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『死に戻り』しまくって助けたヒロインが、記憶を引き継いでいたので全員病んだ  作者: 水葉わいん/わいん。


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第28話 クリスマスのち返品不可で唯一無二のプレゼント




「――『全員選ぶ』っていうのも、アリなんですよ?」


 花恋の囁き声は……鼓膜を甘美に溶かし、脳の中を甘く蹂躙していった。


「ッ……そ、そんな不誠実なこと……していいはず無――」


「――していいに決まってるじゃないですか! センパイはあんなに頑張ったんですよ? それくらいのご褒美……あってもいいと思いません?」


 花恋は悪魔のように誘惑してくる。


 それは、どうしようもないほど魅力的で……気を抜けば頷いてしまいそうだった。


「……も、もし、俺が心の底から3人全員を好きになったら……考えるよ」


「もう、センパイは真面目ですねぇ……」


 花恋はからかうように言うと――


「――まあ、そこも好きなんですけどね……?」


 吐息が混じった声で囁いた。


「っ……か、花恋……」


「あはは、センパイ、顔真っ赤じゃないですかー! かーわいーっ!」


「くッ……」


 俺は思わず顔を隠した。


 不意打ちで『好き』とか可愛いとか……ズルすぎるんだよ。 


 そのせいで俺はいっつも揶揄われてばかりだ。

 花恋がそういうことばかりするなら……俺だって――


「……せ、せんぱい? どうしたんですか? 黙っちゃて……え、えっと……ごめんな――きゃっ?!」


 俺は花恋の肩に両手を付けると――そのまま、押し倒した。


「なあ、花恋……俺だって一応……年頃の男なんだぞ?」


「っ……は、ひ」


 花恋の顔は目隠しのせいで見えない。

 けれど……きっと顔を真っ赤に染めているのではないのだろうか。


「……そういえば、着ている服を当てるゲーム……だったよな?」


「え……? は、はい、そうですけど……」


「そうか……じゃあ、好き勝手触っても良いんだよな」


「ふぇ?」


 気の抜けた声を漏らす花恋を無視し、俺は適当に花恋の体に手を伸ばした。


 そこは柔らかくありながらも、弾力があり、円柱型の部位……太ももだった。


「へぇ、ここは太もも? 冬なのに生足なんだな」


「っ……せ、センパイ、それ以上、上を触ると――ひゃあ?!」


「す、スカートの中に手、入って……!? せ、センパイ! 止まって……!」


 いやぁー、何も聞こえないなぁ。

 どうやら、耳も悪くなってしまったみたいだ。


 俺は、その後も花恋の体の至る所を触っていると……流石に耐えきれなくなったのか、花恋は俺を押し返して逃げていった。


「せ、センパイにこんな一面があったなんて……」


「い、いや別に誰に対してもするわけじゃないぞ?! 今回は流石に花恋がやりすぎだったから……」


「そ、そうですか……誰に対してもするわけじゃない……ふ、ふぅん……」


 花恋は少し嬉しそうに声のトーンを上げていた。


「それはそうと……! センパイ、私が着ている服はわかりましたか? 私は月乃ちゃんみたいに優しくないのでヒントはあげませんよ?」


「うーん……」


 正直な話、太ももに集中していたせいで全然わからなかったのだが……花恋がミニスカを着ているということは、わかった。


 生地が薄い。

 少しふわふわしている。

 俺でも名前を知っている。

 ミニスカ。


 ……なんだ?

 恐らく露出が高い服なのだろうけど……思いつかないな。


「わからないな……」


「――じゃあ、ユウ。あたしが特大ヒント、出してあげようか?」


 背後から雪那が、そう言ってきた。


「い、良いのか?」


「まあね。もうこれ以上、あたしたちのことを触ってもわからなそうだし? でも、代わりに……条件が1個、あるかな」


「……な、なんだ?」


 俺が恐る恐る訊くと、雪那は耳元で囁くように言った。


「――来年のクリスマスの夜、あたしにくれない?」


 と。


「……来年? それは……どうして?」


「ユウ、今年だったら絶対に断るでしょ?」


「まあ……それはな。でも、だからといって来年?」


「ふふっ、だって――」


 雪那は一拍置くと、甘く蕩けるような囁き声で――


「――あたし、来年までに絶対にユウを惚れさせるつもりだから」


 そう言った。


「勿論、来年のクリスマスまでに惚れてなかったら、この話は無しでいいよ? でも……惚れてたら……その時はよろしくね?」


「ッ……あ、ああ」


 あまりに自信満々すぎる言葉で、俺は頷くしか無かった。


 ギャルの自信……恐るべし。


「そ、それで、ヒントってなんだ?」


「んー、そうだなぁ……ヒントは、この季節、かな?」


「季節……?」


 今は当然、冬だ。

 冬に着る服……となると、防寒具?

 でも、それにしては生地が薄いよな……。


 ……いや、そうか、そういうことか!

 注目すべきは――


「――クリスマス……! つまり、サンタか?」


「ふふっ、せいかーい! ユウ、目隠し外していいよ?」


 俺は恐る恐る、目隠しを外した。


 ――次の瞬間、視界に入ったのは……ミニスカートのサンタ衣装に身を包んだ三人だった。


「「「――メリー・クリスマス!!!」」」


「っ……!!!」


「ねえ、ユウ、プレゼントは何かわかる?」


「なんだ……?」


「ふふっ、それはね?」


 三人は目を合わせると――


「「「あたしたち……っ!!!」」」


 月乃は、手を胸の前で組み、恥ずかしげにモジモジしながら――

 花恋は、手を後ろで組み、満面の笑みを浮かべながら――

 雪那は、手を胸に当てて、挑発的な笑みを浮かべながら――


 三人は一斉に言った。


 それは値段のつけられない……世界最高のプレゼントだった。


「三人とも……」


「ふふっ、センパイ、このプレゼントを受け取るかどうかは、今、決めなくてもいいですよ? けど……このプレゼントは受け取られるまで、センパイに付き纏いますからね? 覚悟しておいてくださいよ?」


「そうだよ? ユウ。それに受け取ったら……返品不可だからね?」


「二人の言うとおりです。私を……私達を絶対にユウさんに選ばせてみせますから……!」


 三人は覚悟が籠もった瞳で、それぞれ言葉を紡いだ。


 プレゼントは目が眩むほどに美しくて魅力的で……今すぐにでも全部、受け取りたくなった。


 けれど……返品不可で唯一無二のプレゼントだ。

 俺は誠実でありたい。

 だから……


「心の底から好きだと言えるその日まで……取り置きしても、いいだろうか」


 すると、三人は頷いた。

 しかし、花恋は「でも」と付け加える。


「でも……取り置きなんですから、絶対にいつか取りに来てくださいよ?」


「ああ、勿論……! 絶対に取りに行くよ……!!!」


 三人以外を好きになるなんて、絶対に選択肢として、あり得なかった。


「ふふっ、なら文句はありません!」


 すると、花恋だけではなく、他の二人も満面の笑みを浮かべた。


 その日は……一生、思い出に残る最高のクリスマスだった。




 それから……あっという間に時は流れていった。

 俺はリハビリをしながら日々、過ごしていき……4ヶ月後。


 ついに退院を果たすことができた。




















 そして、今日――


 桜舞い、ほのかに温かな風が吹く4月。


「――ようやく……また、学校に通えるのか……!」


 俺は校門の前で笑みをこぼした。








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