目に浮かぶ。

『あとね、私の笛以外の笛だと、最高度の強化をしても中等度ぐらいしか効果発現しないから気をつけてね。でも十分だと思うけど』

“ありがとリリアーナ”

よし、じゃあエドさんと今後の計画を立てに行きますか。


コンコン

「エドさん、カノンです」

「どうぞ」

中からすぐに声がする。

「お邪魔します」

中に入るとエドさんはゆったりした白いシャツに楽そうな茶色のズボンを履いていた。ベッドに腰掛けている。そこはかとなく大人の色気が漂っているような気がする。素敵。

「エドさん、明日はギルドで依頼を受けたいんですが、達成するまでこの村から動けなかったりします?」

できれば時間は無駄にしたくない。

「いや、大丈夫だ。明日泊まる予定のところはガドの街だが、そこで依頼達成できるものを受ければいい。」

「良かった、そしたら時間を無駄にせずに日銭を稼げそうですね」

思わず右手をグッと握る。

エドさんはちょっと笑って巻物のようなものを広げる。

「これからの大まかな計画だが、今いるケルク村からひたすら東に向かい、ガド街、ヒス街を経由して東海岸のララドまで行く。ララドに私の騎獣がいるから、騎獣に乗って海岸沿いに北に向かい、王都まで行く。」

なるほど。逆L字っぽい旅路だ。

「斜めにはつっきれないんですか?」

「最短経路は斜めにレスラを経由する道だが、街道整備が不十分なんだ。最近は魔獣の被害も多いと聞く。確実なのはこっちだな」

「そっか。あんまり交通網は発達してないんですね」

けっこう王都まで遠そうだなぁ。

「そうだな。飛竜を使えたら3日くらいで王都まで行けるんだが。まあ、無い物ねだりだな」

「強化して走れば結構早く着きそうですし、うん、分かりました」

とりあえずお金と情報集めながら王都だ!

「いまのところ以上だな。今日は疲れただろうし、ゆっくり休んでくれ」

巻物を片付けながらエドさんが言う。

「あ、エドさん、安眠効果上昇なんてこともできるんで、吹いていいですか?」

ちょっとでも役に立ちたくていうと、

「大丈夫だ。これからしたいこともあるし」

やんわり断られる。

「そっか…」

ダメだったか。

「また、寝れそうにないときに頼むよ」

エドさんは優しく笑って頭をポンポンとしてくれる。嬉しくて、顔が緩んじゃう。

「じゃあ、おやすみなさい」

「おやすみ」


明日からガンガンお金稼ぐぞ!

読んでくださって本当にありがとうございますヽ(;▽;)ノ

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