12:進化
老年の執事―――耳が長いことからエルフだろうか?―――に連れられ食堂に向かっている途中だが彼此10分ほどは歩いただろうか?
一向に食堂につく気配がなく、少しづつだが不安が襲ってくる。
『あとどれほどで食堂につくのでしょうか?』
「屋敷が広いので食堂までは後3分程でしょうか。転移できれば早いのですが慣らさずに主の前に放り 出すと失神してしまうでしょう。」
顔色ひとつ変えずに少し酷いことをサラっと言ったが何も言い返せない。
事実的にも、実力的にも。
『・・・お聞きするのを忘れていたんですが、ここはどこなのでしょうか?』
「ふむ。それは我が説明・・・」
目の前に吸い込まれるような黄金の眼が見えた瞬間にはその人物は執事によって殴り飛ばされていた。
顔面を殴った腕は全く見えず、殴った衝撃で廊下に罅が入り男は空中で5回転し、錐揉み状態で20mほど先の壁に激突する。
殴った衝撃で吹き飛ばされそうになるがリアの手を握り飛ばされないように耐えた。
激突した時に生じた土煙がこちらの方まで漂ってくる。
そしてその土煙によってやっと僕は執事の攻撃を"認識"することができた。
漂っている土煙が所々若干だが凹むのだ。それに気づき執事の手を見てみると微かに、本当に僅かにだがブレているような感じがする。
そして土煙の向こうでは断続的に衝撃音が聞こえる。軍事訓練の時に聞いた爆弾よりも大きいだろう。
「ガイアス。一体なにをやっているのですか?」
音も気配もなく突然後ろにメイドが現われる。腰まである空色の髪を揺らしながら、その手には四つの大皿を持っている。
「リーンか。なに、痴呆症を患ってしまった主をショック療法で治そうとしているだけだ。」
顔色変えずに淡々と答え、淡々と殴り(?)続ける。
「はぁ・・・またですか。では主は私が"持って"いきますから。貴方は料理とお客様をお願いしますよ」
そう言って大皿を渡すと土煙の中に入っていった。
土煙に入り、見えなくなる瞬間、手に鈍い光が見えたのは恐らく刃物だろうか。
「ではお二人方。私の手をお取り下さい。」
腰を屈め柔らかい笑で大きな手をこちらへ差し伸べてくる。
もちろんそれを断る理由も権利も無いのでおとなしく手を乗せると次の瞬間には10人座れる程のテーブルがある部屋が広がっていた。
そこにはもう4人座っており、そのうち一人は街道で見た少女だ。
「では。こちらへお座りください。」
執事はそう言うと王の次の席を差し出してくる。
『ゑ!?』
その様子に街道で見た少女がクスクスと笑いながら
「ご愁傷様ぁ〜主が君達と話したぃらしぃヵら諦めてょ。
ぁ。上座とかは気にしなくてぃぃょ〜私達にそんなのなぃヵら」
『・・・わかりました。』
戦闘時のような威圧感は無いが圧倒的強者の存在感とでも言えばいいのか。言葉を絞り出すだけでも一苦労だ。
リアは完全に飲まれてしまい身動き一つ取れないようだが僕が手を引いてあげればなんとか歩くことはできた。
席に着き数分立つとドアが開き先ほどの赤い髪の男とメイドさんが入ってくる。
「ふむ・・・。待たせてしまったようだな。」「では食事にしよう」
確かにドアの方面にいたはずの男とメイドが瞬きの瞬間にとなりの席に移動していた。
(生きて確率がやたらと低い気がする・・・)
「ふむ。食事をしながらだが自己紹介でもするか。
私は帝国現皇帝、アルテナ=クロイフォード。種族は究極種。
好きなのは強い者。嫌いなのは弱い者だ。 二つ名は『最強』」
(また聞いたことない単語が・・・究極種って・・・)
レイが考える間も与えずに次の自己紹介に映る。
「むぐ・・・ング。ふぅ。僕はフィーネリア・・・ナントカナントカ」
口の中に入っていたものを飲み込み自己紹介を始めるが名前の後半がすごい適当だ。
「種族は人間ね〜好きなのは戦うこと。嫌いなのは"ケダモノ" 二つ名は『神速』」
容姿はセミロングの紫紺色の髪。目の色も紫紺で顔立ちはかわいい系で整っている。・・・が。
好きな事を言うときに見せた狂気的な笑みのせいで顔に恐怖補正がかかってしまった。
「・・・飛燕・・・好・・・強者、仕合・・・嫌・・・特無(特になし)・・・象名『無音必殺』・・・種・・・人」
次に自己紹介したのは忍者の格好をした男。見たとおり口数が少ないようだ。
顔は刃物の様な鋭さを感じさせる。非常に整っており、甘い言葉でナンパしたら一発成功だろう。
「暗いですよ〜飛燕。 ワタシはアデア。好きことは童と遊ぶこと。嫌いなのはアホの子。かね
二つ名は確か・・・『嘲笑の死神』だったかなぁ?ひどいよねぇーひひ。ああ、種族はニンゲンさ」
次に自己紹介したのは全身真っ黒な男で顔はフードを深くかぶっておりわからないが縦半分に割れている骸骨の面をつけているようだ。
(その格好で子供たちと遊ぶことが好きって・・・)
「ウチの名前はルーイン。好き事は物作ることかなぁ?嫌いなのは特にないなぁ。
種族は王竜人。二つ名は『創物主』とか呼ばれてるわー。ルーだとルーテシアと被るからールーインとかールーイとかでよろしくー」
次に自己紹介したのはお嬢様のようなドレスを着込んだ金髪の女性。
ピアスやネックレス、指輪などアクセサリーを異常につけていることと凄く整った容姿以外は普通だ。
ほかの面子程の覇気などもない。 かわいい系というよりもキレイ系だろうか?
「私はリーン。この城でメイド長をしています。好きな物は甘いもの。嫌いなのは特に無いですね。
種族は"一応"人間ですよ。ギルドでの二つ名は『時操の戦乙女』だそうです。」
「私はガイアス=ラドン=ヴァンパイア。真祖の一人と言われている。好きな物は処女の血。嫌いな物は・・・そうだな。強いて言うならば天族だろうか。二つ名は『混沌』」
「ふむ。これで全員だな。さて、お前達の自己紹介と行こうか?」
その言葉で食事をしていた全員の視線がこちらに集中する。
『・・・名前はレイ。見たとおりグリーンスライム。」
俺が軽くだが紹介し終わると隣で掻き消えそうな声で自己紹介が始まる。
「リアです・・・ドリアードです・・・」
「ふむ。魔物と聖霊が何故一緒にいるか。色々聞きたいことがあるが・・・まずは如何程か?」
『・・・は?』
いきなり「如何程か」と言われ思考が停止してしまったが全身を突き刺す敵意によって強制的に覚醒させられる。
その敵意すぐ後ろにおりそれに反応して振り向くけばそこにはもう大きく開かれた口があり、
躱す事もできずに噛み付かれる。
『ぐぁ!?』
「レイ!!」
「んんぁー今回も外れなのヵなぁ?」
ヤケに間延びした声が耳に入ってきて今の状況をやっと把握する。
(自己紹介で誰ひとり"よろしく"を言わなかった理由がコレか!)
『舐めるなよ糞ネコ!』
体を溶解液に変え一旦液体に変わる。
すると口の中が熱に襲われたデカイ虎のようなやつは口を離し2m程距離を取る。
『リア!援護!【纏術・雷】』
「わかった」
体に雷を付与し、虎に攻撃を仕掛けるために高く飛ぶ
『そらぁ!【雷鞭】!』
相手の機動力を奪うために足を狙って攻撃を仕掛けるが流石に単調な攻撃など当たってはくれない。
「木々よ。【樹縛】!!」
地面から生えてきた足程の太さがある根が相手を捕らえ、巻きついてゆき虎が見えなくなる。
「【圧】」
根が引き締められてゆき木々が擦れ合う摩擦で木に火がつくがその火で木が燃えることはなかった。
ギリギリと音を立てながら締めていくが ピシリッ 締め付けていた木に縦罅が入っていきそれが広がっていく。
「ううっ・・・もう無理・・・かも」
額に脂汗を掻きながら必死に魔力を込め続けるリア
『我の下に集え雷精 魔力を糧に具現し敵を貫け』
木の罅が全体に広がり・・・
――ガァァァァァ!!!
樹縛が砕かれ自由になった虎が重力に沿って落ちてくる
地面に着地する瞬間を見計らい、溜めておいた魔法を発動させる
『【百雷の一撃】』
腕を目一杯広げた程の太さの雷が眩い光を放ちながら雷速で虎を・・・
―――グルアァァアァァ!!!!
虎が咆哮を上げると雷が消え去り、その事に一瞬呆けたレイに一瞬で近寄り前足で横になぎ払い吹き飛ばし、レイは2m程吹き飛ばされ壁に激突する。
虎は止まらずにリアへと肉薄し足で胴体を押さえつけながら押し倒しその頭部を口を大きく開け、食らおうとする。
「ひっ!き、木々よ!!!」
体の周りから木が生えて虎から離れようととするが力が強く、根は爪や牙によって無残に散らされていく。
『リアっ!・・・くそ!』
HP:214/6200 MP:55/522
―――動け・・・動けよ!!
虎は邪魔な根をすべて千切り散らすと口を開け噛み付こうと近づいていく。
―――ドクンッ
その光景を見たときにはもう走り出していた。
『闇よ!喰らえ!!』
レイの周りから闇が吹き上がり虎に向かって迫り背中に当たる。
だがそれはあまりにも抵抗がなく空を切ったような感覚。だが当たったであろう場所にはついているはずの肉がなかった。
―――ガアアァァァァ!!!!
――――――ドクンッ
―――獣系進化条件クリア―――
・Lv35以上 Clear!
・獣系を100回捕食 Clear!
・闇か影魔法習得 Clear!
―――【影狼】への進化可能―――
誤字脱字がありましたら教えてください。




