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初めての強化

登山だ。

原生林みたいな所を出て、岩がゴロゴロある少し開けたところを歩いている。かなり標高も高いのか、寒い。

「エドさん、飛竜ってどんな感じの生き物なんですか?」

私のイメージだとプテラノドンみたいな感じかな。んで、ちょっと爬虫類っぽいやつ。

「飛竜は体長15メートルくらいの竜だな。飛竜というだけあって通常よりも翼が大きい。」

竜だなって、言われても竜見たこと無いんだなー。

「大きいですね」

「まぁな。しかし、大きさより厄介なのは、子育て中の飛竜はほとんど完璧に気配遮断が出来ることなんだ」

えっ、ちょっと待ってそれフラグ…

ブオォォォォォーーーーー!!!!!

突然すごい突風が吹いて私は吹っ飛ばされた。

「カノン!!」

エドさんが叫び、何やら魔術を放ってくれた。

私は岩に背中から叩きつけられて止まる。

ギャオォ!!

多分飛竜のものと思われる叫び声が聞こえる。背中から激突したので、息もできないし声も出ない。動く事も出来なくてうつ伏せに崩れ落ちる。

必死に顔を動かして前を見ると、二匹の飛竜とエドさんが戦ってる。

私はかなり遠くまで飛ばされたからよく見えないけど、雷の光と轟音が聞こえる。何とか動いて、エドさんを強化しないと。

私はノロノロと腹をまさぐり、笛を取り出した。目視出来れば強化できるはず。

魔力回復速度上昇。笛を口に当てると、考えなくても手が動く。笛なのに、和音のような折り重なった音が一つだけ響いた。シャーーーン

エドさん、どうなってる?

エドさんの方を見ると、飛竜がこちらを見ていた。

ずいぶん離れているのにギラギラした目がこちらを向いているのがはっきりわかる。

ギャオン!!!

苛立ったように一鳴きして、飛竜がこちらに向かってきた。

死ぬ。

殺される。

飛竜を足止めしようと魔術を放とうとするエドさんが小さく見える。

エドさん、も1個強化するね、一か八か、ごめん!

魔力効果増大!

エドさんは絶対助かって!

小さなエドさんを必死に見ながら吹く。

高速で近づいてきた飛竜は大きな口を開けて、その口から光が漏れている。

物凄い光と音がして、音も光も無くなった。


死んだかな。お父さん、お母さんごめん。

『おーい』

あ、天使だ。金髪美少女天使が手を振っている。あどけない顔に魅力的な身体つき。これはすごい。

『大丈夫、死んでない死んでない』

にっこり笑った天使が話しかけてくる。

えっ、死んでないの?

『うん、強化初成功おめでと〜♡!さすが私の見込んだ子!』

天使は私の手を取りグルグル回る。

ちょっと待って、死んでないの?ってか天使ちゃん、先代の持ち主じゃん!

『うん、私リリアーナよ。ここはカノンの精神世界だから死んでないのよ、安心して。カノンが笛を吹いたことで、私の精神とカノンの精神が繋がったんだよ』

にっこり微笑みながらリリアーナが言う。天使の微笑みだ。いやそんな事はどうでもいい。重要なことじゃない。

リリアーナさん、私困ってるんだよ!いきなりこんなとこに呼び出されて!

『えっ、なんで?』

なんでって、元の世界でやる事あるからだよ!両親にも迷惑かけるし!

『そーなの!?私は全然帰りたくなかったからカノンちゃんもそうだと思ってた』

リリアーナは眉を八の字にしておろおろする。

私は帰りたいよー!でも送還術ないって言われたの!困ってるの!

『だ、大丈夫よ、あったよ送還術、確か。帰りたくなかったから断っちゃってあんまり覚えてないけど、絶対あった!』

リリアーナは両手を合わせて一生懸命伝えてくる。

『ちょっと待って、思い出すから。えーっと、そーだ!ユグドラシルに住んでるエルフに帰るかって聞かれたんだ!多分エルフが知ってるよ』

ポンと手を打ってリリアーナは言う。

ホントかなー。

『でもそろそろカノンちゃんは起きてあげた方がいいわね、彼氏が心配してるわ。私とはいつでも話せるし、早く彼を安心させてあげて!』

そう言ってリリアーナはバイバイって手を振った。

あっ、待って、まだいっぱい聞くことあるのに!!

リリアーナに向かって手を伸ばしたが、急速に引き離されてしまった。


「…ン!カノン!」

目を開けると私を抱きかかえて必死に声をかけるエドさんがいた。

「エドさん」

よかったー、エドさん無事だ。

「カノン、良かった、本当に。良かった」

エドさんが私の肩に顔を落として抱きしめる。そんなに力入れたら痛いって。

「大丈夫です。エドさんも、無事でよかった。」

私が笑って言うと、エドさんは顔を上げて私を見た。

「カノンのおかげだ。というか、なんだあのデタラメな強化魔法は。危うくカノンまで黒焦げにするとこだった」

死んだと思ったあの光は、エドさんの魔法だったのね。

「それになんだこの軟弱な服は!見たことないものだから特別な装備かと思っていたら、寝巻きのように脆いじゃないか!」

背中から岩にぶつかった時に破れちゃった服を見てエドさんが言う。

「私の世界では普通だよ。硬い服なんて特別な人しか着ないんです。」

これでもハーフ丈ダッフルコートの下はセーターとヒートテック着ててそれなりに厚着なんだけど。

ちょっとムスッとして言うと、エドさんは言った。

「とにかく、そんな服ではダメだ!知っていれば着替えさせたのに。すぐこれに着替えろ、オープン」

そう言ってエドさんは黒い生地の滑らかなワンピースを出した。袖と裾にはレースがあしらってあり、胸元には小さな黒いリボンがついている。

「エドさん…」

どういうことですか。

なんらかの趣味があるんですか。

私がジト目で見ると、エドさんは慌てて

「違う、これは姪に贈るつもりで買ったんだ。断じて違うぞ。」

と手を振りながら言った。

何が違うんでしょうね。

「さぁ、早く着替えろ」

そう言ってエドさんは私の服を脱がそうとする。

「わっ、エドさん何すんの!」

私はエドさんの手を振り払った。

「何って、着替えだ。子供が恥ずかしがらなくていいだろう」

おいおっさん。

今なんて言った?

「エドさん、私を何歳だと思ってる?」

確かに背も低いし童顔だけども!

「12か、13だろう?」

「私は21です!!!」

そう言って私は岩陰まで走って行った。


『あーららー。彼氏じゃなかったのね。』

頭の中で声がする。

リリアーナ!聞いてたんかい!

『ええ、精神が繋がったからいつでも一緒よ。でも、節度は守るから安心して。』

そんなのすっごい迷惑なはずなんだけど、リリアーナの声は鈴を鳴らすようで心地良くて、許してしまいたくなる。

『カノンが気絶してる時、それはもう一生懸命抱きしめてすんごい治癒魔術使ってたから彼氏かと思ったのに、ちぇーっ』

声だけなのに唇を尖らせている様子が目に浮かぶ。

彼氏なわけないんだから変なこと言わないで。リリアーナには聞かなきゃいけない事がいっぱいあるの。後でリリアーナのことエドさんに話して色々聞くつもりだから、しっかり答えてよ。

着替えながらリリアーナに語りかける。

『オッケー、了解よ。あと、私はカノンの顔、チャーミングで大好きよ。』

うっ、素直に嬉しい。大好きって魔法の言葉だな。まんまと機嫌を良くしてしまう。

よし、着替え完了。

戻るか。


先代所有者リリアーナさんと話せるようになりました。

読んでくださってありがとうございます>_<

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