1話 プニプニ
当ても無く、王国から出たそこは、
すでに魔物がうろつく危険エリア。
見渡せばプニプニしたヤツが
もちょもちょ、と音を立てながら
うろついていた。
「まずはあのプニプニから
倒すのがいいだろう。
戦うなんて初めてなんだけど」
とりあえず疑問なのは、
なんで俺が魔王なんて
倒しに行かなければならないのかだ。
もっと適任なヤツ居るだろ。
こうして妹を危険に晒してまで
俺が魔王を倒しに行かなければならない理由があるのか。
まぁ妹を俺の勝手で
連れ出したから、実際妹を危険に
晒しているのは俺かもしれないが。
「おにーちゃん、頑張ろう?」
妹がキラキラした瞳で
頑張ろう?と言ってくれる。
幸せだ。今なら何でもできそうだ。
そんなことを言ってると
例のプニプニに出くわした。
透き通るように青いプニプニした
物体が、俺達4人の行く手を遮る。
「このプニプニやる気だな。
よし、行くぞみんな!」
出来たてホヤホヤのパーティ。
まずはプニプニで力試しと行こう!
そしていかにも戦闘開始!って
雰囲気になった時。
ぼんっ
なんかデカイ板が現れた。
敵か?なんか書いてある。
主人公・青年
レベル1
HP14
MP0
おぉ!?
これって俺の状態やん。
ゲームとかで見たことあるぞ。
HPとか実在したんだな。
というか俺弱いんだな。
他のヤツのも有るね。
妹・ルリ
レベル1
HP10
MP25
魔法使い・ハチャ
レベル1
HP14
MP36
戦士・ゴウ
レベル32
HP358
MP145
ほぅほぅ。
出来たてホヤホヤらしく、
みんなレベル1だね。
…1人飛び抜けて強いのが
居るんですけど。
あぁ。きっとエリートなんだ。
すごいなぁ、頼りになるなぁ。
この人に魔王倒しにいってもらえば
いいと思うんだけど。
そんなことを考えてると、
ハチャが声を上げた。
「私…やってみます!」
「おぉ、頑張って!」
「た、倒すのは無理でも、
弱らせる事なら、で、できると
思いますっ…!じゃあいきます!」
なんか一生懸命な女の子って
感じだなぁ。グッとくる。
「弱らせるだけでもかなり助かる!
やってみてくれ!」
ハチャが呪文を唱える。
「氷魔法!ヒヤリン!」
可愛い魔法だなぁ。と
思ったその時だった。
なんとも可愛らしい呪文は、
あろうことかゴウに命中した。
ゴウに冷気が襲いかかる。
ふとあの板を見る。
戦士・ゴウ
レベル-3
HP3
MP0
「ご、ごめんなさいっ!」
「大丈夫だよハチャちゃん。
ちゃんと弱ってるよ!違うモノが。」
「…」
ゴウのレベルがマイナスに
突入していた。
それで思い出した。
戦士ゴウは、
確か体温が強さになると。
魔法使いハチャの
魔法は誰に当たるかわからないと
いう事を。
ゴウは瀕死状態だ。
ハチャはゴウに謝り続けている。
「戦えるのは俺とルリだけだな」
戦闘未経験だが…
やるだけやってみるか。
俺はプニプニにダッシュし、
思い切り踏みつけた。
ブチュッ!という破裂音と共に
プニプニは破裂した。
靴がゼリーの破片まみれになった。
板を見る。
青年の勝利!
経験値2と
1ゴールド獲得!
俺が足をのけると、
一枚の金貨があった。
予想以上にプニプニは弱かった。
そして、俺達は
魔王とやらを倒すため、
また歩み出したのだった。